08 魔王の名
主人公の性格を少し砕いた風に微調整いたしました。
1話目と、口調が若干変わっているかも知れません点、申し訳ございません。
「そうですか。では貴方に」
そういって、私は繭の玉を、魔王に渡した。当たり障りのない程度の、けれど極上の笑みで。
「やれやれ、僕に与えてなにになるのだ。僕はニホンゴは理解した」
「…すみませんでした。そうでしたね」
そう、にっこりと微笑を続けた。私は、とりあえず笑っていた。
まさか、いえない、命の恩人に。
貴方の言っている意味のほとんどが私に理解できていないので、
もしや、これを使っていただければ、もしかしたら、話が通りやすくなるとおもいまして
など、
そんなこと言えるはずも無い。
ああ、そういえば、名前を聞いていないと、きずき、私は魔王に問いかけてみた。
「あの、貴方のお名前を、うかがってもよろしいでしょうか?」
「何故だ?」
「私を助けてくださった、命の恩人の名前を、知りたいからです」
奇妙は沈黙の後、魔王はすくりと立ち上がり、私の前を通り抜けていく。
「こちらに来るがいい」
そう一言だけ残して。
「あの、魔王、わらわも、行ってもよいでしょうか?」
そう、慌ててリロートが尋ねるが、帰ってくる言葉は無いようだ。
「あの、キクネ様。わらわも行きたいのですが、血魔の会議がありまして」
しょんぼりとする、リロートが私の裾をつかみ、名残惜しそうにしている。
(本当は、わらわはもっと貴方といっしょにいたいのです)
と、まるでそういわれているようで…。
ぽんぽん。
そんな彼の頭をなでた。
なんだかとてもなつかれているような気がして、嬉しくまた、いじらしく見えた。
「ここがそうだ」
長く歩かされた気がする、部屋からでて、いくつもの豪華な廊下を渡った。
優美に歩く魔王につれられ、やっとたどり着いた塔。そこからまた、螺旋の階段を登り、登り、
大きな銀毛の狼は変わらず、魔王の足元に寄り添うように、歩く。
いまさら気づいたのだが、どうやら、狼は魔王の護衛のようだ。
だから、はじめ私を不審物だと思い、襲い掛かったのだと思った。
いや、正確には私は不審物かもしれない。恐さもまだ残るが、できれば、あの毛並みを触ってみたい。
もしかしたのならば、あの背に私は乗れるかもしれないとさえ、自分の都合のいいように思ってしまう。
そんなことを暢気に考えていただけだというのに、
ぐるぐるぐる。
と唸られた。
「…だめだ、やっぱり恐い」
「何をしている、入るがいい、女神よ」
獣が、ごおおっと、唸りをあげた。
びくっと、私は身をちじめたのだが、何の心配も要らなかったようだ。
そのごごごっと、低く唸る声が部屋を、満たすにあわせ、塔の部屋の明りがともった。
「呆けるな。火をともしたのだ。赤子にでもできる魔法だ」
と、そうあきれるように諭され、ついっと、優雅に手を私に向けた。
早く入れと、言われていることに私は気づき、したがった。
「わあ、すごい、ほんの数…」
連れ出された部屋は、書庫だった。
見上げれば上が見えないほどの壁に本が埋まり、空間という空間が本で埋め尽くされていた。
だが、それは、散らかされている、という態ではなく、きちんと整理されている本の並びだった。
近くにあった、本を一冊手に取る。厚みのある本だった、私が手に取ったのは、古びた感じの表紙だったが、
この部屋にある本のすべて、同じ厚み、同じ表紙だと説明を受けた。
ぱらぱらと、めくると、長い文字が書かれていた。私の知らない文字。ふうやっぱり読めはしないかと、分かってはいたものの、落胆した。
「もしかして、読めると思っていたのに…」
そう、もれた私の言葉に魔王がおかしそうに反応した。
「読めるはずが無いだろうに。貴殿は、言葉も姿も、文字も持ちはしないのだからな」
「では、何故私をここにつれてきたのでしょうか?」
「名だ」
「え? 名ですか? なにがですか?」
「やれやれ、何をいっている。僕の名前を知りたいと言ったのは、貴殿ではないか」
「この本すべてに連なる名が、僕の名」
「え! これがすべて貴方の名前?!」
それはあまりのも無謀すぎる。と私は思った。なぜなら、名前がこの部屋いっぱいにある本はかなりの量があるのだから。
普通の小説を読むにしても、何年かかるんでしょう、というほどの量なのだから!
「ああ、そうだったな。この部屋に入るのは、貴殿は初めてだったか?」
いえいえ、この部屋というよりも、「すべて」が初めての経験ですよ。私は魔王に強く伝えたい。
「そうだ、貴殿との、契約の証でもある」
「契約? 女神さまとのですか?」
「そうだ、貴殿とのだ」
そして、魔王は女神の役目について、ポツリと話し出した。
できましたら、ここまでの話で、
「ここは、伏線なの?」(自身でも気づかずにはっている可能性などもあり…)
「ここをこうすれば、少年or獣とのフラグたつのに!」などのことございましたら、お教えいただけますと、嬉しいです。
本当に、本当に・・・。




