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七罪華〜傲慢の花〜  作者: 鰍
第1章 2Die6Life
38/60

1.11 思い出は手の中に

今日は遠征して他種族を狩るらしい。生存できるかは自分次第。

死にたくなくば殺れ、可能な限り仲間を守れ。何度も聞いた騎士の教訓だ。


生存率の低い作戦になると確実にそれを言われた。物騒な言葉で最近まで拒絶してたが、今は違う。


死にたくない。せっかく与えられた第2の生。記憶を継ぎながらも生まれ変わることが出来た自分。初めて人間として、女として好きな人が出来た自分。全てを失いたくない。

全てエゴだが、誰だってそうだ。

彼女はどう思ってるんだろうか。


クロッカスは作戦を聞きながらふと横の彼女に目を送った。


彼女は凛とした顔立ちで堂々と。


「スー…………」


寝てる!?


まじめな彼女が寝るなんて…………悪い夢でも見て寝れなかったのか、夜な夜なトレーニングしてたのか…。



────。

──。



目的地へ向かう道すがらクロッカスはアーサーの馬と並走した。


「アーサー作戦聞いてた?寝てたよね?」


「まさか、起きてたよ。ほら今だって目的地にまっすぐ向かってるでしょ」


平然とした声音で堂々と返答するが、やはり今も寝ぼけて脳が働いてないらしい。


「前にいる隊の背中を追いかけてるだけだよね。起きてたならこれから討伐する種族わかるよね?」


「…………ぇえっと……妖魔?」


「鬼人だよ。どうしたの最近おかしいよ。昼間に寝たり急に自分から家事をやりだしたりするなんて」


「いやさ、いつまでもお母さ……クロッカスに任せてばかりじゃ申し訳ないかなって」


理由は嘘言うほど言いたくないらしい。


「もう何でもいいけど戦闘になったら集中してよね」


「うん、気をつけるね。ところで私たちの前にいる隊って何者なんだろう。鬼人なら5つ部隊を必要とするのに、私たち合わせて2つだよ」


先を進む部隊は後ろから眺めるに、特別強そうとかそういうオーラは無く、むしろ自分たちと変わらない一般的な部隊だ。


「────!!!」


最前列辺りでなにか揉めてるのか叫び声が微かに聞こえた。

道幅が狭いために列を長くしてるせいで情報が全く伝わらない。


「前の方でなにかあったのかな…………ってアーサー……?」


隣を進んでいたはずのアーサーが列から飛び出し、道をはずれて木々の間に馬を走らせた。


「アーサー隊はリレーで後ろに伝えろ!他種族の奇襲だ!全員戦闘態勢!敵の数不明だ!全方位に油断を怠るな!私は前方の確認に行く、指示は一等騎士クロッカスに仰げ!」


先の寝ぼけがどこへ行ったのか、今のアーサーはいつも通り頼りになるアーサーだ。

しかし、彼女が抜けたらクロッカス1人では隊を守りきれない。とはいえ、彼女以外に向かわせても帰って情報を届けることは困難だろう。


彼女に任されたんだ。

100人を欠けさせはしない。


2本の長さの異なる剣を抜刀し列が止まるのを確認すると、馬の背に立ち周囲を警戒した。


────。

──。



列の先頭が近づくにつれアーサーは違和感を覚えていく。

そして先頭を目の当たりにした時違和感を全て理解した。


叫び声が聞こえたのは最初だけで誰も焦ってないどころか警戒もしない。

他種族相手に2隊なのに特別精鋭でもない。

他種族が見当たらない。


それもこれも1人が全てを解決していた。

その者は青空のない曇天の下に青空を存在させるような髪をなびかせ、その足元にはその者の瞳のように赤く染った鬼人達を転がしている。


「…………!」


後ろから音なく飛び上がり死角から切れ味の悪いナタを青い彼女に振り下ろしたのをアーサーは見送った。

本来なら助けるか彼女に伝えなくてはならないことを、アーサーは周りの騎士達のようにただ傍観した。何故かは分からない。本能ではない。まるで彼女が戦場を独占してるかのような気分になった。


飛びかかった鬼の首に刃が抵抗なく通され、触れるもの皆透けてゆくその至高の剣にアーサーは思考を奪われた。

ひと目でわかる。自分が鍛え上げてきた努力を嘲笑うかのような彼女の肉体、技、全て彼女は努力せずして手に入れたものだろう。しかし微塵たりとも不快ではない。むしろアーサーは尊敬していた。

