この世界の貴族と言う種族
結局、外に出る事も無く三日目に制服が出来上がった。
希望した所で王城の外に出ては駄目と言われていたから通らなかっただろうけど。
何故かと言うと、不意の事故とか起きたら面倒だから動き回らないでくれと言う事だったらしい。
でもさほど暇を持て余す事も無く、水鏡のような据え置き型のアイテムで体をスキャンして病気の有無――つまり健康診断をやったり、このだだっ広い王城を探検して道を覚えたり、美味いんだけど今一何が美味さの理由なのかわからない、つーか食材が謎の料理のおかげで食事の度に大分考えさせられたり。
普段から結構料理をする事があったせいで、素人知識とは言えちょっと気になってしまうのだ。
後は、俺達についている使用人を交えて色々喋ったり。
王城の使用人である彼女達、大体十二歳から十八歳くらいまでの女の子達はみんな貴族の令嬢で、特に王城の中心に近い位置に配属される子は公爵家の本家の子だと言う。貴族の本家や分家と言うのは、その爵位を持った家が勿論本家で、そこから三親等までは爵位の威光を使えるとか何とかで分家扱いだとか。
その為に公爵家ともなれば二桁の子供を作っての政略結婚が常態化し、どこもかしこも近しい親戚同士だと言うのだから驚く。
その仕組みのせいで分家でもデカいツラをする奴がいるらしいが、王国の要職につくのは勿論本家の人間だし、実際に公爵家としての力を持つのも本家だけだ。
既にそのシステムは大量の子供を使っての政略結婚のせいで効力が形骸化しているのだが、元々『自分は公爵家と縁が深い者だ』と言う箔付け程度の物だったので、今の世の中では就職に多少有利な程度だと言う。
それでも爵位持ちの家系では一種のステータスみたいな物で、むしろ分家にすらなれない親戚筋は何かしら問題があると思われかねないようになってしまい、形骸化してるくせに当人達からしたら大事な要素だった。
公爵家自体はこの王都を囲む山々の、四つの関所の外にある領地を治めていると言う。
何故彼女達が王城に勤めているのかと言えば、エルフの王になる前は人質だったらしい。
領地の位置的に防衛線である事は言わずもがな、人同士で戦争をしていた頃は、彼女達を人質にして敵国への裏切り等を阻止しようとしていたと言う。
シェリール曰く、『どうせなら東の海岸線に王都を作れば海産物の流通も多かったのに』と言っていたが、正直その点に関しては同意する。変な家畜の肉よりかは魚の方が個人的に受け入れやすい。
そうして元々人質だった公爵家の令嬢は、今ではステータスであり花嫁修業だとかで、王城で使用人として勤め上げた子の競争率は跳ね上がると言うが、問題は家柄的にも同じ公爵家、もしくは分家との婚姻が多く、ともすれば四つの公爵家は親戚関係で結びつきが非常に強いと言う。
つまり、王城中央付近にいる子達は姉妹であり従姉妹であり、全員が全員を知ってるくらいに狭い世間らしい。
ただ、『貴族と言うのは血である』と言う血統に重きを置く一派が昔から根強く残っているとかで、本家の跡取りに関してはかなり考えて婚姻を結ばされるそうだ。
その考え自体は貴族の在り方として恐らく正統派だと思うが、そもそもがこう言う政略結婚の風習が、昔の戦争当時どこの家も子が何人も死んで、相続のごたつきや後継ぎが全員死んでしまうと言った事があり、貴族家を絶やさぬようにしようと団結した事によるものからだと言う。
初代のエルフの王が、一族の血が他所の家の血と混じって薄くなると反発した事を受け、三親等までは分家として爵位の威光を使えるようにしたとかなんとか。
それじゃあ俺達についてる君は、と聞くと北のハイリッヒ領のハイリッヒ家の十七番目の女の子だと言う。
すげー子沢山だ。
どうやら今のハインリッヒ家はとにかく女子が多く生まれてしまい、その半分程しかいない男子の肩身は非常に苦しいことになっているのだそうだ。
ちなみに俺は使用人の一人として認知していたが、二人は彼女との女子会を通じ、『マリーネ』と名前で呼んでいた。
