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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
104/194

テオの二週間

昨日一行だけ書いて盛大に寝落ちしてました。


 言い訳と懐柔であの日から一週間も使ってしまった。

 白状しよう、トモヤを侮っていた。


 自分が自我に目覚めたのは王国へ発つ数日前だった。

 朝起きると見知らぬ環境で、しかしよくよく思い返して見ると知識があった。

 そこは自分の部屋だと。

 自分がテオと呼ばれている事。

 本来は武田悟志という名前であること。

 世間が新元号で賑わうその日に、大学へ向かう途中で事故に遭った事。

 どうやら転生したらしい事も何となく覚えてる。

 あの自称神様は胡散臭いが、あの記憶がなければ事故による精神的混乱か何かで頭がおかしくなったのかな、と自己診断を下す所だった。

 あのまま生きていれば、少なくとも人生負け組ではなかったのに、何で事故なんて。

 俺は今年卒業見込みの医大生だったのだ。

 とは言え研究職志望だったのだが、家が大きな病院を経営していた事もあり、最高の環境が揃っていたのに。


 しばらく頭を抱えて現状把握に努めていたら、多分本来の自分より若い女性が部屋にやってきた。

 外人だ。

 だが、それが自分の母親だと言う知識もある。

 美人と言うか可愛らしい人だが、体が反応しないのは自分が四歳の子供だからか、母親だと言う自覚があるからか。

 生前は爛れた女性関係は無かったが、別段異性に困った事もない。

 悲しいかなイケメンでは無かったが、家が金持ちだった事で寄ってくる女は多く、彼女が途切れることは無かった。

 自分で言うのも何だけど性格も悪くは無かったし。

 ただ、金目当てに寄ってきているのがわかっているので、本気になれる事は無かった。

 そんな女慣れしてる自分でも美形だなとじっと見てしまうほどだったが、男の部分は無反応。

 まぁ変な事をしたり言ったりしたら訝しがられるので、大人しく記憶の通り動く事にした。


「おはようございます、お母様」

「おはようテオ。熱は下がった?」


 どうやら昨日は熱を出して倒れていたようだ。

 自我に目覚める前兆だったのだろうか?


「もう大丈夫です」

「そう、でも今日は安静にしていましょうね」


 安静にはするけど調べ物もしなければ。


 幸いにも貴族の中でも上位の家に産まれたらしく、教育も行き届いていたので読み書きには不便しなかった。

 変な文字なのに読めてしまう感覚は気持ち悪いが、家の蔵書を片っ端から読んでこの世界のことを理解していく。

 わからない単語も多かったが、幸いにもこの世界にも辞書があり、それである程度理解することができた。

 ある程度なのは、辞書自体が古い事と単語数がそれほど多くないせいだ。

 今自分がいる国は、どうやら大昔の戦争以降、内紛が起きて各貴族領に分かれてしまっているらしい事。

 その中でも自分の家、ノイベルトは長い歴史があり各国に親戚がいて、色々な国にある程度の影響力を持つ事。

 その為、共和国時代は持ち回りと言われていた代表を多く務めていた事。

 それもあってバウワーやオイレンブルクからはよく思われていない事。

 どうやら微妙な立場らしいが、幸いな事に家の力はそれなりに大きく、この国の中では勝ち組の家の長男らしい事がわかった。

 野心が芽生えた。

 蔵書を見る限り、貴族で暇だから趣味で何か研究して本にまとめた場合か、歴史的事実を記録する為に本を作ることが殆どなようで、読んだ限り筆者の知識レベルは現代の高卒より低そうに感じたのだ。

