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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
ドワーフ王国編
48/194

間違って教えた犯人は多分確信犯

一話投稿から一ヶ月経ってました。

元々一章分はメモ帳に打ち込んでいての再編集だったのですが、こうもちゃんと連日更新が出来るとは思いもせず。

それもそろそろ途切れそうな感じですが……。

今後ともよろしくお願いします。



 起きて俺がいない事に気づいた所から換算すると一日半と少し。

 夕方に差し掛かった辺りでサクラに迎えに来てもらい、俺とサクラのイメージの擦り合わせをして学校の人気の無い一角に飛ばしてもらった。

 失敗してたら壁にめり込むとかあったようだが、王都の外から徒歩で戻ってくる場合は出て行った記録が無いから面倒だし、サクラの王都での部屋に飛んだらパン屋の人が驚く。って言うか俺との関係を隠しておきたいサクラには選択肢に無かった。

 王都の外に飛んで徒歩でも言いわけしようと思えば何とでもなるが、そう言ったことが後々突っ込まれる要素にもなるし、学校の一角が一番無難だったのだ。

 最初は寮のベランダでいいかなと思ったのだが、集中して魔力探知してみたらシャルが外に出ていたようなのでやめた。

 どうやら俺のこの魔力探知は、魔力探知と言うよりも上位の魔力捜査の広範囲版らしいとの事。

 知覚エリア内の異常を察知する事を魔力捜査と言うようなのだが、異常ではなく細かく識別出来てしまっているので事実上更に上位にあたるのでは、と言うのがフローラさん談。

 そもそもベスターの城から王都まで細かく探知できる方が異常で、魔人でもベスターやフローラさんクラスで無いとそう言った探知は出来ないと言うのだから、ここに来て俺の能力開花である。

 そう考えると転移門の魔法って、サクラがやっているみたいに安全な地点を確保してやる方が本当は無難なのだろう。

 シャルが気軽に転移門の魔法で移動する物だから、あんまり深くは考えなかったのだが。

 転移門の魔法は飛んだ先のイメージと魔力探知で安全かの確認ができないとならないので、シャルの探知能力をサクラは警戒していて王都では気をつけているらしいが、多分シャルは安全確認程度で詳細な判別は出来てないと思う。

 出来ていたらシエルと二人の時に絡まれた事も察知してそうだし。

 で、王都に戻って部屋に帰るなりご立腹な千絵と楓子に『そこに正座』と言われ、部屋に入ったすぐそこでシエルと仲良く正座するハメになった。


「どこに行ってたの? 怒らないから早く言いなさい」


 既に怒っているんですがそれは。


「その、色々あってドワーフ王国に……」

「どうして……どうして私達に言わないの?」


 楓子は俺を見た瞬間から半泣きで、正直ほんと済みませんでしたと床に頭をこすりつけた。

 そこに来てようやくシャルがベランダから部屋に戻って来て、俺達を見ると無表情で見下ろしてくるのだ。


「激おこカムチャッカ半島」


 惜しい。


「ドワーフ王国に行ってたんだって」

「なんで」

「その、地脈の異常がどうのって話があって、とりあえず魔力探知なら得意だから俺が見るだけ見て、何か問題が有りそうなら助けを呼ぼうかと……」

「どうして最初から呼ばない」

「ほら、一応勇者って変に動かせない戦力だし、相手がドワーフ王国となれば場合によっては貴族の反発を受けかねないし、そこで貴族から疎まれてる俺が何しても王国のマイナスになる事じゃなければ問題無いし……」


 思いつく限りの言い訳をしてみたが、一応シャルとしては否定できないらしく無表情のまま見下ろしていた。


「それで結果は」

「実はドワーフが地脈に細工してて、魔力を独占してました」

「ごめんなさい」


 シエルがごつんと頭を下げた。


「いやシエルは知らなかったんだ。で、王国側に来てる魔力がなんで大魔王の物だったかって問題が――」

「なんでトモヤがそれを知ってるの」

「魔力探知だけなら得意だし」


 これだけは胸を張って言える。


「どうやら大魔王の城に大昔ドワーフが仕掛けた魔法陣があって、そこで魔力を吸収して地脈に送ってたらしい」

「なんで大魔王がわざわざそんな事するの。壊せばいい」

「そこはほら、大本は多分自分達の土地の魔力が干上がらないようにとかって理由だったと思うんだけど。って言うか壊されてたら王国干上がってたから」


 ここからが問題だ。


「今の大魔王って、元々王国発の元勇者なんだよな。前の魔王を倒したら仕掛けのせいで大量の魔力が魔王に変質させちゃうらしくて、元々勇者として強かったせいで凄い力の魔王になっちゃったとかで」

