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SWEETS BOX  作者: 柚木 ココ
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5


「え、今日はおやすみ?」

「うん、そうみたい。昨日も終礼のあとすぐに帰っちゃったんだけど…」


昼休み、里花は翼のクラスである6組に足を運んでいた。

しかし教室内に翼の姿はなく、ちょうど元クラスメイトを見つけたので尋ねると、今日は休みだと告げられた。


「体調でも崩したのかしら?」

「うーん、別に具合が悪そうな様子もなかったんだけどねえ」

「誰か、詳しいこと知らないの?」

「まあ、新しいクラスになったばっかりだしね。私も桜澤さんのことはよくわからないのよ。特に仲のよさそうな子もわからないし」


元クラスメイトは申し訳なさそうに首をすくめる。


「役に立てなくてごめんなさい」

「ううん、いいの」

「先生なら何か知ってるかも」

「そうかもね。ちょっと職員室にもいってみる。ありがとね」


里花は軽くお礼を言って6組を離れた。

昼休み。今日も元気な乙女たちの声で賑やかな廊下を歩きながら思案する。


翼が顔を見せなくなったのは春休みの終わる3日前。それまでは至って普通の様子だった。

春休み中の部活は自主参加であるため、3日間出てこなかったというのは、そこまでおかしなことではなかった。

ただ、昨日は新学期の部活はじめ。

それをさぼったというのは、おかしい。

特に出欠に厳しい部活ということはないのだが、らしくない。

体調を崩して寝込んでいるのだろうか。

それにしても、メールも電話もつながらない、というのは少しおかしい。

第一、昨日は普通に学校にきていたというじゃないか。

何かがあったのだろうけど、一体何があったのだろう。

まあ、本人が心配、というのは一番にあるけれど、まず当面の問題として、桃姫はどうしようか…


職員室で6組の担任とも話したが、はっきりしたことはわからなかった。

担任はただ、家庭の事情で少し休んでいる、と言うだけ。


法事か何かだろうか。

そういえば、九州に親戚がいるようなことを、聞いたことがあった気がする。

ただ、そうだったとしても、何故連絡のひとつもないのだろう…


部活動紹介は来週の月曜日。

今日は水曜日。

残された日数はわずかしかない。

里花はすこし焦っていた。



「あらー、りかちゃん、しかめっ面してどうしたの?」


間延びした声に呼び止められ、里花がはっとして顔をあげると、見慣れた人物が立っていた。


「あ、ひろ先輩、こんにちは」

「こんにちは」


職員室前の廊下で鉢合わせたことに内心驚いたが、それは表に出さないよう、里花はゆっくりと微笑んだ。


「先輩、今日は大河原先輩と一緒じゃないんですね」

「なにその言い方。私だって別に、ずっと由衣子と一緒にいるわけじゃないんだから」

「そうだったんですね。それは、失礼しました」

「もう、弓道部の部長っていうのは、伝統的に生意気なのかしら…」


そんなことを言いながら、ひろ先輩の声音にはまったく怒ったような感じはなかった。

むしろ、おもしろそうに、口の端を持ち上げた。


「ときにりかちゃん、何か悩み事かな?」


そして廊下つきあたりにある自動販売機スペースを親指で指す。


「おねいさんが、お話しきいてあげようか?」


どっかのナンパみたい。

里花は小さく笑って、申し出を受けた。


「私、ミルクティーの気分です」


じゃあ、予算は100円で。

そう言ってひろ先輩も柔らかく笑った。










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