 今の俺なら、上手く立ち回ればこの国を併合して頂点に立つ事も出来るのではないか。

 武力の差は装備類の開発や改良で何とかなる。

 問題は子供過ぎて大人を動かす事ができない事だ。

 多少の入れ知恵や誘導は出来るだろう。

 だがそこまでだ。


 そんな事を考えていた矢先、王国への旅行に話を聞いた。

 と言うか前からされていたが、テオの頭にはうっすらとしか記憶されていなかったのだ。

 ジャポニー教とか言う付近一帯の国々が国教としている宗教があり、王国にはその聖地があるらしい。

 どうやらそこを巡礼した後に、父親の仕事で王都まで足を伸ばすようだが、そこまで聞いてキナ臭さを感じた。

 ウチと王国は表立って争うほどの仲では無いが、かと言って行き来するほどの仲でも無い。

 親戚はいるようだが、王国の貴族を刺激しないためにも家長がお忍びで行くか、王国の西にある程々の町で会うかのどっちかが正しい筈だ。

 それが家族旅行で聖地に行き、その後で王都に行く。

 俺は裏があると感じ、夕食後に父親が一人になるタイミングで聞いてみた。


「お父様、少々お聞きしてもよろしいでしょうか」

「なんだいテオ」

「聖地の後に王都へ行く理由です。友好国というわけでも無いですし、危険があるという事は無いのですか?」

「王国のことをよく勉強しているね」


 どうやらテオが持つ知識では王国は敵と見ているようだった。

 これはそういう教育がされているからだ。


「本当ならあまり行かない方がいいんだ。でも今回はいろいろあってね、向こうで仲良くしている人を伝手にお願いをしに行くんだ。場所は親戚の家だから安心していいよ」


 仲良くしてる人を伝手にするけど、親戚を伝手にしていないのか。

 余計何かあると感じてしまう。


「お願いとは何なのですか?」

「それは大人の話だよ。でもそうだな、上手く話がまとまれば、きっと僕らの生活は今よりずっと良くなるかもね」


 生活が良くなると言う事は金銭的に潤う事だが、融資は関係上考えられないし、何か起業してるわけでも無い。

 起業するにしても王国から募るのはおかしい。

 最低でも王国貴族に利のある事でなければおかしい。

 テオの記憶を手繰る。

 この家は貴族として大きな割に、夕食は家族で摂るし夫婦仲も良ければ子煩悩で家族サービスを欠かさない。

 なので夫婦間の会話の中で結構重要な会話をしている。

 我が子が小さく理解出来ないと思っているようで、警戒心が全く無いのだ。

 実際テオは理解出来なかったが、何となく覚えている。

 領内の収穫量が今年は落ちていて税を減らさないと不満が出そうだと言う事。

 他の領も全体的に落ちているらしい事。

 またバウワーから穀物を仕入れなければならず、バウワーが潤ってしまうらしい事。

 そろそろバウワーを何とかしなければならない、だから近くの小領地と結託して一時ノイベルト領に吸収し、バウワーを倒した後で領地の分配を行うらしい事。

 そのバウワーを倒す方法は、王国を騙すか騙さないかギリギリの所で美味い話を作り、代わりに倒してもらおうとしている事。

 記憶のある半年程の中では、この辺りの会話が特に多かった。

 そして王国が絡むのは代理戦争の話だ。


「王国にバウワーを倒してもらう話ですか?」

「おお、テオは頭がいいね。でも内緒だよ? それを人に話したら計画が失敗してしまうからね」

「はい、お父様」


 だが、ざっと調べた感じでは王国だって黙って手を貸しはしないだろう。

 西の国で最も厄介なのはバウワーが持つ戦力と、長期戦が出来るだけの蓄えだ。

 それは食料の備蓄は元より、食糧庫と称される程に穀物の生産が多く、バウワーからの供給が止まったら小領地は穀物を得る事が実質不可能になってしまう。

 ノイベルト領でも生産はしているが自国分を賄えるかどうかと言う所だし、オイレンブルクは全域に大き目の河川があり、海に面している事で湿潤な土地で食用として重要な小麦の生産には向かないらしく、やはり自国分を何とか賄えるかどうからしい。