「――初耳」

「そこはアドリアン陛下の記憶頼り。三百年くらい前の話らしいし」

「後で行く」

「だから大人しく地脈の維持をしてくれてたみたいなんだけど、解決の道が見えたので、さーどうしようかって所なんです」


 後はみんなの良心に掛けるしかない。


「楓子にお願いして地脈をヒールで繋げれば、大魔王が城から解き放たれる。それは考えようによっては世界の危機かもしれないけど、三百年地脈を維持してきた実績を考えればいいと思うんだ」

「魔人は信用してはダメ」 

「元勇者でも?」

「魔人に変質したら心も変わってしまっている可能性が高い」

「あれだけの化け物な魔力、地脈に注がなくても自分の領地くらい維持できそうなのに?」

「それは予想であって実際どうだっかわからない」

「俺がお願いしてるのに?」

「……トモヤが何を見たのか知らない。でも魔人は信用できない」

「俺の恩人でも?」

「どう言う事?」


 もうこの際だ。

 シャルを納得させる為なら全てを使おう。


「俺がブライアンの転移門から放り出された先、実はその大魔王の城でさ。普通に大魔王と一晩過ごして、従者の人に王都近くまで送り届けて貰ったんだよな」

「なにそれ」

「今回の地脈の件も本当はドワーフ側じゃなく魔人側に俺が何とかしないのかって言った結果で、魔人がドワーフ王国に侵攻するってなったのも俺のせいで、とりあえず被害ゼロで済ませたかったのと地脈の解決をしたかったから、シエルを使って――」

「違うの、私は私でチエとフウコに魔人討伐をお願いするつもりで王国に来たの。トモヤから話を聞くまでは知らなかったけど、私やドワーフ王国も色々責任取らなきゃいけないの。だからトモヤを責めないで」

