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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
住めば都の異世界生活編(自分を除く)
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女子がする覗きは堂々と



 戻って来た二人を引き連れ、先頭のシェリールが城内を練り歩く。

 二人が使っていた客間から接見した玉座の間とは逆方向に行ったかと思えば再び上がって下がってで本当に迷路みたいな作りをしている。

 しばらく歩いていると見覚えのある広間、さっき最初に通ったエントランスホールに出た。

 さっきは直進して玉座の間に向かったが、今度は左側から出て来て右側へ向かう。

 ほんとどんだけ練り歩くんだか。

 と思ったら割とすぐにシェリールは立ち止まり、「ここよ」と言って扉を開く。

 中は普通の個室だが、辺境の村にあった水鏡のような物が置いてある。

 水鏡の構造自体は似たり寄ったりだが本体自体のサイズが大きい。


「使い方は一緒よ」

「んじゃ俺から」


 どうせ結果は見えてるし。


「えーっと、遊び人、主夫。よかったじゃない一つ増えたわよ」

「……主夫? え、主夫?」

「遊び人で主夫とかヒモとして最高じゃない。何、家事が得意なの?」

「まぁ両親共働きだったから必要最低限は」

「あらそう」


 え、そこは主夫じゃなく勇者じゃないの?


「はい次。チエね」

「はいはい」


 千絵は流石と言うか復活が早く、もう普段通りの千絵に戻っていた。


「えーっと、アークウィザード、勇者、ユニークスキルが山ほど。物理攻撃も魔法攻撃も強化されてるし防御系も万全だし、そこらの低レベルモンスター程度なら拳一つで倒せるわよこれ。そして更に上乗せで神の加護ね。これはもうチートだわ」


 呆れながらに言いながら、小声で『神の加護とかジジイ絶対贔屓してるじゃない』と。


「次はフウコね」

「……はい」


 こっちはまだ完全復活には時間がかかりそうだが、移動中もずっと掴んで皺だらけの俺の裾もすぐに放してくれるようにはなった。

 何なら楓子を抱きしめてやりたいくらい申し訳なく思っているけど、それはそれで色々問題発生と言うか、千絵に後ろからつま先を立てて股間を蹴り上げられる姿が容易に想像出来てしまって行動には移していない。


「えーっと、アークプリースト、勇者、ユニークスキルの数はチエより多いじゃない。攻撃系も防御系も万全、こっちも神の加護、その上神の慈愛」


 これまた小声で『あのクソ爺の好きなタイプだとは思ったけどやり過ぎよ』なんて言う。

 そうか、あのおっさんは俺と同じタイプらしい。そう言う意味ではちょっと話してみたい。


「これは勇者云々抜きにしても王国に欲しい人材よね。チエの方は魔法さえ覚えてしまえば恐らく魔法師団でもいきなりトップクラスになれそうだし、フウコの方はアークプリーストなんて教皇と大司祭とその下の司祭三人しかいないのよね。その上神の慈愛を持ってるって事は、神の御業と言われるフルヒールだって使えそうだし、何なら理論上は可能と言われる若返りの魔法だって使えるようになるかもしれない逸材よ。学校とかいいから今すぐ教会で修業してもらいたいくらいだわ」

「教会でそう言う修業があるのか」

「と言うかプリースト自体の管轄が本来は教会なのよ。冒険者養成学校でも一応司祭を派遣してもらって授業を行えるけど」

「……ちなみに俺ってどうなるの?」

「どうしたい? 正直、学校に入ってもお先真っ暗よ。滅茶苦茶優秀な勇者二人と一緒に来た男が遊び人とか絶対まともに相手してもらえないから、それなら私の傍付きにしてあげてもいいけど」


 正直それならそれでいいのだが、二人から批難の視線が痛い。


「勿論一緒に行くわよね?」

「智也君?」

「……はい、もうどこにだってついて行く所存でございます」

「あらそ、困ったら私の名前を出せば一応効果はあるはずだから好きに使っていいわよ。それこそ私の傍付き候補だって言えば簡単には手出しできなくなるはずだから」

「いいのか」

「その代り、私の名前を出した時点であなた達と王室側がべったりだって言ってるようなものだから、そこは覚悟してね。とは言っても他に後ろ盾がいるかって言うと、何かしら企んでる貴族くらいかしら」