 だから戦いが長期化すればするだけバウワー以外の領土は飢えが広がってしまう。

 短期決戦は戦力的に無理がある。

 だから王国に手を借りるのが手っ取り早い手段だが、仮にバウワー領内を好きに蹂躙して奪っていいと言った所で、一国の軍勢が納得するだけの収穫は無いだろう。

 バウワーを落として財産を王国に分与するにしても、その後バウワー領を治めるだけの資金を残しておかなければ立ち行かない。

 バウワーが如何に金持ちだったとしても土台無理がある話なのだ。

 それなのに何故王国が動くと思うのか。

 王国も諸々わかっていて、これを切っ掛けに侵攻してくるのではないだろうか。

 そのつもりがあれば、わからないでも無い。


「しかし、王国と言えど早々簡単にバウワーに手を出しますか?」

「今のバウワーの当主はね、政治を知らない駄目な当主なんだ。既に十年近く好き勝手やっているから領内での人気は最悪、戦いになっても士気が低く招集に応じる領民もそれほど多くは無いだろう。仮に脅したとしても士気が低くて使えたもんじゃないからね。と言ってもわかるかな?」

「バウワーの戦力が前より落ちていると言う事ですか?」

「そうだね。バウワーが抱えている主戦力も昔ほどやる気も無く衰えているようだし、お家騒動でも起きて交代する前に叩くのが無難なんだ。あの家の弟の方は優秀らしいから」


 今が好機と言う程では無いにしろ、今のうちに叩いておきたいのだろう。

 しかし、王国への対応が謎過ぎる。


「王国は納得するのですか?」

「王国とて穀物の生産量は少なく輸入に頼っている。そこの関税を思い切って無くす事になっているんだよ」


 わからないだろうなぁ、と呟いて苦笑している。

 幼子相手に丁寧に教えてくれるのは助かる。

 なんせ俺なら理解できるし。

 恐らく王国には他にも色々と優遇する事だろう。

 だが、昼間にざっと調べた中では、王国はこの国を恨んでいるとあった。

 テオへの教育も、王国は悪だと教えられている。

 ただ、悪ではあるが仲良くも出来ると言われているので、この父親は友好路線で行くつもりなのかもしれない。

 仮にこちらの提示する条件で王国が軍を派遣したとして、こちらの条件や報酬に満足して帰ると本気で信じているのなら、この領、いや国は亡びるだろう。

 友好関係を築いている王国の貴族や親戚は納得して協力するかもしれないが、元々戦争をしていた国相手にお友達感覚で手を貸すわけが無い。

 もしかしたら対抗策や切り札を用意しているかもしれないが。

 あるとすれば最終的に地形的に不利な所に王国軍を誘導し、こちらの主戦力で囲んでお帰り願うか。

 王国の上の方の貴族にパイプがあって言う事を聞かせられるか。

 正直な所、様々な方向から考えてみても、不利と言わざるを得ない。

 こちらに何か大きな切り札があるなら話は別だが。

 もう一つの不安要素は勇者の存在だった。

 どうやらいるらしく、化け物じみた魔法を使うと言う。

 王国がこちらに付く前提で考えているようだけど、反旗を翻された場合簡単に潰されてしまうだろう。

 恐らくその辺りも考えているはずだが、それを抑える手段があるのだろうか。

 ヤバいな、この父親の計画がどの程度練られているか知らないが、下手をしたら簡単に一家まとめて死亡だ。

 計画した本人がやらかして死ぬのなら勝手にして欲しいが、あの美人の母親を亡くすのは少々惜しい。

 そして何より自分の命が大事だ。

 死んで転生したばっかりだと言うのに、またすぐ死んでたまるか。





 その日から聖地へ出発の日まで死ぬ気で蔵書を読み漁った。

 ほとんどが資料であり西の国の歴史であり、長い年月を経て段々衰退していっているのがわかる。

 それは王国のせいだ。

 この国は高い山脈と海に囲まれていて、やり取りしやすい国が王国だった。

 北の山脈の方が東の山脈よりも険しく、必ず行商人は王国を通らなければならない。

 西の国を敵視している貴族ならば、西の国へ持って行く予定の物資を高額で書いとったりもするだろう。

 そう言う事が減るように近隣のピレネー公爵家とは昔から交流を持っているらしいが、いつの頃からか分家に担当が移り、本家の人間と関わる事が殆ど無くなってしまったらしい。

