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SWEETS BOX  作者: 柚木 ココ
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2

にいだ、ののみや、ふじさきかなで。

ふじわら、ほり、まさつき、まつだ、まとば、みずきさちこ。


奏は新しいクラスの自分の席に着席してにんまりした。

藤咲と水木。

新学期は名前順で席が決まる故に、近くの席だろうとは思っていた。

しかし、まさかまさかの偶然。

運命の女神様のご加護。

奏と水木は同じクラスだっただけではなく、隣の席だった。


「これはこれは、やっぱり桜のご利益かなー?」


そう言って上機嫌の奏はにやけ顏を隠しきれていない。


「…さあねえ」


曖昧な返事で振り返る、城田七海。

何に願ったわけでもない彼女も、奏の斜め右前の席にいた。


「ふじが隣の席でべったりじゃ、水木も席替えまで苦労するかもねえ」


「むー!そんなことないよ!」


怒ったように言いながらも、顔は笑っている。


だめだこりゃ。


「ふふ…ふじちゃん、相変わらずね」

「あ、ゆみちゃん!おはよー!」


しろたの後ろはすずき。鈴木由美子。

登校してきたばかりの彼女は七海の後ろの席に鞄を置いた。


「ふじちゃん、今年も同じクラスだね。よろしくね。」


そう言ってふふっと笑う。

柔らかそうな茶色がかかった髪は胸にかかるほど長く、前髪は斜めに、ブラウンのピンで留めている。

大人っぽい印象の由美子と奏が並ぶと、まるで高校生と小学生のように見えた。


「ゆみちゃんとまた同じクラスで嬉しい!」

「私もだよー。でもミズキちゃんと隣の席でよかったね」

「ふふふ、そうなのー。あ、ゆみちゃん、この子、ななちゃん、城田七海ちゃん。私と同じ部活なの。」


奏と七海は一年生は違うクラス。

よって、七海と由美子は初対面である。


「あら、じゃあ弓道部なの?鈴木由美子です。よろしくね」

「うん、そう。弓道部。よろしくー」

「ゆみちゃんは、紅茶研究会なんだよ!」

「へー、紅茶?なんか似合うね」

「ふふ…毎週月曜と木曜は紅茶をいれてるから、二人とも今度のみに来てね」


いくいく、と盛り上がっていると、担任である西園寺先生が教室に入ってきた。

西園寺先生は優しくて少し可愛い、人気のおじいちゃん先生である。

教科は日本史。

先生のクラスで居眠りをすると、先生に教科書で頭をぽかりとされるが、それを目当てで居眠りをする生徒がいる、なんて逸話も。

一年生のときにも日本史を教えてもらっているので、みんな馴染みの先生でもある。


「そういえば、水木、遅いね」

「ミズキってば、新学期早々遅刻かな」


奏はそわそわと時計をみる。

水木は一年生のときから遅刻常習犯だ。


「あ」


奏の顔がぱっと明るくなる。


まったくわかりやすい、と七海はあきれる。


噂をしたとたん、前の扉から駆け足で入ってきたショートカットの女の子。

急いできたらしく、後ろ髪が少しはねている。


水木佐知子は奏に目をむけることもなく、教壇の先生に声をかけた。


「おはようございます。先生、私、目が悪くて黒板が見えないと思うので、一番前の席に変えて欲しいんですけど」


「…」


由美子も七海も、思わず同時に奏の顔をみた。


「…えーーっ!!ミズキ、なぜっー??!」


先生がうなずくとほぼ同時に、思わず叫んだ奏の声が、教室に響いていた。





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