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七罪華〜傲慢の花〜  作者: 鰍
第1章 2Die6Life
49/60

1.22 序章

1.22






「ねえねえ、赤ちゃんはどうやって産まれてくるの?」


何の変哲もない穏やかな日常の朝食中、カガリの疑問が食堂を凍らせた。

幸いなことにソマリは寝坊しているためここにいない。

一息の沈黙が過ぎるとヒバナが代表して口を開いた。


「お父さんがコウノトリとセッ〇スして運んで来る……ブヘラッ……!!」


焦りから建前と本音が混合し誤りと語弊を生んだ言葉を、隣のハバリが叩き落とした。


「カガリー、ヒバナの妄言は忘れようねー、赤ちゃんはね、お父さんとお母さんがチューしたら生まれるんだよー」


「お前が1番妄言じゃねぇか!?」


こくりと納得するカガリの視界の端で、血まみれになりながらハバリにツッコむが、ハバリ自身も失敗したため言い返せず黙りこくった。

そんな穏やかな日常を微笑ましく眺める歳をとった女性は、桜色の髪をなびかせながら椅子を揺らす。

雑誌置きに並べられた朝刊が目に入り、本日の花火大会に夏を感じさせられる。


「へー!今日花火大会あるんだー」


食器を片付けようと通りかかったヒバナが覗き込み、通り過ぎると続いてカガリが覗き込む。しかし字が読めなかったのか首を傾げて女将に問うた。


「はなび??」


「花火って言うのはねぇ、暗い空に明るく大きな花を描くものの事だよぉ。用事がないのなら見に行っといでよぉ」


「ヒバナ行こ行こ!」


聞くや袖を引いて急かすカガリの頭を撫でて微笑むと、閃きに掌に拳を乗せて女将に振り向いた。


「いいよー。今日は特に予定無かったし……。あ、そうだ、ママも行こうよ!歩くの大変だったら俺運んでいくし!」


「そんな私まで悪いねぇ……。でも、足はピンピンしてるから大丈夫よぉ」


「よし、じゃあ17時くらいに出発で!」


急ぎ足で食堂を出ていくと、ヒバナに続いてカガリ、ハバリも部屋に戻り食堂に静けさが訪れた。

開いた窓からは小鳥のさえずりが溢れ、女将は椅子を揺らして愉快に鼻歌を鳴らし心を踊らせた。



ーーーーーーーーー



ヒバナは暇な日は基本朝軽く戦闘訓練をし、その後はゲームを一日中行う。その横ではカガリがくっつき羨ましそうに眺め、ヒバナはコントローラを渡してマルチプレイにする。

穏やかな日常。


「ヒバナーパソコン貸してー」


ソマリがネットサーフィンを求めてやってきたようだ。

鈴のような声音で寝ぼけながら部屋に来た。


「その前に顔洗って朝飯食ってこいよ。みんな食べたぞ」


「えー!起こしてよ!」


「起こそうとしたら夜這いだって言うの誰だよ」


ヒバナの嘆息も無視して朝食に駆け出したのを見てゲームを再開する。


いつか近い未来で大きな戦争が始まる。

この国だけでは収まらない、世界中の人々が死にゆく大きな戦争が。

そしたらこんな日常もなくなってしまうのだろう。


「私もそれやってみていい?」


ふと部屋に入ってきたハバリが2人を羨ましがって参加を求めてきたが。


「モード変えれば3人でもやれるけど、お前コントローラ壊すなよ?まじで」


ハバリには前科がある。


「も、もうしないわよ!」


赤面になりながら断言し、コントローラを手に取る。


「ハンデは?」


このゲームは3D格闘のゲームで基本的に2on2のゲームだ。しかしプレイヤーは3人。となれば1人はCPUと組まなければならない。中でも、ほぼ毎日よくプレイしているヒバナは当然CPUだ。しかしいつものハンデを加えるならCPUへの命令は回避のみにし、実質ヒバナ1人VS2人の試合にした上で、ヒバナの体力上限を減らして、使用キャラを最弱のものにするというものだ。それは3回触られたら死ぬほどに弱く、攻めがたく、とても辛いハンデだ。いつもカガリと二人でやる時はそこまでやる必要は無いのだが、そう。