ぶっちゃけそう呼んでるのを聞かなかったら、俺は彼女の名前を知る事も無ければ興味も持たなかったと思う。
この世界でも何とかアクティブに振る舞ってはいるけど、ネガティブ系の男子高校生では無いがインドアで、極々身内の人間との関係を続けていられればいいやと思う人間なのです。出来れば赤の他人となんて極力関わりたくない。
シェリールに付いてる子は東のスズウキ領のスズウキ家の五女で、神託の巫女に仕える事が出来ると言う事で身も心も差し出す勢いだそうな。
ちなみにシェリールの容姿やプライベートに関わる事を他人に漏らした場合、神託が下って家が取り潰しになるだろうと言われているので、誰もシェリールの事を口外しないと言う。
最早それって神託じゃ無くね? とか思わなくも無いし、神託がどの程度便利な物か知らないが、長期間に渡れば誰かしら漏らしても不思議では無い。
――となると、あの可愛い姿も実はシェイプチェンジによるもので、本来はもっと違う姿である可能性もある。
それこそ化けてブラウンの髪をしていた方が本物だったりとか。
うわー、魔法めんどくせ。
って言うかスズウキ家って、はるか昔に鈴木さんが貴族になったんじゃないかと思ったら、やはり歴史を紐解くと昔の勇者の家系らしい。
シェリールの傍にいる子と言われて何人か思い浮かんだが、その中でもやや茶髪くらいの黒が濃いロングの子が専属だと言われ、そう言えば髪が短い子って見ないなと思った。
千絵や楓子が長い事もあって見慣れているせいか特に気にもしなかったのだが。
どうも話によれば、一般人と貴族の差だと言う。
特に法律等で決められているわけでは無いが、昔からの慣わしらしい。
他にも何かのファンタジー小説にあった気がするが、髪が長いと魔力を蓄えられると言う迷信もあるとかで、それが転じて長ければ魔力が増えるなんて噂もあるらしい。
実際の所、魔法の素質なんかはある程度遺伝するらしく、特にスズウキ家は勇者の末裔と言う事もあって割と魔力が高い傾向にあるらしいし、他の三家も後継ぎは昔から能力の高さも加味されて婚姻をして来たとかで、やはり他の公爵家未満の伯爵家や子爵家や男爵家よりは能力の高い子が生まれやすいらしい。
実際今の魔法師団長はスズウキ家長男らしいし、魔法師団の二割程は四公爵家の人間だと言う。では残りはどうかと言うと各地の能力ある者で、そこに平民も貴族も無いと言うのだから割と家柄には捕らわれないのかなと言う印象だ。
ちなみに近衛兵団の団長は俺達についてるマリーネの兄でハイリッヒ家の次男だと言う。
近衛兵団の方は選民意識が高いとかで、特に公爵家の人間が師団長や隊長を務め、強さよりも家柄で選ばれると言う。
勿論実力には最低限のボーダーはあるらしいが、王族を守るのに平民を使うわけにも行かないと言うのは行き過ぎた考えかなと思いもするがわからなくもない。
とりあえず三日間で仕入れられる情報は仕入れたし、たまにはゲームでもやりながらゴロゴロしたい。
だがしかしスマホは電源を切っているとは言え少量ずつ放電はするし、電源を入れようものなら減りは激しくなるし、そもそもソシャゲは通信が必要なのでこの世界ではできないのである。
はあ。
後やる事は仕立てられた制服を着て最後のチェックをするだけだが、三日と言う時間で仕立ててるのだから果たしてどうなる事やら、なんて思ってたが午後に到着した制服をエントランス近くの部屋で試着したらぴったりだった。
「はぁ? 冒険者育成事業は国を挙げてのプロジェクトだし、今回は勇者が二人もいるんだから下手な物を仕立てさせるわけないでしょう? これでもジャイアントキメラワームって言う魔力が高い変異種のワームの糸を使って作られてる布だから物理耐性も魔法耐性も一級品だし、防汚魔法がかかってるから泥をかぶったって制服は汚れない逸品よ」
「魔法すげえ」
「表地と裏地の合間にそう言った付与魔法の呪文とか魔法陣の刺繍とかがあるから、制服は改造しないでね」
ただ、男の俺ははブレザータイプなのに対して女の二人はセーラー服タイプだった。
