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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
ドワーフ王国編
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楓子とデート その1



 翌日、楓子のお願いを履行すべく二人で王都中央の噴水広場まで来ていた。

 何ならシャルがこっそりついて来てないかなと思ったが、魔力感知で調べるとシェリールとして王城にいるらしかった。

 こういう細かな感知が出来れば転移門の魔法で座標の固定が出来るらしいのに、生憎と転移門の魔法を理解も出来なければ発動する魔力もありません。

 一応夕方にはみんなと合流してドレスの受け取りをするのだが、それまでは楓子と二人きりと言う事になっている。

 こうして外に出るとこの間のシエルと一緒の時に遭った襲撃を思い出すが、楓子の場合は一般人相手に襲われる事は無いだろうし、何かあっても常時シールド展開なので大丈夫。

 後、心配な事と言えば、こっそりサクラが様子を伺ってないかと言う事だが、ぶっちゃけ見られてても特に問題無い。

 まぁ覗かれて喜ぶような常軌を逸した趣味は無いので、一応周囲を見まわして魔力感知を使う。

 いた。

 いたよ。

 ただ、自分達を監視してると言うよりも、買い物でもしてるのだろうか、噴水広場にある店の中にいるっぽい。

 こっちに気付いているかはわからないが、変な動きも無い事だし放っておいてもいいだろう。


「それで、どこ見て回るんだ」

「色々だよ。私達ってもう四か月くらい王都にいるのに、行った事あるのって数か所でしょ?」

「うん、まあ仕方なくそうなってるけど」

「だから今日はお散歩も兼ねてるの。だめ?」


 楓子に『だめ』かと問われてノーと言える野郎がいたら俺の前に連れてきてほしい。素直に尊敬する。

 それも言い方がダメでも駄目でも無い、多分脳内表記で平仮名なんだろうなーと言う甘く柔らかい響きだ。

 そんなん断ったら天変地異が直撃して塵芥になったって文句は言えまい。

 うん、落ち着け俺。

 その楓子さん、いい加減見慣れた制服姿では勿論無く、この間の買い物で売り物を仕立て直してもらった服のようだ。

 厚手のロングスカートに薄手のコートと言った、まぁ冬だしそんな恰好だよねと言う服装なのだが、それでもこの世界では異質なのでチラチラと視線を感じる。

 服の色味も楓子は暖色を好みがちで、この世界では発色のハッキリした服は高いなんて言われるが、白に軽くピンクが混じったような淡い色合いのコートと、オレンジよりも薄いけどベージュとも違う色味のスカートは、パッと見で質が良く、発色云々の逆を行くがお高い事がわかると思う。

 そもそも淡い色の物が、『高級品は色がハッキリしてる』と言う概念のせいで作られないようだ。

 そもそも服飾の事情を聞いた感じでは、一般流通してる布が荒い物が多いせいで、『ちゃんと処理されたモノ=しっかり染色されて素材の質感がわからないくらいのモノ』が高級品と言う事らしい。

 元の世界にもあったリネンをさらに荒くした感じが平民品質で、同レベルかやや目の細かい物が一般的な貴族品質らしいが、どちらにしても無彩色だと荒さが目立つ。

 だがしかし流通品ではそれが基本なので、染色で誤魔化すようになるの自然だったのかなとも思うが、アンリさんの店の商品の一部は公爵家だって毎回買えないような品質の物だ。

 楓子の着てる服のように色がハッキリしたタイプでは無くても、見る人が見れば貴族が外出着に選ぶ服と同等かそれ以上だと言う事はわかるだろう。

 実際、噴水広場前にはいかにも貴族と言った、カジュアル仕様のドレス姿の女性がチラホラ見えるが、そう言った女性達程穴が開くんじゃないかと言う位に楓子をガン見していた。