その剣は腐らず、傲らずその剣を正しいことに使っていた。

彼女こそが自分の目指す到達点なのだ。


「そこのあなた、確か13番隊の隊長よね。作戦は終わりよ。ターゲットは自ら首を置いてったわ。帰還よ」


「あ……はい!」


────。

──。



帰還後の寮で大人しく座って虚空を見つめるアーサーに夕食を持ったクロッカスが声をかけた。


「…………。どうしたのアーサー。珍しく今日筋トレしてないじゃん。ほらご飯食べよ」


「ありがと。筋トレ辞めようかなって」


「…………え、何で……?」


「いやーね、なんだか私の進んでる道が今のままだとゴールに辿り着けないんだよね。こんな、男勝りの肉体とは違う強さを目指したいの」


ふとクロッカスの脳裏を兵士時代の彼女の記憶が横切った。

兵舎で力自慢として腕相撲大会が開かれた際に、飛び入りしたアーサーが参加者の大半を地に這いつくばせ優勝した思い出だ。

そんな努力の結晶と思い出に彼女は唐突に見切りをつけた。


「まぁ、いいんじゃない?アーサーが別の道を進むなら僕はいつも通り応援してるよ」


「………………」


アーサーは無言で伸ばした手にVサインのように指を2本立てた。


「…………?」


意図が分からず首を傾げるクロッカスに応えアーサーは口を開く。


「2年。私はあと2年で聖騎士になる」


「聖騎士……?ああ、あの人離れした強さの少女に与えられた称号だよね。あれ、それ知ってるってことはあの作戦の後あっちの隊長さんのこと調べたんだね。上等騎士に上り詰めたアーサーならやれるよ」


あの青髪の少女しか聖騎士がいないのであれば、目指す頂きは聖騎士。

クロッカスはただの騎士であるアーサーに聖騎士になれるかなんて疑問を持たずに肯定した。


「そして私が聖騎士になれた暁には。クロッカス」


「…………?なにー?」


晩飯を運び終え水をコップ一杯飲みながら耳を傾けた。


「結婚しよう」


「ブフォッ」


逞しい目付き体つきで求婚されたクロッカスは思わず喉の手前まで運んだ水を全てコップに吐き出した。


「ぇえぇ!?なんで、そんな急に!?」


「だってあなたも私が好き、私もあなたが好き。そしてお互いいつ死ぬか分からないでしょ?」


話が1人で進んでいき追いつけないクロッカスは目を回しながら自分の今立つ結婚という言葉を頭の中で繰り返した。


「ちょちょちょちょっと待って!」


「二年の間に死んじゃうかもしれないから今しとく?」


「ほんと待って!」


なんでアーサーのことが好きなのを知っている。いやそれは問題ではない。

落ち着け落ち着け。

まずは返答が先だろう。

僕はアーサーが好きだ。人としても女性としても。しかし結婚して彼女を女性として幸せに出来る気がしない。彼女も戦士として生きることを選ぶだろう。ましてや聖騎士になってしまったら国が許してくれなくなる。死ぬまで国の奴隷だ。

彼女が望むのならそれを選びたいが、私欲を言うなら彼女には死とは遠い幸せを送って欲しい。


「アーサー。僕は────」




──────。

────。

──。




1年半が経過する頃、アーサーの男勝りの肉体は面影を僅かに残して薄くなった。

今なら腕相撲をしても余裕で勝てそうだ。

しかし剣を振るえば、今の彼女にはとても敵う気がしない。

1年間、実戦を挟みながら磨かれた剣は、今までの剛から技に打って変わった。


違いが見え始めたのは鍛え始めて1年がすぎた頃だ。その日は妖魔討伐の任務で25体の妖魔と交戦した。

以前のアーサーなら一撃で妖魔の岩のような頭蓋骨を粉砕してたが、トレーニングを変えた今のアーサーでは筋力不足でそれが叶わない思われた。振るえぱ骨に弾かれ致命的な隙を晒すだろう。しかしアーサーはそれを知りながらも、妖魔の攻撃を潜り抜けその頭蓋に剣を通した。


