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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
住めば都の異世界生活編(自分を除く)
1/194

どうやらコボルトにライ〇ップが蔓延してる模様

こちらでは初投稿となりますので、行間等追々調整していくかもしれません。

それではよろしくお願いします。




 目の前には、大きな木から作ったであろう極太のこん棒と、刃先が陽光にきらめく程に砥がれた長い槍を持つコボルトが四匹ずつの計八匹。

 コボルトなんて言うから雑魚モンスターではあるはずだし、何ならコボルトの中でも雑魚扱いされるタイプのようだが、その威圧感は半端ない。

 そもそも何なんだよあのこん棒は。

 普通、絵面を思い浮かべれば、これがこん棒だと思えるのは、モンスターとの対比を考えると太さは直径二十センチ程度で、長くても五十センチとか六十センチじゃなかろうか。


 そりゃ勿論、モンスターが巨大になればなるだけ持つ武器も大きくなるだろうけど、目の前にいるコボルト――二足歩行の犬面の魔物――は小学生の低学年程度の背丈しか無い。

 人と違う点は、全身を覆う体毛が茶色に緑色が混じってるような色をしている事と、尖った耳が人と違って高い位置についている事と、何というか犬っぽくもあり年齢不詳なオッサンだなと思える面構えだろうか。

 その身長の癖に筋肉が凄い事になってるとか異形とも呼べる部分もあるのだが、そんな見た目の奴等がである。

 先端部の直径五十センチ、長さは男子高校生としては平均的身長の俺と同じくらいありそうなこん棒を軽々と振り回し、一振りで地面を陥没させていた。

 普通なら遠心力を食らって踏ん張れずに振り回されるだろうに、何でこいつらは軽々と振るうのだろうか。

 そして長さこそ普通に見える槍は気持ち太めで、刃渡りと同じくらいの電柱の太さの木を一刀両断にしてしまう代物だ。

 見た目だけで言えば、昔の戦争系の漫画やアニメで出てくる巨漢が振り回している槍と大差無い。


 だだっ広い平原での初めてのエンカウントに、たまたま生えてた樹を盾にしようと思えば盾にすらならんとかもうね。

 八匹出て来た時点で、おっとこれはやばいと思いはしたが、コボルトの集落は肉体改造に特化した文明開化でも行われたのだろうか。

 槍を持つコボルトが一歩踏み出したと思った瞬間、地面を蹴って二秒もしない間に十メートルの距離を詰めようとしてきた。

 俺は剣、仲間の二人は杖が武器で、どう考えてもリーチの差で不利だ。

 ここで切り結べば一瞬で肉塊に変えられてしまうと思った俺は、死にもの狂いでバックステップを決めた、と思ったら後ろに仲間が居て思いのほか飛べず、止まった所に横一線に振り回された槍先が下腹部を切り裂く。

 とんでもなく長く重そうな槍を軽々振り回してるとは言え、そこに物理法則は絶対的に影響してるようで、振り回す槍の矛先は真横ばかり。

 幸か不幸か一撃アウトの頭部ではなく、一撃アウトでないからこそ苦しむ腹部に来てしまった。

 咄嗟に剣を前に出して受けれたが、それが無ければ上半身と下半身がバイバイしてた事だろう。


「痛い痛い死んじゃうからこれ!」


 みっともなく地面をゴロゴロ転がった。

 刃物で指を切る痛みが可愛く思える。

 焼けた金属製の棒を突き立てられてるようだ。

 しかも切られた箇所って、あれじゃん、アレがある部分じゃん? あれこれどれくらい深いの? タマの部分は無事だけどその上の部分が――――


「ギャー! 俺のナニがー!」

「ああもう!」


 後ろにいた仲間の快活な方が、足元にあった拳大の石を掴んで槍コボルトに思い切り投げつけた。。

 投げた石はビュンとはっきりとした風切り音を立てて槍コボルトの胸にヒット、それがベコンと筋骨隆々な胸板を凹ませるクリティカルヒットとなり、コボルト達はまさかの投石攻撃に一斉に距離を開けて臨戦態勢のまま様子を窺っている。

 投石攻撃を受けたコボルトは数メートル後ろに吹っ飛び、起き上がってこない事から相当な大ダメージか致命傷か。

 この石を投げた本人はは本来凶暴性はそれほど無く、ただ俺の不甲斐なさや自分の動けなさ、その他諸々噛みしめての奮起の投石だったようで、『ふんっ』と鼻息荒くその場に立って手持ちの杖をコボルト達に向けている。

