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12 血の魔法

狼のツンからデレへの、ベクトル変化です。(ツン解消のためのイベント?)

と、リロートとのラブラブ?イベントです。

急展開で申し訳ございません。こ、こんな感じでよろしいでしょうか…

「なっ……!」


私の涙する姿を見て、狼は再び振りかざした爪を止めた。

まるで雷にでも打たれたように、狼はぴたりと停止し、狼から怒りの表情が消えた。


「俺は…、闇の主を守護するモノだ」


まるで、自分に言い聞かせるように、搾り出したその声は抑揚が無がない。

カツンッ。乾いた音を立て、狼の前足が地に着いた。


「お前は得たいが知れない、だから喰らう」


じゃり。

さらに私に、にじり寄る。


「ああ、そうだ。魔王に取り入る烏合の輩は、すべて俺が喰らってきた」


じゃり。


「だから、喰らう、今、喰らう…。

 拒否は許さない…!」


そういって、真っ赤な口を開いた。だが、ぴたり 再び動きが止まった。


「なのに何故だ…!」


そう、自問自答のようにつぶやく狼を私はボンヤリと瞳に映していた。


「今俺は、お前を喰らうことをためらった!!」


(嫌いと先に態度で示したのは貴方なのに…どうして、私よりも辛そうな顔をするの…)

その怒りと、困惑の混ざった表情がとても悲しく思え、私のほほにまた、涙がつたった。


「…! 俺を惑わせるな! 惑わせるのはその涙か!!

お前、は邪魔だ。そうだ!、お前は俺の主への忠誠心を揺らがせる!」


くわっ!


真っ赤な口が再び開けられ、鋭い牙が眼前に迫った。







「キクネ様!」


 淡桜色の髪を乱し、リロートが私に駆け寄ってきた。


「キクネ様!」


ああ、ダメじゃない、きちんと眠っていなければ。

血魔族の眠りは、命の維持にとてもとても大切なものだと、そう話してくれたのは貴方じゃない。

だから、めったなことでは、起きないのだと、起きてはいけないのだと。


「バゼル! キクネ様に何ということを!」

「俺に指図をするな。血魔の小童の分際で!」

「バゼル! 魔王よりのお咎め覚悟のことであろうな!」

そう、放心する私をその胸に抱き寄せながら、リロートは狼に強く威嚇した。


「ち…」

ぐわり と突風を巻き上げ、狼は高く跳躍し庭園から去っていった。




「キクネ様、キクネ様、今、肩のお手当てを、わらわが…」


ふわりとリロートの両手で顔を包み込まれ。私の黒い瞳に蜂蜜色の瞳が映る。

今にも泣き出しそうな表情で、ああ、白い白い陶器のようなきめの細かいリロートの肌が、青い。

私を心配してくれる、綺麗な綺麗なリロート。


「あの、キクネ様、いやでしたら、いやといってくださいませね…」


私の拒絶を恐れるように、おどおどと言いながら、肩の破れた着物の間に、そっと、その細く白い指を差し込みんだ。


「わ、わらわにキクネ様の、血を少しだけ…」

血? ああそうか、こちらの世界では、傷を治すのは、魔法でなのかもしれないと、私は思った。


「呪文とキクネ様の、ち、血を媒体に、今、わらわが治癒の魔法で…」


傷から垂れた血を掬い取った。

少しだけ、私の肌に触れてしまい、その瞬間、リロートはぴくりと反応した。恥ずかしそうに、顔を赤らめる姿が可愛いと思ってしまう。

(ああ、それくらい私は平気なのに)

と、私は少し笑っていたかもしれない。


『~~~~~~~』


リロートの口から、私の知らないこちらの世界の言葉がつむがれる。

ああ、たぶんこれは、魔法の呪文。リロートの魔法はきっと優しく綺麗な魔法だろうなと私は思った。

そして、掬い取った血をリロートは自分のその、ぷっくりとした桃色の唇に押し当てた。





瞬間―――、



私たちを取り囲むように、ぽわり ぽわり と蝶が舞った。

いくつモノ、いくつモノ、蝶。

蜂蜜色の蝶の群れ、リロートの瞳の色だ。



(綺麗…)


私たちを取り囲むように舞っていたはずの蝶たちが、私の肩に折り重なるように張り付いてきた。

私の右肩は蜂蜜色の蝶で埋め尽くされ、乾いた大地に、水が吸い込まれるように、私の中に溶け込んでいった…。


(ああ、不思議な感覚、あ、温かい…)


とくんとくん


鼓動が鳴った。少しの間止まっていたのか知れないと思う気さえする。

冷たく凍えていたような血液に、温かさが戻る。…温かな血が私の体内を優しくめぐる。



「キクネ様、肩の痛みは、大丈夫でしょうか…。わらわの魔法はキクネ様にきちんと効いておりますでしょうか…」

おろおろと、心配そうに語りかけるリロートに向け、私は、



ありがとう 


と微笑み返した。

バゼル やっと、狼の名前が出てきました…。

今度、狼バゼルが出てくるときは、人型(素っ裸)を予定しております。

耳付き、ふさふさ尻尾付きの人狼さんです。


ご感想と、狼のデレへの心理変化のご指導くださって、本当にありがとうございました!

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