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相談

寄り道が本来の旅行よりも文章量が長くなりそうな予感が……





 一行は町を離れ森を切り開いて整備した道を行く。

 この町の資金は潤沢らしいが、こう言う所をしっかり整備しているあたり結構余裕はあるのだろう。

 一般的に貴族の屋敷には馬車での出入りがあるので、王都から離れた町でもある程度は路面の整備をしていると言う。

 だが路面だけじゃなく王都の伯爵家並の屋敷を建てるとなると話は別だ。

 家の格でどの程度の屋敷を建てると言う指標みたいなものはあるが、それの上限を行くのが王都の貴族だ。

 次いで四方の公爵領の街の貴族家の作りがそれ並か少し劣る程度で、そこから離れた町に住む貴族は資金的な問題もあって大分劣った物になりがちで、家の格の割にみすぼらしい家に住む場合も有ると言う。

 大抵は伯爵家以上は王都か四方の公爵領の街に住んでいる。

 子爵家や男爵家が格の割にみすぼらしい家に住みがちで、割と僻地と呼ばれる町に住む男爵家なんかは一般的な王都の平民と大して変わらない家に住んでる事もあるらしい。

 それもこれも金の問題と四方の公爵領の街と王都が飽和状態一歩手前なので移住を受け入れてないのだ。

 仮に金があっても移住出来ない、仮に移住出来たとしても金が無くて土地も買えなければ家も建てられない。

 だが僻地にいては商売での利益も少ないし、結果として政略結婚でのし上がる以外は方法が無いようだ。

 もし政略結婚が叶ったとしても、古くからその土地で暮らしている町の代表なので、当主は今更引っ越しなんて出来ないだろうけど。

 で、サルヴァドール家はそれで言うと古くからこの町の代表として暮らしていて、観光地として利益を出して潤っているので家を大きく出来るし街を近代化出来る、それはもう大成功してる領主代行らしい。

