血魔の眠り (視点:リロート 12血の魔法)
12血の魔法で リロートが主人公助けに入るまでのお話です^^
本来は、リロート回想よりも先に、狼人の続きを出すべきなのですが、
先に回想が書き終わりましたので、こちらになります。
リロートの種族(血魔族)の設定をこちらで書いてみました。
よろしくお願いいたします。
「…!!」
わらわは、衝撃のあまり、ぱちり と目を開けた。
本当に、ぱちりと目が開いた。
(え、え? 心のもやもや。…もやもやとした血がぬるぬると体をめぐる…。
わらわは何に起こされてしまったというの…?)
横をみると、キクネ様の姿が無かった…。
「キクネ様?」
ああ、そうだった、キクネ様は今は眠りの時間ではなかったと、わらわは思い出した。
わらわの『時石』の色を見ると、まだ色彩は青。だから、眠りに陥って2時間程しか経っていないと、わらわは首をかしげた。
「どうして…、わらわ、起きてしまったの…?」
魔界ははっきりとした昼も夜も朝もない世界。だから、魔族それぞれが自分の時石をもち、朝や夜を自分で決める。わらわの時石の色は2色、昼が赤、青が夜の色。
わらわの時石は姉様からいただいた、もの。人間の魔術師の男の召喚に応じ、人の世界で暮らす姉様。
もう、百年ほどの月日がたつのだから、人間はとっくに土に還っていると思うのに…。
「血魔の眠りから醒めるなんて、わらわ今まで、なかったのに…」
血魔族の眠りはとても重要。20時間に1度、5時間の深い眠りを必要とする。
わらわ達血魔族は、悪夢を見せ、それを糧とする。悪夢を他人に見せる際、自分の精神の一部を砕き魔力に乗せる…。
だから、眠っている間に、砕いてしまった自己の精神の修復を図る。
だから、だから、5時間の眠りは血魔族の血に組み込まれているもので、めったな事では起きないのに…。
「……」
『今度、リロートと眠る時間が同じになるのは、43時間後ぐらいだね』
キクネ様の時は人間と同じサイクルのようで、『時計』と呼ばれる寝室の棚に置かれた、小さなランプ程度の大きさの箱で時間を計っている。
『時計』は、昔捕虜にした人間が作っていた、とても古びたものだったけれど、キクネ様はありがとうと言って、ことあるごとにソレで時間を確かめていた。
『この針が、10から6の間が私の睡眠時間だよ』
そう、キクネ様はわらわに教えて下さった。
(やっぱり、8の数字…)
時計を見ると、8の数字。だから、今は、キクネ様は「眠りの時間でない」事はわらわは知っていた。
だから、弓の鍛錬なのかも知れないと、わらわは思った。
けれど…、心が不安になる。
(キクネ様のことを思うと、不安に…?)
わらわの心はどうかしてしまったの?
何故、キクネ様を思うと不安になるの?
いつもキクネ様のお声をお姿を、思うだけで、わらわの血はころころと幸せにめぐるのに。
キクネ様の身に何か良くないことが…起こったの…?
(ああ、わらわに、もっと力があれば、キクネ様の心を知ることもできるのに…。
今の心の不安や、恐怖をしって、わらわは誰よりもはやく駆けつけることができるのに…)
「…キクネ様の、弓は?」
キクネ様は、時々弓を引いている。それは、日本の国の武芸だと聞かされていたから、どこか古風な感じのする飾り気の無い弓だけれど、
けれど、その弓自身が神秘的な覇気を放っているようで、その弓を引くキクネ様もとても神秘的で…。
わらわはその姿にいつも見惚れてしまう。
ああ、始祖族さまのきっと高貴な儀式なのだと、わらわは思っていた。
キクネ様の口から「日本」という言葉が出てくる。それはこの古の旋律の「ニホンゴ」を使う国の名。
日本とはキクネ様や魔王がおられた、今はなき高潔なる始祖族の国の名なのだとわらわは思った。
始祖族さまに国があったなどと、わらわは知らなかったけれど…。
だから、いつもの『鍛錬』という弓の儀式かもしれないと、わらわは思って、もう一度、壁を見たけれど、やっぱり、弓は壁に立てかけてあるまま…。
「弓ではないの?
それとも、魔王が…、お呼びになられたの?」
わらわは、ただ答えも無く、立てかけられているだけの弓の無機質さに、とても不安を覚えた。
姉様のようにキクネ様が戻ってこなくなったらと、わらわは不安で胸を強く握る。
「キクネ様…」
とても、とても…、いやな気持ちがして…。キクネ様が可愛いといってくれた、レースの付いたボレロをぎゅうっと握って、部屋を出た。
そして、この後、枯れ木の庭園で狼に襲われている、主人公を見つけます。
<ないしょ話>
この後、狼が知るはずも無い「ニホンゴ」を話せることに、リロートは嫉妬する自分に気づいていたり、だから、魔王が腹心の狼を処分などするはず無いことを知っているのに、わざと、お咎め覚悟か?! と強く言い放ったりな裏設定になります。