「貴族の中にそういうのがいるのか」

「他には転生者として貴族に貰い受けられた子もいるわよ。そう言う身売りみたいなのは今は取り締まっているのだけど、以前行われた分に関しては今さらどうしようもないのよねぇ」


 微妙に答えになって無いような気がするが、とにかくそう言う人は確かにいるようだ。

 とは言え王室以上に強力な後ろ盾は無いだろうし、とりあえずはシェリールに付いていいと思う。

 これで勇者を蔑ろにするような王室だったら後ろ盾無しで頑張るしか無いし、場合によってはベスターと結託して何とか出来ないか考えた所だけど。


「それで魔力量の方だけど、やっぱりトモヤは極端に少ないみたい。これでもうちょっとあれば結果が変わるかと言えば、もしかしたらユニークスキルに何か増えるかもしれないけど、この流れだとユニークスキルに掃除とか洗濯とか調理って増えそうだから見ない方がいい気がするわ」


 俺もそう思う。


「チエの魔力量は――」


 水鏡のデータは正面の盤だけでなく、室内の奥に置いてある机の上でも見れるようで、シェリールは何やら操作しながら見ているようだ。

 なんだかタブレットみたいだ。


「うちの魔法師団の師団長はこの世界でも別格に魔力量が多い人なんだけど、その人の倍くらいあるわね。先代の師団長が異世界人で、やっぱり今の師団長よりも多かったらしいけど、それにしたって魔力量だけ見てもお化けね」

「そんな凄い事なの?」


 一応褒められてるとわかったのか、千絵がちょっと食いついた。


「そりゃ凄いわよ。うちの師団長が範囲魔法のサンドストームを使うと森の一角くらいは潰せるんだけど、この魔力量だと潰すとかじゃなくて砂の質量で森ごと吹き飛ばしそうね」


 サンドストームと言う事は砂嵐だろうが、この場合風圧なのか、風に交じる砂が圧となるのか、砂嵐と言う物を経験したことが無いから良くわからないが、海辺で強風を食らうと目や口に砂が入って死ぬかと思うから、それの酷い版ともなれば攻撃魔法として成立するのだろう。


「単純な火力としてだと、爆発系の中で最高レベルのサンバーストをこの王城で使ったら、王城は吹き飛んで王都の半分を焼くでしょうね。魔力量が倍だから威力も単純に倍では無いけれど、最低でもそれ位の威力があるって事は覚えておいて。下手したらユニークスキルの関係でもっと強くなる可能性もあるから。今後授業で魔法の練習をするでしょうけど、暴発させたら学校自体が吹き飛ぶわよ」


 確かにそっちの心配があった。

 にしても、門から王城まで一時間くらい歩いたって言うのに、その半分を吹き飛ばすだけの魔力があると言うのか。


「それとフウコだけど、魔力量はチエ程では無いわね。と言っても実は魔力に長けた子ってウィザードの修行をするのが普通で、家が敬虔な教徒でも無ければ中々プリーストとして修業しないのよ。それでもうちの師団長よりは魔力があるから、これはもう教皇も高齢だし大司教に地位を譲って、フウコが大司教に収まる方がいいわね」

「やったじゃん楓子。勇者業やんなくても十分食っていけそうだ」

「いいのかなぁ?」


 何もかもよくわからない中での話なので、楓子も『?』を浮かべている。

 ただ、シェリールが妙に熱っぽいので、この二人が破格すぎるのは見て取れる。


「ちなみにトモヤが五十億人くらいいればフウコの魔力と同じくらいかしら。よかったわよね、人間が魔力を必要としないで生きれる生き物で」

「俺の無能さに関してはもういいんで許してくださいマジで」

「つまんないわね。人間誰しも得意分野はある物だから、遊び人だったとしても何か出来るわよ」


 どうやら慰められてるらしい。


「さ、データは取れたからこっちはオッケーよ。それで、次は採寸ね。ちょっと距離あるけど自分達の部屋まであなた達で戻れる?」

「道は覚えてるから多分行けるよ」

「あら、もう既にトモヤの得意分野が見えて来たじゃない。普通初見じゃ迷うわよ?」

「方向感覚は結構いいんだよ」

「それじゃお嬢様方二人のエスコートは任せたわよ。私はちょっと学校まで顔を出してくるわ」

「……王室の人間が出歩くのか?」

「あ、ちなみに私の名前自体は知られてるけど、表には出ないから私の顔を見てシェリール・ユグドラシルだとわかる人なんて外にはいないわよ。王城内では王付きの近衛兵か傍付きの使用人くらいね。それにほら」