「お姉ちゃん弱すぎぃ!!」


ハバリは圧倒的にクソがつくほど弱すぎるのだ。


「……ッ……!!」


あまりの弱さに我ながらのショックを受けて硬直するハバリに、同情の眼差しを送りながらヒバナはゲームを続け、チームをハバリとヒバナに変更した。

ハバリが狙われればヒバナが守り、目を離せばハバリが闇討ちを行い勝負は五分五分で行われた。

ギリギリの勝負でタイムアップが迫る中、ハバリがトドメを刺されそうになる寸前ヒバナの一手が届きカガリを討ち取った。


「やったぁー!」


ハバリは無邪気に喜ぶと同時に、切れた集中力に呼ばれた疲労がどっと押し寄せクッションに沈んだ。


「ちょっとコンビニ行ってくるわ。何かいる?」


「鯖缶!」


「却下だ。適当なの買ってくるわ。あとハバリ着いてきてよ」


「……?わかったわ」


理由のない同行への誘いにとりあえず乗って靴を履いた。

コンビニは少し離れ歩いて五分ほど。道のりが半分を切ったところでヒバナがそっと口を開いた。


「なあ、ハバリは何を急いでるの?」


「……!」


よく分からない質問に疑問を浮かべつつも、心の奥底で図星を突かれたかのような錯覚に動揺を見せる。


「…………この気持ちはよく分からないけど、何だか2人が取られちゃったみたいで……。不安で不安で……私も一緒にやれば、私は……2人のお姉ちゃんでいられるのかな……?」


「知らねぇよ」


「………」


あまりの冷たい返答に沈んだ心が沈没するが、その後頭に置かれた手によってサルベージされた。


「お前はお前だ。どれだけ置いてかれようと、2人にとってはたった1人の姉なんだ。それに、たかがゲームに2人を取られようと、俺に出来なくてお前にできることあるだろ?」


「………?」


パッと浮かばないアドバイスに首を傾げると、ヒバナは一息吐き出し、再生飛行で瞬時に往復して2人を連れてきた。


「ねぇヒバナどこ行くの??」


「山にピクニックだよ」


モヤで籠を造り3人を乗せると、あっという間にモルゲンロートを抜け出した。

目的地は近場の山で、獣が多く人が寄り付かない危険な場所だ。

だがしかし、ライシャウルフを従えたこの3人ならなんら問題は無いだろう。


「ここなら好き勝手できるぞ。お前ら子供なら家に篭ってないでたまには外で体動かそうぜ。ま、俺は着いていけないから見学だけど」


「遊ぶって、具体的に……」


「鬼ごっこでいいんじゃない?ルールは単純で、鬼を1人決めて、2人は鬼から逃げる。鬼は逃走者に触れることで相手を鬼にして自分を逃走者へと切り替える。山だし3次元的な動きもできるから十分遊べるだろ。ハバリが最初鬼な」


「わかったわ。じゃあ2人とも逃げてね」


ルール説明が終わり鬼が選定されると一目散に2人は逃げ出した。流石獣人と言うべきか、あっという間に姿が見えなくなった。それに続き、10数えたハバリもまた、1歩でヒバナの視界から消失した。