 ちなみに楓子さん、服装の色の使い方が偶におかしな事があって千絵に突っ込まれるのだが、それで言うと今回は特に悪くは無いんじゃなかろうか、と言うのが素人の感想。

 コートの中はタートルネックのセーターだが、こっちはしっかりピンクだった。

 と言うか楓子って結構ピンク系多いんだけど、それを着てても嫌味では無いと言うか本人のほんわかふんわりな雰囲気のせいで自然に思える。

 これで千絵がピンクピンクしてたら、お前どうしたんだって言った瞬間に殴られるのだろうけど。

 この二人、この間の買い物でもあったが、たまにお互いの似合う服装に憧れて真似ようとする。これが似合わないとは言わないがイメージからかけ離れすぎるのだ。

 千絵は楓子のふんわり系に憧れを持っているようだし、楓子も千絵のシュッとした姿に憧れを持っているようだが、隣の芝は青いと言うか何というか。

 まぁイメージと違うってだけで普通にかわいくはあるんだけど、同性の友人からはイメージの違いを突っ込まれるようなので、中々本人達の思うようにいかないようだ。


「ちなみに俺はそんなに金を持っていない」

「大丈夫だよー。服みたいな高い物は多分買わないから」

「なら良し。ああ、食べ歩きに関しては十分足りる」

「智也君、私が食べてばかりだと思ってる?」


 結構食べる方だと思うし、俺が寮の厨房を借りて元の世界の料理を再現してるといつの間にかテーブルに居たりするし、否定するのが難しいと思うんです。

 栄養が腹に付かず胸に付く事と、弓道で走り込みやストレッチなんかをちゃんとやってた事で最低限の体は出来ているから基礎代謝も高く、目に見えて太るって事が過去一度も無かった。

 そんな楓子を知る昔からの知人友人達は、『昨日もお腹一杯食べちゃってー』と言う楓子の胸に憎しみを込めた握力をお見舞いするのである。

 ちなみに最も親しい友人である千絵はその点においては諦めていて、『はいはい、それ以上大きくなったら、いい加減完全オーダーメイドになるからね』と呆れていた。 俺としても、それ以上は流石にドン引きなサイズになってしまうと思うので、そろそろDNAに自制を求めておいた方がいいと思う。


「食べないならいいけど。俺が食べるだけで」

「いじわる」

「はい、ごめんなさい」


 楓子は笑いながら俺の腕を引っ手繰って自分の腕に絡ませると、さー行こーと歩き出した。

 うーん、見られる。

 すげー見られる。

 『あれ、次期国王様の』とか『シェリール様の婚約者』とか聞こえる。

 これはこれで俺の暗殺される率が上がってる気がするんだが、まぁ楓子と一緒だし大丈夫か。されたくないけど。

 しかしながら現在、俺の腕に感じる特大の質量のせいでそれどころじゃない。


「あの、楓子さん、腕、腕」


 自分では普通に喋ったつもりなのに、思いのほか片言になってしまった。


「腕がどうしたの?」


 コロコロ笑うと言うよりは内面ににやけが見える。

 こやつ確信犯か。

 よろしい、ならばあえてこのまま行こうではないか。

 楓子のみならず千絵からも時たま行われるセクハラ行為については、こっちが変に反応すると喜ばれる事は学習済みなので、毅然とした態度で楽しむ事が一番である。

 うん、最高。

 でも、普段は二人で何かしら画策してくるんだけど、楓子一人で仕掛けてくるのは中々に珍しい。


「この先の東門の方にね、雑貨屋さんなんだけど色々な国の民芸品を置いてるんだって」

「この国の民芸品がわけわかんなかったからなぁ」


 先日のみんなとの外出で見て回った中にあったのが、主にエルフを模した人形だったり刺繍だったりと、これでもかと言う程エルフに傾倒していた。

 民芸品と言う物自体は、その土地の特産物なんかで作られたりするものだが、この国は昔の戦争以降、エルフの統治する王国として栄えたので、それを考えればエルフを前面に押し出すのもわからなくはない。

 エルフだから世界樹の一部から何かを作る、となると材料費がバカ高くなってそこいらの貴族でも買えなくなるらしいし。

 遥か昔からあるお土産アイテムとしては、痩せこけてない程度の土地ならどこでも作れる麻みたいな植物が原料の織物だ。

 決して質がいいわけでは無いが、ちょっとした袋とかにして売っている店がチラホラある。

 現在一般流通してる布の原料らしいが、こちらは昔ながらの手で縒り合わせて編んだ物らしい。

 それに比べればエルフを前面に押し出したいのもわかるが、なんというか今後の王国運営を考えると先行き不安だ。

 将来的にはエルフじゃなくて俺の顔を刺繍した物が売りに出たりするのだろうか。いや無いな。

 特に最近では、シェリールとして表に顔を出したこともあり、シェリール王女を模した商品と言うのが大量に作られているそうな。


 腕をがっつり絡めとられたまま歩く事十五分程、目的の店はショーウィンドウから異彩を放っていた。

 まず、この王都においてショーウィンドウがある時点でかなり利益を上げている証拠らしい。

 それも現実世界でもそうだったが、ショーウィンドウのガラスと言う物は実はお高いのだ。

 ガラスの原材料はそこいらの砂から得られはするだろうが、それをガラスに生成するのが熟練の職人と補佐するウィザードの卓越な技が必要とかで、透明度が高く厚いガラスを作れるのは王国内では一組の鍛冶夫婦しかいないのだとか。

