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世界樹観光 その1


 様子見として午前中はシャルの実家付近でトラ子と遊んで過ごしてみた。

 魔獣化と言うか魔人化、そして魔王化しているだろうと言うトラ子なので、能力面がどうなっているのか疑問があったからだ。

 ちなみに一回城へ戻って適正の検査を行ったのだが、魔族の魔力を持つせいか文字化けして判別不能と出てしまった。

 どの程度なのかと遊ばせてみたら、勇者二人を手玉に取るくらいの俊敏性を鬼ごっこで見せた。

 これまでのイメージもあるとは思うのだが、楓子が捕まえられないのは仕方ない気がする。

 だがしかし、千絵が鬼の時もトラ子を捕まえる事は叶わず、何なら地面である世界樹の根が踏み込みの衝撃で痛むくらい本気でやっても駄目だった。

 単純に素早いだけでは無い。

 それを可能にするのは恐らく驚異的な反射神経と動体視力だ。

 千絵が力任せに踏み込んで飛びついても軽々と避け、どうやっているのか知らないが空中に足場を作って縦横無尽に駆け回るのだ。

 多分シールドの応用で中空にシールドを置いてるんだと思う。

 結局最後には千絵と楓子が二人掛かりで本気を出しても捕まえられず、しかし楽しくて仕方ないのか二人がいくら呼んでも一定距離を維持して戻って来ず。


「おーいトラ子、それくらいして戻ってきなさい」

「はーい」


 見かねて声を掛けたら素直に戻って来た。


「やっぱり智也君に懐いてる……」

「私達二人で捕まえられないとかある……?」


 千絵も自分達が勇者の中でも特別である事は自覚しているようで、その身体能力の高さから息は切れてないけど疲れた顔で呆れていた。


「いいかトラ子。楽しくてもママが戻ってこいって言ったらちゃんと言う事を聞くんだ」

「はーいぱぱ」


 興奮状態なのか耳がピンと立って物音がする方へチラチラと向いているし、尻尾もうねうねと中空を動き回っている。

 満面の笑顔を浮かべて何故か褒めて欲しそうにずりずりとすり寄ってくるのだ。

 人型になったのに習性が猫のようで、単に甘えん坊に見えなくもないのだが恥ずかしがる事が無い。

 するとどうなるかと言うと、人の腰に抱き着いて張り付いてみたり、背中に飛び乗って勝手に負ぶわれてみたり、それを超越してジャンプして肩車してみたりと好き勝手し始める。

 そこで問題。

 いくら幼児、身長はシャルより気持ち小さいくらいの女の子でも体重はそれなりにあって、こっちは遊び人で主夫と言うこの世界での虚弱体質がそんな目に遭ったらどうかるか。

 結論として、俺は午前中一杯で体中を酷使し、衝撃等を吸収しきれず足腰ボロボロになって二階でぶっ倒れる事になるのである。

 世のお父さんすげえ。

 いやこんな遊び方する子がいたら見てみたいけど。

 見かねた楓子が昼食後にマッサージをしつつ低級のヒールを掛けてくれる事になった。

 トラ子はシャルとシエルがどんな魔法を使えそうか見てくれている。


「楓子」

「なーにー?」


 うつ伏せになって『うぁー』とだらけた声を発しながら楓子のマッサージを受けていた。


「将来子供が出来たら育てる自信が無くなった」

「あは……あの子は特殊だから……」

「飛びつくなって言っておかないとな……」

「凄いよねぇトラ子。ぴょーんってジャンプしたら智也君の肩に座ってるんだから」

「むしろ倒れなかった俺を褒めてくれ」


 倒れた所でトラ子に傷一つ付かないのはわかっているのだが、なんせ幼児の見た目なので意地でも倒れてなる物かと踏ん張ってしまった。

 そして起こる腰痛である。


「魔王化してるってのも多分本当なんだろうなぁ」

「特性とかわからなかったんだよね?」

「文字化けしてな。あれって人間の魔力を読む物だから、魔族と同じ魔力を持ってるからダメなんだと思う」

「ベスターさん達って特性わからないの?」

「ほら、貧民街の境に居る占いのお婆さんいたろ、あんな感じで魔力を読める魔人がいるらしい。元々魔人って種族によって傾向が決まってるから、何か異常性が無ければわざわざ調べる事も無いみたいだけど」


