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エルフのお偉いさん



 シエルにトラ子を任せ、区画長の所までフライ飛んで――行くかと思いきや転移門だった。


「そんな遠いのか?」

「空を飛んで行ったら一時間くらいかかる」


 ちなみに飛行速度は幹線道路を気持ちよく走る程度の速度なので、それで一時間と言うと六十キロ前後は飛ぶと言う事だ。


「……そんな遠いのか?」

「区画長、というか区画と言う物は世界樹の根元から時計の文字盤的解釈で分けられている。勿論この世界の時計は時間が違うから私の解釈だけど、十二等分したとして大体二ずつに区切られていて、区画長はそのエリアの世界樹に近い所に住んでいる。だからここみたいな外縁部に近い所からは時間が掛かる」

「って事は昨日のソランジュさんは、その距離を飛んで帰ったのか」

「あの人は転移門の魔法を使える。私はあの人に習った」


 そう言いながら転移門の黒い歪みを出して『はい』と手を差し出してくる。

 俺と千絵と楓子はその手を思い思いに掴み、シャルの先導に従い中に入るのだ。

 出て来た先が半端なく強い強風に曝されていて、慌てて隣にいた千絵に抱き着いてしまった。


「な、なによ……」


 照れていた。


「悪い悪い。えーっと」


 何かしらのデッキの上、その切れ目に向けて歩いてみると、それが切れ目と言うか単にデッキの終端であって、その先には一面に広がる空だった。

 ……おう、すげー高度にいるぞこれ。

 そこでようやく、昨日見た遠くのとんでもなく高い木にもツリーハウスを見た事を思い出した。

 って言うか危ないから手すりくらいつければいいのに、と思ったがフライの魔法がある事だし、エルフとしては手すりなんて無くていいのかもしれない。

 フライはその人の魔力によって上昇できる限界はあるが、降りる分には制限が無い。

 どうやらシャルの話だと、フライはこの地で暮らすエルフとして、最低限扱えなければならない魔法らしい。

 

「これって来る人どうやって上ってんだよ……」

「下に設置式の転移門がある。ほらあれ」


 シャルの指す先には恐らく世界樹の枯れた部分、人くらいの太さのある枝で作られた囲いだ。

 見ようによっては門に見えなくもない。

 そこまでして高い所がいいのだろうか。

 そう思って辺りを魔力探知で見ると、どうやら空から魔力が降ってくるらしい。

 昨日は感じなかったので、世界樹本体に近い所限定なのかもしれない。

 そう、こうして見上げると、視界の全てを世界樹の幹が埋め尽くすくらい近いのだ。


「たのもー」


 シャルは何とも慣れた様子で扉を叩いた。

 ここまで来るとツリーハウスと言う規模ではなく、巨木の上に豪邸が乗ってる感じになるのだが、建物自体は日本建築に近い気もする。

 和を感じる作りと言う程でも無いのだが、海外のツリーハウスやログハウスと言った物よりかは日本の現代で『無垢の木をふんだんに使ったこだわりの物件です』みたいに紹介されてそうな作りなのだ。