何となく元々通っていた学校が男女ともブレザーだった為、俺のを見た時に二人も同じ物かなと思っていたのだが、これはこれで新鮮である。
それも男女で大体色が一緒であろう制服が、この世界ではそう言う統一性が無いのか男のブレザーはベージュでズボンがグレーなのに対し、女子のセーラー服の冬服は紺に白の二本線、夏服は白に紺の二本線入っている割と普通のタイプで、どちらもスカートは紺。
何となく、男はどっかの私立高にありがちなタイプで、女子は昔からの古い学校か女子高みたいなオールドタイプっぽい。
にしてもセーラー服か。
「これデザイナーって異世界人だったりする?」
「よくわかったわね」
「いやだって、ブレザータイプにしろセーラー服タイプにしろ、この世界の服装を見る限り発想無さそうだし」
なんせ僻地はウェスタンで王都ですら中世ヨーロッパ風だ。
それなのに恐らく異世界人は日本人が多いだろうと予想出来る風呂事情もあるわけだし、ファンタジー小説の読みすぎか中世ヨーロッパが好きな人間が異世界人としていないと辻褄が合わない。
これで現地の人が全部考えて作りましたって言うなら、神様とやらは異世界人に頼ったりしないだろうし。
「どう? 私達ってセーラー服着たこと無いから新鮮じゃない?」
「えっと、似合うかな智也君」
「ぶらぼー」
そもそも俺は、高校受験の時に言ったのだ。
どうせならブレザーじゃなくてセーラー服の方が好みだと。
偏差値で選ぶと無かったのだ。
あの時の悔しさと言ったらもう、何なら生徒会長になった時点で制服のデザイン変更を提案してやろうかと思ったが、提案が通った所で実施されるのは数年後だ。
仮に偏差値で選んで女子がセーラー服の学校があったら行ったのかと千絵に聞かれた事があったが、可能性としては無きにしもあらずだと言ったら変態を見る目で見られたのは今となってはいい思い出。
ちなみに楓子は俺がそんな話をしたら、自分が行ける範囲でセーラー服の学校を探したら女子高だったと残念そうに言っていたが、この楓子の行動と言動には少々疑問があった。俺の発言でセーラー服の学校を探したと言う事と、女子高で残念そうにしていた二点だが、これでもし共学であったら受験していたと言う事だろうか。
いやまぁ楓子がそれを選ぶのであれば、多少偏差値が上だろうが下だろうが俺も受験してただろうけど。そうなったら恐らく千絵もついてきたんだろうけど。
俺達三人の微妙な関係性は、こんな風に微妙な面倒臭さを感じさせるものだった。
「それにしてもフウコ、それだけ髪長いと邪魔じゃない?」
「慣れてるから大丈夫。ほら」
そう言って膝まで伸びた髪を垂らしたまま部屋の中を歩き回る。
いつもの楓子だ。
見た目には長すぎて邪魔じゃないかと思われる髪も、長い事付き合った自分の一部なので特に問題無いと言う。
流石にこの世界のシャンプーとリンスは元の世界のとは違うので、寝起きに『うー、髪がー』といつものように纏まらない事に苦しんでいたけど。
そう言えば楓子が延々髪を伸ばし始めたのも、小学校低学年の時に俺が長い髪の子がタイプと言ったのが発端だった気がする。
元々長かった楓子を見て言ったのだが、何を勘違いしたのか延々伸ばすべきだと思ったようで今に至る。
元々ショートだった千絵もそのせいか知らないが伸ばすようになったが、本来非常に活動的な千絵が頑として髪を切らない事には友人一同不思議に思っているらしいのだが、俺個人としてはロングヘア―フェチを自認していたので千絵の友達から聞かれてもスルーした。
さて少々脱線したが、つまるところ今の二人の姿は俺としてはドストライクで、ついついポケットからスマホを出して電源を入れるワンアクションとしばしの時間を使ってまで写真を撮った。
俺の動きを見ていた二人は何をするか察したようで、千絵が楓子の肩を抱いて腕を突き出してピースする。
楓子は楓子でちょっと恥ずかしそうにはにかむ物だから、何というか非常にキュンキュン致します。
「うーん、今後戦闘系の学科もあるから、もし切りたいと思ったら言ってね。私が使ってる美容師を紹介するから」