「さてと、俺は何すっかな」


────。

──。


昼がすぎ夕方手前。

疲れ果てた3人はヒバナの前で固まって寝てしまっている。

花火大会の時間が迫ってきたのを確認するとヒバナは3人を揺すって起こし、黒もやを展開する。


「くっさ!」


「寝起き開口一番酷すぎませんかね!?」


人には分からない黒いマギの臭いは獣人には激臭らしい。

渋々篭に乗ると鼻声で楽しそうに話し始めた。


「姉ちゃん速すぎるよー!」


「そうかなー、でもカガリの木を使った器用な動きは私には追えなかったなぁ」


「直線入るとさすがにハバリ姉からは逃げきれなかったなぁ」


「ソマリも正面から避けて逃げるのなかなか良かったわよぉ」


「…………」


楽しそうに語り合う3人を尻目にヒバナは微笑み、少し遠回りをして家に帰った。

家に着くと準備を終えた女将が店で待っていた。

約束の時間前だが、全員揃ったということでみな揃って出発だ。神太郎は興味無いとかで仕事に行ってしまった。

そういえば神太郎はいつも仕事してばかりだ、娯楽とか何かやってるのだろうか。


「私ねぇ、若い頃に初めて見てからそれはもう行きたくて行きたくて、でも1人で見に行くのも嫌でなかなか行けなかったのよねぇ………」


「ママ……」


「だから、ヒバナちゃんありがとうねぇ」


「ねえねえヒバナ!アソコ行きたい!」


女将の長年の宿願など知らず、カガリは色とりどりに並ぶ屋台に目を輝かせている。一息置いて女将と目を合わせて笑い合うと、その手に従って人混みに溶け込んだ。


「あれ食べたい!」


さっそく食いついたのは唐揚げだ。言われるがままに即購入し与えるも。


「あつい!!」


猫舌には厳しいようだ。

花火大会は元は和国の文化らしく、秋国では2年に1度の一大イベントだが、和国では夏場は各地で毎年行われるらしい。


「冷めるまでりんご飴でも食べなよ」


「あまい!!」


カガリはムシャリとかじりつき、甘さに目を輝かせて吠える。ソマリとハバリは二人で動いているようだが大丈夫だろうか。


「カガリくんこれはどうかなぁ?」


女将はキャラの書かれた袋を渡してきた。風船だろうか。

中を開けると綿が詰まっており、恐る恐る口に入れてみると。


「………!!」


どうやら好評らしい。


「ハバリちゃんの所に行ってくるわねぇ」


カガリの喜ぶ顔を拝むと女将は2人から離れた。女将からしたら皆孫のようなものなのだろうか。


「カガリそろそろ唐揚げ行けるんじゃ……っと、すんません」


「あーぁら、こちらこそォ、すミませン」


振り向きざまに人にぶつかり咄嗟に謝ると、純白の髪を持った女性が振り向き謝罪を返してきた、が。


「………っ!」


瞼がないのだろうかと言うほどのギョロ目に、心の中でウゲっとリアクションを押さえ込み愛想を保った。

なんて不気味な人なのだろうか。

隣に並ぶのは体格からして男だろうか。

あれと付き合ってるとは考えにくい、おそらく兄妹だろう。


「ヒバナー!花火始まるって!!急ごうよー!」


「………!!」


「はいよー」


その叫びにピクリと反応してギョロ目の女は振り返る。


「へェ〜……じャあ彼ガね……」


「花火大会見たいから終わったらにしろよ。幸い実力者はこの街に居ないらしいから存分に暴れろ」


「アーい………ふふフ」


不気味に笑う彼女を避けるように列は裂け、悪目立ちはしばらく続いた。

そこからまもなくアナウンスが流れ、ざわめく広場の空に花が咲いた。


「わァ……綺麗……」


「ママ見れてよかったね」


「えぇ……ありがとうねぇ」


細く閉じられた目の奥で光るものをヒバナは見逃した。その後ろで耳を抑えて怯えるソマリとカガリがいたせいで。


「まあ、最初は音にびっくりするよな……。大丈夫だお前ら、なると分かってれば良いだけ、光ってから3秒数えればいいんだぞ」


平気らしいハバリと二人で宥め、何とか落ち着かせるとハバリがモジモジと見つめて来た。何か言いたげだが言い出せない様子にヒバナから声をかけてみると。


「どしたん?」


「いや、その、今日はありがとう……」


恥ずかしそうに礼をいうハバリに新鮮さを覚え、こっちを向いた頭を撫でながら上に向かせた。


「今はこっちを見とけよー、礼なんていつでも言えるがコレは今日しか見れないんだから。────それに、お前は妹みたいなもんだし、長女が辛くなったら兄に頼ってもいいんだぞー」