 何だろう、板とかも磨かれて艶が出ているし、工法とかそう言う部分が『っぽい』のかもしれない。


「あらシャル、そんなすぐ来ないでもいいのに」

「すぐも何も丸一日経ってる」

「それくらいはこんなオバさんでも覚えているわよ」


 そう言ってソランジュさんがこっちも見て『いらっしゃい』と迎えてくれた。

 なんか昨日と比べると違和感ある。


「えーっと、あのドワーフの子はお留守番?」

「そう」

「それが無難かもしれないわねぇ。今日は本部の人も来てるから」

「また面倒な」


 シャルまでついさっき俺達がしていたような超絶やる気の無い顔になってしまった。


「本部って?」

「世界樹を管理したりエルフ全体を取りまとめる所」

「なんか思った以上にエルフってシステマティックに生活してるんだな……」

「違う。そうでもしないと何もしなくなるから形式的にそうしてるだけ。管理しないとと思う人がいるから、エルフの社会は成り立ってる」


 考えてみれば何となく感じていた違和感が頭の中で形になった。

 セシールさんも意外と言うと失礼かもしれないがちゃんと動くタイプの人っぽいし、ソランジュさんだってそうだ。

 案外エルフって人間が思っているよりかはちゃんとしてる種族なのかもしれない。

 いや人間が思っているよりかと言うか、俺が人から聞いたイメージが酷かっただけなのかもしれないけど。

 そう考えながらソランジュさんの案内に従って区画長宅を進むと、広い空間に出た。

 建物の中も上質の木で作られていて、シャルの実家が掘っ立て小屋に見えるくらいだ。


「あなた、シャルロットが来ましたよ」

「おお、来たか」


 どうやら室内に吹き抜けがあるようで、天から降り注ぐ魔力をロッキングチェアに座りながら浴びているようである。

 それもパっと見で円形に十脚配置されていて、どれも誰かが使っている。

 つまりそれだけの人数がロッキングチェアでゆるゆると日光浴ならぬ魔力浴をしているようなのだ。

 これって雨の日は大丈夫なのかと思ったが、どうやら天井が開閉出来るっぽい。

 それならば入り口のデッキでやればいいのにとも思ったが、上空の吹きさらしよりも室内で壁に囲われていた方がいいか。

 俺達は楓子のシールドがあるから直風に当たらずに済むが、普通は寒いはずだ。


「アンセルムおじさん、久しぶり」

「お前はいつ見ても小さくてかわいいなぁ」


 区画長――アンセルムとシャルが呼んだ人の横まで行って挨拶すると、手を伸ばしてシャルの頭をぐりぐりと撫でていた。

 他のロッキングチェアに座る人達も年齢不詳ではあるが恐らくそれなりなのだろう。

 ゆるゆるとしていたエルフたちは一様にシャル見たさに顔を上げ、その表情を綻ばせていた。


「結婚したと言うが本当なのか」

「うん、私の旦那のトモヤ」


 その言葉に空間に棘が生えたかのような威圧感が。


「初めまして。人間の智也です」


 なんかめっちゃ見られていると言うか睨まれていると言うか。


「後はそっちに居るのがチエとフウコ。どっちも勇者特性持ち」

「千絵です」

「楓子です、よろしくお願いします」


 二人揃ってぺこりと頭を下げた。

 だが二人にはさほど興味が無いのか碌に見もしない。


「まだ成長しきっていないのにどうしてなんだ」

「めぐり合わせ」

「全く、今回はしょうがないが彼が死んだら次こそは同族と結婚してもらうからな」

「や」


 どうやらシャルが言っていたように、エルフは一生で何度か結婚するのが普通のようだ。

 それにしてもシャルのマイペースさよ。

 それを感じたのかアンセルムさんは話を進める事にしたらしい。


「それで最近の人間界はどうだ。何か面白い事でもあったかな」

「王国付近に少し動きがある。王国は私の結婚で少し変わりつつあるけど、魔人の王が建国して人との交流を求めて来た。後、色々あってドワーフとも交流を結んだ」

「それは少しでもなんでもないではないか」


 それが魔人の件なのかドワーフの件なのかはわからないが、アンセルムさんは少し怒気を孕んだ声で言う。


「魔人など人の思い通りになるわけがあるまい、近い将来西の国々は征服されよう。ドワーフもどうせこちらに何か仕掛ける気に違いない」


 この場合の西の国々と言うのは、王国がある地方の事を指しているようだ。

 あの地球儀っぽいのを思い出すと、世界樹からしたら西洋のエリアに当たるからだろう。


「そこはトモヤの功績。魔人の王と友達になってドワーフも地脈に細工してたのバレて殆どこっちの言いなり」

「ん、ん? よくわからん詳しく話せ。ソランジュ、シャルロットにも椅子を」

「この子だけじゃなく全員分でしょうに。シャルロットに呆れられますよ」


 そう言いながらソランジュさんが簡易的な木製の折り畳み式の椅子を人数分持って来ていた。

 丁度パイプ椅子を木製ににして全体的に太く厚くしたような椅子で、工芸品として結構な値段で売ってるタイプの物に似ている。

 他のロッキングチェアでゆるゆるとしているエルフ達は何も言わないが、どうやらこちらの会話に耳を傾けているようだ。


「王国の地下に延びる地脈に魔人の王の魔力が混入しているのは前に言った」

「うむ、聞いた覚えがあるぞ」

「その魔人の王、大魔王が住む城が大昔はドワーフの物で、魔人に追い出される前に色々仕掛けして行ったらしい。地脈の力を魔人の強力な個体に集中させる事で魔人を魔王化させ、その強大な魔力を吸い取って地脈に流す。ドワーフ王国側の地脈を切断して、その先の地脈を大魔王の魔力とちょっとした管理で維持して、切断した手前の地脈の魔力を独占していた」