クロッカスは持ち場を離れ全力でアーサーへの追撃阻止へ駆け出したが、足を止め戦場のど真ん中で呆然と立ちつくした。

アーサーは隙を晒すことはなく、ましてや追撃の恐れもなく、羽毛のように柔らかく着地した。


別人のように生まれ変わった剣技は数年の努力の末に手に入れた剛を嘲笑い、1年の練磨で更にその高みへ上り詰めた。

その剣は岩のような頭蓋を砕くことなく、空気のように頭をすり抜け額の上部を地に落とした。


「────」


一切のズレを許さない精密な線を描く刃の美しさに夢中になるクロッカスの後ろから、一部隊を蹴散らした妖魔が真っ赤に染まったナタを振り上げた。


────刹那、クロッカスの頬を撫でるそよ風が妖魔の小指を切り落とした。


青空の下に輝く銀の刃は、返り血で真っ赤に染まった巨躯を自の血で上塗りし地に落とす。

その日はアーサーが1人で8体討伐し、その他が5体を仕留めたところで危機感を感じた妖魔が撤退して任務は終了した。


あれから半年経ち、アーサーの実力は大勢の目に入るようになり今では2人目の聖騎士の誕生を噂されている。

現在ではアーサーの耳にもその噂が届くようになり、喜びを力に変換して鍛錬に励んでる。


あと半年。この調子なら半年以内に達成出来るかもしれない。


「アーサーそこの野菜適当に切ってー」


「はーい」


しかし、剣の腕は良くても…………。


「ごめーんクロッカスゥ…………」


包丁さばきは全然だ。


─。

────。

──。



1年半遡り求婚の答えの夜。

クロッカスはアーサーに唐突な求婚をされ、悩んだ末にようやく答えを出した。


「アーサー、僕は…………。僕は、君と幸せを歩きたい。けど、君の求婚を受け入れることは出来ない」


「……………………」


断られると思ってなかったアーサーは石のように硬直する。


「僕は君より弱かれど男だ。君が聖騎士になった暁には、僕から君にプロポーズするよ」


「………………!」


パァアアと硬直したアーサーの体が緩み顔が明るくなった。


「2年後に僕達結婚しよう」





ーーーーーー以下本編ーーーーーーーーー




慣れない転移装置の感覚に酔いながら到着と同時に飛び出し、モルタナが出てくると手を伸ばした。


「ようこそモルゲンロートへ」


「おぉ…………地味…」


薄い反応を見せるが、気持ちは分からなくもない。

王都は都会中の都会。あちこちガラス張りのビルだらけでまさしく最新鋭ともいえる。それとこの旧風な街を比べたらタイムスリップしたと言われても否めない。


「門限とかある?なくても暗くなる前に帰れるようにしようか」


真っ直ぐギルドに足を進め扉の前へ。

例のように扉の正面は気をつけ、ゆっくりと安全を確認しギルドに入った。


「安全、ヨシ」


不自然な動作を不審がられるが、こうでもしないと巻き込んで怪我をしかねない。


「はいここがギルドだよー」


「おぉ……地味……」


またしても薄い反応を見せられ連れてきてよかったのかと少し公開する。

王都のギルドはさぞかし上質なんだろう。


観光するなら先にマスターに許可取らないとダメかな。

そういえばアルバムとかもどこにあるか知らないし。


「先にマスターのところ行こうか」


階段を上がり二回を超えマスター部屋の扉前に着いた。

少し息が上がってるのを見るに、モルタナの体では三階を続けて登るのは少し辛かったらしい。


「えっと左で握ってから右を握って押す…………だったかな」


ブッブーー。


脳内に響く残念な効果音が意識を揺らし、目眩のような感覚にヒバナは跪いた。


『手順逆さね…………なんだヒバナさね。アポを取ってから来るのが常識だけど、今は暇だからいいさね』


扉がひとりでに開くと中は煙たく入るのを躊躇ってしまう。


「少し息止めて入ろうか」


恐らく煙は出入り口のとこだけだろう。

そう信じて息を止め足を進めた。


「やあ、いらっしゃい。そっちの子は初対面さね。…………こっちの姿の方がいいかな」


老婆からおなじみの少女になり、モルタナの傍に近寄った。


「やあ、この町で見ない顔ということは外で出会った子だね?あまり人について行って外に出ちゃダメだよ。…………それより、あなたの顔どこかで見たことあるような…………」


目を細めてマジマジと見つめられ、恥ずかしそうに顔を背けようとするモルタナの前に身を乗り出した。


「暗くなる前に家に返したいから続けていいですか」


「ああ、そうだね。私欲よりも客優先だ。ここに来た要件はなんだい?」


「ギルドのアルバムってものが見たくて」


「あぁ!それならちょっと待ってね」


扉に手を伸ばし、触れずして開けると大きな本が飛び込んできた。


「おおかっこいいなスタイリッシュで憧れる」


「これを見た人だいたいそう言うけど、そんなにいいものでもないよ」


褒められ少し嬉しそうにするが、肯定はしなかった。

見かけに反してマギの消費が激しいのだろうか。


「なにせ、空間認識能力が必須だからね」


「空間認識能力?」


「魔法はAIじゃないから全てをやってくれるわけじゃない。自分でどこに何があるかを把握、認識をして、どこにどういう力を与えてどういうルートで運ぶかを正確に理解しなきゃならないんだ。わかりやすい例えでいうと、目隠しをしてラジコンレースするようなものだよ。それならまだいいけど、魔法となると別なんだ。ルートに自分の知らない人等の障害物があったら、当然避けれず衝突する。衝突すれば、魔法から外れた本は落下し、それに気づけない自分は魔法を続け、魔法だけがゴールにたどり着いてしまうんだ。あと、レバーで動けるわけじゃないから、3次元の方向と角度を理解して移動させないといけないの。あとあとあと人間は吸血鬼や妖精のような魔法特化した種族じゃないから、一度に使える魔法は指の数が限界と言われててね、とはいっても10本分の魔法が使えるわけじゃないんだ。長年魔法を研究してる私でも6本が限界で、私の知ってる中だと最高は7本だよ。私基準にして考えよう。6本の中でさっきのをやるとしよう。1つをルートの障害物の認識にまずは使おう。2つ目を本に固定の魔法を、3つ目を浮力、4つ目を押し出し、5つ目を静止に、6つ目をトビラの開閉に。あとは4と5を使って移動させれば先のようにできるよ」