「……!……それはちょっと……」


「おいコラ」


やがてフィナーレが訪れ、暗い空のキャンパスいっぱいに大きく鮮やかな花が描かれ人々は魅了された。

空から光が消え、静寂に包まれると広場は拍手喝采に包まれる。

そして放送が流れ祭り終了の知らせが。


「御観客ノ皆さン!広場中央のステージをゴ覧クださイ」


スポットライトが当てられたステージには、1人の女性がマイクを持って立っている。純白の髪に純白の肌。知る人が見るその存在は。


「強欲の………吸血鬼……!!?」


「やうやウお越シくダサいました!花火が終わり帰宅モードにならレたと思イマスが!何卒!私たチのショーを最後に見ていっテは頂けナイでしョうカ!」


興味のない客は早足で帰るが、まだ遊び足りない客たちは居残りステージを囲むように群がり始めた。

不気味なギョロ目で不快な口調の彼女に知らず知らず魅入られてしまう。気がつけばヒバナも少し寄ってしまっていたが、女将に肩に手を置かれて我に返る。


「ママ、ごめんけど3人を連れてちょっと先に帰っててよ、夜遅いからチビたちは寝る時間だしね」


察しているであろう頷きを見せて女将は末の2人と手を繋いだ。

ステージ中央で人目を集める吸血鬼は不気味に笑いながら歓声を満喫している。

何を考えてるのか知らないが、被害が出る前に抑えれるよう臨戦態勢は取っておく必要がある。


物陰でシオンに変身し、観衆の中に入っていくとステージに釘付けのはずのこの場から2つの視線を感じた。


「私のパふォーまンスは少々過激でグろてスクな為、苦手な方には厳シイカモシレナイです!そレデモ大丈夫な方々はどうぞ!ご照覧アレイ」


「うぉおおおお!!」


花火の後とは思えないほどの歓声に驚きを見せるヒバナを舞台から指さす女が。


「ソコのあナた!舞台まデお越しクダさい」


「え……俺……?」


もし親玉からヒバナの存在を知らされていたら、これは公開処刑となるだろう。

それとは逆に知らずにヒバナを選んだとしたらそれは幸いだ。犠牲者を出さずに済む。


「こちラに来ていたダいた少年!何も仕込んデオりませンヨ!」


ステージに上がったヒバナをクルクルと回し、トリックがないのを証明させると、用意された椅子に座らされた。


「みテみテ!さあサア!グロイデスヨー!!それ!」


掛け声の後意識が薄くなった。

視界がおかしい。自分のもので内容に視界がグルグルと動く。一瞬見えた観客の顔が驚嘆と恐怖に満ちているように見えた。


「これヲコウしてー!ホレ再生!」


「うおおおおぉお!!!!」


再生という言葉が無意識に再生を促し、薄れた意識を正常に取り戻した。

何が起きたか、それは瞬時に理解した。

殺されたのだ。再生を前提に。


「……ッ……はあ……はあ」


戦うべきか否か。戦えば観客を巻き込みかねない。しかしこちらの存在にも気づいている以上人質を取られてるに等しい。


「御安心ください。他の御客人は御無事ですよ」


そっと耳に安静を囁く女声は先程聞いた狂気の女の声だったが、口調や声音が別人のように穏やかだ。


「貴方はとても残酷な方なのですね……。自らを犠牲とさせることで既成事実を作り出し正当防衛で我々を殺そうとするとは」


「…………?」


何を言っているのか理解できない。

それどころか、ここがどこなのかも分からない。

客達は消え去り世界も消えた。何故か自分ははっきり見える明るく漆黒な世界。


「先程見せたのは深層心理。つまり貴方が望んだ我々の対応でございます」


「深層心理……?じゃああれは実際にはなく俺が映し出した妄想だと……?」


「左様でございます」


目の前に歩いて現れ、椅子も何も無い空間に座りだし、同じ目線で肯定する。


「この空間では肉体にダメージはあるの?」


