表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
105/194

戦いの本当の目的がわからない

前話、取って出しでやってしまった為に投稿して一時間後にちょっと直してます。

内容は変わりませんが、誤字脱字とほんのちょっと加筆する程度で本筋に影響はありません。



 あれから一週間が経った。

 リリアナ達もアイシア達も学校では上手くやっているようで、魔人が避けられるんじゃないかと心配をしていたのだが無事平穏に過ごしているらしい。

 いや嘘をついた。

 平穏で済むわけが無いのだ。

 リリアナ達は貴族男子に目を付けられて誘いを受けまくり、かと思えば女子が守り――と見せかけてお友達と言う名の派閥に入れようとし、アイシアは微妙に漏れる魅了の魔力もあって男子の一部から熱烈な好意を寄せられ、ミハイルは同じく女子から熱烈な好意を寄せられ、ニコは小さな男の子好きのお姉さま方に驚異的な人気を誇っていた。

 もう魔力をちょっと解放するだけで、色恋沙汰で若手貴族の殆どを手なずけられるんじゃないだろうか。

 幸いな事は魔人の三人の影響を受けたのが全体の一割にも満たない数で済んだ事だが、後でサクラに聞いた話だと『どうしても敏感な人は影響を受けるから仕方ない』と言われてしまった。

