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僕と彼女の一年だけの恋  作者: 空き缶
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出会い

初投稿です!

初めて小説を書いてみたんですけど、僕向いてません(笑)

まあいろいろお見苦しい点とかありますが、どうぞよろしくお願いします!


コメントや指摘などよろしくお願いします


 その日、櫻羽廉人は事故にあった。それは運命を大きく変えた一瞬であった。

 夏休みが明けて三日目のこと。

 夏休み気分でダラダラしていた生徒も徐々にいなくり、通常授業に戻っていろんな生徒が嘆いているこの頃。

 「なあ廉人。今日どっか寄って帰らない?」

 仲の良い友人の古谷拓海。確か中学一年生からずっと同じクラスで、腐れ縁と呼べるくらい仲が良い。

 俺より一回り身長が高くて、体つきも俺より良い。厳つい顔だが、笑ったら幼さが出てくるような顔。意外に女子受けがよく、今は彼女がいる。

 「悪い。用事あるから無理だわ」

 俺はカバンを持ちながら急ぐように言い、そして思い出したかのように拓海に言った。

 「ていうか、お前部活だろ」

 「俺は廉人のためなら部活も休めるぞ」

 俺は、けらりと笑い、

 「浮気とか怒られるぞ」

 そう一言だけ言って教室を出て行った。

 歩道橋を渡って、普段家に帰るときに曲がる角を曲がらずまっすぐ進み、歩くこと約十五分。着いたのは小さめのレストラン。

 俺はレストランの中に入り目の前を通った、白のカッターシャツで黒色のエプロンを巻いた店員に挨拶をし、控室に入って行った。

 「ちーっす」

 ダルそうに入れば中には店長がゆうゆうと煙草を吸って、ふう。と一服していた。

 「なんだ、櫻羽か」

 女性なのに煙草を吸い、言葉遣いもあまりよくない。もう三十路になるのに独身って……ここからは触れないようにしよう。

 「僕で悪かったっすね」

皮肉を込めたような言い方をし、俺は更衣室に入り、着替えを早々に済ませてこれから八時まで。約三時間のバイトをするのであった。


バイトを終えた俺は控室で一息も付くことなく帰って行った。特に理由は無い。ただ早く帰って一人だけの空間を楽しみたいだけだ。

「お先に上がりまーす」

皆が「疲れた」だの、今日来た客のマナーがどうだこうだ。と言っている間に俺はガチャリとドアを開けて帰って行った。

もう九月が過ぎ始めた頃だ。日が完全に落ち、夜は少し肌寒い。しかし所詮は夏だ。この寒さがちょうどいい。

 ゆっくりと街灯に照らされた街を歩き続けると、近くにコンビニを見つけたので、そこにぶらりと寄った。

このコンビニは俺の行きつけのコンビニで、バイトが終わったらほぼ確実と言っていいほど、このコンビニに寄っている。

そしていつもここで菓子パンを一つ買って食べながら帰っている。

この日もいつもと変わらず菓子パンを一つ買い、コンビニを出て食べながら、また歩き始めた。

 菓子パンを食べながらいつも通っている歩道橋の階段を登ろうとする。

 目の前にはいつもはいない制服を着た女が歩道橋を歩いていた。 

 スタイルが良く、ポニーテールを揺らしながらゆっくりと階段を登っている。多分、部活の帰りだろう。

 こんな夜遅くまでに部活かぁ。勤勉だなぁ。

 とかそんな事を思いながら、女の後ろを歩いていた。

 そういえばこの制服、自分と一緒だな。とかどうでもよいことを考えながら黒く長い、艶やかなポニーテールを見ていた。

 すると、だ。

 ゆっくりと歩いていた女が突然意識が無くなったかのように、フラフラと後ろに倒れこんだ。

 艶やかな黒く長い髪がふさっと大きく揺れて俺の方に迫ってくる。

 俺は自分でも驚きそうなくらい無意識に持っている菓子パンを投げ捨て女を受け止めようとした。

 自分でも訳が分からない。ただ、この人を守らなきゃという、使命感に襲われた。

 そして落ちてきた女を受け止めると、当たり前のように俺の体重は後ろに傾いた。

 「あ……。死ぬ」

 女を抱え、仰向けになった俺の目の先には漆黒に染まった空にポツポツと輝く小さい星と三日月が見えた。

 そして女からは女性用のシャンプーの匂いが漂った。

 「いい匂いだなぁ」

 死ぬ前って案外、どうでもいい事をかんがえるんだな。

 そんな呑気な事を考えていた。

 こうして、俺は一番下の地面に頭から着地。そこで俺の意識は真っ黒の闇に引きずり込まれた―――


 あまり嗅いだことの無い独特なアルコールの匂いで俺はゆっくりと目を開けた。

 見慣れない白い天井。そして寝心地が何とも言えないベッド。

 目を開けると頭がジーンと中に響くように痛む。

 「あら、起きたんですね」

 現在は九月の五日。寝過ぎだ。

 ナース姿の女性が誰かを呼ぶように俺の部屋から出て行った。

 そして数分経ってから白髪がまばらに生えている、四十代くらいのおっさんが入ってきた。

 多分医者だ。なんか意識がまだボヤボヤするがそれは分かった。

 「調子はどうかい?」

 やたら優しく聞いてくる医者に対して俺は、

 「まだ、吐き気とかしますね。なんかまだクラクラします」

 と言った。気分はすこぶる良くないからふてぶてしい感じで言ってしまったことに少し後悔をした。