 これがドワーフ王国だと、シエルの話では量産できる程では無いけれどそれなりの受注が可能らしい。

 ドワーフとエルフの仲が悪くなければ、今よりかは安価で手に入れられるような話だった。

 で、結果的に材料となる珪砂とソーダ灰なんかの確保だけでも一平方メートル当たり金貨一枚は必要で、それにプラスして技術料もついて一般的な商店に使うガラスだと金貨五枚程になるらしい。

 この世界の物価で言ったら目玉飛び出る金額だ。

 そして、そんな額を高いと言う輩がいない理由は、単純に普通の職人では作れない事と製作期間が長いからだ。

 ドワーフだって量産とまでは言えない程度の生産量なんだから、それくらいしょうがないと言うのが一般的な考えらしい。

 ちなみに、通常の家屋で使うタイプのガラスに関しては、普通の職人でも作れるのでお高いわけでも無かった。

 学校や寮のガラスは少し厚手なタイプで、普通の職人が作れる程度の質とサイズだけど金額面では相当だったそうな。

 噂によると、過去に存在したとされる錬金術師と呼ばれる適正があり、錬金術によって色々な物の生成を行い簡単にガラス等の資材が作れるとか何とか。

 それこそ御伽噺的な物で現代には存在しないらしいけど、魔法はそう言った物質の操作を行う事が多いわけで、錬金術とやらはそこら辺に特化したタイプと考えれば無くは無いんだろうなと思う。


「なんか南の国とかにありそうだよね」


 そう言って楓子が指さすのは、ココナッツっぽい実を真っ二つに割って、その中にヤシっぽい植物の繊維でできてる人形を入れた物。

 多分探せば、元の世界の南国辺りに売ってると思う。

 他には木を削って作った人形だったり動物だったり、ちょっとした小物に紐を通してキーホルダーみたいにしたのとか。

 全体的にどこかしらで見た感がある物なのだが、正直置いてあるだけで売れるとは思えないな、と思ったら考えられていた。

 店内に入ってみると、恋愛運上昇コーナーや仕事運上昇コーナー、と言った感じに分かれていて、『この国ではこれをお守りにしていますとか』、『付き合い始めに二人でこれを持つと上手く行くとされています』と言う風に商品毎に説明が書いてあった。