 ぐっ、ぐっ、と楓子が腰を押す度に軽度のヒールが体に入っていく。

 どうやら単純にヒールを掛けるよりも、こうしてマッサージをした方が今回みたいなケースには効果的らしい。

 フルヒール使いとしては地味すぎる気もするが、一発で治せるフルヒールと言えど何十回も使っていたら副作用が現れる可能性も有りえるので、普段の治療は極力こうした地味な物が主流だと言う。

 と言うのも、ここしばらく楓子は学校以外でも教会に行って勉強してくる事がある。

 学校よりも専門的な事を教えてくれるからだが、教会にはプリーストが所属してる事もあって病院も併設されており、そこでヒールの勉強がてら患者を癒す事も多々あると言う。

 一般的には『フルヒールの女神フーコ』みたいなイメージらしいのだが、そう言った神々しさとは別に患者のおじさんやおばさん連中と雑談しながら癒す姿は、これまた別の人気があるようだ。

 で、一応楓子のフルヒールは術者にも相手にも負担の無い特別な物と言われてはいるが、現状影響が無いだけで将来的に何度も使っていたらわからない。

 瀕死の重傷すら綺麗に治してしまうのに何も無い方が逆に怖いとすら言える。

 教皇相手の若返り実験では今のところ何もないが、教皇本人の見た目が若返っただけで寿命が延びてるかはわからないし、楓子本人も将来的に反動で魔法が使えなくなる可能性が無いとも言えない。

 よって、最近では俺が酷い目に遭ってない限りはフルヒールはまず使わないようだ。

 ちなみに酷い目と言うのは、先日の区画長の息子による『スキンシップ』で上半身の骨が粉々になりかけた事なんかを言う。

 実はこの世界の人達とのスキンシップは俺にとって危険極まりなく、これまでもちょっとしたタッチや握手で骨をやって楓子に治してもらった事がある。


「あぁぁぁぁ……楓子はこの技術だけでも食っていけるわ……」

「これはこれでちょっとは役得って思ってるけどねー」


 なんか変な事を言い出すので顔を上げると、恥ずかしそうにしていた。

 最近思う事がある。

 俺が恥ずかしがって日々の触れ合いすらあまりしないせいで、皆に気を使わせているんじゃないかと。

 ああでも楓子さん? なんかそう言いながらさっきから腰周辺を妙に揉んでる、押してる気がするんですが、ちょっとその控えめにしておいて貰わないと僕ちょっと。

 指圧とか掌で押すだけじゃなく、なんか上半身で乗っかったりとか、その、変なお店ってこんな所なんですかねー?