「まぁとにかく色々あって、ドワーフ側が地脈の細工と城の魔法陣の事をゲロったので一応一件落着、後は地脈を治しましょうね、って所まで来たんだ」

「……地脈の維持は大事。しなきゃ駄目」

「なら」

「でも魔人は信用できない」

「じゃあ行こう」


 もうそれしかない。


「実際会って話そう」

「これ以上魔人と関わってはダメ。何があるかわからない」


 これは埒が明かない。


「千絵と楓子はどうだ」

「うーん……。智也の言う通りなら、会うだけ会ってもいいかなとは思うけど……。その感じだとシエルは会ったんでしょ?」

「私もちーちゃんと同意見かなぁ」

「会ったよ。化け物みたいに凄い魔力を持ってたけど、人格者だったと思う。後トモヤと凄く仲良し」


 シャルの無表情が不機嫌に変わりました。

 ロリっ子の拗ねた顔じゃなくてマジギレな顔ってレアすぎるだろ見たくねえよほんと怖いからごめんなさい。


「とりあえずシェリールの親父さんに会いに行こう。陛下がベスターの事を知ってたら多少の糸口になるかもしれない」

「待って。ベスターって名前は知ってる」


 糸口ありました。


「昔いた凄い勇者。スズウキ家の勇者の次の代に来た勇者で、その強さから魔人討伐を命令されて帰ってこなかった人」


 流石勇者関係の担当をしているだけあって、歴代の勇者の知識はあったらしい。


「……とりあえず聞いてくる。トモヤも行く」

「あ、はい」


 シャルはその場で転移門の魔法を使うと、俺を引っ張って中に入った。

 出た先は王城の一室で、それも何やら書物を読んでいる王の真横だった。


「おお、シャルロットか。どうしたんだ急に」


 最近は割と俺と会う機会もあるからか、俺の存在に気づいて声を上げて驚くほどでは無いが目を丸くしている。

 元々政治とかにやる気が無い人なので、王城では大体こんなプライベートを送っているとは聞いていた。

 これで転移門の魔法が使えたら世界樹に帰ってしまう所だが、幸いにも使えないので城の中に閉じ込めているとシャルは言っていた。

 これで世界樹になんて帰られたら、どこかに隠れて一生戻ってこなそうだとも。


「ベスター、覚えてる?」

「ベスター、ベスターか。あの記憶喪失の勇者だな。名前が無いのも不便だろうと思って私が名付けたから覚えているぞ」

「ベスターが大魔王だった。と言うか大魔王にされていた」

「なんと。確かに奴が行った後に魔王の力が増したようだが――」

「魔力の質も変わってたはず」

「そうだったかもしらぬ」


 シャルがグーを作って自分の父親の腕をガスガス殴り始めた。


「気付こうと思えば気付けたはず」

「そこまで探知が得意では――」

「トモヤに王位を譲ってもマザーツリーには帰さない。任期まで城に居て貰う」

「そ、そんなぁ、なぁ、シャルロット、私に何の恨みが……」

「仕事をちゃんとしない罰。トモヤ、帰る」


 そう言うと再び転移門の魔法で寮にとんぼ返りだ。


 まさか行ってすぐ帰ってくるとは思ってなかったようで、シエルも正座を解除され立ち上がっていた。


「おかえり、トモヤ」


 あれ以来シエルは前以上に俺に懐いていて、正に旦那の帰宅を喜ぶ若奥様みたいだった。

 その雰囲気を察してか千絵と楓子が首をかしげている。


「陛下の責任ある。……仕方ないから会って確認する」

「それは良かった」

「でもどうやって? 私は行った事無い場所には行けない」

「娘が王都に社会勉強に来てるんだけど、そっちで何とかしてもらう」

「大問題。王都に魔人が紛れてるなんて……」

「事ある毎に俺の周囲を警戒してくれてたりしたらしいぞ。父親の友達だからって」

「……他に秘密にしてる事あったら全部言う」

「特に無いと思うけど――あっても個人のプライバシーに関する事になっちゃいそうだからなぁ」


 サクラの事は黙ってた方がよさそうだ。

 発覚したら多分学校に入れるとかして目の届く範囲に置きそうだが、一王国民として生活するサクラにとっては迷惑でしかなさそうだし。

 シエルと二人でいた時に絡まれた件に関しても、今更ほじくり返してもしょうがないので黙っていよう。何やら脅してくれたらしいけど。


「何かあったら怒る」

「ちなみにカムチャッカ半島って俺達の世界にあった地名だからな……誰に教わったか知らないけど」

「むー……」


 やっぱり普通に怒られるより、今みたいに頬を膨らませてぷくーっとしてるシャルがシャルらしいと思うんです。


 その晩、様子見に来たサクラに事情を説明し、そのままサクラの姿も気配も消えた状態で転移門の魔法を開いてもらった。


「今すぐ行く。ベランダに出て」


 まさかそんな話が早いと思っていなかった四人だが、急げ急げと急かしてサクラの探知すらさせない間に転移門を通った。

 幸いだったのは皆して風呂もまだで、俺とシエルは普段着で他の女性陣は制服だった事だ。

 これで着替えだなんだとワンクッション置いてしまったら、恐らくサクラの存在に気付かれてしまう。

 サクラの部屋に出て来たが、先にサクラにはベスターとフローラさんに話をする為に行って貰い、俺が四人を食事をした時の大部屋まで案内する。


「うわー、おっきいねぇ……」

「ちょっと楓子、良くそんな気の抜けた事言えるわね。ここ凄く魔力濃くて私達の魔力ですら飲まれてるわよ」

「うーん、地脈の魔力が濃くなった感じだから、私はそこまで怖くは無いかなぁ……。智也君の友達だって言うし」

「智也の男友達でマシなのいた事ある? 全員私か楓子狙いだったじゃない」

「あは、ははは……。そうだったかなー?」


 初耳です。

 男の友情なんて女の前じゃかくも無残な物だ。

 まぁ、多分それでアタックして振られるから、俺の傍から男友達が減ったり近づいて来なかったりしたんだと思うけど。


「シャルもそんな警戒しなくて大丈夫だから」

「うー……」

「そう言えばお父さんが、この城が元々ドワーフの城だったって言ってたけど、確かにドワーフの仕事だよこれ」

「わかるのか」

「うんー、ドワーフ王国でも一級の職人って、やっぱり作品にそれらしさが出て来るからね。この手すりとかも似たのがあるし、そのガラスもドワーフ製だと思うよ」


 吹き抜けになってるホールの正面を指さす。

 そう言えばガラス製造もドワーフがやっていた事を思い出し、大きなガラスや枚数の多さを考えるとドワーフが絡んでいても不思議じゃないなと思う。


「ドワーフって地中にいるからそう思われないんだけど、建築資材なんかも作ってるんだよ。質がいいから取引先の国の王宮とかで使われてて、私が西の国に行ったのもそれの視察の付き添いだったんだー」

