表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

14 裸の獣・竜の刺客

狼が人で登場と、竜の卵の話を少し書いてみました。

また主人公が、何かに勘違いされ、また面倒な設定になっておりましたら、いつもすみません。

ぬっと、ごつごつとした無骨な手が私に伸ばされた。


「……!!」


知らない男の人だ。銀の短めの髪、金色の鋭い目つきの顔の男。

年齢は、20代前半、いや、私と同じ年かもしれない。魔王のように気品溢れたといったものではないが、野生的な魅力のある顔立ちの男だ。

けれど、…その頭には、狼のような獣の耳が見えた。


そして、その手は私の着物の襟元をぐいっと摑み、そのまま乱暴に右肩を開いた。


「だ、誰?! 止めて下さい!」



男に襟元をつかまれ、上半身だけ、浮かばされている体勢になってしまった私は、

男の呪縛を解こうと抵抗するが、男の腕はびくともしない。


「うるさい、黙れ」


私が抵抗した事が癇に障ったのか、低く不機嫌そうな声を浴びせられた。

キツイ瞳を向けられ、萎縮してしまう。


「お前の治癒力か?」

「治癒力? こ、この肩なら、リロートが魔法で…」

「ち…。あいつか…」


ああ、怪我の様子を見ていたのかと、理解した。

理解したところで、私は、はっと気が付く、どうして『日本語』を話せるのかと?!



『文字の繭』をあげたのは、リロートと…、狼の…バゼル?

あの鋭い目のバゼル…。そうだ! 彼も金色の目をしていた、銀の毛並みで…。


「バゼル? もしかして貴方はバゼル…?」

「あ? 当たり前だろう」


そうさらりと流されてしまった。そうか当たり前のことなのかと…。

いつもの冷たい、私を拒否する口調は、やはり彼なのだと、私は理解した。


だが、目の前にいる彼からは、いつもの殺気は見られなかった。

かわらず、鋭い目つきは変わらないが…。


「ふん」


人型のバゼルは乱暴に襟を放した。

今度は、踏ん反りがえるように、私の目の前でバゼルは、胡坐をかいた。


「……!!」


狼が人型になる驚愕を飲み込んだ。

だが、それ以上に、私はわが目を疑う、


「……!! バゼル! 何で、裸!?」


そう、バゼルはその体に何も身につけておらず…!



たくましい筋肉、引き締まった腕、割れた腹筋の野生的さ。

頭には狼の耳、それに尻尾もあるようだ。


いい、筋肉だなとか、

あの太い腕なら、道場に飾ってあった、あの大きな一途月城の弓も引けるだろうな…。

とか、色々目の前の現状の逃避に励んでみたが…。


ここはどうすべきか?

毛布を投げ渡した方がいいでしょうか?

それとも悲鳴をあげてみるべきでしょうか?


「……」


ギシ。


バゼルがかけた重みでベットがなった。私はその音に負け、


バサッ!


手元にあった毛布をとっさに、力の限り彼に投げていた。


「…このアマ…」


案の定、布は、彼の頭にあたり、そのまま、彼を隠すように、垂れた。

まずい、明らかにまずい…。いつも機嫌が悪そうな彼がさらに険悪な目つきになる。


「人がおとなしくしていりゃいい気になりやがって」

「ごめんなさい。だけど、とりあえず何かを着て!」


どこがおとなしくなんだろう? と声を大にして問いかけてもいいだろうか? との理不尽さを飲み込んだ。


「ああん?」


また、不機嫌そうな声をあげ、ベットをきしませ、降りた。

絨毯じゅうたんよろしく床にひいてあった、毛皮風の布をずりりと拾い上げ、

不器用にソレを腰に巻着付ける。巻きつけ終わったところで、銀色のふさふさの尻尾が毛皮からひょこりと顔をだし、ふりふりと不規則に揺れた。


(どうしよう…。私はこれを可愛いと思うべきか…、可笑しいと笑うべきか…)

鍛え上げた肉体と狼の尻尾と耳のアンバランスさが…。


「ち、今までお前、俺に服を着ろ!とは言わなかったじゃねーか」

「え? だって、それは狼だったし…」


ああ? 馬鹿かこいつ、なに言ってやがるんだ? との雰囲気をかもし出し睨まれた。…単純に恐い。

でもこれでわかったことがある。バゼルにとって、狼型でも、人型でも自分の姿には重点は置いていないらしい。


「服を着ると感覚が鈍る」


…犬に服を着せるのは、至難の業だ。それに私も犬は服など着ていない方が、いいと思う。

あのしなやかな体型に 全身を覆う短髪の毛。完璧とさえ思っている。彼は狼だけれど、同じこと。

けれど、それは犬や狼ならば、の話だ。


(だって、バゼルは現に目の前に人の形としている…)


これは、服を着せる習慣をぜひともつけておかなくてはいけないのでは? と私は心配になった。

魔王や、リロートの前でもこんな風なのだろうか? 外で、いきなり人型になって変な目で見られるのではないのだろうか? と心配してしまう。


「……」


そして、ここまで考えて、私は笑ってしまった。先日まで、恐いと思っていた彼のことを心配するだなんて、

私は、どこまでお人よしなのだろうと…。

(あれほど、彼が憎くて嫌いだと言ったのに…)


「…何を薄気味悪く笑ってやがる…」


そう彼の不機嫌そうな声が聞こえ、私はふと思った。


(ああそうだった…、もともと、他人を『嫌う』ことは苦手だった)


物事を穏便に済ませることをいつの間にか覚えた、

だから苦手な他者でも、嫌うことはせず、いつの間にか遠避けていたり、可愛そうな人だと思ったり…。

つまり人を恐いや嫌いと思うよりも早く、私は関係を切り捨てきたのに、


(ああ、そうか、彼には、『嫌い』をそのまま通していたんだ!)