「えへへー」


 邪推してごめんなさいって言いそうになるくらい楽しそうにやってました。

 やっぱ夫婦になった以上、もうちょっとスキンシップを取った方が喜ばれるんだろうな、と思う一幕だった。


 午後は予定通り世界樹へ行く事になった。

 俺も完全復活で、トラ子にも変に飛びついてきちゃいけませんと教えてある。


「でもぱぱおんぶー」


 にぱーと笑いながらそう言うから俺も甘いのだが、うちのトラ子はちょっと違った。

 シュルっと音がして服が地面に落ち、そこから猫の姿で俺に飛びついて来て肩からぶら下がるのだ。

 トラ子の猫モードも三キロちょっとはあるので、それが肩にぶら下がるのは地味に重たい。

 まぁ限界が来たら抱っこするなり手はあるか。


「じゃあ行く。皆の扱いやトラ子の事は打ち合わせ通りに」

「うん」


 一晩考えぬいた結果、やはりシャルと結婚した俺の別の嫁として人間族二人とドワーフ一人をゴリ押しするらしい。

 自分の旦那や家族に生まれ育った地を見せに来たと。

 トラ子はとりあえず猫モードなのでペットとしてゴリ押しだ。

 何でそんな心配しているのかと言うと、シャルが転移門の魔法で俺達を世界樹に開いた(うろ)まで飛ばして分かった。

 そこはエルフですら手続きをしないと入れない場所で、それもこれも世界樹を守る為だと言うが、何かこう無駄に物々しい雰囲気というか、何となく匂う。

 物理的に何か匂いの発生源があるとかじゃない。

 これは上層部にエルフ信仰の過激派みたいなのと似た組織がある気がする。


「おお、帰ってたとは聞いたがシャルロットじゃないか」

「ん、私の家族を連れて来た。上がりたい」

「とは言うがな」


 その(うろ)は入り口が整備されてデッキが張られており、区画長の家と同じように設置式の転移門が置かれていた。

 (うろ)は高さが三十メートルくらいはあって、奥も見えないくらい深い。

 それでも世界樹の幹が三十キロや四十キロくらい有りそうなので表層部分なのだろう。


「噂には聞いてたが人間と、ドワーフか……」


 明らかに人間の時点で馬鹿にしてるし、ドワーフに関しては蔑んでいた。


「扱いには気を付けた方がいい。私が怒って宇宙まで飛ばすかもしれないし、私の旦那は魔人の王と友達」

「怖い事を言わないでくれ。こっちも仕事なんだ。我らが母、マザーツリーを他種族によって汚されるわけにはいかぬのはシャルロットとて理解しているだろう」


 門番であるエルフもやはり年齢不詳だが、これまで見て来たエルフと比べると若そうだ。

 (うろ)の入り口は柵とゲートによって区切られていて、そこの門番が彼の仕事らしい。


「理解している。その上で来ている。私の家族が世界樹を汚すと思う?」

「思いたくはないが他種族だ。そもそも人間の身でこの地に――いや猫もいるのか? 一体どうなっている」

「私の旦那は魔力耐性が高いみたい。こっちの人間二人は勇者。猫は魔獣化したけど見ての通り大人しい」

「んにゃーぉ」


 黙ってようなー、と肩に乗るトラ子を撫でる。

 気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らしていた。


「そっちのドワーフは?」

「これでもドワーフ王国の王女。私の旦那のおかげでドワーフ王国と私達は友好を結んだ」

「まさかドワーフと、か。……しかしなぁ」


 なんてやってたら奥が少しざわついた。

 何かやってるのかと思ったら数人のエルフがやって来る。

 これは守衛かなんかで追い出されるのかと思ったら、そのうちの一人に見覚えがあった。


「やぁシャル」


 昨日区画長の家にいた、アレクサンドルとか言う世界樹統括だ。


「面倒なのが来た」

「そう言うのは口に出さないでおくものだよ? 全く、昨日ソランジュに言っておいてくれたから良かった物の、何も聞いていなかったら追い返されていただろうに」

「別にアレクサンドルの助けはいらない」

「こらシャルロット。統括に対してなんて口の聞き方だ」


 どうやらシャルは統括の事を嫌っている、と言うよりかは苦手に思っているようだ。


「僕の権限で彼等を中に入れてやって欲しい。大丈夫、昨日会ってるからね」

「いやしかし、人間族ならまだしもドワーフまで……」

「今やドワーフはシャル達と魔人族に頭が上がらないそうだ。傑作じゃないか」

「ん、なんか面白い話になってるみたいですが……本当に大丈夫なんですか?」

「ああ、破壊工作の心配は無いし問題は無い」

「わかりました。じゃあ通っていい。だが絶対問題は起こすなよ。お前たちが問題を起こせばシャルロットに迷惑がかかるのだからな」

「ランベール、いい加減うるさい」


 そう言うとその身が転移門に半分包まれた。

 待て待てとシャルの肩を掴むと、面白く無さそうに解除する。


「一瞬星が見えた」

「そのまま成層圏に投げ出して自由落下すればいいのに」


 なんかうちの嫁が凄く怖い事を言っている。


「全く、さぁ行け」


 そう言って通路を開けると、俺達は統括を先頭に(うろ)の中へ進んだ。

 俺は実は本気で怒ってるらしいシャルの頭を撫でる。


「危ない事はするなよ」

「大丈夫。気圧の変化で死ぬほど辛いけどあの程度じゃエルフは死なない。どうせ枝が張ってるから落ちないし。宇宙空間じゃなくて成層圏で許してあげたのは私のやさしさ」


 いや優しさって怖いがな。


「大丈夫だよシャルの夫よ。仮にシャルの逆鱗に触れたとしても、彼も門番として働ける程の強者だ。世界樹の上層には管理用に転移門が設置されているから難なく戻って来れるしね」