 ちなみに本来このエリアはスズウキ家の管轄だが、サルヴァドール家が管理しているので領主代行と言う扱いになるようだ。

 それもあって町の整備には公爵家からも資金が来ているようなので、下手したらシュバインシュタイガー家よりも自由にできる資金は多い可能性もある。


「にしてもでっかいな」

「実はこっそり王都の伯爵家より大きくしてる疑惑。下手な伯爵家よりお金持ちだけど」


 そもそも家の大きさの指標自体に明確なルールがあるわけでも無く、古くからある同格の家の屋敷より大きい物は建てない、と言う感じにざっくりと決まっているようだ。

 今で言うと、昔は公爵家だったらしいシュバインシュタイガー家よりも大きくはしない、と言うのが伯爵家の一つの目安だろう。


「すみませーん」


 この手の屋敷は入り口に感知魔法が仕込まれており、来客が来ると反応して使用人に知らせるはずだ。

 なのでわざわざ声を上げる必要も無かったりするようなのだが、そこは日本人の癖と言うか何と言うか。

 敷地の外れにある門の前で待っていると、少し遠くに見える扉が開いて使用人用の黒のスーツを着ているオジサンが出て来た。

 見た目に急いでいる風でも無いのに早歩きくらいのスピードで来るのが少し異様だ。


「お待たせいたしました。我がサルヴァドール家にどの様な御用でしょうか」

「ん、これ次期国王のトモヤ。海の魔獣に関して当主に話がある」

「これはトモヤ様、おめにかかれて光栄にございます。すぐに我が主を呼んでまいりますので、中でお待ちください」


 そう言って門を開けてくれたが、何ともあっさりしたものだ。

 使用人に付いて屋敷に入ると中も立派な物だった。

 王城がそう言った装飾なんかをしてないせいもあるのだが、エントランスホール正面上に恐らく当主の巨大な自画像が飾ってあるとか、金持ちの道楽の極みだと思うのだ。

 エントランスホールを右に行った先の部屋に案内されたのだが、そこはこれまた豪勢な接客用の部屋だった。

 貴族の家の場合、こう言った来客時にとりあえず通す待合室があるようなのだが、部屋の位置を考えても恐らくそれだろう。

 すぐにドリンクとフルーツ類が運ばれてきた。


「では少々お待ちください」


 そう言って下がる。

 残された俺達は、テーブルの周りにあるソファーに思い思いに座った。


「あんまりにもあっさり通されたな」

「多分さっき会ったオベルティ家の当主が伝えていたんだと思う」


 シャルはそう言いながらむふーんと鼻息激しく出されたフルーツを手に取る。

 それを皮切りにシエルが続き、千絵と楓子も続いた。

 大人しく座ってるのはおやっさんとお義母さん位なもので、トラ子は人型で俺の膝の上に座ってご満悦だ。


「いいなぁ智也君」


 この町が猫だらけだったせいか、楓子の猫欲を刺激してヤバい。

 なんかもう語彙に乏しいとかではなく正しく表現してヤバいのだ。

 『うへへへ……』と言ってるように見える表情でトラ子を見るくらいに。


「トモヤも食べる?」

「俺はさっきので腹いっぱいだから、シエルの好きなように食べればいいよ」

「やったー」


 他所の家に来て遠慮と言うある種常識を知らんのだろうかと一瞬思ったが、現在我々は急な来客だが持て成される側なので、これくらい食べるのがいてもいいのだろう。

 そこにノックが響いた。

 慌てて膝の上のトラ子を隣に下ろすと、利口な子なので大人しくしてくれる。


「大変お待たせいたしました、トモヤ様。サルヴァドール伯爵家当主のクリスティアーノと申します。ご連絡いただければ迎えの者を寄越しましたのに」

「ああ、いえ、自分達も今日一杯しかこの町に居ないんです。無作法ですが直接来てしまい申し訳ありません」

「王家の関係者とあろうお方が頭を下げないでいただきたい。我々など少し雑に扱うくらいで丁度いいのです。して、何やら海の魔獣がどうのと言う事のようですが」

「ええ、海の魔獣で料理を作ってみたいと言う方がいまして、とりあえず魔獣を獲って来ようと思うのですが、この町を管轄するサルヴァドール伯爵家の御当主に挨拶も無しに出来ませんので」

「これはわざわざありがとうございます。当方と致しましても魔獣は頭の痛い問題なのですが、生態がわからない以上下手に刺激も出来ず、そこに来て湾の主と呼ばれる巨大タコの存在ですのでお手上げ状態なのです」

「その巨大タコが魔獣の流入を防いでる説があるようなので、とりあえず沖の魔獣の分布状況を見て、多そうなら何匹か倒す程度にして、もし沖の魔物が少ないようでしたらタコも倒してしまってもいいのかなと思いまして」

「えーっとですね、冒険者ギルドの誘致が決まりまして、近々ギルド出張所が出来るのです。その後でしたら主を倒して頂いても冒険者で対応できると思うのですが、その前に魔獣を獲っても何かに使えない限りは中々報酬を払えませんので、やはり試食からでしょうか」

「ちなみに冒険者で倒せる程度の魔獣なんですか?」

「冒険者は大体四人以上のパーティーで行動します。貴族クラスの能力があれば一パーティー規模で魔獣一匹くらい何とかなるでしょう。群生していて一斉に襲って来られたら対応しきれないでしょうが」


 だとすると相当リスキーだ。


「その場合、魔獣料理が美味しい事が前提で尚且つ高く売れないと駄目って事ですよね」

「そうなります。まぁ漁場が広がる事ですし、その分収穫量が増えて収入も上がるので損にならない程度までなら出せますが」

「じゃあ何種類か獲ってみましょう。魔獣が湾内に来ないようにはしますが、何かあったら事なので海の近くから人を批難させておいてもらいたいのですが」

「漁協長のホークにクリスティアーノが許可を出したと伝えて頂ければ滞りなく進むと思います」

「あ、ホークさんって漁協長さんだったんですね……」

「既に面識が――ああ、先ほど漁協で会ったのですね」


 なんかクリスティアーノさんの表情を見ていると、魔獣の問題は本当に頭が痛いようで、何とかなるなら何とかしてほしいようだ。

 だが相手は広い海に生息する何百じゃ利かない個体数だ。

 となると千絵の高威力の魔法や楓子の弓で広範囲爆撃でもして一斉に倒してしまった方がいいのだろうが、浮いた死体の処理をしないと腐った死体が流れ着いて二次的被害が発生する可能性があるし、そもそも攻撃時に発生する津波をどうするかが問題だ。


