表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

11 銀の狼2

ぐるぐる~ ぐるるる~!!


ものすごい形相だ、怒りの爆発が私にも伝わってくる。


「ぐるるる~、!!」

唸りとともに後ろに周られ、その強靭な前足で私は床に押し付けられた。


「ぐ…」

すさまじい力で動きを封じられ、そのまま胸元をまさぐられる。白い着物が乱れた。


ぷちんっ


(私のお守り!)

一番目の無口な兄が私に持たせてくれたお守り、今度の弓道の昇段試験に受かりますようにと、もらったモノなのに!

それに、『文字のまゆ』をそれにこっそりとしまい込んである。無くさないようにと。


狼は朱色のお守りの紐を千切り、その鋭い牙で見せびらかすように、だらりとくわえた。


「ダメ! それは大切なものなの! 返して」


取り返そうと、手を伸ばすが、私はためらってしまった。

恐いのだ、恐い。この私を押さえつけている大きな狼が、恐い。

いつもは、魔王やリロートがいるときは、おとなしくしているのに、

だから、少し嫌われているかもしれないけれど、さわって、その毛に埋もれてみたいなど、妄想さえ抱きもできたが、


やはり、恐い。特に今のように、牙を向けられると、恐い。


「……」

狼は動き出す。私を重みから開放し、部屋の入り口へむかう。



のそりのそり。



乱暴に開かれたドアの前で、狼は一度停止し、数秒の停止後、駆け去った。

ふわりと、ドアに彼の綺麗な尾の先が見えた。駆ける去る瞬間、私に一度も視線を投げることなどせず。


「あ、待って!」


私は、狼を追うために、慌てて部屋を出た。







銀毛の狼を追ってたどり着いた場所は。城の奥の小さな庭園だった。

朽ち果てた木が1本。枯れた花々がまばらに点在する。寂しい寂しい、庭園。


その朽ち果てた木の下に、狼がいた。その足元には無残にも引き裂かれた朱色のお守り。私のお守り。


「…!!」



引き裂かれたお守りから、文字の繭が、2つ転げ落ちていた。


ぱくり。


と、それを1つ狼は、口にし、忌々しげに、朱色のお守りを踏みにじる。


「! どうして、こんなひどいことを!」

「私が、嫌いなの? 嫌いなら、それでもいい。けれど、これはひどすぎる!」


貴方に『私の言葉が分かるのなら』、こんな事をする貴方なんて嫌いって、嫌味の1つでも言えるのに!




「!!」


そう思った瞬間、狼ののど付近から、光の輪が首輪のように出現し、消えた。


「ち、お前の言葉など!」


低く低く苛立ちを持った不機嫌な声が、狼から聞こえた気がした。


「えっ?!」


私は聞きなれた言葉を聴いて驚きの声をもらした。すると狼は跳躍し私の目の前に!


「痛いっ!」

頭突きだ、頭突きをされた。

顔面が痛い…。鼻が、唇が…。痛い…。唇から血が出てるかもしれない、痛い!


「は、このウスノロめ」


とはっきりとした日本語が、狼から、そうだ、狼の口から発せられたのだ。


(彼は、会話ができる? え? あ、ちがう。日本語、何で日本語を話せるの?!)

あ、そうだ、狼は文字の繭を確かに食べた。そして、私は怒ったんだ『私の言葉が分かるのなら』嫌味を言うのだと!


「うそ、それで、日本語…を…」

「騒ぐな、しゃべるな! 俺はお前を、信用していない」


無駄口を叩けば、この牙で切り裂く。

高圧的な口調だ、強く乱暴で、私を拒絶している口調だ…。


やっぱり、彼は私を嫌っているのだと、確信できた。嫌われるのはいやな気持ち。

万人に好かれようとは思っていない、けれど、これほどまでに、拒絶の言葉を浴びせられたことは無かった。




「俺の質問だけに答えろ」

金色の冷たい視線に、ぞくりとする。


「お前は、誰だ? いや、何だ!」

「え…、それってどういう意…」

「俺の質問にだけに答えろ!」

苛立ちの声とともに、右肩に焼けるような痛みを感じた。


「っ…」


ぎりぎりと、肩に鋭い爪がくいこむ。

爪の進入に私の肩の肉が爪の体積に攻められ、逃げ場を逃し、きゅうきゅうと気持ち悪く体内に響いた。


「…私は、…鳥居菊音。

 ここじゃない、ちゃんとした世界の人間よ!」


「人間? はっ! 嘘を言うな! お前は「人」じゃない。

 血魔の若造は、お前を「始祖族」だとうそぶいていた」


 ぎりぎりぎり。

 さらに爪がねじ込まれる。



「だが、「始祖族」は、始まりの『魔』だ。魔王以外に存在しない『魔』。

いくら、同じ闇色の髪、闇色の目を持っていても、お前は違う。そうだ、お前は違う!


お前からは、人間の匂いも、魔の匂いもしない」



「俺は、闇の主を守護するモノだ。だから、お前を消す。人で無いなら、また魔でもないのなら、お前は何だ!」

そう、空を裂くように狼に叫ばれ、私は虚無を覚えた。



魔王は私を「女神」だという。

リロートは私を「始祖族さま」だという。

そして、貴方は私を…「人でない」といった…!


虚無を覚え、虚無を覚え、その得体も知れない恐から抜け出すように、私も叫ぶ。


「しらない、しらない、私はしらない。私は、人間だもの!」

 

狼の太い凶暴な前足をつかんだ。両腕で勢い良く肩から抜き取る。


「だったら、私は何? 何だというの! せっかくこの理不尽な世界に順応しようと努力しているのに、

私が私の存在を否定でもすれば、貴方は満足だとでも言うの?!」



「……!」


涙があふれ出た。ああ、そうだこれは涙だ。悲しいのか、悔しいのか、憎いのか…。

感情のすべてが麻痺をし、


私は、声も無く、ただ、ただ、涙を流した。

始祖族の設定を無理やり、詰め込みました。本当は、リロートとのイベントで血魔族の設定とともに、出す予定でしたが、こちらに詰め込み…。


どうしても、キャラとの甘いイベントが書けず、どうすればいいのか日々 苦悩しております。



らぶらぶ設定にするには、女神の立ち位置を複雑にせず、いきなり目が覚めたら、魔王のベットで、魔王 狼 ゴスロリ男娘 に「おはようございます、女神様」という、流れの方が良かったのだと、いまさら気づくことができました。


そして、女神として、ちやほやされて、魔界でデートして、ついでに世界すくって、彼とハッピーEND がぶなんであったと・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