 その魅了の魔力も、極限まで抑えているので半日会わなければ解けるらしい。

 フローラさんもその程度は予想の内で、特にお叱りは無かったようだ。

 むしろ魅了の魔力も無しに女性陣のハートを鷲掴みにしたニコ恐ろしい子。


「見てきた」


 俺達も数日に一回でいいから極力学校に行こう、と決めたのだがやる事が多すぎて中々思うようにいかない。

 浜辺に打ち上げられた漂着物に関しては、ベスターがちゃんと処理してくれたらしい。

 昨日リリアナ達を母親に会わせに行ったら、婦人会代表としてリリアナの母親に深々と頭を下げられた。

 どうやらベスターは仕事をするだけしてさっさと帰ってしまったらしく、お礼が言えてなかったらしい。

 状態が決していいとは言えない物ばかりだったらしいが、それでも顔の判別が出来る人は無事家に帰る事が出来たらしい。

 その後の葬儀等はサウスルタン領を上げて合同で行われたらしい。

 実は捨てられていた骨等も収集してあって、判別できない人達と共にまとめて火葬されたようだ。

 何となく土葬のイメージだったのだが、ジャポニー教の神が日本人な事もあって葬儀は基本的に仏教に近い方法で行われると言う。

 つまり教会で祈りを捧げ、レベルの高いウィザードやアークウィザード数人で炎系の魔法を使って焼くのだ。

 今回は人数が多いので、王都の魔法師団を丸ごとシャルが連れて行った。

 そこら辺が全て終わったのが、つい昨日の話だ。

 家に帰れた人の家族はやっと終わったとホッとしたような悲しそうな顔をしていたが、分かった人なんて全体の三割くらいらしい。

 三人娘の中ではパトリシアの父親と兄が一人だけ見つかったが、リリアナやフェリシアの父親や男兄弟は見つからなかった。

 それでもある種の一区切りがついた事で、前に進める人もいるだろうとの事。


「どうだった?」

「現状で千くらい」

「そんな物か……」


 そんな一区切りついた翌日、シャルが西の国へ偵察へ行ってきたので、俺の部屋で報告を聞いていた。

 早ければそろそろ集まり切る頃かなと思ったが、思ったほど集まりが悪い。

 あの領地ならば主戦力が百、その他領民からなる志願兵で二千くらいはいてもいい。

 と言うかそれくらいいないとノイベルトに負ける可能性も出て来る。

 バウワーの現当主がどうしようもないのは見てわかったが、領民から見放されるレベルでどうしようもなかった場合、俺の予定を大きく狂わす事になる。

 まぁこれで王国が攻めてきたとなれば集まるのだろうが、恐らく目標も告げずに兵を集めていると思うので、単純に領主に命を掛けたくなくて集まらないのだと思う。

 これでもし領民が、はっきりとノイベルトやオイレンブルクの当主の方がいいと思っているなら、今回の作戦は完全に失敗だ。


「こっそり王国が攻めて来るって噂を流せないかな」

「私と言う大女優に掛かれば余裕」


 そう言ってシャルは町娘に変身して転移門を開いて消えた。

 帰って来たのは一時間ちょっと経った所だった。


「ばっちり」

「……ちなみにどうしてきたんだ?」

「バウワー家の近所から逃げてきたって設定で各町で嘘をついてきた。王国が攻めて来るからあの辺りは火の海になるだろう、って」

「おー」


 思いのほかちゃんとやってた。


「町の人達の反応は?」

「ああ、ついにかって。戦う気になったのと諦めているので半々くらい」


 既に志願兵として行っている人以外で半々だから、この調子だと千八百から二千くらいにはなるだろう。

 にしても諦めるのがいるって言うのは、あんまりいい状況では無いと言うことだ。

 一応敵国とは言え領民まで巻き込んだ事に罪悪感を感じる。


「他に何かあった?」

「行商人に制限が掛かってる。入るのには何も言われないけど出ていくのは最低でも二週間後って言われたらしい。言われたのが一週間くらい前だから、後一週間くらい」


 全ての行商人を止めているのか。

 確かに一番無難で確実な方法だ。

 恐れているのは情報漏洩だが、その点で一番怖いのは内通者の存在だ。

 バウワー家の使用人に内通者がいないとも限らない。

 いた場合、連絡手段は十中八九バウワー家と懇意にしている行商人を使ってのはずだが、この場合この行商人も買収されているはずだし、バウワー家と関係の無い行商人がこっそり手紙を受け取る可能性もある。

 何にしてもタイミング良く内通者側の行商人が来てるとも限らないので、期間的にもギリギリ許容範囲内で暴動が起こる前に解除されるだろう。

 行商人は土地を行き来しないと稼ぎにならないのだから、その場から動けないのを一番嫌う。


「武器や防具の準備はどうだった?」

「備蓄庫にあった。多分今後人が増えても足りる」

「じゃあ何とかなりそうかな」

「ん。駄目ならこっそりノイベルトを妨害する」

「ちなみにノイベルトは?」

「何も変わらず。でもテオが親と結託したみたいで普通に会話してた」

「内容は?」

「あまり近寄るとバレそうだから聞いてない。ただ、空気は悪かった」

「だとすればテオは非常にやりにくい状況かもな」

「ざまあ」


 って、逆に何も変わらずは違和感がある。


「何も変わらずって、何の準備もしてなかった?」

「倉庫に装備の山はあった」

「まぁそんなものか」


 まだまだ王国側の兵がノイベルト領へ向かうまで一週間ある。

 そこから人数が多いから二週間くらいかけてコボルトの集落よりもずっと奥にある関所に着き、更に一週間ほど行軍してようやくノイベルト中心地のはずだ。

 あの領地は半分くらいが山なので、どうしても移動に時間がかかってしまう。


「ありがとうシャル」


 ふわふわの髪をぽんぽんと撫でるとギューッと抱き着いてきた。

 うーん、慣れては来たけど犯罪感。


「後は実際うちの貴族連中が何を目的にバウワー家を潰しに行こうと思ったかだな」

「領地?」

「主にそれだとは思う。恐らく元からノイベルトを利用する気だったんだと思うよ。いやさ、今回の件って穴だらけなんだよ。テオが話した範囲に関しては、何をしてくるか分からないから考えれば考えるだけドツボにハマるんだけど、最初から考えるとこれで派兵が決まる事が不思議でならないんだ」