「ではそう言う事で、さっそく行ってきますね」

「わかりました。こちらも支度して向かいます」


 どうやら領主代行として放っても置けないようだ。

 ただ、俺達の場合はシャルの転移門での移動になるのだが。

 それを見ていたクリスティアーノさんは顎が外れそうな表情をしていた。

 俺達にとっては慣れて当たり前になった事だけど、一般的にはそうポンポン使う物でも無いのだから仕方ないとは思う。

 そもそも普通の転移門の使い手はブライアンのように一日一往復が限界だ。

 それは魔力総量による限界なので増やしようが無い。

 今なら地脈が復活した事で前よりも空間中の魔力量が増えていると言うが、それでも魔力馬鹿食いの転移門は精々一日一往復であり、それは緊急時か転移門を使ってもらいたいと雇われた時に使う物らしい。

 だが、慣れとは本当に怖い物だ。

 時間も無いし、と特に相談をせずともシャルが転移門を開くし俺達も当たり前のように使う。

 そっかー、伯爵家の当主でも驚く事を当たり前にしてるんだなー、と何となくだけ考えて俺達は海辺へ戻った。


 まずは漁業長のホークさんの所だ。

 漁港の建物に行くと、午前で既に仕事が一通り終わっているのか閑散としていて、どうやら建物の二階に人がいそうだと魔力探知を掛ける。

 大勢でぞろぞろと上がって行くのも物々しいので、俺とおやっさんの二人で行く事にした。

 木製の階段を上って行くと、その音に気付いたのか上の部屋の窓越しにホークさんと目が合った。

 部屋の中にはホークさん一人だけのようで、何か事務仕事をしていたようだ。


「さっきのあんちゃんか。どうだったか美味かったろう」

「ええ、ありがとうございました」

「それで今度はどうしたんだい。大口の取引先にでもなってくれるってならありがたいんだが」

「場合によってはそれは有りえるんですけど、その前に海の魔獣を何体か獲って来ようと思うので、一応海岸線沿いの人達を退避させてもらいたくて」

「あんちゃん、自分が何言ってるかわかってるのかい? この観光地で観光資源である海っぺりを、短時間だとしても人を排除するなんて無茶を言っちゃいけねえよ」

「クリスティアーノさんには許可を得ていまして、ホークさんに言えと言われて来たのですが……」

「ん、ぬー、クリスティアーノ様か。でもあんちゃん達、そんな事してどうするんだ。魔獣なんて変に手を出しても得なんて無いだろう」

「魔獣を調理してみたいって人がいまして、今後の町の発展を考えましても魔獣を何とか出来ればプラスですし、魔獣が減って安全に漁が出来るようになれば漁協の方々もいいですよね?」

「魔獣が減ってって、どんだけいるかもわからないのに簡単に言うねぇ」

「これでも結構強いんですよ。俺の嫁達」

「んん……、まぁクリスティアーノ様が許可を出したってーなら仕方ない、話は通そう。だが全員が全員従うわけでも無いだろうから、完全にとはいかんと思うぞ」

「そこはもう自己責任で。そうですね、場合によってはそれなりの津波が発生して浜辺に打ち寄せる可能性があるのと、波に乗って魔獣が主を通り過ぎてこっちに来る可能性の二つが今の所考えられます。一応両方とも発生させないようにはするつもりですが、確実とも言えませんので」