なるほど。なんとも頭の痛くなる工程だな。これをさっきの早さでやると意識が薄くなりそうだ。


横で楽しそうにアルバムを眺めるモルタナに二人は視線を送った。


「そういえばどこで出会ったんだいこんな綺麗な子。将来が楽しみだねぇ」


「王都ですよ。┄┄┄┄へぇ、難易度4結構クリアしてる人多いんですね」


アルバムの写真の上には日付、内容、難易度、メンバーが記載されている。


よく見れば写真は達成後や、戦闘中など色々な場面がある。

戦場カメラマンという役なのだろうか。


「…………お、神太郎じゃん。あいつも他の人と一緒に行ったりするのなー。え……と内容は……」


「神太郎はあー見えて意外とみんなと仲良いよ。今日だって他の人とクエスト行ってるしね」


ほー。そうなのか。

あの何考えてるか分からないやつが社交的ね……人は見かけによらないものだな。人じゃないけど。


「内容は普通なんだなー。でも、場所があまり同じところに行かないのか」


「そうだね。神太郎は旅が好きなのか、クエストで遠いところを選ぶし稼いだお金で旅に出たりするよ」


本当に見かけによらない奴だ。


「ねぇねぇこのみんなの手にある印ってなにー?」


アルバムを見ると確かに位置は人それぞれ違えど、みんな角の生えた兎のような印がある。


「それはね、ギルドの一員の証だよ。加入した際に情報と一緒に肌に入れられてね。印のあるところに感覚を集中させると浮き出させれるんだよ」


「え、俺それないんですけど…………」


そういえば見たことがない。

神太郎のも見たことがないな。


「ああ、これは潜在的に入るものでね。無意識に印の位置を決められるんだ。探せば体のどこかにあるよ。首やお腹にある人や足の裏もたまにいるよ。このギルドには居ないけど」


「いいなぁ…………憧れるなぁ……」


王都には稼げる仕事が溢れてそうだし、両親もそれを選ぶだろう。

それにしても印が見つからない。


「印を付けるだけならできるよ。ただ、帰る時に消すか、他の場所では表示させないように気をつけないといけないけどね。良ければつける?」


「いいの!お願いします!」


「じゃ、腕をだしてね。大丈夫、熱くないよ」


瞳を輝かせるモルタナの腕に甘い香りの煙管から出た灰を落とした。

このBBAこんな幼い子に根性焼きを……。

少し引き気味に様子を見ていたヒバナだが、灰が皮膚を焼かずに吸収されるのを見て認識を改めた。

思い返すとこのBBAちょくちょく凄い魔法を使ってる気がする。もしかしてすごい人なんじゃ……。


「はい完了」


「わぁー!」


いきなり感覚を見つけたのか、右手にピンク色の紋様を浮かせた。憧れを手に乗せたモルタナは嬉しさに声を失った。


「いいなぁ……俺未だに見つからない」


「はて、どこなんだろうね。家に帰ったら鏡で背中や臀部をを見てみなよ」


「最後にお願いしてもいいですか」


「うんうん何でもいいよぉ」


「僕もアルバムに載りたいです」


恥ずかしさと申し訳なさを混ぜた頼みがベニゴアの何かに刺さったらしく、モルタナのように瞳を輝かせた。


「ブフォッ。…………美少年少女の頼みは断れないさね」


興奮して魔法が乱れたのか本来の姿に戻り、さらに遅れて鼻から血を吹き出し丸めた拳の親指を立てた。


「じゃ、下に降りてカウンター前でとるさね」


扉から出ると下に見覚えのない男3人が受付カウンターに来ていた。ああやって依頼されるのだろうか。いや、現代ならデジタルで依頼できるか。


「この顔見てないですかね」


内容的にどうやら公認ギルドの警察っぽい。

カウンターに尋問する様子を見るに、70代のBBAが歳を考えずに目の前で階段から飛び降りた。

何事もなく羽毛のように柔らかい着地を見せつけ、早歩きで警察の肩を掴んだ。


「ずっと中で仕事してるこの子らが知るわけないさね。あたるなら他をあたるさね」


警察を睨むように手の甲のギルド印とは少し異なる印を見せつけ3人同時に竦ませた。


こうも威嚇すると仮にターゲットがいた際に怪しまれないだろうか。いや、国の犬である公認ギルドは嫌われてるらしいからあれが普通なのかもしれない。


「失礼しました。では」


早歩きで扉から逃げていった3人組を見送ると降りてきたモルタナに笑顔を振りまいた。


「さ、日が落ちる前に撮るさね。はいはい!未来のスターになる美少年と集合写真写りたいやつはカウンター前くるさね!」


1階に昼間から屯するメンバーを適当に呼び寄せ、一同は言われずともモルタナを中心に並んだ。


写真を取り終えるとモルタナを肉の壁が覆い隠した。

確かに容姿はとても綺麗だ。あと数年したら同性でも惚れてしまうのではないか。

そうこう考えてると肉壁に揉まれたモルタナは見えなくなり、生存を確認できる情報が山から突き出た死にかけの手だけだ。全方位から質問攻めを受けるモルタナは何から答えればいいのか分からず、あわわと頭が混乱してる。