「例えば?」

「最初にノイベルトは、小領地を吸収して領土面積が一位になるからバウワーと戦いになるだろう、それに対抗するために兵力が欲しいって話だった」

「うん」

「実際そう簡単に戦闘になるとは思えないし、王国が受けた場合の見返りは?」

「それを決める場に居なかったから知らない」

「うん、その通り。でも向こうが提示できる条件なんて高が知れてるんだ。バウワーの資産も王国の色々な貴族に分配するには少ないし、あの領地の最大の売りは穀物が良く取れる事だけど、穀物は意外と嵩張るし重い割に必要量が多いから、山越えルートの場合馬車で一度に大量は運べない。仮に優遇措置で関税を撤廃したとしても山越えの追加費用も含め行商人に払う金はケチれないから、他の国から買うのと変わらないんだ。質もおやっさんの話だとバウワー領の小麦はパンにするより他の料理の方がいいって話だし、主食としては使いづらいんだ」

「他に何かある?」

「無い。だから公爵家は大赤字、他の貴族も確実に赤字」

「他の流通経路は? 転移門とか」

「さっき楓子に頼んで上空から地脈を探ってみたけど、西の国にある太めの地脈は南の方の開拓が難しい山間部を通ってるんだ。それよりも大分細い地脈ならバウワー邸の真下を通ってるけど、流通を目的とした転移門を作るには効率が悪すぎる。一日に一回少量しか運べないと思う」

「海路はこの世界じゃ使えないし、陸路も山を越えなきゃいけない……」

「そう。だから、ノイベルトが何を言った所でこちらが満足する提案なんて領地を明け渡す以外無いんだ」


 その場限りの甘言で騙す事は可能だが、終わった後で待つのは地獄だ。

 仮にバウワーを倒して勢いに任せてオイレンブルクも、となればバウワーとオイレンブルクの残党を集めて王国兵を逃げ帰らせるくらいの兵力にはなるかもしれない。


「でもトモヤ、ノイベルトのやる事を警戒していた。何か策があるんじゃないの」

「テオが絡むと何をしでかすかわからないから警戒しているんだよ。ノイベルトの兵を温存することが出来たとして、バウワーを倒した後にノイベルトの兵で王国兵を追い返す事も出来るけど、その場合王国を完全に敵に回す事になるし、ピレネー公爵家の分家やシュバインシュタイガーも関与した事で叩かれまくるはずだ。ノイベルトが全て捨てる覚悟ならわからないけど、この先も付き合う事を考えると王国兵に手出しは出来ない。最終的に叩き潰されて西の国が王国に併合されるだけだ」

