英雄と凡人の死
「なぁ知ってるか?川居が部活やめたって事!」
「えーあり得ないでしょー!何かの間違いじゃない?」
川居晃写真部部長。写真のコンクールでヨーロッパ大会優勝、世界大会優勝。
この学校の英雄だった彼が部活をやめ、それを発表した直後...
「川居!!!!!」
屋上から飛び降り死んだ。
「川居くん...」
「川居...」
皆悲しみの声を上げている。微笑みを浮かべている集団もあった、が。
「川居が部活やめたのー?あら残念ねぇ。私達の美しい姿が取れなくて。」
皆が睨みをきかす。
ウ ザ イ 。
全身で伝える。が、反応0。
「侑行こう。ここに居ても何も変わらない。川居くんのこと伝えなきゃ。」
「そ、そうだな。」
ぞくぞくと人が去る。
川居は死んだ。
川居は...この世を去った。
学校は、何も言わない。ただ無念だという。
TVがきても変わらない。どうせ、無念なんて思って無いんだろうけど。
多分学校の名が落ちることしか心配してない。
給料が下がるんじゃないか。リストラされるんじゃないか。
いつも自分ばかり。
私はそう思っている。
「おい、華南。大丈夫か?」
「あ、侑ごめん。」
それから、川居ブームというのが、隣の学校で起こった。
川居の死を真似るのだという。
そんな馬鹿馬鹿しいことを楽しむ彼らはよく分からない。
学校はだんだんおかしくなってきた。
クラスはもっと壊れてる。
「おい!お前ちょっと来いよ。」
そう呼ばれると死を覚悟しなければならない。
今までクラスのリーダー的存在だった高松くんは、今では殺人鬼となっていた。
何故か誰も通報せず、誰も言う事を聞いている。
クラスメートは30人だった。そこから川居が減り、今では10人になった。
「川居。ごめん。」
放課後、高松くんが川居くんの席に向かい頭を下げているのを見つけた。
私は静かにそれを眺めた。
「川居、俺、頭狂ってる。川居んもお陰でリーダー的存在になれたのに。今じゃ俺殺人鬼だぜ?どうすれば戻ると思う?どうすればお前は幸せになると思う?川居は今幸せなのか?どうしてお前は死んだんだ?」
...沈黙が流れる。無論返事は返ってこない。なのに何故か高松くんは納得したように席を去った。
私も忘れ物をとり、帰った。
「侑?」
そこには侑が居た。普通じゃない侑。ぼろぼろの侑。今までに見たことの無い侑。
「俺、わかった。」
「え?」
「俺、川居が死んだ理由分かった。」
「嘘でしょ?なんで...」
「川居は、死んだ。」
「うん。」
「川居は死んだんだ。」
「うん。」
「それでも俺らは引きずってる。」
「え...う、うん。」
「きっと俺らはこれからも引きずってくんだろうな。」
「分かんない。」
「川居は、写真の最初の所に遺書的なものを残してた。」
「本当?」
「ああ。これだ。」
写真にはこう書かれてあった。
~この写真を見た貴方。これが僕の想いです。どうかこれは先生方には見せず、貴方の心にとどめ下さい。僕は写真を取るのが好きだった。写真で笑ってる顔が好きだった。でももういいのです。写真を見て喜ぶ人などいない。僕は大会に出さされ、大会で優勝すれば皆が笑う。親も笑う。皆笑う。それが本当の幸せなのでしょうか。僕には分かりません。だから、少し先に旅立ち、長い長い旅をしても良いでしょうか。~
「川居くん...」
「先生に見せるか?」
「見せない。川居くんの写真を始めに見つけたのは多分...高松くんだから。」
「え?」
「高松くんが先生に言わない限り、私達も言わない。」
「分かった。」
「川居くんって苦痛だったのかなぁ。」
「え?」
「この世界で生きてくのが、嫌だったのかなぁ。」
「分かんねーよ。そんなの、川居しか。」
「確かに川居くんの写真、年々おかしくなってた。」
「そうなのか?なんで分かってたのに。」
「言わなかったかって聞きたいんでしょ?それはね。怖かったんだぁ。私。多分侑知らないと思うけど。私さぁ、侑が知らないくらい最悪の過去持ってるの。」
「え?」
「私の親さぁ、殺人犯なの。今は刑務所。だからさぁ、殺人犯の娘というのを隠すのに必死で、できれば何も、誰にも関わりたくなかったの。だから気付いても言わなかった。川居くんが死んだところを去ったのもそれが理由。」
「華南...」
「だからね、侑と喋ってる時もずっと怖かったの。もう、楽になりたいなぁって思ってるの。いいかなぁ。侑。」
「駄目だ!華南!駄目なんだ!!!!!」
華南が落ちていく所を助けたのは高松だった。
高松は華南が落ちていくのを追って高松も飛び降り、華南を助けたのだ。
「高松くん?」
「大丈夫か?いてて...俺は大丈夫だけどお前...大丈夫か?」
「高松くん?」
「じゃ、俺はこれで。」
「高松くん...ありがとう!」
私はそう叫んだ。
この学校の英雄は消えた。でも違うんだ。
この学校生徒全員が英雄になったのだから。