 その調子だと宇宙空間ですら短時間なら大丈夫とか言い出しそうだ。


「アレクサンドル、邪魔だからもう行って」

「シャルはいつも連れないなぁ。嫌われても仕方ないから僕はお暇させてもらうよ」


 そう言うと(うろ)の奥の方へ歩いて行ってしまった。


「……そんなあの人の事嫌いか? なんか凄くいい人っぽいけど」

「アレはエルフ至上主義のトップ。私達エルフの中で管理する気のあるエルフは大抵が世界樹の管理者として神に託されていると勘違いしている。だからエルフ以外どうでもいい」

「その割には俺達にも優しかったけど」

「歯牙にもかけていないだけ。どうせ人間なんて数十年で死ぬ矮小なゴミ虫だからって見下しているからこそ」

「……そんな人には見えなかったけどなぁ」

「そうやってエルフじゃなくて人扱いをしていると、アレの中で怒りが蓄積していくから気を付けて。エルフは人型ではあるけど人に非ず、明確に分けて考えないとエルフ至上主義の連中は怒る」


 やはりと言うか、あの門番に感じたのはそう言った連中だからのようだ。

 だが、シャルが言うほど極端な物にも思えないのだが、逆に言う通りで、滅茶苦茶上から目線で見られていたらわからなくもない話でもあった。


「でも、そんなのを相手にしてまで俺達を世界樹に連れて来たかったのか?」

「世界樹は見ておくべき」


 それが何故かを聞いているのだが、シャルには届かなかったのか伏せているのか。


「そのエルフ至上主義とシャルが水と油っぽいけど気に入られてるよな」

「私が神童と呼ばれているから」

「またそれか」

「結局はエルフ至上主義である以上、純血且つ能力を重んじる風潮にある。エルフは人里に降りる事は多くても人と付き合う事は少ない。なので人と交わう事が無く、長い歴史の中でも混血児は殆どいない。そして混血児は魔力耐性の問題でこの地で生きれないから、結果としてここは純潔エルフしかいない」

