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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
ドワーフ王国編
44/194

一名様ご案内 その1

8000文字くらいだから一話として上げちゃえーと思ってたら、加筆修正してる間に1万2000文字超えたので分割しました。

個人的に一息で読んで疲れないのって6000文字くらいなんで、大体その程度~1万文字弱で区切ってたりします。



 パーティーからしばらくして、学校でちょいちょい話しかけられるようになってきていた。

 どういうことか聞いたところ、どうやら適性が遊び人でも人間性的には大丈夫だろうと言う判断が出たとか何とか。

 結局家の意向次第なのか。

 いやまぁ、相手が次期国王ともなれば下手な事が出来ないのはわかるけど。

 で、問題が発生した。

 と言うか起こるべくして起きたと言うか、ついにフローラさんがドワーフ王国に侵攻した。

 俺が聞いたタイミングでは既に半日以上経っているようだが、その時点で既にドワーフ王国内部まで侵攻していたとの事。

 サクラはいつものようにやって来て、最早何もしなくても俺が出て来るとわかっている様子で手すりに座って足をぶらぶらさせていた。


「さっきママから聞いたんだけど、今の所特に抵抗は無く進んでるって」

「聞いたって、フローラさんドワーフ王国にいるんだろ?」


 例によって楓子とシャルがお風呂、千絵とシエルは何やら雑談している。


「夜は帰ってくるわよ? 転移門の魔法があるから」

「ああ、なるほど」


 いかに深く侵攻していようが、転移門の魔法さえあれば何てこと無い。

 仮にドワーフが奥へ奥へ誘導し道を塞いだとしても、フローラさんには通じないと言うわけだ。


「入り口なんか魔人が軍団で来てもポカーンとしてたって言うから、意外と知られてなかったみたい」

「そこで慌てずポカーンなのか」

「元々来客は多い国だもの。少しして魔人が来たって大慌てだったみたいだけど」


 それだと、本当に魔人が攻めてくるなんて思ってもみなかった様子だ。


「それで地脈の方はわかったのか?」

「まだだって。明日以降は本格的に戦いになるかもしれないけど、近いうちに終わらせるって言ってた」


 そのサクラの話から、いくつか疑問が湧くのだがとりあえず置いておく。

 と言うか、ほんの少しずつ感じていた疑問が確信に変わったと言えばいいのか。


「ちなみにだけど、本格的な戦闘になりそうな雰囲気なのか?」

「流石に向こうも無抵抗と言うわけにはいかないでしょ。一国家なわけだし、一応散発的にはやり合ってるみたいだけど、足止め程度ですぐ撤退するみたいよ」

「足止めねぇ」


 だとすればだ。


「オッケーわかった。教えてくれてありがとうな」

「別にいいわよ。対価は貰ってるし」


 そう言ってトラ子をモフるサクラだが、当人からしたらドワーフ王国なんて知ったこっちゃ無いのであっけらかんとしている。


「所で、サクラって普段どうしてるんだ?」

「どうも何も普通に生活してるけど」

「いやさ、こないだ街中で魔力探知したらサクラを見つけたんだけど、なんかふつーに生活してるのかなーなんて」

「そりゃ王国民として振舞っているもの」


 それはそうか。


「普通に生活してるとなると、俺からサクラに連絡取りたい場合どうすればいい?」

「噴水広場で大声で呼んでくれたら気付くと思うけど」

「……マジかー」


 それは連絡方法じゃないですよサクラさん。


「普通の王国民として生きてるのに次期国王が訪ねて来たらおかしいでしょ。トモヤの場合魔力も殆ど無いから合図の送りようも無いし、それくらいしてもらわないと」

「じゃあ魔力探知でピンポイントにアタックする」

「来たら殺すわよ」

「は、はい」


 乙女のプライベートに土足で立ち入る事は厳禁なようです。

 って言うかサクラなら俺が近くに来たら気付くだろうに。


「実際噴水広場前でうろついていれば大体気付くから、用があったら来て」

「ああ、やっぱりか」


 そう言うとトラ子を渡して透明化した。

 そこで部屋から顔を出すのがシエルだ。


「ねートモヤ、寒くないの? もう真冬だっていうのに」

「最近分かったんだけど、楓子のシールドのおかげである程度の寒さまでシャットアウトされてるらしい」


 正確には風に当たらないと言うか直風だけシールドに阻まれているかのようで、体感気温がそれほど低く感じないのだ。


「それでも寒いでしょ」

「まぁ、気分転換するのに丁度いいかな」

「フウコとシャルが出てきたからお風呂入りなよー」

「うん」


 多分だが明日以降が忙しくなりそうなので、さっさと風呂に入って早めに寝よう。


 翌日は合同訓練の日だったのだが、最近は大勢対勇者パーティーみたいな形ではなく、要人警護方式で俺の護衛に小数人の近衛兵団と魔法師団が付き、千絵と楓子がちょっかいを出してくると言う形が多い。