「どいたどいた!この子はもう帰らないといけないから皆離れるさね。ヒバナ。『しっかり』家に確実に送り届けるさね」


強調して言われたが、この御時世だ。言われずともするつもりだ。


「もちろん」


その答えを聞くとベニゴアは先の魔法のように、写真を手元に引き寄せた。


「この写真と手の印は帰っても見つからないように保管するさね」


ベニゴアは写真をコンパクトに折りたたみモルタナに渡すが。

あれ、写真って折りたたんでいいものだったっけ。

同時に同じことを思ったらしいモルタナは差し出された写真を前に硬直してる。それを見てクスりと笑みを浮かべたベニゴアは写真を広げくしゃくしゃに丸めた。


その行動に驚き伸びたモルタナの手に、くしゃくしゃに丸められた写真が届けられた。


半泣きになりながら写真を広げシワを誤魔化すように伸ばすと。


「────!」


奇妙な事に丸められたはずの写真にはシワ1つなく、新品同然の綺麗さだ。


「これが、魔法と生きる魔法社会の技術さね。それは形状記憶の魔法を特殊な写真などの紙に付与することでそうなるさね。あ、ヒバナ、そっちから出るより裏から出よう。案内するさね」


そう言いながら手招きされ、ヒバナは魔法と写真に感動してるモルタナの手を引いた。

ギルドの裏口前は少し狭く、加えて騒がしいギルドから音が漏れないように防音の壁になってるため静かだ。


「ヒバナ、その子と出会った場所は王都さね?」


「────!」


ヒバナは図星と同時に気づく。静かなのは防音ではなく、ベニゴアの魔法なのだ。


「その子は、いや、そのお方は、モルタナという名前ではないさね。秋国第1王女アルストロメリア・ダイアモンド・リリー・ネリネ様さね」


「…………は?」


唐突に何を言い出す。モルタナが王女?悪い冗談を。

チラリと横目でモルタナを見ると、認めるかのような真剣な眼差しでこちらを見ていた。



「え、嘘でしょ…………マスターはなんでわかったの……?」


「そりゃ、麗しい王女様のお顔だからさね。とはいえ、最初は分からなかったさね。でも、さっきの警察を名乗る城の警備隊で思い出したのさ。王女様が元気すぎてよく脱走してるって話をね」


「うへぇ……」


どんな場所よりも警戒レベルが高い城から逃げ出すとは…………。元気の域を超えてないか。


「国の5分の1が反乱分子さね。当然、城の警備にもスパイがいて、今頃警備と一緒にテロリストが血眼で探してるさねヒバナだけじゃ頼りないから、用心棒をつけようと思ったけど、神太郎はいないのか…………。仕方ない、私が護衛するさね」