 先ほどまでは初めて且つ突然のエンカウントに驚きと恐怖で硬直していたと言うのに、今では何とも頼りがいを感じさせる後ろ姿――と言うわけでも無かった。

 なんせ、そいつはセーラー服を着た女子高生である。

 そんな子を前にし、俺は巻き込まれないように下腹部を押さえながら必死に下がってきたが、押さえててもズボンの裾からダバダバと血が流れ出ている。


「智也君!」


 もう片方の仲間が、切られた患部に直接手を当てようとして固まった。

 我がパーティーの生命線たる回復魔法使い、その中でも最上位の回復魔法は強力で、死んでさえいなければ体の欠損すら治癒してしまうと言う何ともチート且つ素晴らしい物なのだったが、難点はまだ魔法に不慣れな為、血だらけの部位に直接触れなければ使えない事にある。

 そして、現在の俺は最上位未満の回復魔法では治癒が追い付かない状態にあるようだった。

 だって、そりゃ血管の集まったアレ切られてるんですもん。さっきから一気に血の気失せてますもん。マジで早く助けて。


 こっちの彼女も矢面に立った奴と同じく、学校の制服ではあるのだが上に薄ピンクのカーディガンを着用だ。

 そのセーラー服やカーディガンは、男なら嫌いな人は滅多にいないとても大きなロマン溢れる膨らみを抑え込んでいるようにも見えるが、だからこそ余計に凶暴性を際立たせると思うんです。

 さっきの仲間が長めのロングヘア―ならば、彼女は自重で抜ける寸前を狙ってんじゃないかと言う程に長い黒髪を持ち、それは特に髪留めなんかをしていなくても暴れる事無く膝くらいまで伸ばしていた。

 そのやや子供らしさの残る相貌と特徴的な黒髪と自己主張の激しい胸部で学校の男のヤラシイ視線独り占めなのだが、本人が異性には控えめ過ぎる性格だったり、もう片方の仲間も美人さんでこっちは快活なタイプだからそっちにも目が行きやすい事もあり、上手い事高校での人気を二分していた。

 にしてもこんな戦闘の場に制服姿の女の子が二人も、しかも一人は天然記念物に指定されていてもおかしくはない程のゆるふわ系と言う事もあって場違い感が半端ない。


 さっきから患部に手を突っ込もうとしたり、でも出来なくて固まったりしているけど、そろそろヤバいと思うんです。俺の命風前の灯火。


「むむむむむりだからーっ!」


 ちょっと手を貸してくれれば助かる命がここにある。

 たとえ、うら若き乙女が男のナニに手を当てなければならないとしても、人ひとりの命がかかってんだよ? 

 何ならつい先日、彼女は大勢に『聖女』と祀り上げられていたと言うのに全く。


「ここ! ここだから! 早くヒール!」


 力の抜けていく体に鞭を打って彼女の手を掴むと、おもむろに自分の下腹部に当てた。

 これ、同い年の幼馴染や親友だったとしても、セクハラっつーか単純に変態行為で絶交される奴や。


「いやああああああああああ! フルヒール!」


 見る見るうちに痛みが引いていった。

 いやーやばかった、ナニの問題は置いといて、普通に深く切られてて内臓さんこんにちはなスプラッターな俺でしたし。


「くっそー、お前ら絶対許さないからな!」

「いやぁ……触っちゃった、触っちゃったよぉ……。むにっとしたの触っちゃったよぅ……」


 そう言って正座を横に崩した、所謂女の子座りで自分の両手を死んだ目で見ている彼女は、そもそも博愛主義で争い事も嫌いで、それこそ血なんて見たいと思わないだろうに。


「そもそもさ、何であんたが前衛なんてやろうとしてるのよ。邪魔だからさっさと下がりなさい」

「いやほら、ここは男として、剣使いとして」

「ボルケーノ」


 その一言と共に、コボルト達の中心を起点に業火が巻き起こった。

 その業火は実際は地面より噴き出したマグマによるもので、一瞬でコボルトのいる範囲を覆ってしまう。

 そのマグマは何かに阻害されこちらには来ず、まるで器の中にマグマがあふれるかの如くコボルト達を飲み込んだ。

 後に残ったのは焼け焦げた地面と黒く炭化したコボルトの亡骸のみで、超高温の熱源があったはずなのに熱くも無い。

 炎系と地系複合の最上位魔法の一つ、ボルケーノだった。


 ――いや、わかっていたんだ。どうせ俺はお荷物で、他の二人は特別である事は。


 吹っ切れたのか、ほーっほっほっほなどと高笑いをする幼馴染の里中千絵と、心的ショックで泣き崩れているこれまた幼馴染の佐久間楓子、そして役立たずの俺、斎藤智也の異世界生活の一場面である。




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