彼のある意味まっすぐなまでの、私への拒絶は…、強烈だった。その強烈さは私の心は揺さぶられていたのかも知れない。

(それに、私を食べるといったときの、困惑の彼の表情も気になるのも事実…)



「何故、主に俺の処分を請わなかった?」

「お前は、主のお気に入りだ、俺の命1つぐらいの願いは、どうとでもできたはずだ」


バゼルは壁に立てかけてあった、私の弓を乱暴に触る。

そして、おそらく見よう見まねだろう、その無いはずの矢先を私に向け、そのたくましい腕の限りで弦を引く。



(ああ、もっと、弓はまっすぐに縦に構えなくちゃいけないのに)

その斜めに構える姿に、弓を持ち始めたころの幼い私を重ねてしまった。


ぎりぎりと弦が悲鳴を上げた。ブチンと弦の切れる音がし、切れた弦が彼の頬を打った。


びゅっ!


瞬間、あるはずのない矢が びゅっとなり、私の髪を掠める。じりじりと髪先が少し焼けた。けれどそれはほんの少し。炎の矢だ。赤く燃える炎の矢が、私の髪をかすめていった。


「バカが! 俺が脅しをかけているうちに逃げてしまえ場良かったんだ!

お前は!!!」


ガランッ。


と音を立て床に、弓が投げ捨てられた。


「え…」


ぎょっとした、彼の顔が青ざめていた。

その言いようは、私に逃げてほしかったというもの、


ああそうか、今までの、彼の拒絶は、私への脅しだったのだと初めて気が付いた。

なんて、まっすぐで不器用な人なのだろう…。まるで私のようだと…。

それに、もう彼をそれほど恐いと思わない…。

ほら、矢に殺気が乗っていない。ほら、今度は私の肌は傷すら付いていない。


「くそっ」


そう、腕を伸ばされ、私は腰掛けていたベットから引き摺り下ろされた。

そして、そのまま抱きしめられ。、いや、抱きしめるではないのかもしれない、その力がいたいぎりぎりと…



「お前は『竜』か?

 主の『竜の卵』を取り返しにきたか?」


竜の卵? …そういえば、魔王が眠りに行く部屋の名前。そうか、卵を魔王は育てていたのか、と私は思った。


「主が、かの魔力を注ぎ、慈しみ育てている卵を取り返しに来たか? 竜王の手のものか? それとも…、次期竜王か?」



あまりの話の飛躍に、頭が付いていっていない。


魔王は私を「女神」だといい。

リロートは「始祖族さま」だといい

今度は彼に「竜」かと問われた。


「…ちがう、私は単なる人間、『鳥居菊音』」

私が自身の存在を確認するように、ポツリとつぶやくと、彼の瞳が驚愕の色を宿した。




「これだけ、俺が脅しても、口を割らないのか……」

「違う。割る口がないだけ」


彼の表情がさらに怪訝になる。もともとの鋭い眼光がさらに鋭さを増す。

(だって、私には何も無い。この知らない世界にぽいっとほおり込まれたのだから。

このちっぽけな私に、彼らは一体『誰』を見ているのだろう…?)



「このまま絞め殺すぞ」

「それはいや…。けれど、本当に私は何も知らない」


ぎりりぎりり


彼の腕に力がこもる。締め上げられ。肺に酸素が取り込めない。ひゅーひゅーと、私の口から音が漏れた。

それでも、私は知らないものは知らないのだと訴え続けた。







「し、…知らない…、何かを話せという方が無理、な………」


そう、私が毅然と答えると、バゼルはその険しく鋭い目を、これでもかと思うほどまんまるにさせた。


「ははは! 強情な女だ」

「……!?」


そして、勢い良く笑い出す。本当に可笑しくてならないといった笑いだ。


「お前みたいな女は初めてだ。俺の脅しにあっても、顔色ひとつ変えないのか、なんて女だ!

そうだ、そうだな、ああ、悪くない、お前わるくないぜ」


満月になった目は本当にとても楽しげに輝いたので、私は面食らってしまった。

きつく締め付けられていた、腕が緩められ、私はその機会を逃すまいと、息を吸うが、勢い良くすいすぎたためか。

げほげほと数回むせた。



「お前、気に入った」


「そうだな、お前が密約により、『竜の卵』をねらったとしても、俺がお前を阻止すればいい!

何だ、そんな単純なことか!」


ははは! とバンバンと私の背を叩く。


「お前の挑戦、俺は受けた。この狼人族ろうじんぞくおさとして、受けた」


ちょっと待って! と口をはさもうとするが、まだ呼吸が定まらず、満足に言葉も発せない。

無論私は、竜ではないし、魔王が竜の卵を育てているなんて話も今聞いたというのに…。


「ああそうだ、安心しろ、もしお前が主の『竜の卵』をまんまと奪い返し、主の怒りに触れたとしても、そのときは俺が殺してやる。

ああ、そうだ、お前は俺が殺す、誰にも殺させない、俺が殺す、いいな!」


いいな!とまで念を押され、私は色々と誤解をされ、どうしたものかと困惑したが、

とりあえず、私は熱烈な彼の告白を受け、彼は満面の笑みで笑った。


主人公は、狼をゲットしました。

彼の心わしづかみです。


今後彼は、主人公に貢ぎまくります。狼流に、それはそれは色々と…。を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