「実際御利益あるんだって言ってたよ」

「うーん」


 木の実に紐を通して人型にした物をカップル同士で持ち合うと上手くいくのか。

 なんかそう言うのも元の世界では実際あったんじゃないかなぁ。

 そう言った商品がわりと目につくように置いてあるが、ざっと見た感じ幅広い年齢に合わせた女性向けの髪飾りやアクセサリーが主力商品っぽい。

 値段もピンキリで、平民でも買えそうな物から金貨一枚するブローチもあったが、多分本体は金だしチェーンも鉄では無さそうだ。


「あ、智也君信じて無いでしょ」

「いやー、なんというか魔法がある以上なんでも有りだとは思ってるけど、こうも自分達の世界でも当たり前にあった風な物を見ると現実に引き戻されると言うかなんというか」

「あ、じゃあ、こうしよ」


 すみませーん、と楓子はチラチラとこちらの様子を伺っていた店主に声をかけた。

 もう六十を過ぎてそうなおじさんというかお爺さんだったので、お茶目でこういう説明書きを付けているんじゃなくて、実際現地ではそう言う風に売っているのだろう。


「これくださーい」


 そう言って、つい今しがた見ていた木の実の人形を二つ持って行った。

 そして会計を済ませると、俺に一つ寄越してくる。


「壊れないように大事に持っててね」


 木の実同士を繋ぐ紐が荒い麻縄の細いのっぽい奴なので、耐久度に関しては非常に不安だ。

 むしろそういう物だからこそ、彼女と同じように大事に扱えよみたいな事なのかもしれないけど。

 ちなみに楓子がこれをチョイスした事に関しては何も突っ込まない。

 どうせニヤニヤされるし。

 と思いつつ楓子を見るとしてやったりな顔ではにかんでいるので、突っ込んでも突っ込まなくても楓子の思う壺だったようだ。

 そりゃそう言ったアイテムをお互い一緒に持っちゃってんだから、嫌でも意識しますよそんなの楓子さん。

 改めて店内をぐるっと見回すと、地球儀みたいな物が置いてあった。

 売り場の棚とは違う場所に置いてあったので備品のようだが、何となくこんな感じ、と言う風に大陸が描かれている。

 自分たちの世界とは全く違うんだよなーと思いながらコロコロと回してみるが、これが意外と多少の類似性はあって、南北繋がったアメリカ大陸からユーラシア大陸っぽい物があり、それと繋がっているのか川で分断されているのかアフリカ大陸っぽいのもある。

 違いは、でかいのだ。

 どれもこれも三割増しくらいのサイズがある。

 本来なら他にも小さな島々がありそうだけど、そこまで正確には描かれていないようだ。

 この地球儀っぽいのを見る限り、この世界は主にこの三つの大陸から出来てそうと言う事。

 実際それが正しいとして、海の面積は陸地の面積よりも狭い事。

 一か所、多分この地球儀に原寸サイズの日本を置いたとしたらここだろうなと言う位置に印があって、どうやらそれが世界樹らしい事。

 この世界が世界樹の種か何かが降って来てリセットされた説があったが、もしそれが本当ならこの世界の日本の位置は世界樹によって壊滅してるな。

 怖い怖い。

 ちなみに王国はイタリア辺りにあるのだが、東の国とは大きな入り江に阻まれてかなりの距離がある。

 南はアフリカ大陸と融合してしまったような地形で、地中海が地図上では外洋から見ると滅茶苦茶奥まった位置にある超巨大な湖みたいなのだが、王国の南にある国の南端とアフリカっぽい大陸の間には高さ数百メートルの切り立った崖があり、そこから海水が流入してくるので、王国東にある海は物凄く特殊ではあるが入り江と言う扱いらしい。

 本来の地中海と似た造りと言えばそうだが、多分面積的には半分以下だろう。

 ベスターの居城は多分ノルウェー付近になるんじゃないだろうか。

 となるとドワーフ王国はスウェーデン辺りだ。

 なんせ元の世界の地球儀では無いので、北欧やイギリスがある辺りは普通に大陸の一つだし、あくまで何となくそんな感じだ。


「何見てるの?」

「これこれ」

「へー、ね、おじさん、この地球儀ってどれくらい合ってるんですか?」


 俺が興味を持ったことに気が付いたのか、店主が近くまで来ていた。


「さぁねぇ。むかーし、各国で世界地図を作ろうって言う話が出て、各々の国の地図を持ち寄って作ったなんて言われてる物なんだよ。ただ、それが本当の情報なのかは話わからないし、結局あちこちで戦争が始まって信憑性に乏しいって事で実際に採用されなかった物なんだ。でもうちの王国付近と世界樹の位置は正確だよ」

「それは何でわかるんですか?」

「それはね、シェリール様がそれを見て各国の場所に当たりを付けて訪問して回ったからだよ。正しい地形なんかはわからないけど、大体こんなもので合ってるらしいよ」

「あいつ良くそんな怪しい情報で行く気になったな……」

「よくわからないけどシェリール様も何か情報は持っていて、この地図がそれなりに正確だと判断されたそうな。ほら、シェリール様もこの間初めて表に顔を出されたくらいだから、この地球儀だって間接的に渡されているから自分も本人からハッキリ聞いたわけじゃないんだよ。どうせなら買い取ってくれないかなと思ったら普通に返されちゃってねぇ」


 自分たちの世界の地図ならまだしも、それをデフォルメしまくった挙句に大陸を大きくしましたって感じの地図じゃ俺には怖くて無理だ。


「何なら買ってくかい」

「……いくらですか」

「一点物なんで金貨一枚」

「また今度来ます」

「残念」


 そんなんに現実世界換算で二十万とかする金貨を使えるかと。

 いや袋一杯に持ってはいるんだけどさ。

 仮に殆ど正確だったとしたら金貨一枚の価値はあるのかもしれないけどさ。



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