 それでも繋がりがあるだけマシで、ピレネーの分家が安く買い集めた品々を、こちらにお友達価格で売ってくれる。

 代わりにこちらからは、ノイベルト領の山でしか取れない高級品のキノコをこっそり卸していたようだ。

 松茸か何かなのかと思ったら、これを原料に薬を作るらしい。

 シモの。

 あちらの国は貴族がガンガン子供を産むらしいから、結構な需要があるのだとか。

 しかし結局の所仕入れ値の都合上、お友達価格でも通常と同じかやや高く、段々貿易赤字が増えていったようだ。


 出発の日、ノイベルトお抱えのアークウィザードが同伴する事になっていた。

 どうやら魔法でワープみたいなことが出来るらしい。

 荷物を積んだ馬車ごと東の関所に飛び、そこで軽い検閲を受けて入国目的を聖地巡礼とした。

 こうする事で疑われず通れるらしい。

 山脈を馬車で進み、開けた場所で一晩だけ野営した。

 特に急いだ様子も無いと思ったら、元々ここで野営をして魔力の回復に努めるつもりだったらしい。

 翌朝、再び魔法で王国の西に位置する町まで飛び、そこで宿を取って軽く見て回った。

 何の変哲もない町だが、西の国からの巡礼者が立ち寄る事が多いので、宿の件数も少し多く質がいいらしい。

 更に翌日にはもう一度魔法でワープして聖地であるジャポニーゼに到着した。

 何となくワープだと思っていたが、転移門の魔法と言うらしい。

 転移門自体は西の国にも何か所かあるが、別の領へ飛べる転移門は軒並み閉ざされているらしい。


「テオ、お父さん達はちょっと用事があるから動かないで待ってるんだよ」


 そう言うと、馬車を係留する為の手続きがあるのか、町の入り口で誰かと話している。

 少し待っていたが現時点で馬車置き場が一杯らしく、予定では一時間もすれば何台か出るからそれまで待ってくれと言われているようだった。

 何にしても係留するなら先に宿に荷物を運び込まなければならないが、どうも手続き上先に済まさないと次の人に権利が移ってしまうらしい。

 暇だし見て回るか。どうせ迷子になる精神年齢じゃ無いし。

 道中ちょっとした噂を聞いていたのだ。

 この国の次期国王と言われている異世界人が、同じタイミングで聖地巡礼をしているらしいと。

 基本的に外人の見た目ばかりなこの世界で、名前的に日本人らしいそいつがいたら一目でわかるはずだ。

 ――で、二十分程見て回っていたら女神達に出会ったのだ。

 俺の精神年齢が後五つでも若ければ、何が何でも落としにかかっていたと思う。

 頭に来るのはトモヤっぽいのが完全にハーレムを確立していた事だ。

 コノヤロウ羨ましいなおい。

 で、さっそくバレて適当に誤魔化して入り口まで送り届けられてしまったのだ。


 丁度良く会えた。

 ならばこれを使わない手はない。

 勇者はトモヤの嫁と言う事も噂で広まっていたので、とにかくトモヤを仲間に引き入れられれば最高で、最悪でも西の国に関わらせないように誘導しなければならない。

 同郷のよしみで何とかならないかな、と思っていたが出会いでふざけ過ぎたのが裏目に出た。

 だってあんな巨乳見せつけられたらしょうがないだろ。


「王国で現国王の代理として動いているトモヤが、今は休養でここに来ている。ああ、さっきの若者だ。どうやら彼は色々ヤバい伝手を持っているらしいから、彼が何も出来ない内に全てを纏める必要が出てきてしまった。私は一人で先に王国へ行く」