 そう言ってくるっと後ろを向くと、透き通るようなプラチナブロンドがブラウンに変わり、その腰まである髪をまとめてくるんと結んでまとめ、こちらを振り向いたときには別人の顔に変わっていた。


「シェイプチェンジって言って擬態の魔法なの。何なら声も変えられるけど、これの不便な所は変えるポイントをある程度絞らないと魔法の制御が難しい所かしらね。変に体のサイズを変えると失敗したときに死ぬ危険性もあるし」

「魔法すげー、でもこえー」

「チエもフウコも魔法操作に慣れればこれくらい余裕に出来るわよ。ただ、特にシェイプチェンジなんかを使って犯罪を犯したら数年間の強制労働の刑だからやらないでね」

「やっぱ魔法に関係した犯罪もあるのな」

「王国は治安がいいから一応殆ど無い事になっているけどね」

「無い事に」

「腐敗した貴族なんかはやりたい放題よ。貴族ってだけで多少の罪は見逃される傾向があるけど、連中のしっぽが中々掴めなくて摘発やお家取り潰しみたいな事が出来ないのよね」


 全くやんなっちゃう、と呟いて部屋を出て行った。

 そう言えば特に施錠とかしてないんだよな。

 王城内の警備がしっかりしてるから必要が無いのだろうけど。

 にしても、さっきはシェリールとして堂々と城内を歩いていたが、誰ともすれ違わなかったしエントランスホールの下には人が居たがこっちには気付いた様子が無かった。

 何だろう、シェイプチェンジを使ったりもするしシェリールって隠形か何かなのかな。


「それじゃ戻るか」

「ええ、でも本当に案内無しで戻れるの?」

「でも智也君って道に迷わないよね」

「いや、俺がどうこうというよりも千絵も楓子もちょっと方向音痴だからな」

「私達が普通なのよ」

「そうだよ。私達だって行ったことある場所だったら迷わないもん」


 さいですか、と文句を言う二人を置いて部屋を出る。

 作りが西洋の古城っぽい事もあって、どこを見ても趣がある。

 壁は石壁だが、継ぎ目が目立たないくらいぴったりとハマっている。

 途中にある渡り廊下から中庭のような場所を見下ろすと、庭師が手入れをしている傍で王族なのか貴族なのかわからないがお茶会をやっているようだった。

 さっき通った時はいなかったが、この光景は何とも穏やかな世界だなぁ。

 外からでもこの城の全貌はわからなかったが、中から見ても大きすぎてよくわからない。

 どうやら王城の中央に玉座の間があるようで、となれば王族の部屋なんかも中央あたりにあるのだろう。

 ここまで歩いて見た感じ、どうやら王城内に行政の施設もあるようで、あちこちにスーツ姿で闊歩する貴族らしい人や付き人がいて、誰もが大きめの鞄や書類を持っている。

 魔法の道具袋が袋の口以上に大きなものが入らない事もあって、書類なんかは丸めたり折って袋には入れずに普通に持ち運んでいるようだ。

 千絵や楓子に宛がわれた個室の方までくると、やはり王城の中心部に近いようで、メイド服よりかは貴族のお嬢さんが着ていそうな簡易的なドレスみたいな恰好の使用人らしき人くらいしか見なかった。

 その人たち、と言うか年齢的に自分と変わらなそうなのでその子達の服装が統一されているので使用人なんだろうなと思えたが、そうじゃ無かったら普通にどこかの貴族の子だと思うくらい立ち居振る舞いがお嬢様っぽい。