「………………姫様ずっと静かですね」


「あの、その…………騙しててごめんなさい!」


吐こうにも吐けなかった一言を吐き出し、頭を下げようとする肩をベニゴアは抑えた。


「よしてください王女様。王族が頭を下げてはなりません。ささ、日が落ちきる前に帰りましょう」


裏口の扉を開けると魔法が解け音が戻った。

東から頭上にかけての空は紺色に、西は黄色に染まり陽は地平に。想像より早く暗くなる空に季節を感じる。


「────!」


外の空気を味わいながらヒバナは違和感を覚えた。


「おかしい、何でこんな町に観光客がいるんだ」


「あんた失礼すぎるさね…………。とはいえ、今の状況となると、護衛かテロリストかの二択が可能性高いさね」


そう言ってベニゴアは路上で煙管を吸い始めた。

ベニゴアがどんな魔法で戦うのか見てみたいが、今は王女様を無事に送り届けることが大切だ。


「ここまで追ってきてるなら、変装もバレてるさね。不自然な動きをするやつは、100%黒さね。ちなみに表からでてたら、警備の群れに捕まってたさね」


「え、それなら引き渡した方が安心じゃない?…………あいや、その中にスパイがいるかもしれないか」


テロリストが同時に捜索してるのなら、その中にいないはずがない。仮に、その中にテロリストがいなかったとしても、帰還中に襲われる可能性もある

そうなれば、1番信用出来るのが───。


「あのー、すみません。少し伺いたいことが」


「…………はい?」


唐突に後ろから4人組に声をかけられたことにより、ヒバナは身構えようとしたがベニゴアがその前に引き止め前に出た。


「何さね。残念ながらおすすめできるカフェはこの街にはないさね」


男たちは素性を隠す気もなく3人を囲った。


「いえ、あなた魔法士ですね。痛いのが嫌であればご同行願いたい」


言い放つと4人当時に腕を出し赤く浮き上がった紋章を見せつける。それが何を意味してるのかヒバナには理解出来なかったが、隣のベニゴアは鼻で笑った。


「ッフ。3流魔法士が馬鹿の一つ覚えさね。マジックジャミングでベテランを封じれるとは……お生憎ゥ〜」


「魔法が使えない魔法士にベテランも何もあるまい。望んだとおり、少し痛い思いしてもらう」


男達が4人同時に1歩下がると、足元に浮き出た2種類のうちの片方の魔法陣から放たれた青白いイナズマが2人を貫いた。


「…………ッッ……カッ」


2人は胸を抑えながら痺れる身体で跪いた。

先程男達が踏んでいた場所には2つの魔法陣が描かれている。丁度今使われた魔法も2つなことからジャミングとこの痺れる魔法だけで完結らしい。

いつの間に設置したのだろうか。素振りはなかった。

もともとそこに設置していたにしてはピンポイントすぎる。


「ほう、今の魔法具は仕込み靴なんてあるさね。予め靴裏に特定の魔法を仕込んで、設置したい場所にスタンプするさね?」


「なるほど。そういう仕組みなのか」


ヒバナが納得すると2人は何事も無かったかのように立ち上がった。2人の胸には青白い魔法の矢が刺さったままだ。それはつまり、まだ魔法の効果が残っており2人を拘束してる、はずなのだが。この2人は平然と結界の中で立ち尽くしている。状況が飲めない4人をベニゴアは嘲笑う。