 これも恐らく将来を見越しての訓練なのだろうけど、主に魔法師団の物理と魔法シールド重ね掛けと中距離魔法攻撃による牽制、その間に近衛兵団の何人かが切り込みに行って残りは俺の護衛と言う形で進む。

 相手が相手なのでまともにやったら勝ち目は無いのだが、同規模部隊を想定して千絵と楓子が手加減をしているので、意外と形にはなってるし近衛兵団と魔法師団の連携もかなり良くなってきた。

 千絵と楓子の攻め方は毎回切り口が違い、普通の魔法攻撃から始まったり、以前練習していた遠距離で攻撃魔法を発動させて護衛部隊の後ろから攻撃する手法、中距離より先にいるのに足元の地面から魔法が飛んでくる等々の相手が遠くにいるからって安心してたら警護対象が簡単に死ぬ攻め方だったり、勇者の特性フル活用で杖片手に殴りかかって来たりもした。

 この杖攻撃が意外と恐ろしく、多重に張られた物理シールドがバリバリ音を立てて割れていくのだ。


「ごっめ、手加減出来て無かったわ」

「それで殴り殺されたら化けて出るからな……」


 千絵はいくら捨て身攻撃をした所で、楓子の防御魔法が無くとも大してダメージを受けない。

 どうやら無自覚に自分を守る為の防御魔法が発動しているようだが、楓子の各種防御魔法に比べれば大した事無いけど一般的には鉄壁レベルの物らしい。

 唯一の難点は消費魔力が多い事だが、千絵にとっては微々たる量だ。

 メンバーを変えて何度かやった後は、個人戦と言うか勇者のどちらかと一対一での手合わせをした。

 これは近衛兵団からの要望で、『後衛職の勇者である二人なら近距離戦闘でならばある程度渡り合えるのでは』と言う意見があったかららしいのだが、所がどっこいなのである。

 まず先手を取って切りかかっても杖の一振りで振り払われ、振り下ろされた杖はタワーシールドを以ってしても防ぎきれず、踏ん張っても地面をいくらか陥没させた後に潰される。

 先手を取れなかった場合の剣と杖との鍔迫り合いみたいなのも一瞬で、簡単に吹き飛ばされてしまうのだ。

 魔法師団との対魔法戦も発動から威力から千絵や楓子には敵わず、結果として遠近両方で打つ手無しと言う事で清々しい程に納得された。

 学校の戦闘訓練でも、相手をしてくれと言ってくる人はチラホラといるので、光景としてはとても見慣れた物なのだ。

 ただ学生に比べれば威力や耐久力は勿論、胆力や攻撃の精度等の全てで近衛兵団はずば抜けているとは思う。

 単純に相手が悪すぎるのだ。


「やはり勇者と言うのは偉大なのだな」


 先ほどまで奥歯を砕くんじゃないかと言う程に噛み締めて踏ん張っていたツヴァイだが、どう見ても千絵も楓子も手加減しているのでいっそ清々しいまでの力の差を理解し諦めたようだ。


「トモヤ。また後日報告書を持って行く。気付いたことがあったら言ってくれ」

「あ、はい……」


 最初の内こそ連携の悪さや近衛兵団のプライドの高さに問題を感じていたが、今の近衛兵団と魔法師団は普通に強いと思う。

 ただ相手が悪すぎるだけで。

 そこで少し考えているのがとても特殊な模擬戦なのだが、これは下手すると色々な問題が起こりえるのでまだシャルにも相談していない。

 あれ以来様子を見ていないコボルトの集落だが、どうやら近隣のコボルトが集合して暮らしていると言うので、魔王の力で強化されたコボルトと模擬戦出来ないかと考えているのだ。

 これはある種の示威行為であり、コボルトを圧倒出来れば人間の強さを見せつける事が出来るし、戦っていない他の集落にいたコボルトも人間と戦う事で納得してくれないだろうかと言う思惑と、あの時大敗した近衛兵団と魔法師団が本来はどの程度戦えたのかを実感してもらう為だ。