「そういや王国の人間もシエルも西の国としか言わないけど、国名無いのか?」


 シエルから話が出るまでは、最初の内に王国と戦争してた国程度に触れられたくらいで、特に国交も無いので放置していた。

 と言うか当初は翻訳の魔法札の関係かと思っていたのだ。

 で、聞いてみてわかったのが、知らなかったのは俺だけっぽい事。

 千絵も楓子もマジでって顔をしてらっしゃる。

 ……交友関係の狭さが出るんだよなぁ、こういう所に。

 一応次期国王とかって話もあって政治の世界に片足を突っ込みかけているが、国交が無い以上、何かちょっかい出されたって話が新たに無い限りは中々出て来ない国なのだ。

 千絵の極大サンバースト絡みでちょっと話があったけど、あの時はまだ片足突っ込んでない頃だし。

 あるとすれば教皇猊下の実家が元々は西の国からの亡命者だったとか、シエルが西の国に行った事があるとか、その程度だった気がする。


「あそこは特殊」


 シャルが面倒くさそうに言う。


「元はポルセイン共和国と言われてた。でも内紛で分裂して、今は休戦で落ち着いてはいるけど既に国名は無いから西の国って言われてる。それもただ単にこの大陸で最も西にあるから。あそこは王国を叩く時だけ団結するから面倒」

「でも一応代表みたいな所はあるんじゃないのか? こないだシェリールが菓子折りと言う名の世界樹の枝を持って行ったんだろ」

「一番大きな公爵領。あそこに話しとけば勝手に伝わる。土産物の争奪戦も」


 穏便に話を済ましに行きがてら、遠回しな嫌がらせだったらしい。


「はい……、無知で済みませんでした……。でも、シエルはそこを見て人間族の暮らしに憧れたんだろ?」


 と言う事になっていたはずだ。


「うんー。やっぱり外の生活っていいよねー」


 ざっくりし過ぎていた。

 こいつ、勇者の事が無ければ西の国でもよかったんじゃないのか。

 一行は階段を下りて廊下を進むと、大部屋の前で一回立ち止まった。

 中にいる。

 そう思ったらフローラさんが出て来た。


「お待ちしておりました。トモヤさんとそのお友達の方々」


 そして美人さんが微笑を浮かべて恭しく頭を垂れるのである。

 それが魔人である事を知らない千絵と楓子は、フローラさんに面食らって固まっていた。

 そして魔人である事を知ってるシャルですら固まっている。

 ベスターの魔力のせいでわかりにくいが、サクラの魔力が俺達が入った後に部屋から出て行ったので、恐らくこれで帰ってしまう事だろう。

 こちらにシャルがいる以上、一回来てしまえば行き来可能になるのはわかっているはずだ。


「さっき振りで少し驚いたが、連れて来る事になったと言う事はそれなりに話が進んだと言う事だな」


 中に入ると、多分四時間ぶりくらいのベスターが定位置に座っていた。

 俺は前と同じくその脇に座り、他の面々もフローラさんに案内されてこっちに来ると、流石にベスターの隣は怖いのか俺の座る側に座ってゆく。


「進んだと言うか、白状して説得しようとしたら魔人を信用するなって言われちゃって、じゃあ直接会おうって話の流れに」

「それも仕方あるまい。魔人と言うのはそれだけ人間からすれば異質なモノになってしまっているのだ」

「そう言えば、ベスターからドワーフ側への要求ってあれから決まったのか?」


 帰るまでその手の話をあまりしないで、普通に雑談してたら時間が過ぎてしまっていた。


「流石に人間に戻せと言った所で不可能であろうからな。して――」


 しまった。


「悪い悪い、話し始めると止まらなくてつい。シエルは知ってるから、その隣が千絵、楓子、シャルロットだ」

「そこの二人が私を倒せるかもしれない勇者か。ふむ、まぁ私が殺される気であれば倒せるだけの力はありそうだな」

「殺される気が無かったら?」

「まだまだ若い者には負けぬよ」


 俺から見ても、魔力的にはベスターとは並び立てない。

 二人が本気を出して戦ったとしても厳しそうだが、ベスター側にフローラさんが加わったら勝ち目は無いだろう。


「さて、つまるところ地脈の接続に関する事だと思うが」

「そう。楓子が規格外のフルヒール使いだから、多分簡単に治せるはずなんだ」

「それは期待させられるが、別段回復してもらわなくても構わない」


 そう言うベスターを、『こいつ何言ってんだ?』と言う顔で見てしまうシエル以下四名。


「まぁ、元々地脈自体は時間が経てば勝手に繋がるって話だからな。百年くらいかかりそうだけど」

「そう。解決の糸口が出来た以上、急く気持ちもあるのだが待とうと思えば待てなくもない。繋がる前にドワーフ側が約束を反故にする可能性や、何らかの外的要因で繋がらない可能性はあるが、そうなった場合は私以外が黙っていないので何とかしてもらわないと困る。私とて、本気で怒ったフローラを止められる気がしない」