「最初に言った通り、やっぱりあんたら3流さね。本物の魔女とやらを体感していくさね」


不気味な笑みで笑うとヒバナは直感で王女の目を、手で覆い隠した。

その笑みに怯んだ4人を追うように左腕が伸ばされた。


「…………ッッッッッッッッ!!!!」


刹那、胸を穿つ雷が容赦なく男達の自由を規制した。

全身が痺れて動かそうとすると激しい不快感に襲われる。


「これでも、威力を落としたほうさね」


囲う魔法陣を踏んでかき消し魔法を無力化すると3人は転送装置へ歩き出した。

しかし、救援に駆けつけたテロリストの仲間が再度道を阻み立ち塞がる。


その現場から建物を挟んで20メートル離れた位置にて、騎士たちは王女の危機に気づかず事情聴取を行っている。


さらに離れて500メートル先、大通りの真ん中を堂々と歩く3人の人影が。


「……にしても、こんな堂々と歩いても安全なんですね」


「連中はスピード勝負さね。救難でたらその場の総員で行動に出るさね。それを利用すれば、遠くで私の分身におびき寄せて安全にいけるさね」


遠隔操作してるのは凄いが、それよりも遠くの敵の動きをどうやって把握してるのだろうか。

空間認識の魔法の圏が数百メートルにも広がってるのだろうか。


「…………うん、うん」


静かだと思ったら、1人で頷き出した王女にヒバナは目を細めた。


「右斜め後方建物裏から警備が来るみたいです」


「え?」


「あらほんとさね」


どこから得た情報なのか、ベニゴアの探知で事実が確認された。

不気味な流れにヒバナは背筋が凍るのを覚えた。

しかし今隠れればベニゴアの足止めの限界と、転送装置への道がなくなってしまう。ここは急いで行った方が────。


「姫様に触れるな。汚らわしい鬼め」


王女の手を引こうと伸ばしたヒバナの腕を、冷たい声が刃となって裂いた。


鮮血と共に黒いモヤが吹き出し、理解の追いつかないヒバナは傷を塞ぐよりもモヤを切れた部位に纏わせた。


「遅くなって申し訳ございません姫様」


ヒバナと王女の間に割込み切りつけた勢いを止めずに回転し蹴りつけた。


王女には刹那の出来事で何が起きたのか理解出来ず、気づけばヒバナは垣根に飛び込み、目の前には直属部隊の隊長である、


「ナズナ!?」


「はいナズナでございます姫様」


満面の笑顔で振り向いたナズナは少年に向けた殺意と共に刃物を背中に隠した。

獣人のように尻尾はないが、どこか犬に似ているというか、犬のようだ。


「ご無事で何よりです、直ぐに帰りましょう。親衛隊遅いぞ!」


建物を飛び越え遅れて部下たちが王女を囲み保護した。

ナズナ含め7人の親衛隊は全員が女性で構成されている。


「いてててててててててて」


蹴りのダメージは黒モヤで防いだが、飛ばされた先で枝が刺さったり肌を切ったりで背面がとても痛い。再生すればいいけども。


「おい人鬼。よくも姫様を遠方へ連れ回してくれたな」


「やめてナズナ、ヒバナは悪くないの」


「はい姫様」


即座に跪き尻尾を降る様子を幻視させた。


「そうだぞナズナ。善良な市民の俺を傷つけるなんて酷いやつだ」


「お前は私の名前を呼ぶなァァァァ!!!!」


ブチ切れながらヒバナに剣を振り回すが、当てる意思が感じられなかった。


「まぁ落ち着くさねナズナ。───あんたら、なんで未だに内通者を特定してないさね」


ベニゴアが仲介に入ったと思ったら唐突に親衛隊を睨み始めた。


「あなたは…………!」


「正直、今の城に帰すより、警備一人いないうちのギルドで預かった方が安全さね」


「私も同感ですが、そうはいかないのですよ……。……失敬……」


対面するベニゴアから目を離しその奥を見据え、口から炎を手に吐き出し握ると、指の隙間から先程とは比にならない大きさの炎を溢れさせた。

炎は7つに分裂し、剣のシルエットを形成していく。


「姫様を狙うテロリスト共め…………私の業火で焼き切ってやる…………!」


その髪の色を模したかのような真紅の剣は上空へ浮き上がり、ナズナが手を振り下ろすと散らばって降り注いた。


ひとつが近くに落ちたらしく、苦痛を叫ぶ悲鳴がすぐそこで聞こえた。


「姫様をお連れしろ。ここは少し過激になる」


悲鳴の聞こえた物陰からふらついた男が現れ、路上に出ると地面に沈んだ。


「うわ…………」


親衛隊がいち早く王女を連れて行ってくれたことにヒバナは感謝した。

目の前の男は真紅の剣に胸を穿たれ、周囲の血は出血せずに焼き固められている。

体内の状況を想像すると胃から混み上がるので考えないようにしよう。


「まったく、跡を残さず処分するのはいいけど、遺体は誰が片付けるさね」


「燃やします」


うわ怖……。

即答するナズナにドン引きして1歩下がるヒバナの前にベニゴアは1歩出た。


「しかし、あんたの魔法は相変わらず1目置くさね」


「あなた程じゃないですよ」


「え、2人は知り合いなの?年の差凄いね」


「貴様人に対してもこのお方に対しても失礼すぎるぞ!」


怒りに流され喉から炎の剣を引き抜き振り上げ、ヒバナに振り下ろそうとしたが。


「熱ッッッッ」


火傷したのか、炎の剣を反射的に地に落とした。


「…………え??」


おいおい、まさかこの人…………。


「それも相変わらずさね。怒るとすぐに我を忘れて身を滅ぼすといい加減学ぶさね」


「不覚…………」


あ、この人ちょっと可愛く見える。


「あ、追いかけなきゃ」


「まてモブ顔!」


「え、文字だけのこの世界で初めて表現された俺のイメージがモブ顔!?」


軽くも重くもない微妙なショックに足を止め振り返った。


「モブ顔が気に入らないならもっと印象強い顔に焼いてやろうか」


ジリジリと火を吹きながら歩み寄るナズナに合わせて1歩ずつ引き下がると、ヒバナは毛を抜いた。

このままではテロリストと一緒に処分されかねない。

再生飛行で瞬く間に戦線離脱し、雑貨店の前で飛び降りた。


「えっと……」


小さな布と小さくて薄い木板を購入し再度走り出した。

店から離れた途端、背筋が凍てついたと錯覚したが、実際は深く深く背面を焼き切られていた。

誰かはすぐに分かった。


「姫様に近づくな汚鬼め!」


モブ顔って言われたり汚鬼と書いて鬼と読まれたり、斬られたりでナズナは嫌いだ。

そして案の定傷口からモヤが溢れ出し再生しない限り止まらない。

ベニゴアの知り合いらしいから、このモヤを扱える体質も見たら同様に理解してると思われるが、何故攻撃される度にモヤが止まらなくなるのが全然理解できない。


「聞いても斬られそうだしなぁ…………」


「フレイムアロ……って何故止めるのですか」


後ろからゆったり追いついたベニゴアが、火の矢を引く手を掴み攻撃を強制中止させた。


「ヒバナはうちの者さね。それ以上傷つけるなら、ギルドの防衛として実力行使にでるさね」


あれ、守るの遅くないですか。

もしかして今までやられたところを観察してた?