 見た感じ連携具合は全く問題なく、普通にコボルトの一団と戦えるだけの練度と地力はあると思う。

 コボルトの魔王は平穏に暮らしたいと言っていたが、人間側はコボルトが大人しくしている分には手を出さないし、合流してきたコボルト側も人間の強さを知れば下手に攻撃してこようとは思わなくなるだろう。

 後はお互い、尊重とはまでは行かないにしても生きてる者同士、上手いことやって行けばいいのだ。


 夕方には全ての訓練が終わり、その場で近衛兵団や魔法師団の人達からの連携や戦術の話に巻き込まれていると、ようやくシャルが迎えに来てくれる。

 俺にそう言った方面の知識を期待されては困るのだが、とは言え剣と魔法の世界なので漫画やアニメで見た戦術は割と使えるのではと提案するだけはするのだ。

 まぁ戦術や戦略が通用しない勇者二人が敵なのだが。

 しかし対モンスター戦を考えるのであれば、単純に強すぎる千絵や楓子が敵と言うのは仮想敵として悪くはないし、対人を考えても一般的な戦術の再現は出来るのでこれも悪くはない。

 後はちゃんと目的と目標を設定し、それに合わせて戦略を練り戦術を考え運用して行く事が大事で、主に近衛兵団のトップであるツヴァイやその付近の実力者に必要な部分だった。


 寮に戻った途端シエルに捕まった。


「ねぇトモヤ。ちょっと相談があるんだけどいい?」


 丁度千絵も楓子もシャルまでも洗面所にいる所で、多分狙ってだろうなと言うのはわかる。


「いいけど、どこで話すんだ」

「えっと、ベランダでもいいかな」

「うん」


 帰ってくるなり足にまとわりつくトラ子と共にベランダへ出ると、ついさっきまで夕方だったのに暗くなっていた。

 まさか今このタイミングでサクラが来ないよなと魔力探知した所、どうやらこの付近にはいなそうだ。

 俺一人のタイミングで話しかけてきた以上、他の人達には知られたくないのだろうとは思ったが、こうも予想通りになるとこの先の展開も予想出来てしまう。


「それで?」

「あのね、……みんなを連れてドワーフ王国に来てくれない?」


 やっぱりか、だった。

 それを本人達に言わないのは、恐らくこれまでの生活の中で、俺がシエルに賛同し千絵や楓子に提案すれば通るであろうと予想しているのだろう。

 そして多分それはその通りになる。


「なんでか聞いていいんだよな」

「うん……。魔人が攻めて来そうだって言ってたけど、昨日遂に攻めてきたみたいなの。でも相手が何を目的にしてるかわからないし、とりあえず追い返すか拮抗して対話できるくらいの状況に持ち込めればいいなぁって」