 「そうかい。じゃあまだゆっくりしてなさい」

 にこやかに医者が俺の部屋から去ろうと、スライド式のドアに手をかけた時、思い出すかのように振り向き口を開けた。

 「そういえば……。その花あるだろ?」

 医者の指を指した方を向くと、その花瓶には白色とピンク色の花が花を咲かせていた。

 「これは…?」

 「女の子がね。毎日のようにお見舞いに来てくれてたんだよ。それでこの花を置いて行ったって訳なんだよ」

 女?記憶にないような。あるような。身近にいる女性なんて数人に限られてくる。母とか姉とか……。考えればそのくらいしかいなかったし、まず「女の子」と言っている時点で母は違うし、姉は今、違う場所に住んでいるから可能性は低い。

 「は、はあ……」

 俺は曖昧な返事をした。

 「お礼を言っておくんだよ」

 お礼も何も覚えていない俺にはどうしようもない

 医者はそう言うとドアから出て行ってしまった。

 誰もいない空間。俺しかいない空間。

 静寂に包まれたこの病室で、俺は花瓶に入った綺麗な色の花を見た。

 そして、

 「綺麗だ」

 無意識に俺の口から言葉が漏れた。

 

 その日の夕方の事。

 いつも通り白いベッドでボヤっとただただ時間が過ぎるのを感じていた。

 携帯は歩道橋から落ちた時に破損して電源が付かないし、ナースに渡された本も興味がないから一切手を付けていない。

 日が昇って、落ちて。の繰り返し。「暇」と言う言葉しか俺の頭の中になかった。

 「暇だ……」

 ため息交じりの声が誰もいない病室を虚しくこだました。

 コンコン―――

 突然、病室のドアの向こうからノックの音が聞こえた。

 「どうぞ」

 つぎの瞬間どうせ、ナースか医者だろうかと思っていた俺は驚愕した。

 「げっ……なんで起きてるのよ…」

 目の前にいるのは、ナースでも医者でもない。艶やかで髪を背中まで伸ばし、制服をまとった女が花を持って入ってきた。

 「あ、あの…」

 俺はおそるおそる声を出した。初対面の女が目の前に立っているのに、いつもなら緊張するのに、今は緊張すらしていない。なんか変な感覚だ。

 知っている。俺はこの女を知っている。でも思い出せない。頭には思い浮かぶのに喉につっかえてるみたいで言葉が出てこない。

 「すいません。どちら様ですか?」

 俺は考えるのを諦めて聞いた。

 「歩道橋…。これ言えばわかる?」

 その言葉で俺は全てを思い出した。

 「あ、お前!」

 ガバっと立ち上がって、その女に指を指した。

 「はあ………」」

 彼女はそうため息をつくと俺の病室に入って花瓶の中に入っている古い花とさっき持っていた新しく真っ白な花と取り換えた。

 そして照れ隠しをするように長い髪の毛を指でクルクルと巻いて、

 「お大事に」

 と、一言残すと足早に病室を出て行ってしまった。

 静まり返った、病室の中で俺はただ、彼女が持ってきた白い花をボーッと眺めていた。


 そこから三日後、晴れて俺は退院した。

 久しぶりに当たる眩しい日差しが、俺を照りつけた。

 そして今日は早速学校に行かなくてはならない。二週間近く入院したから授業が遅れている……。そう考えると学校に行く気が失せた。

 久しぶりに着る制服。なんか入院時に来ていた服と比べると堅苦しい気がした。まあ時期になれるだろう。

 久しぶりに会うクラスメイトを思うと何故か緊張が走った。その緊張を飲み込んでカバンを持って俺は学校に登校するのであった―――


 ざわざわとした教室は俺が入ると一気に静まり返った。何このアウェー感。

 一気に視線がこっちに向いた瞬間胃が痛くなった。

 「さ…櫻羽が帰ってきたぁぁぁッ!」

 静まり返った教室は一気に大歓声へと変わった。

 俺ってこんなに歓迎差されるようなヤツだっけ…。とかそんな事を思いながら自分のイスに座った。

 「廉人!生きてたのか!」

 古谷拓海が俺の前に来た。

 「まあな。一応生きてるぞ」

 そういうと安どのため息をついて、

 「良かった!」

 と、にっこり笑った。こうゆうガキみたいに笑うとこは、いつ見ても同じで、いつ見ても安心した。

 チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。

 「静かにしろー。時期外れだが転校生が来たぞ」

 こんな時期に転校生。親の単身赴任とかそんな感じだろう。と俺は興味無さそうに頬杖をついた。

 これで、話題は転校生の方に行き、いつも通り静かな生活ができる。これは俺からしてある意味嬉しい事だった。

 「じゃあ、入ってこい」

 次の瞬間。頬杖をついていた顔が手から落ちて、目を丸くした。

 そして、ガバっと立ち、

 「はああああああああッ!?」

 と、声を大にした。

 すると転校生の彼女も俺に指を指して、

 「嘘ッ!病院の……!」

 と、驚いたように声を大きくした。

 間違いない。あれは…あの女は…。

 「「歩道橋の!」」

 歩道橋の女…いや、この転校生が来たせいで俺の静かな生活を送る計画が崩れて行くのであった。

 もし、恋愛の神がいるとしたら、これは間違いない。この神は悪魔だッ!


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