「そのような魔法聞いた事無いが、事実なら由々しき事態だ」

「どうやらドワーフの崇める神から入れ知恵があったかもって噂。トモヤが今の大魔王とひょんなことで知り合って、地脈の異常をどうにかしないのかって聞いた事で本格的に調査に乗り出し、ドワーフ王国に攻め込んで今回の件が発覚した。そこでトモヤが上手く取りまとめて魔人もドワーフもこちら側につく事になった」

「話だけ聞いてると凄まじいが、まず地脈の細工はどういう物だったのだ」

「上から下に綺麗に両断、王国側の断面をこんがりロースト」


 美味しそうな言い方をするんじゃない、と突っ込む寸での所で堪えた。

 シャルもシャルで淡々と喋る割に、どこか楽しそうだ。


「……それは治ったのか?」

「フウコが類まれな高位のアークプリースト。フルヒールであっさり治した」

「ドワーフからの謝罪と賠償は?」

「ドワーフ製品の安値での販売と将来にわたって強く出て来れない弱味を握った事で相殺してる。むしろ魔人への賠償の方が大変」

「魔人側へは?」

「ほぼ言いなり。こっちもトモヤがドワーフ王国の王女を娶った事である程度の権利は確保しているし、基本的に何かあったら融通を利く事になってる」

「ドワーフを娶ったと言う事は、シャルはドワーフと共に彼の妻になったと言う事か」

「そう。そのドワーフの子、シエルはいい子。じゃなかったら結婚を許してない」

「うーむ」


 一通り聞いたと判断したのか、アンセルムさん以外のエルフも何やらがやがやと意見の交換を始めたらしい。

 漏れ聞こえる範囲だと『魔人が――』とか『あの腐れドワーフ共め』とか不穏だ。


「トモヤよ。お前はよっぽど恵まれた星の元に産まれたようだな」

「違う。これで特性は遊び人で主夫。特性に関係無くトモヤ本人の人柄で解決してる」

 

 どうやら『恵まれた星の元』と言うのは、この場では特性に恵まれたと言う意味だったらしい。

 運命的な意味で言えば恵まれているのか少々疑問だ。


「それで魔人と相対しようなどと無謀な」

「魔人の王とその従者とも良く話すけど悪い人達では無い。仲良く付き合っていく事は可能」

「ドワーフはどうなのだ。長い目で見れば反抗してくるのではないか?」

「千年単位で考えたらわからない。でもシエルがトモヤにベタ惚れしてるから大丈夫」

「ふーむ、あのボンクラのアドリアンが賭けに負けて王国の王を引き継ぐと聞いた時は滅びるかと思ったが、よもやこう言う事になるとはな」

「それに関してはお母さんが私達と一緒に王国に行くから、性根を叩き直すはず」


 と、ここまでこの二人で話してきたが、円形に並ぶロッキングチェアの対面側に居るエルフが声を上げた。


「長年地脈が切断されていたとなればダメージはあるだろう。土地の状況はどうだ」

「多分一部は枯れたみたい。その辺りから急激に魔力量が増えて回復してきているから、少しすれば従来の魔力量に戻るはず」

「枯れた部分を放置するとダンジョン化する恐れがある。我が方には大して影響が無いからいいが、シャルロットがもし国を管理する気があるのなら調査が必要だ」

「地脈管理部の誰かを貸してくれると一番いい」

「ここより東の大海にて大地震が発生して多くの地脈が断絶された。それの調査と補修に向かわせているので余裕はない」

「むー……そんなだからドワーフにも『エルフの地脈管理部はろくに働いてない』って言われる。どうせ暇潰しに必要以上の人数が行ってる」

「それに関しては否定できないが仕方あるまい」

「わかった。帰ったら調査する」


 その話は終わったと見たのか、他からも声が上がった。


「魔人の建国と言うのはいささか腑に落ちんな。奴らは特に纏まる気も無いではないか」

「世界中に存在する魔人の事は知らないけど、王国北の魔人の王は元々人間の勇者。長年ドワーフの罠のせいで城に釘付けだったせいで人間との、というかトモヤとの交流を望んでいる。将来的には国として機能させるべく開発しているけど、もう既に形は整いつつある」