「うん、その時はお願いするね」
どうやらシェリールとの関係は良好らしい。
俺の部屋でマウントを取った時は正直どうなんだろうと思ったが、学校にいた友達なんかよりも距離感が近いように思える。
千絵も楓子も人並みに人見知りする癖に不思議と友達を作るのが得意だし、人を見る目があるのか二人が仲良くしてる子に悪い子がいなかったので、多分シェリールも大丈夫なのだろう。
俺自身は友達を作るのも苦手だし、この二人や一部の友人を除けば別段関わりたいとも思わないくらい淡泊なのだが。
それで考えるとベスターは妙に馬が合った。
連絡手段は無いが、俺の魔力をトレースしてると言っていたのでベスターからは俺がどのあたりにいるかは把握している事だろうし、大魔王システム関係やら何かあれば連絡を寄越してくると思う。
にしても千絵と楓子は見慣れぬセーラー服姿でシェリールとわいわいやっているが、こう上から下まで堂々と舐めるように見て思う事は、尻のラインがエロい。
見慣れたブレザーと何が違うのかなと高校の冬服を思い浮かべて考えてみたら、ブレザーは上着の丈が長く、作り上腰回りが隠れるが、セーラーだと丈が少し短く腰回りの細さがわかってしまい、腰からお尻のラインがわかるのでエロさを感じるのだろう。
これは大発見だ。
ハッキリ言えば日本男児の思春期高校生よろしく、どちらかと言えば胸に――特に凶悪な楓子がいる事もあり――目が行きがちだったが、これは尻もいいぞ尻。
年を経るごとに腰回りに目が行くなんて親父が言ってて母さんに引っぱたかれてた事を思い出し、なるほど恐らく社会に出れば割とラインの出やすいスーツなんかを見る機会も増えるので、きっと自然と腰回りに目が行くようになって嗜好がシフトして行くんだなと。
ガン見してたら千絵に蹴られた。
「見過ぎ」
「そりゃ見るだろ」
「今まで楓子の胸ばっか見てたくせに、今度はお尻?」
女の目線センサーの感度の高さは下方修正するべきだと思うんです。
「だってさ、何か妙にエロいんだよ。何だよセーラーやっぱ最高かよ」
「まぁあんたが割と変態なのは知ってるから今更だけど、こっちの世界の学校でガン見してて切り殺されないでよね」
「うーん」
再び千絵を上から下まで見る。
こいつ、この歳で出るところ出てる癖にバスケやってるせいか体は絞れているので、セーラーの胸の部分の盛り上がりと腹回りの細さ、そして腰回りからお尻、太もものラインが完璧だ。
そして楓子に目を移すと、恐らく学校でも一部のふくよかと言う言葉では許容されない子を除外して、いや除外しなくてもバストサイズはトップクラスなのに弓道をやってるせいか非常に姿勢が良く、姿勢がいいと腹回りに肉が付きにくいのかトレーニングの成果かほっそりしているので、千絵以上にセーラーを押し上げる部分と細い腹回りの差で裾が腹に触れずに浮いてしまっている。そしてお尻の肉付きが千絵よりもよろしく余計エロい。それでいて太ももが太すぎず細すぎず筋肉質では無いので、これはこれで完璧な出来だ。
うーむ、これはブレザーが増えるのもわかる。
着る子にもよるけどセーラーをエロく見ようと思えばすげーエロく見えてしまう。
もう一回上から楓子を嘗め回すように見ようとしたら、腕で胸元を隠しつつ体を捩って恥ずかしがる楓子さんがいらっしゃいました。
それはそれで物凄く可愛らしいです、はい。
「ヤバいなこれ。オッサンと言う人種が犯罪に走る気持ちが良くわかる」
「と、智也君、見過ぎだから、見過ぎだからー!」
「はい、楓子きをつけ」
反射的に手を下ろして直立してしまう楓子さんマジ天女。
再び上から下まで嘗め回すように見た俺は、その場で手を合わせて拝んでしまうのだった。
ちなみに千絵にはしこたま殴られた。
「うーん、フウコにはこれ上げるわ、多少マシになるでしょ。一応冬用だから後で渡す予定だったけど」
あんまりにも俺が見る物だから、シェリールがどこからかピンク色のカーディガンを出してきた。
「ありがとー、本当にありがとう」
「うーん、残念」
追加で楓子にもポカポカ叩かれた。




