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英雄と凡人の死

作者: 愛未
掲載日:2013/03/09

「なぁ知ってるか?川居が部活やめたって事!」

「えーあり得ないでしょー!何かの間違いじゃない?」

川居晃カワイ アキラ写真部部長。写真のコンクールでヨーロッパ大会優勝、世界大会優勝。

この学校の英雄だった彼が部活をやめ、それを発表した直後...

「川居!!!!!」

屋上から飛び降り死んだ。

「川居くん...」

「川居...」

皆悲しみの声を上げている。微笑みを浮かべている集団もあった、が。

「川居が部活やめたのー?あら残念ねぇ。私達の美しい姿が取れなくて。」

皆が睨みをきかす。

ウ ザ イ 。

全身で伝える。が、反応0。

「侑行こう。ここに居ても何も変わらない。川居くんのこと伝えなきゃ。」

「そ、そうだな。」

ぞくぞくと人が去る。

川居は死んだ。

川居は...この世を去った。

学校は、何も言わない。ただ無念だという。

TVがきても変わらない。どうせ、無念なんて思って無いんだろうけど。

多分学校の名が落ちることしか心配してない。

給料が下がるんじゃないか。リストラされるんじゃないか。

いつも自分ばかり。

私はそう思っている。

「おい、華南。大丈夫か?」

「あ、侑ごめん。」

それから、川居ブームというのが、隣の学校で起こった。

川居の死を真似るのだという。

そんな馬鹿馬鹿しいことを楽しむ彼らはよく分からない。

学校はだんだんおかしくなってきた。

クラスはもっと壊れてる。

「おい!お前ちょっと来いよ。」

そう呼ばれると死を覚悟しなければならない。

今までクラスのリーダー的存在だった高松くんは、今では殺人鬼となっていた。

何故か誰も通報せず、誰も言う事を聞いている。

クラスメートは30人だった。そこから川居が減り、今では10人になった。

「川居。ごめん。」

放課後、高松くんが川居くんの席に向かい頭を下げているのを見つけた。

私は静かにそれを眺めた。

「川居、俺、頭狂ってる。川居んもお陰でリーダー的存在になれたのに。今じゃ俺殺人鬼だぜ?どうすれば戻ると思う?どうすればお前は幸せになると思う?川居は今幸せなのか?どうしてお前は死んだんだ?」

...沈黙が流れる。無論返事は返ってこない。なのに何故か高松くんは納得したように席を去った。

私も忘れ物をとり、帰った。

「侑?」

そこには侑が居た。普通じゃない侑。ぼろぼろの侑。今までに見たことの無い侑。

「俺、わかった。」

「え?」

「俺、川居が死んだ理由分かった。」

「嘘でしょ?なんで...」

「川居は、死んだ。」

「うん。」

「川居は死んだんだ。」

「うん。」

「それでも俺らは引きずってる。」

「え...う、うん。」

「きっと俺らはこれからも引きずってくんだろうな。」

「分かんない。」

「川居は、写真の最初の所に遺書的なものを残してた。」

「本当?」

「ああ。これだ。」

写真にはこう書かれてあった。

~この写真を見た貴方。これが僕の想いです。どうかこれは先生方には見せず、貴方の心にとどめ下さい。僕は写真を取るのが好きだった。写真で笑ってる顔が好きだった。でももういいのです。写真を見て喜ぶ人などいない。僕は大会に出さされ、大会で優勝すれば皆が笑う。親も笑う。皆笑う。それが本当の幸せなのでしょうか。僕には分かりません。だから、少し先に旅立ち、長い長い旅をしても良いでしょうか。~

「川居くん...」

「先生に見せるか?」

「見せない。川居くんの写真を始めに見つけたのは多分...高松くんだから。」

「え?」

「高松くんが先生に言わない限り、私達も言わない。」

「分かった。」

「川居くんって苦痛だったのかなぁ。」

「え?」

「この世界で生きてくのが、嫌だったのかなぁ。」

「分かんねーよ。そんなの、川居しか。」

「確かに川居くんの写真、年々おかしくなってた。」

「そうなのか?なんで分かってたのに。」

「言わなかったかって聞きたいんでしょ?それはね。怖かったんだぁ。私。多分侑知らないと思うけど。私さぁ、侑が知らないくらい最悪の過去持ってるの。」

「え?」

「私の親さぁ、殺人犯なの。今は刑務所。だからさぁ、殺人犯の娘というのを隠すのに必死で、できれば何も、誰にも関わりたくなかったの。だから気付いても言わなかった。川居くんが死んだところを去ったのもそれが理由。」

「華南...」

「だからね、侑と喋ってる時もずっと怖かったの。もう、楽になりたいなぁって思ってるの。いいかなぁ。侑。」

「駄目だ!華南!駄目なんだ!!!!!」

華南が落ちていく所を助けたのは高松だった。

高松は華南が落ちていくのを追って高松も飛び降り、華南を助けたのだ。

「高松くん?」

「大丈夫か?いてて...俺は大丈夫だけどお前...大丈夫か?」

「高松くん?」

「じゃ、俺はこれで。」

「高松くん...ありがとう!」

私はそう叫んだ。

この学校の英雄は消えた。でも違うんだ。

この学校生徒全員が英雄になったのだから。

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