 無事部屋まで戻って来たと思ったら、既に使用人の子が待っていて二人の採寸をするから外で待つように言われた。

 仕方なく廊下に出て待つが、この辺りは通路といくつかの部屋があるだけで暇つぶししようにも何もない。

 するとすれば妄想くらいか。

 今あの部屋では下着姿の二人が採寸を受けているわけで、最近更に女らしく育ってきたなぁと思春期よろしく思っていた所だったので、妄想だけなら捗る。

 こっちの学校の制服も楽しみだ。

 ファンタジー世界だし、冒険者養成学校と言うくらいだから動きやすい服装だったりして、ちょっと露出あったりして男的に喜ばしいデザインだったら非常に嬉しいのだが、王都の服装が見た感じでは昔の西洋風で露出は敵と言わんばかりなので期待薄。

 確か自分たちの世界で言えば当時は露出なんてはしたなくてしなかったはずだし。

 シェリールは王女な割に豪華なドレスと言うわけでも無く、布地もそれほど重たそうでは無く、ドレスと言うか部屋着のような物に思えた。

 そう言えば当時の正装的なドレスってスカートの中に枠みたいなの、確かパニエとか言うのを入れて広げていた気がするが、そう言うのも無く、何なら後ろから観察するとお尻の動きが何となくわかるくらいだった。

 だが、城内にいる貴族っぽい女性達は、どちらかと言えば如何にもドレスと言う布地の多くスカートの中にパニエが仕込んであるタイプだ。

 そこから察するにシェリールが特殊なのだろう。

 でも立場的にもそんなラフとも言える姿で、それこそ使用人と変わらないと言ってもおかしくない格好であちこち歩き回る王女ってどうなんだろう。

 少なくとも王の隣に立つくらいだから中枢に近いのだろうし、神託の巫女と言っていたからかなり特別扱いされてそうだけど、逆にそう言う格好だから知らない貴族からは王女として見られないようにしているのかもしれない。

 本人曰く、近衛兵と傍付きの使用人くらいしか自分をシェリールと認識してる者はいないような事を言っていたし。


 三十分弱程で扉が開いて使用人が出て来た。


「終わりましたのでこちらへどうぞ」

「はい」


 呼ばれたので部屋に入ると、すっかり服を着て落ち着いてる二人がいる。

 くそう。


「それでは上とズボンを脱いでください」


 言われたとおりに上着を脱ぎ、ズボンに手をかけた所でこの部屋にいる女性三人が息を呑む気配が。


「……使用人さんがいるのはわかるんだけど、何で千絵と楓子も残ってるんだ?」

「え、えーっと、なんとなく?」

「別に智也君のを見たいとか思ってるわけじゃ無いよ? ね?」

「ええ、はい」


 楓子のキラーパスを使用人さんがきっちり受け取って頷いた。

 ええ……。


「いいから出て行きなさい。使用人さんもあんまり見ないでください」

「しょうがないわねぇ」

「けち」


 なぜしぶしぶ出て行くのだろう。って楓子の『けち』ってどう言う事だろう。

 二人が出て行って使用人さんと二人きりになったのだが、今のやり取りのせいでちょっと恥ずかしくてお互い目をそらしてしまった。

 これで相手がおばちゃんとかだったら気にもしないけど、現在下も脱いでパンツ一丁である。

 見ず知らずの子とは言え、クラスメイトの女子に見られてるのと何ら変わらない。


「それじゃさっさとお願いします」

「は、はい」


 計測に使うのは元の世界と同じように手動で巻き取るタイプのメジャーだった。

 測る部位も恐らくは変わらないと思うのだが、バスト、ウェスト、ヒップ、背筋や股下、肩の辺りとか結構細かく。

 測る毎にぺたぺた触られてる。

 じっと彼女を見ると目が合ってポッと頬を赤らめるのである。

 うーむ、お年頃と言う奴だろうか。

 やっとこさ終わると、使用人の子はさっさと荷物を持って扉を開けて二人を呼んでしまった。

 チラッとこっちを見て微笑むあたり確信犯だ。


「待ってまだ履いてないからちょっと待てー!」


 ドタバタとやってくる二人もお年頃と言う事で。

 そう言えば週末はしょっちゅう人の部屋で泊まり込みで遊んでたけど、こうやって肌を晒す事って夏場でも無かった。

 そこら辺は超えてはならない一線だと言う意識がどこかにあったんだと思う。

 がしかし、だ。

 この二人は我先に来たかと思うと、ばっちり人の着替えを見て隅っこでこそこそ話すのである。

 何故だか男でも割とショックだ。





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