「――むしろそれが目的?」

「いやいや。貴族が家潰してどうするよ」

「国に縛られる必要は無い。家を守るのが目的なら」

「……」


 そのシャルの言葉は驚異的な破壊力を持っていた。

 つまり、ノイベルトは西の国潰して王国領にし、そこで領主として認めさせようと言うのか。

 自分の国を王国に売るのか。

 あの国自体が全体的に衰えてきているようだから、まだ王国と戦える余力があるうちに、領地を王国に明け渡すから西の国の領土を貰えないか、と提案している可能性。

 それをピレネー公爵家に直談判していたとして、内々に了承されている可能性は十分にある。

 実際西の国を併合した場合、立地的にピレネー公爵家側の人材が多く出兵している筈なので、俺たちが出ないのであればほぼ確実にピレネー公爵家が統治権を得る。

 ピレネー公爵家としてもあの国を統治するとなると山脈が邪魔で行き来も大変だし、その割に一国分の広い土地だからよっぽど信頼のおける人間じゃないと任せられない。

 変な奴に任せたら、目の届かない土地だから好き勝手されてしまう。

 それで困るのは領民で、領民がいなければ国は成り立たず廃れてしまう。

 順当に行けば分家が治めてもいいが、分家もよっぽどやる気のある当主じゃなければ一国分の領地を治めるなんて裸足で逃げ出すだろう。

 恐らく今の貴族でやる気があるのは、いずれ返り咲くと本気で思っているならシュバインシュタイガーくらいじゃないだろうか。

 ――十分ありえるなぁ。

 ノイベルトと親戚関係なら、両家で協力し合って統治すればいい。

 その結果が良ければ、ノイベルトを侯爵に、シュバインシュタイガーを公爵に繰り上げる可能性も十分ある。

 あの両家は親戚関係の癖に、調べても繋がりが殆ど見えてこない。

 それなのに王家に黙って共謀する為の会場として貸すくらいだから、かなりの信頼関係を築いているはずなのだ。

 となると、普段の関係を隠していると見て間違いない。

 だがシュバインシュタイガーが本命となった場合、手を貸したピレネーの分家に利益があるのだろうか。


「その場合、ピレネーの分家やシュバインシュタイガーに何か利点あるかな」

「領地を分けるとか」


 ピレネーの分家はそれなら丸ごと管理するだろう。

 だがシュバインシュタイガーは恐らく乗るはずだ。

 王家の目の届かない所で色々画策しそうなイメージがあるだけだが、古くからの貴族様式を貫く家だけに、領地を持つ事を望んでもおかしくは無い。

 だがその場合、やはりピレネーの分家に旨味が無い。


「それとバイアグラキノコがある」

「……なにそれ」

「私の中の通称。アレが元気になるキノコがノイベルト領に自生してる。多分他の領地にもあるはず」

「……それをピレネーの分家が欲しがる?」

「王国貴族は喉から手が出る程欲しがる。とにかく子を増やすから」


 そうだった。

 見境なしだった。


「って事は高級品か……」

「一回分で銀貨五十枚。キノコが生えない冬の時期は金貨一枚とも言われている。その代わり一週間くらい元気になるらしい」

「マジかー……」


 使って良し売って良しか。

 目先の利益でいいと考えるなら、これは美味しい話だ。

 だが領地を得て自分で製造と販売をすればもっと儲かる。

 となるとシュバインシュタイガーが凄い力を付ける可能性があると言う事だ。


「繋がって来てしまった」

「ふふん」

「ヤバいな、シャルの言う通りに事が運んだら、貴族の勢力図が変わる可能性ある」


 四公爵家と言うシステムでやって来た所に一つ増えるだけだが、長年そのシステムでやって来た故に、影響力が一番低くなった家は少しずつ落ちぶれて行くことが考えられる。

 今だとスズウキ家が危ない位置にいるのだが、スズウキ家に付いていた伯爵家以下がシュバインシュタイガーの方がいいと乗り換えて行った場合、家の影響力が一気に落ちて公爵家として名前だけになってしまう。

 そうなったら生き地獄だ。

 社交界では後ろ指を指され、あれで公爵家かよと陰口を叩かれる。

 何を言っても影響力が無く、仕事は立ち行かなくなり倒産、家もいずれ潰れるだろう。


「意地でもバウワーとノイベルトで潰し合いをしてもらわないとな」

「支援する?」

「場合によっては。ノイベルトだけ楓子にお願いして天候操作で土砂降りにしてもらうとか」

「ただの嫌がらせ」

「行軍に於いて足元の悪さは疲れるし濡れると衛生的によろしくない。その中で戦闘とか考えたくもないだろ」

「むう、地味に嫌」

「まぁ考えすぎである事を祈るけど、だとしたらテオの口車に乗らなくて良かった」

「むしろ乗った方が良かったかも。トモヤが統治する」

「ものっすごく優秀な人材を山ほど集められない限り無理だと思う」


 俺に統治する力なんて無いのは重々承知だ。

 もしこのシナリオが本当で、テオの父親が考えたのだとしたら超が付く天才であると同時に悪魔だ。

 自国を売り飛ばすなんて普通は考えない。

 だが、その場合俺達に協力を仰がなかった理由がわからない。

 戦力的には一人で一軍以上あるのに。

 とは言えピレネーの分家やシュバインシュタイガーが協力しているのなら、俺達が絡む事で全ての主導権を握られる事になるから、それを嫌ったのかもしれない。

 最初は結果的に領地を奪って資産を分配する時に、俺達が参加していたら邪魔でしかないからだと思っていた。

 いや他の貴族はその考えでいるのかもしれないが。

 何にしても全て終わって、問い詰められるならノイベルトの当主を問い詰めよう。

 

膝を痛めて歩くのがしんど

足上げてリクライニングシートで9時間爆睡してたせいと思われる

何で死力を振り絞って布団で寝なかったし

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