「奴らが好き勝手する可能性は? 奴等とて強い魔力に魅かれるはずだ。将来的に地脈に手を出さないとも限らんだろう」

「魔王が人の貴族以上に理知的で紳士的。トモヤを害そうとしなければ一切問題が無い程に無害」

「害したら?」

「エルフでも気にせず滅ぼしに来る。アレは本質を見抜くタイプ。私達エルフがいなくても世界樹は枯れないし世界的に影響が無い事は察してる」


 そのシャルの言葉にがやがやと騒がしくなり、視線が俺に向いた。

 いやまぁ確かにベスターならやりかねないけどさぁ。

 にしてもエルフがいなくても世界樹は枯れないと言うのは別に不思議な話でも無いと思う。

 元々生命力と魔力の塊であるし、ちょっと管理しなかった程度で何とかなる規模を超えている。

 だからこそ、エルフが管理者だと周知してる事をドワーフは気に入らず敵対心を抱いていたのだと思う。


「ではシャルロットの、同族との結婚の為にその人間を消さない方がいいと言う事だな」

「トモヤに何かしたら私が本部の人間を軒並み宇宙に捨てる。私の転移門の魔法をナメない方がいい」


 ニヤァと気持ち悪い笑みを浮かべて挑発に返していた。

 今度はまた違うエルフが小さく手を上げる。


「我々は今まで、シャルをどうやって同族と結婚させようかと話していたのだが、シャルはその気が無いんだね?」


 今までの三人は大仰な話し方だったが、このエルフは若いのか下っ端なのか、シャルに対しても砕けた口調だった。


「あまり余計な事をするとここに帰ってこない」

「そっか、了解した。でも将来的には考えておいて欲しいな。君みたいに知恵と実力のあるエルフは指導者としても欲しいから」

「その指導者に言われるのは光栄。でも私は神と直接話せる身。世界の理をある程度聞いているからエルフだけに肩入れは出来ない」

「それは仕方ないと思っているよ。でも種の保存と言うのは大事な事だ。それを今後の長い寿命の中で忘れないでいて欲しい」

「わかった」


 他に何か無いのかとシャルが辺りを見回すが、特に無いようだ。

 それを見てアンセルムさんが口を開く。


「ではシャルロットよ。もう少し定期的に帰って来てくれさえすれば、しばらくの間我々は生活に口出ししないと誓おう」

「ん、了解した。でも結婚候補のリストは破棄しておいてほしい。しばらく考えたくない」

「新婚でする話では無かったな。よし、では食事をして行きなさい」

「やる事があるから帰る」

「ぬ、むう……毎度毎度つれない子だな……」


 そう言いながら緩んだた顔でシャルの頭を撫でるのだ。

 この場を観察していて分かった事がある。

 シャルは、同族の中では多分アイドル的存在だ。

 貴重な若い女の子であり、神童で、神と対話も出来る。

 エルフとしても無視できない上に、ずっと子供の姿を維持するものだから年上のエルフとしては可愛くて仕方ないのだと思う。

 エルフにとって子供の姿と言うのは産まれて二年間くらいらしい。

 その後はすぐに中学生や高校生くらいの見た目に成長し、十年から十五年で見た目の成長が一旦止まるようだ。

 この五年と言う長いバラつきは、どうやら外に遊びに行ってる期間の長さが一番の要因のようだ。

 シャルは立ち上がって雑にお辞儀をすると出て行こうとするので、俺達もそれに従って礼をしてシャルの後ろに続いた。

 その後をソランジュさんが付いてくる。


「本部の人間が来てるとは聞いたけどアレクサンドルがいるとは聞いてない」

「あの方も本当はあなたを娶る気があったのよ? 立場上リストには入れられなかったけど」

「歳の差を考えて欲しい」


 多分それが、シャルと砕けた呼び方をしていた若いエルフだろう。


「あの人って偉いのか?」

「世界樹の統括。選挙で選ばれるから大統領みたいなもの。このエリア出身だからたまに世界樹から遊びに来る事がある」

「世界樹からって?」

「世界樹本体の大きな洞に本部がある。王国で言う中央みたいなもの」

「……えーと、つまり現在のエルフで一番偉い人?」

「と言うと少し違う。一番偉いのは千五百歳近い長老」


