07 繭の複製
あまり、深く考えず、物語をかいております。
とりあえず、主人公は自分を女神だと思っておらず、ここは異世界かな?う~ん違うよね? でも、魔法みたいな変な現象もあるし…。といった感じで進めております。
(まさか、そうでしたか。男の子でしたか)
こんなにもフランス人形のように綺麗な少女が、男の子でしたか…。
「あの、始祖族さま」
そう少女、もとい綺麗な少年に話しかけられ、脱力しかけた自身の姿勢に気づき、失礼にならないようにと、背筋を伸ばした。
個人には様々な趣味がある。それを、拒絶するほどに私の心は狭くはない。それに似合っているのだし。
「はい、リロート君」
「リロートとお呼び下さいませ。魔王にもそう呼ばれておりますので」
と、はにかむ姿も可憐な少年。
(…神様、この子の、容姿の半分でも、私に施してくれたのならば、私の人生ももっと過ごしやすかったでしょうね…)
と、冗談めかしく、神様に注文をつけてみるが、実は24年も自身の容姿に付き合っていると、この一般的に普通といわれる、特に何の特徴も無い顔にも、それなりに愛着も沸く。
「始祖族さまのお名前は、始祖族さまに似て綺麗な名前でしょうか」
蜂蜜色の目が、控えめにけれど、大きくキラキラと輝いた。
「それとも、始祖族さまの声のような優しい名前?
それともそれとも、…わらわの血をころころと転がすような、…名前…?」
「血をころころ?」
そう、うっとりと、リロートに見つめられたのだが、ころころ のさすところの意味が私にはわからない。
「名? 名などそれに無いが?」
「え? 始祖族さまには、無いのですか?」
魔王がそう断定し、私は意味もわからず、年甲斐も無くきょとんとしたが、そういえば、いろいろ意味のわからない状況が相次いで、名前すら名乗っていなかったと、気づいた。
「私は、鳥居 菊音といいます」
すると、リロートは極上の笑みで喜び、私の名前を復唱する。
「キクネ、キクネ、トリイ・キクネ」
聞きなれない人名を覚えようとする、その気持ちが嬉しい。日本語の光の繭を、この子に分けた、といっても、きっと、人の名前を覚えることは難しいだろうし。
「……」
「あの、どうかしましたか? 私おかしなことを言ったでしょうか?」
魔王の沈黙を不思議に思い、私は魔王に問いかけた。
「トリイ・キクネ」
「はい」
「…トリィー?」
「はい?」
「それは、何を表す名なのだ?」
「何といわれましても…、私の名前ですが」
「…もう一度 問う、それは、何の名だ?」
「あの言葉の意味がわかりませんが…『鳥居菊音』は、私の名前です」
純和風の名前だ、私は自身の名前を気に入っていた。古風な感じのする自分の名前。
だから、二度目の魔王の問いかけに、私はきっぱりとそう答えた。
「何故、貴殿に名がある? 名など貴殿には必要なかろうに…
その名を『誰』に呼ばせ、『誰』に自身を個として認識させる必要があるのだ?」
魔王の言葉は、出会ってからずっと、変わらず終始わからない。
「私は、この名を両親からいただきました。だから、私には名前があります。それは当たり前のことです」
「いいや、貴殿に父はない、母もない」
「いいえ、私の父は和菓子職人で、母が店を手伝って、私もそこで働いていました。兄も2人います」
そう、きっぱりと、魔王に言い放つ、自分のことを否定されるのもいやだが、家族の存在を男に無意味に消される事に腹ただしさを覚えた。
だから、少し、強い口調になってしまったかもしれない。
あ、命の恩人に何てことを…、と後悔した。
ぐるるるる…!
今までおとなしく伏せていた、銀毛の狼が、のそりと立ち上がり、牙を見せ私を威嚇した。
私はまた、びくりとする。また襲われたらどうしようかと。自身が犬が好きなだけに、嫌われた理由もわからず、口惜しく思う。
「いいや、違うか、貴殿がこの世界すべての光の母であり父でもあるか」
ふむ。と、私の家族の詳細の話など聞こえていなかったように、魔王はまた考え込む、言葉を切った。
まだ、私を女神さまと勘違いしているらしい。だから、私には魔王の話の1から10までが分からないのだ、とそう思った。
「あの、キクネ…様」
そう、おどおどと私の白い着物の袖を、ちょいちょい とリロートが引っ張っる。
なんとなく、殺伐としかけた雰囲気を感じた私が、その黒いドレス姿の少年に心癒され、自分に嫌悪した。
「どうかしたの?」
リロートが手の平を私に向け、そしてゆっくりと開いた。
「あの、これは、キクネ様の、魔力でしょうか?」
「魔力?」
そのほっそりとした綺麗な手の平には、小指ほどの大きさの、金色の玉が2つ。
「ふむ。1繭だけの魔法だったが、繭の複製を自身でおこなうとは…」
ほほう、と感心したような魔王の声。
「繭? これは、さっきの『光の文字』ですか?」
「ふむ、僕の複製の複製になる様子だから、劣化はあるだろうが。
まさか、僕を使わず、貴殿自らが、魔力を使うとは」
「ふむ。それは貴殿のものだ、貴殿が与えたいと思った対象に、言葉を与えるがいい」
そう、かすかに驚きの表情をみせ、魔王は苦笑した。
ここまで、読んでくださった方、本当にありがとうございます。
もうすこし、細かい情景など、書き込めばよかったと反省しております。
もっと、ゴスロリの男の娘を前面に出したい気があったのですが、主人公がまったく動かず、恋愛フラグが立っていません・・・。
どうしたら、年下男にきゅんとするのか、手探りで進めております