「まぁ気持ちはわからんでもない」


 少し疑問に思ったのが、魔人側が何を目的にしているかわからないと言った点だ。

 恐らくフローラさんは伝えている。

 伝えないなら実力行使で異常のある地脈のポイントまでさっさと行けばいいし、多少の抵抗をぶち抜けない魔人軍では無いと思うのだ。

 勿論ドワーフの強さもあるとは思うが、魔人は『強い魔力で変質してしまった人』であって、そもそものポテンシャルが違う。

 昨日のサクラの口ぶりでは強引に突破してる風でも無かったので、恐らく伝えた上で無理せず攻略していると思う。


「それ以前に、どうやってそれを知ったんだ?」

「……教えてくれる仲間がいて」


 十中八九転移門の魔法を使える仲間だろう。

 タイミング的にも昨日の出来事だから、連絡の都合上半日から一日のタイムラグがあったのだと思う。

 その伝令役が魔人側の目的をシエルに伝えてない、もしくは知らないと言う事は、地脈の件は本当にシエルも知らないドワーフの中でも最上位の秘密なのだろう。


「ダメ、かな……?」

「ダメじゃないんだけど、シエルの思った形では叶えられないかな」

「どう言う事?」

「俺だけで行く」

「死んじゃうよ」


 まぁ普通に考えたらそうだろう。

 シエルは終始申し訳なさそうだし、俺が行くと言った時は本当に心配そうな顔をするのだ。

 色々思うところはあるのだが、この子自身はいい子だと思うし思いたい。


「あの二人を連れて行ったら、魔人によって最悪あの二人が死ぬ。でも俺一人なら死なない理由があるんだ」

「どう言う事?」

「それは今は言えないし、知っても内緒にしといて貰わないと困る」


 恐らく何も知らずにフローラさんを見れば本気で攻撃するはずだし、フローラさんも自分が死ぬわけにはいかないから下手をすればガチの殺し合いに発展してしまう。

 フローラさんが上手い事翻弄してくれればいいのだが、ガチな戦いに不慣れな千絵と楓子でもその気になったらフローラさんを殺しかねない攻撃が出来てしまう。

 そうなったら、恐らくフローラさんはあの二人を殺す事も厭わないだろう。

 実際会ったのはあの時の一晩だけだが、あの人にもベスターやサクラと言った家族がいる以上は殺されるより殺す方を選ぶはずだ。

 多分そう言った戦いになる前に一回撤退するなりして回避してくれると思うんだけど。


「……助けてはくれるの?」

「勿論。ここしばらくシエルを見てきて、俺の中でちゃんと守りたい人の一人になってる」

「えっ……」


 いや色っぽい話ではなく、普通に仲間としてなんだけど。

 やめてくれ照れないでくれ何か罪悪感が沸々と湧いてくる。


「シエルの仲間の転移門使える人ってすぐ連絡出来る?」

「えっと、一回戻っちゃってるから無理かな。明日の朝にまた迎えに来るんだけど……」


 シエルの口からは転移門の使い手の事を聞いていなかったが、どうやら口ぶりからブライアンのように一日一往復が限界のようだ。

 ドワーフ王国も地脈の魔力に満ちた場所のようだから、それで一往復となると転移門の魔法を使えるウィザードは、ドワーフ王国でも特に貴重な存在である可能性が高い。

 勿論王国でもそれは言えるのだが、ドワーフはどちらかと言えば魔法関係より近接戦闘型の種族なので、転移門の魔法が使える術者を伝令に飛ばす事自体がかなり特別なのではないだろうか。

 それだけ切羽詰まってるのだろう。

 しかし、明日迎えに来ると言う事は、とりあえず今日は何とかなったようだ。


「じゃー仕方ないか」


 ドワーフ王国の状況はどうあれ、こっちも夜のうちに動いておかないとフローラさんとすれ違いになるかもしれない。

 二日目の侵攻具合がどの程度かは知らないけど、ドワーフ側も魔人が相手となればしっかり準備して本気でかからないと駄目な事はわかっているはずだ。

 サクラの話だと初日の時点ではそれが無かったようだから、今日か明日には本格的にドンパチするはずなのだ。

 魔人侵攻の話はあったから準備は進めていたと思うが、それでも時間稼ぎを主体とした戦いをしていたと言う事は、魔人側と真っ向勝負して勝てるとは思っていないのかもしれない。

 シエルが勇者を連れてくると信じているのもあるだろう。

 とりあえず夜中まで待ってくれとシエルには話し、部屋に戻った。

 一応だが、シエルの誘いに乗って千絵と楓子を連れてドワーフ王国に行く事も考えた。

 その場合、サクラに伝えておけばフローラさんにも話が伝わり、遭遇したとしても上手い事やってくれると思う。

 だが、そうなると地脈の異常の話が出たとしても、とりあえず悪とされる魔人の言う事を信用するよりかはドワーフの話を信じるだろうし、俺が違和感があると言って調査を願っても魔人を排した状態での調査になる可能性が高い。

 戦いになった場合、千絵も楓子も突発的な戦闘ではなく落ち着いた状況での戦いではフローラさんも不利だと思うので、魔人を排した形で調査になってしまうだろう。

 そうなるとドワーフ側の口先三寸でいいように話が捻じ曲げられてしまうかもしれない。

 なので、俺は魔人側として事を進めたいのだ。

 そこにシエルが賛同してくれればいいし、してくれなくても地脈がどうなってるのか見れば理解は出来よう。

 俺自身地脈がどういう状況かはわからないが、現状はドワーフ側が何かしてる事がほぼ確定なようなので、この方針でいいと思う。

 それが間違いだったら、それはそれでまた何か考えよう。



実はこの話を含めドワーフ編を最後まで半日で一気に書いていたのですが、先週の残り少ない休日の時間に勢いに任せて書いてたせいで加筆修正で倍くらいに膨れ上がり、後4話くらいかなー? から多分七話で終わるかなー? くらいの状況になっています。

そして加筆修正しまくったせいで最後のチェックにも手が回らずですが、あと数日でドワーフ王国編終わる予定です。

その先も書き進めておりますので、引き続きよろしくお願いします。

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