 どうやら年功序列はあって、それ以外に政治家みたいな役割を持つエルフもいるらし。


「他にも地脈担当の次長と区画統括もいた。さっき色々言ってたのがその二人」

「区画統括ってのは?」

「区画長の上司」


 そのまんまだった。


「うーん、シャルが何となくエルフの中でお姫さま扱いなのはわかった」

「私、神童だから」


 ふふん、といつもの無い胸を張って自慢するが、その神童って自分で言うと痛々しい気もするんだよなぁ。


「シャルロット。そう言うのとは関係なく、私達エルフは皆家族なのです。その家族が最年少のあなたをかわいがるのは当然の事よ」

「そこは可愛い可愛いシャルロットって持ち上げてくれていいと思う」

「勿論可愛い可愛いシャルロットだけどね」


 ソランジュさんもにこーっと相貌を崩してシャルの頭を撫でていた。

 うーん。


「ソランジュさん、昨日と別人みたいですよね……」

「素と区画長の妻の使い分けよ。全くやぁねぇこの若いのは、そんな細かい事言ってたらこの子に嫌われるわよ」


 途中から急に近所のおばさんに切り替わった。


「んじゃね、シャルロット。また近いうちに遊びに来るんだよ」

「あ、言い忘れた。明日世界樹まで観光に行くから、アレクサンドルには面倒だから絶対出て来るなって言っておいて。それとドワーフがいてもちょっかい出すなって。ちょっかい出して来たらドワーフ王国の奥地に飛ばす」

「全く怖い事言うねぇこの子は」


 表に出ると、ソランジュさんの見送りの元シャルが転移門を開く。

 そしてシャルは小さく手を振ると、俺達を連れて中に入るのだ。

 何だかんだ言いつつ、シャルもソランジュさんと話すのが楽しいように思える。

 ここに居ると年相応に振舞えると言うか、元々転生人ではあれど第二の生まれ育った地なので王国と比べても特別なのかもしれない。


 シャルの実家まで戻ってくると、まだトラ子は目覚めておらず完全に脱力した状態でひっくり返っていた。

 いわゆるヘソ天と言う姿である。


「一応寝がえりは打ってるから動けるみたいだよ?」


 どうやらシエルはずっと観察していたようだが、そうやって動いた報告を聞くと尚更ホッとする。


「それにしても早かったね。もっと時間かかると思ってたよー」

「統括がいて面倒だから、さっさと話すだけ話して帰って来た」


 と言う割りにはベスターの名を使って散々脅してただけな気もする。


「そう言えばドワーフの事何か言ってた……?」

「文句は有りそうだったけど、大魔王とトモヤの言う事に従うしかない弱者だって言ったら特別何か言って来る事は無かった」

「言い方は酷いけどトモヤもベスターさんもドワーフ王国の不利益になる事は言わないから、私としても凄くありがたいし助かってるけど……」

「どうせドワーフを下に見てるから、それくらいの説明の方が納得してくれるから楽」


 扱いの酷さにシエルは少し言いたい事もあるようだが、元凶がドワーフだったのでフォローも中々できないようだ。


「俺はエルフがどうとかドワーフがどうとか気にしないから」


 そう言いながらサイズ感が一緒のシャルとシエルの頭をぐりぐりと撫でる。


「うー、トモヤはズルい」

「ドワーフ王国的には弱味を握られていて、私は惚れた弱味で、最近ではコボルトも誑かしてて……。もしかしてトモヤって世界の王にでも君臨するんじゃないの?」

「んなスケールデカい上に面倒な事してたまるか」


 俺は平穏無事に過ごしたいだけなのだ。

 そして、その点においてコボルトの魔王と意気投合出来るのである。


 その後夕食を食べてダラダラとしていたが、ついにトラ子は目覚めず夜も更け、俺達も寝てしまった。

 魔獣化した事による影響がどんなで、そのせいで体にかなり負担がかかった事は想像できるが、一体いつまで寝たままなのかと考えると不安もある。

 まぁとりあえず生きているし、魔獣化したのなら魔力さえあればある程度は物を食べなくても大丈夫だろう。



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