「あなたを敵に回したくないです」


火の弓は酸素が絶えたように静かに消えた。

それは握っても熱くないのか…………。


「ありがとマスター!んじゃ!」


髪を抜き上空へ飛び上がり、護衛を連れて歩く少女を見つけるとその先の転送装置へ急降下した。


着地し先程買った品を取り出しわずかな時間で作業を始めた。徒歩だが到着まで3分しかない。しかし持ち前の器用さと脳の完成した設計図で無事工作を完成させた。


落ち込むように俯いて歩く少女を出待ちし、転送装置の前でドヤ顔で姿を現した。


「よぉ!」


「何奴!」


王女を囲む6人がいっせいに剣を引き抜き立ちはだかった。


「ちょっと待って、渡したいものがあるだけ」


先程のドヤ顔が消え去り、今は命乞いをするように必死に手を振ってる。


「モル………あいや、王女様にこれを。危険なものじゃないよ、ただのお守り。信じれないなら鑑定してくれてもいいよ」


言わずともと言わんばかりに親衛隊の1人が品を奪い手をかざした。

魔法を使ってるのだろうが、こちらからは何も見えずにただかざしてるだけに見える。


「危険はないですが………怪しいので処分させて頂きます」


「え、嘘でしょ」


「まって!」


ヒバナの手作りの巾着が危うく焼却処分されそうになったが、モルタナが親衛隊に有無を言わさず取り上げた。


「私もう城を1人で出ないと誓いますから、これをどうか私に!」


切なく懇願する王女に親衛隊たちはたじろぎ、6人は顔を合わせて意思疎通し答えを出した。


「姫様、こちらをお渡しする前に恐縮ながら私共の頼みも聞き入れては貰えないでしょうか。隊長にはご内密に……」


「ありがとう!!レイラ、バートリ、クレス、ミーシャ、キャンベル、ホミュラ!」


「そんな、姫様、私共の名前を……」


6人は感激に口元を抑えて膝が崩れた。

本来であれば、王女に隊長以外の班員の情報は不要な為知るはずがないのだ。

しかし、王女は自ら調べ名前を覚えてくださったのだ。

その寛大な様に今6人は崩れ落ちた。


しかし実際王女は、親衛隊のみならず王都警備隊全員の顔と名前までもを把握していた。

その理由はもちろん脱出と追跡者の把握のためだったが。


「あ、モルタ…………じゃなくて……えと、王女……様……?」


「いえ、あなただけはモルタナとお呼びください…………。僕は……いえ、私はもう外に出ることは出来ないかもしれないので。せめて、あなたの中だけでも残して欲しいのです」


切なく惜しみながら俯くモルタナの手を掴み、親衛隊に見えない角度に向かせた。


「モルタナならここにいるだろ?」


「………………!」


その言葉で思い出した時、モルタナの意識とは別にその手に兎の紋様が浮き出し輝き出した。眩しい程に。


正確には輝いてはいないが、遠くて短く尊い思い出がモルタナにはモルタナにはとても眩しく見えた。


「それと、今のお城は危険かもしれないから、もしも怖くて助けて欲しくなったらこのお守りに叫んで欲しい。…………あ、ナズナ来た……!じゃあねモルタナ、また今度会いに行くよ!」


「うん、またね。」


「姫様……隊長が来られる前に……」


「そうですね。皆様ありがとうございます」


王女は思いち出を胸元でギュッと握りしめ、お守りをズボンのポケットにしまった。


「姫様!」


「ナズナ、レイラ、バートリ、クレス、ミーシャ、キャンベル、ホミュラ。ご迷惑をおかけしました。帰りましょう」


「「ハッ!!」」




ーーーーーーーーーーーー




ギルドまで飛ぶと、ベニゴアがギルドの裏口前でキセルを咥えていた。

魔法を使用する時に吸ってるらしいから、今も何かしらの魔法を使ってるのだろう。


「あの子は…………城を出ても城に篭っても血を見そうさね」


焼かれた血の匂いが無くなった。この煙の効果だろうか。

地面には焦げた跡が残っており、死体をいっぺんに燃やしたのか、10人ほどの跡が見れる。


「…………。殺すことに躊躇いが全くないって怖いな……」


数多の命を奪ってきた自分が言えたことじゃないが。

1度死線を抜けたらなくなってしまうのだろうけど、まだナズナは若くみえるが経験してるということだろうか。


「ナズナは14歳の時に第二次反乱戦争に巻き込まれたからさね」


「反乱戦争ね……あの愚王ならありえないことではないけど……」


「ん……?ヒバナ知らないさね?」


「何を?」


「現国王は歴代と違ってまともさね。貧困な生活を送る他種族を支援して共存共栄を目指してるさね」


それでも未だに国民のほとんどが反乱軍に回ってるのは何故だろうか。

謎に首を傾げるヒバナにベニゴアは答えながら指を回した。


「今と同じ、力あれば溺れるのが人間さね。今の王が良くとも、次の王がまた元の国に戻してしまうかもしれないと反乱軍は思ってるさね。だから皆同じ過ちを繰り返さないために、新しい政治を作ろうとしてるさね。まぁ、反乱というよりは革命軍さね」


「革命軍…………そういえば、知り合いっぽかったみたいだけどマスター有名人なんすか?」


「あいや、ちょっとしたコネさね。それで結構公認の子達に知り合いが多いだけさね」


「コネ……か……」


名前も教えてくれないこの人には、隠し事が多そうだ。


「それはそうとヒバナ、特別依頼さね。報酬は星3くらいだけど、難易度も……3かな?」


「そこ曖昧だな」


「現場次第さね。現場が常にコンディションがいいとは限らないさね。内容は義賊。公では罪だから、顔を見られたら光はないと思うさね」


それを3としてやらせるのか。

いくらなんでもデメリットが大きすぎやしないか。


「そんな心配しなくても大丈夫さね。偉大な大魔法使いの私と熟練の先輩たちがサポートしてくれるさね。あとこれ拒否権ないから準備が出来次第明日出発さね。ほら、先輩ももう到着してるみたいだし」


「え……ちょ……!!」


指を追って後ろを振り返ると、雨に濡れたように髪と瞳が垂れ下がり全てがダルそうな表情をした黒髪の青年が1人いた。


「バイオレットちゃん新人研修の子ってこの子かい?」


ルックスを見れば女がたかりそうなくらい顔立ちがいい。

てか今マスターをちゃん付けした?


「バイオレットちゃん!?」


初めて知ったギルドマスターの名前に驚き思わず振り返ってマスターを見返すヒバナ。


「…………!」


その後ろからまじまじと少年を見つめ、ヒバナは熱い視線に背中が凍るのを覚えた。


「んんん???あんた、もしかしてアノンか!」


「ンンンンンン!!??!?!?」

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