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いつかのラグナロク  作者: q6
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episode1.あの頃に運命を知ってしまったとしても何も変えることはできなかったのかもしれない1


side. カナトCode:008



この頃目覚めは良かった。


朝日が昇り、窓の外では鳥の鳴き声と、小さな妖精たちが戯れ合う声が聞こえてくる。


母が毎朝つくるパンと、その上のバターが溶ける芳醇な香りが家中へ広がり、自分が横たわっているベッドの上まで微かに立ち込める。


(今日は何のジャムをつけてパンを美味しく食べようか、そうだ、昨日、隣の家のおばさんから貰ったニワトリの卵があるぞ。なんでも、メダマ・ヤキにして食べるとすごくおいしいっておばさんがいっていたなぁ。そうだ、お母さんにメダマ・ヤキ、作ってもらおうかな。そしたら2人でそれを食べよう。おいしいってことはきっと、パンにも合うだろうな。ふふ)


そんなささいなことを考えながら、まだベッドから起きずに寝たままの状態でゆっくり伸びをする。


この時点で眠気は80%程吹き飛ぶ。


あとは朝ごはんの支度ができて、下の階から母が名前を呼べばすぐにでも飛び起きれる。


まあ、自分1人で起きれないわけでもなかったが、毎朝繰り返されるこのサイクルが、まだ親元から離れることができないさみしがり屋のカナトにとって、この上なくしあわせな事だったのである。



_____



一応言っておくが、この家庭は母子家庭というわけではなく、肩書きは両親と子供3人なのである。


カナトの父親のナギは、彼が物心つく前に 魔法創作学会のS級魔導師としてとある遠くの町へと働きに出ていて、満月の時期になれば1度家に帰ってこれるかこれないか、それほど忙しかったのである。


ナギは、年末に長期休暇をとると家に帰ってきては、まだ幼く泣きじゃくるカナトに厳しく魔法を教えるのだった。


カナトの母であるラミは、魔力を使いこなせず傷だらけになって家に帰ってくるカナトを必死で手当てし、今にも泣き崩れそうな酷く悲しそうな顔をしながら、


「この子はまだこんなに小さいのよ。ここまでやる必要ないじゃない。」


と、ナギに訴えるが、ナギにはナギの考えがあって、それを止めることは決してなかった。


ラミは夫であるナギがいない日の夜中、カナトが2階の自分の部屋に入って眠ったのを確認すると、階段を降り、リビングに飾ってある家族3人の写真をみつめては、ごめんなさい、といいながら ひとりですすり泣いていることがたびたびあった。


稀に眠れない日があり、夜中に起き、下の階の灯りがついているのを不思議に思い、遠隔魔法でその様子をこっそりみていたカナトにとって、ラミはかけがえのない存在であったし、ナギはあまりよく思わない存在だった。



_____



「カナト、朝ごはんできたから起きなさい」


いよいよ名前を呼ばれる。


カナトは待ちきれんとばかりに飛び起き、元気に階段を駆け下りて洗面所へ行き、身支度をしつつやっとの思いで食卓へと辿り着く。


テーブルには2人分の焼きたてパンと数種類のジャム、そしてなんとメダマ・ヤキも並べられていた。


「お母さん、ぼく、メダマ・ヤキがたべたいって朝からずっと考えてたんだけど、なんでわかるの??」


「カナトが考えていることはお母さんだいたいわかるわ、さあいただきましょう」


「お母さん、やっぱりすごいや!ふふ、おいしそう、いただきます!」


(ニワトリだなんて、滅多に手に入らない鳥ですもの、実物さえみたことがないものだから、メダマ・ヤキしか調理法を知らなかっただなんて、あの子に口が裂けても言えないわ。あとで他の調理も勉強しておかなくちゃ。)


母がそう思っていることは、カナトにはまったくきづかれていなかった。


そして、塩コショウのみで味付けされたメダマ・ヤキは、おばさんがいっていた通り、ものすごく美味しかったのであった。




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