その問いには首を横に振って否定を示した。

であればこの空間は空間魔法とはまた違うものらしい。

しかし実体同様の触覚、痛覚がある。


「この世界は精神世界。しかし実世界と同様の感覚で存在しています。つまり、こちらで受けた痛みは影響は出ませんが精神面のダメージはフィードバックされます」


つまり死にはしないが死という実感をした場合、現実でも死にうる可能性があるというわけか。

相手がヒバナなのは不幸中の幸いだろう。数え切れないほどの死に慣れている。恐怖や痛みはあれど、死という概念が薄れているヒバナには大して影響は無さそうだ。


「我々は2人で来ました。もう1人は外で他の方々の相手をしていますが、御安心を。我々の目的は1対1の決闘でございます。他の方々には我々から危害を加えるつもりはありませんので、どうぞこちらに集中して頂きたいです」


「それはどうも」


「開始の合図は貴方……いえ、ヒバナ様のタイミングで────」


立ち上がった彼女が背を向け振り向くと同時に、ヒバナ言葉を待たずしてシオンで斬り掛かるとあっさり彼女は両断されてしまった。

いや、魔法の特性上相手も精神的な死には慣れているだろう。もしかしたら急に再生して反撃してくるかもしれないとヒバナは警戒を解かずに見張ると、その遺体に違和感を覚えソレに気づく。


「…………んな!?」


「……アァ……なんて残酷なのでしょう。人質の命を、正義となる立場の方が奪うことになるとは……」


いや、これは幻だ。ここは精神世界。いかなる幻想も妄想も再現を可能にする。惑わされては────。


「残念ながら、彼は死を受け入れてしまわれたようです」


命の尊さに涙する彼女はまるで神の使いのようだ。1つの尊い命が失われ、手を組んで祈りを捧げ遺体を消滅させる。


「どう言い訳されようと、貴方が彼を殺害してしまった事実は変わりません。貴方が認めなかろうと、現実に戻れば全て知りうる事。アァ……なんて事を……」


「そんな、観客に危害は加えないと言ったじゃねぇか!」


認めたくない現実に吠えるヒバナに、真実に涙する彼女は冷たい眼差しで応える。


「斬ったのは貴方ですよね……?」


「んな……」


「確かに私は明言しました。我々は危害を加えるつもりはありませんと。…………残念ながら、危害も殺害も貴方が行われた事です」


「まじかよ…………」


攻撃すれば観客が犠牲になりかねない現状に降参し、刀を背後に投げ捨てた。


「はて、何をもってして負けなのでしょうか。貴方は降伏を示しましたが、それでもどちらかが壊れるまでこの世界に終わりはございません」


無抵抗に無防備に不用心に歩いて、強欲の子供を通り過ぎるヒバナを横目に見逃し、戦う意思のないヒバナに振り向こうとした刹那────。


「あんたとは長い付き合いになりそうだ」


その首は後ろから飛来した刃折れの刀に刎ね飛ばされた。

飛ぶ刀はヒバナが掴むと急停止し、慣性など知らずか軽々と刀を振り回す。

刃は肉を裂き骨を断ち、鈍い感触を握りしめながらヒバナは、床に転がるその身を切り刻んだ。


「まだまだ俺が斬ってるのは確実にお前だ」


鋭く冷酷な眼差しは、相手が誰であろうと関係なく切り裂く鬼の目だ。


「これもまた精神」


切り刻まれた肉塊を踏みつけながら声のする方に振り向くと、そこには先程の女が何事も無かったかのようにこちらを伺っている。


「へぇ、やっぱりそうか。…………なあ、名前はなんて言うんだ?俺はヒバナだ」


「私は、そうですねぇ。マンドレイクとでも名乗りましょう」


「っしゃ。どっちが先に精神崩壊するか、妄想勝負といこうや……!」


最低不純下品な妄想バトルが幕を開ける。

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