「一体何をやらかすのか知らんが程々にな。それと損害が出た時は請求させてもらうからな」

「じゃあ保証金と言うか迷惑料にどうぞ」


 俺は袋の中からベスターから貰った袋を出し、手を突っ込んで適当に引っこ抜く。

 多分十五枚くらいは握ってるはずだ。


「や、ちょ、待て待て、そんなの渡されても困る!」

「やっぱりですか。いや、そう言ってくれないと本当に渡すところだったんで助かりました」


 戻した。

 物価の差は有れど三百万くらいだろうか。

 それだけあればこの町では大き目の家がポーンと建つ事だろう。

 損害云々と言い出す人は大体二パターンで、後になって大した被害が無くてもあーだこーだ文句を付ける人と、何かあった時のみ申告する人だ。

 試すような事をしてしまったが、ホークさんは後者である事がわかる。

 まぁいきなり大金を目にして驚いた事もあって、その戻す仕草とかガン見されてたけど。


「どこの金持ちか知らないが、心臓がいくつあっても足らんよ……」

「人死には絶対起こさせません。何か被害が出たら保証しますんで、よろしくお願いします」

「ああ、どうせクリスティアーノ様の許可がある時点でやらざるを得ないんだ。あんちゃんが本気だってのもわかったし、精一杯やらせてもらうよ」

「いやまぁ俺達も乗り掛かった舟くらいにしか考えて無かったんですけどね……」


 では、と部屋を出て下に居る面々に腕で丸を作って送る。

 さー次は狩りだ。

 まずはさっきの店でおやっさんの生徒である店主、どうやらマルコさんと言うらしいのだが話が付いた事を告げると喜んでいた。

 『では道具を揃えて待っていますね』なんて気軽に言うけど、さー事は簡単に進むのだろうか。

 とりあえずタコのお化けを超える必要がある。


「んじゃあ俺と千絵と楓子は海上で、シャルとシエルは待機で」

「私も行く」

「もし津波が来たらシャルがシールドで被害を抑えてくれないと困るから居残り」

「むー」

「私は何も出来ないけどどうするの?」

「普通に魔獣が湾に入ってくる可能性も有れば、楓子の攻撃で発生した津波に乗って入ってきちゃう可能性もある。それを探して切って欲しいんだ」

「私に仕事来るのかなぁ?」

「楓子ならともかく千絵のシールドは力任せだから、多分抑えきれないと思うんだよな」

「言ってくれるじゃない。抑えてやるわよ」


 千絵はやる気満々だけど、海の表面だけじゃなく海底にまでシールドを張って水を止めないと湾に水が押し寄せる可能性がある。

 この町の海は釣り鐘型で入り口が一旦狭まっているので、本当ならそこにシールドを張れれば解決だったのだが、多分その辺りはタコの攻撃範囲内だ。

 それならもっと沖でやる手もあるが、楓子の弓の威力によっては付近の海岸線に大きな津波が押し寄せる可能性がある。

 それなら近場で射って津波の大半を此方で受け止めてしまった方がいい。

 世界滅亡クラスの津波じゃない限りは攻撃後に楓子が止めに入る事も可能だろうが、それでも町は近すぎるし沖でやる場合は広範囲に広がり過ぎて抑えきれないので、現実的な案としてタコの少し先辺りが妥当だろうと言うのがシャルとの相談の結果だった。

 とりあえず弓を使う事になったので楓子には弓道着に着替えてきて貰って、準備はオーケーだろうか。


「よし、それじゃあ行こう。千絵、フライお願い」

「はいはい」


 弓を引く時の楓子は真剣であり他に一切意識を向けない程に集中する。

 楓子に俺を飛ばすのを頼んだら、弓を持った瞬間俺は海の藻屑に消えるだろう。

 この頃にはホークさんが部下を使って海岸線から退避するように伝え始めていて、一体何が起こるんだと興味津々に観察する人もいる。

 あんまり目立ちたくないなぁと思いつつ、俺達は空を飛んで沖へ向かった。



出来れば毎日更新なんて息巻いてやってますが、当初一章分は丸々下書きがあったので加筆修正で投稿、それが八割終わった頃から続きを書き始めて二章半ばでストックが無くなり、そこから二十日間くらい前日に書いて翌日朝までに見直して投稿と言う形でやってきました。

休日挟むともうダメかなと思います。

だって仕事休みの日なんて16時間とか寝れちゃうんですもの……

先日も友人と遊んでて帰って来てからやってましたが、頭の中に大まかに話しが出来ていても三時間、出来ていないと半日は一話に掛かるので結構しんどい。

と言うか大抵は頭の中の妖精さんが登場人物を勝手に動かして勝手に話しが出来ていくタイプなので、乗れればオッケー乗れなければ進まんとです。

まぁそれでも楽しくやっているんでいいのですが。

近々毎日更新途絶えるかもですがよろしくお願いします。

こんな小説ですが、アクセスのユニーク件数見るに一日百人くらいは見て頂けているようなので、のんびりとでもやって行こうと思います。

んでも一日にPV数1000近く行く日でもユニーク130人とかなんだよなぁ、アクセス解析見てるとちょっと不思議。

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