「俺達みたいなのはつまり異常って事じゃないのか?」

「そう。でもどうせ人間が生殖可能な間に子供が作れると思っていない。若いうちの気の迷いだと思っている」


 シャルにとって俺との結婚は本気なので、そう言う蔑ろな扱いを始めエルフ至上主義の考えは元々理解出来ないようだ。


「私みたいに能力の高いエルフは特別視される。アレクサンドルも昔から、将来は僕の嫁になれって煩い」

「……それなら俺とか疎まれそうだけどなぁ」

「疎まれてる。と言うかトモヤだけじゃなくエルフ以外は等しく。トモヤが思っている以上の次元でアイツはエルフ至上主義者」

「じゃあ人がよさそうと思っていても警戒しといた方がいいって事だな」

「そう。でも能力的には千絵や楓子には全然及ばない。魔力的には優れているけど身体能力は人と変わらないし、その気になれば排除可能」

「でもそれをしたら、今度はシャルの立場が悪くなるだろ」

「私はエルフの社会で生きて死ぬつもりは無い。私を誰だと思っているの?」

「えーっと……本質的には琴美」

「その通り」


 つまりはそう言う事か。

 エルフは長命故に気が長く、その上種族の差で明確に上下関係を決めているので、俺達みたいな人間なんてどうでもいいと思っている。

 だから同族のシャルもいずれ自分達の元に戻ってくるからいいやと。

 しかしシャルはそんなつもり無いし、そう言った極端なエルフ至上主義の世界樹統括ことアレクサンドルを嫌っていると。


「まぁ理解は出来た。で、どうするんだ?」

「最初に工房に行く。その後で色々見ながら上に行く」

「工房?」

「トモヤ達は忘れているかもしれないけど、最初に楓子が注文した弓を取りに行く。多分完成はしてるけど連絡し忘れてるだけ」

「そう言えばそんな話もあったな」

「工房の連中は新しい物好きだから発注したら作るのは早い。でもそこで満足して連絡を寄越さないのが問題」

「弓? あの前に言ってた弓?」


 楓子のテンション爆上がりです。


「そう。弓道衣と胸当てとか一式もまとめて発注してある。矢も一応世界樹の枝製である程度作ってもらっているけど、普段使うのならドワーフ王国に発注した方がいい」

「この世界ってジェラルミンとかカーボン製の矢とか作れるのかなぁ?」

「勇者の能力なら何でも問題無く射れそうだけどな……。それとドワーフ王国だからって鉄製がメインじゃなくて、竹っぽいのが自生してるから竹製に近いのもも作れるはずだぞ」

「私はよくわからないけど矢の長さとか色々細かい発注を受けてる。それがどの程度ちゃんとしているかフウコに見てもらう必要がある」

「やったー」


 楓子の話を一方的に聞くだけだったが、矢にも材質やら長さやら太さやらと色々あって、その人に合った物を使うと言う。

 そのせいでお小遣いの大半を持って行かれると嘆いていた時期もあったが、それでも続けるくらいには好きだし性に合っていたようだ。

 俺達はアレクサンドルが行った方向とは違い、右前にある設置式の転移門に向かう。


「世界樹には外部からの転移を阻害するシールドが張られている。フウコが私をハメるのに使うあれ」


 ハメると言うか風呂に入りたがらないシャルを捕獲するための、な。

 ここに来てわかったが、この地は暑くも無ければ寒くも無く、汗も殆どかかなければ一日経っても汚れた感じが殆どしない。

 どうも世界樹の根が熱を発したりするのと同じで、世界樹がこの付近をそう言う環境に作り変えてしまっているようだ。

 それもあって、俺達ですらざっと体を拭いて頭をぬるま湯で流す程度でさっぱりしてしまっている。


「だから移動には設置式の転移門を使う。行先は上に書いてある」


 そう言って指す先には『内部中層エントランス』と書かれていた。

 内部と書いてある以上外部もあるのかと思って辺りを見回すと、隣にある門がそれだ。

 あくまで内部との行き来のみ阻害されているようで、さっき門番にやったように世界樹の上層と呼ばれる枝なら転移門の魔法で行き来できるようなのだが、枝にある転移門の出口はこの(うろ)の入り口に設置されているのだという。

 何で一括で管理しないのか疑問だったが、直接魔方陣を刻んだりするのは世界樹への冒涜だと考えられているようで、枝のように伸びたり上空の強風にさらされる場所は阻害系のシールドの設置が出来ないようだ。

 よって、転移門の出口を世界樹の(うろ)の入り口に設定することで、別ルートから内部に入れないようにしていると言う。

 それなら内部も変に弄れないのではと思ったのだが、長い年月を経て何本もの幹が根から伸びて一本の幹に見えるように合わさっているとかで、その隙間や枯れた部分を整備しているらしい。

 この(うろ)もそうだが、そう言った空間が世界樹には多く存在しているようだ。


「ねぇシャル。本当に私ここにいて大丈夫なのかなぁ?」

「シエルが気にする事無い。アレクサンドルが許可を出した以上、なんか言われたら全部責任を押し付けてやればいい」


 嫌ってるくせに、いや嫌ってるからか、もう使える物は使ってしまえと言わんばかりだ。


「じゃあ行く」


 そう言うシャルの肩を何となくいつも通り掴んでしまったが、設置式の場合は対になる目的地にしか行かないので、触れている必要が無いのだ。

 それを思い出して手を離すと、シャルはふにゃっと顔を緩ませて俺の手を取る。


「ここでは私が保護者」


 何となく負けた気がしました。


もう寝なきゃって時間なのに、そうなると途端に筆が乗ると言うか勢い付いて止まれない現象って何なんだろう

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