「俺も絶対怒らせないと心に決めたよ……」

「あらいやですわ、旦那様もトモヤさんも」


 おほほほほ、と口に手を添えて上品に笑うけど目が笑って無いんだよなぁ。

 とは言えそうなった場合、もうフローラさんに任せて恐怖政治によって解決してもらった方がいい薬になると思う。


「まぁほら、さっさと治るんであれば、俺としてはその方がいいと思ってる。何ならドワーフ側もさっさと終わらせた方が気が楽になるだろうし」

「うむ。我が方ではアークプリーストが居らぬが、フローラのヒールならそれなりの年数で繋がる事だろう。なのでフウコと言ったか、魔人に関わりたくなければ構わん。だが、トモヤとの交友は許してもらいたい」


 千絵も楓子もシャルも、恐らくさっさと治せと言う話になると思っていたのだろう、ベスターからの提案にお互いの顔を見て『予想外だ』と言うようなリアクションをしていた。

 俺も地脈の回復に関しては最悪放っておいても繋がるとは言われていたので、駄目なら駄目で何とかなるだろうと考えていた。

 でも友達としてベスターを早く解放させてやりたいし、それには楓子しかいない。

 どうやらフローラさんのヒールも魔力量に任せて回復量だけはあるらしいのだが、アークプリーストのフルヒールと言うのは復元能力だけで言えば別格らしい。

 元々楓子にお願いするつもりだったが、そんな話を聞いたら尚更楓子にお願いするほか無く。


「トモヤをどうする気」

「どうも何も、トモヤは友人だ。友人ならば交友を持ちたいと思うのは当然であろう」

「あなたのような強大な力を持つ魔王が、力を持たないトモヤを友人に?」

「力の有無は関係無かろう。まぁトモヤの魔力の質がいい事は認めるが」

「何かに利用する気では無いと」

「トモヤにはすまないが利用するだけの魔力量が無いではないか」

「取って食うとか」

「これでも私の好物は、この土地で育った野菜なのだが……」


 あれは美味いからよくわかる。


「……ベスター、貴方は王国を恨んでいないの?」

「何故かな」

「魔人討伐の命令が無ければ魔王になる事も無かった」

「ふむ、確かに考えようによってはそうだが、勇者である以上命令されても仕方なかったのだろう。何より私には記憶が無く、つまり自分と言うものが無かったのでな。あの時は言われた通り動くほか無かったし、魔王になってからもこの城から出れない以外は幸せな生活を送っていたのだ。別段王国を恨む事も無い。縛り付けられている元凶が分かったのだから、それを何とかしようとしただけだな。――いや少し嘘をついた。私はトモヤと出会い、普通にトモヤと交流を持ちたいが為に外に出たいと願ったのだ」


 シャルの疑問を聞いて、つまりシャルが一番恐れていたのはそれだったのかと言う事が分かった。

 勇者の扱いは王国の責任だし、それによって魔王にされてしまったのなら王国を恨んでいても不思議では無い。

 色々知ってからは魔人云々よりもそっちの方が気がかりだったようにも思える。


「……わかった。トモヤの言う通りにしていい」

「じゃあ楓子は?」

「私は智也君を信じているから、やってくれって言うならいいよー」

「千絵もいいかな」

「私は元々智也の提案に沿う気でいたから。勝手な外泊に関しては一晩掛けてゆっくり話し合う必要があると思うけど」

「それに関しては私も済まないと思っている。以前より、半日から一日でいいから遊びに来れないかと言う打診をしていたのだ。事情が事情だけに説明も出来ないだろうし、トモヤを散々困らせてしまっただろう」

「それに関しては今回の件があってよかったと言うか何というか、まぁ無事丸く収まるならいいんじゃないかなぁ?」

「トモヤ」

「智也君」

「あんたね」

『後で説教』


 それはもう滅茶苦茶怒られました。



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