「あなた、一人で行くのは後々不思議がられます。シュバインシュタイガー家の事情で今日しか会えなかった、と言う事にして一時聖地巡礼を切り上げて全員で行きましょう」

「ん、んむ、そうだな……。済まない、少し焦り過ぎていたようだ」

「十年も前から計画していた事ですもの。仕方ありませんわ」

「それにしても噂は眉唾だと思っていたのだが、本当に魔人と友好を結んでいるとはな……」


 俺がいるのを知ってか知らずか、朝からちゅっちゅしながら話していた。

 目の毒だ。

 俺はそっと部屋を出て五階に向かい、トモヤと交渉して多分結構いい感じに追い詰められたと思う。

 王国としては西の国への対応はしてしまいたいだろう。

 だが、戦争となると話は別で、トモヤは避けたいようだった。

 どこで妥協するかだと思うのだ。

 王国にとって西の国は目の上のたんこぶ、うるさいだけの存在だ。

 協力してバウワーを倒し、将来当主になる俺が恒久的な平和を約束する。

 それだけでも王国にとって利益のはずだ。

 これまでは何かあれば突っつかれ、その対応にエルフの王女が奔走していたと言うし。


 その後、昼前には転移門の魔法で王都へ飛び、シュバインシュタイガー家に挨拶をした。

 まさかの伯爵家で、大昔は公爵家だったと言うが、うちの昔を考えれば別段不思議は無い。

 それくらいにノイベルト家と言うのは昔から強い力を持っていた家だった。

 古い文献にはノイベルトとシュバインシュタイガー家が仲違いをして戦争になった、なんて記述もあったのだが、その割には仲良くしているようなので果たして嘘か本当か。

 家柄的にピレネー公爵家の分家との付き合いを重要視するのは仕方ないが、親戚らしいシュバインシュタイガー家とはあまりやり取りが無かったようなので、実は本当なのかもしれない。


 伝令が各所に飛んで人集めが始まり、パーティーと言う名目でスーツを着た大人の男だらけが一室に集まった。

 私も一緒に居たいですと言って無理やり居座ってみたが、あちこちから聞こえる会話が全てキナ臭い。

 ノイベルト家を山猿呼ばわりして馬鹿にしているのもいれば、西の国をどうしようかと言う話もチラホラ聞こえた。

 どうするとは、勿論自分達が得たのを前提にして言っているだろう。

 やはり父親の考えは甘いのかもしれない。

 切り札があるのかすら知らないが、もしかしたらバウワーを倒しさえすれば何とかなると思ってるだけの可能性もある。

 やはり、俺は俺で独自に動かなければ。

 ある程度大人達が集まった所で、父親から今回の件の軽い説明が行われた。

 既に知ってるのを前提とした口ぶりで、周りの大人たちも特に驚いた風も無く聞いている。

 内容は聞いていた通りだったが、西の国と王国間の転移門を設置して穀物の流通を容易にする計画もあるらしかった。

 今後友好国として仲良くやって行くつもりがあるなら、まぁ手を貸してもいいかな、と思える内容ではある。

 だが、それは国家間での取り決めが行われた場合だ。

 貴族間でのアンオフィシャルな会談で決めた事に、どれだけの拘束力があるのか。

 結局ノイベルトへの協力に賛成する家は、今回の集まりの中では全てだったわけだが、その結果に余計裏があると思わせた。

 こちらの言う事を百信じるわけが無い。

 何事も表向きは上手く進みすぎている。


 翌日の昼に街中でばったりトモヤと出くわした。

 次期国王がそんな普通に出歩いてていいのか疑問だが、偶然よりも必然の方がこちらの掌の上で踊ってる感が出るので、既に終わったと告げてやった。

 トモヤも色々対抗策を練っていたのだろう。

 告げた瞬間には顔色が変わり、俺を拘束するかどうか悩み、結局即座に帰って対応を考える事にしたらしい。

 勝ったかな。

 どうにも仲間にはならなそうだったから、これで勇者の介入を阻止できれば万々歳だ。

 逆に妨害してくる可能性もあった。

 しかし、既に貴族間で決まった事だし、翌日には会議に掛けられて派兵が決まるだろう。

 そうなったら妨害は味方に敵を作る事になる。

 となれば静観しかないと思うのだが、そんなタマでも無いと思うのだ。


 と思っていたら襲撃された。

 転生者の俺が別に計画を練ってる事を暴露され、見事に両親からの信頼を失って部屋に隔離されてしまった。

 何とかして共謀出来るまで信頼を回復させなければならない。

 その為には自分の事を正確に話そう。

 そして、自分を味方に引き入れれば、今回の件の成功率が上がるとプレゼンしなければ。

 まぁ、その話を聞いてくれるまでにノイベルト領に帰ってから三日掛かり、何とかオブザーバー的な立ち位置で復活する事が出来たのだけど、実は俺より年下だった両親からの視線の痛い事痛い事。

 と言うわけで俺は誓いを立てた。

 トモヤ、お前は許さん。




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