01 契約の名(トリップ状況追加しました12/5)
現在、試し書きの話になります。あまりつじつまなど合わないストーリーになる可能性もありますが、よろしくお願いいたします。
(いきなりのトリップに違和感があります。とのご指導より、いまさらですが、トリップしたときの状況をこちらに書き加えてみました。 すでに1話目、読んで下さっております方、混乱させてしまいましたら、大変申し訳ございません)
「まずい、…のかも知れない」
私は持っていた弓を震える指で引いた。私の黒く流れる髪が揺れ、早く放てと心が叫ぶ。
「……!!」
当たれ! 当たれ! お願い当たれ!!
びゅんっと、空を切り、矢を放った。
目の前の的に、いや、敵に…。
見たこともない、巨大な獣。自分の脳で処理仕切れていない、あれはきっと、大きな熊だ、そうだ大きな熊だ。
ここが日本でなくて、どこだというんだ…。
ここが地球でなくて、どこだというんだ…!!
どうして、こんなことに――!!
…今日は、仕事は休みだった。
両親と、上の兄と、兄のお嫁さんと、私の5人で営んでいる小さな和菓子屋。駅近くの店舗兼自宅で、祖父が起こした小さなお店で、顔なじみの客もいて…。
今日は、来週ある弓道の昇段試験の為の練習に、久しぶりに一日休みをもらえたから…。
朝から、道場に向かったはず。家から徒歩で通える、古びた弓道道場に。
ああ、そうだ、そうそう…、
それでも、夕刻のかき入れ時には、手伝えるようにと、思っていたから、
時計を見ると、まだ、夕方4時前、だから、後もう少し、弓を引けると。矢置きから矢を取ろうと、振り返った、
その時――。
景色が一変した。本当に一変したのだ。
木造の道場が消え、森に!!
何故? これは何?!
『ここはどこ?』と、思うよりも早く、聞いたことも無い、地をえぐる様な、獣の声。
ひっ
逃げろ、逃げろ! 逃げなくちゃいけない! そうだ、逃げろ!!
けれど、景色が動かない、変わらない?!
足が動いているのか? 私の足は動いているだろうか??
ああ、ダメだ、ダメだ!
ダメ?…何が??
何がダメなのかわからない。
弓を引け! 弓を引け!! 弓を!!!!
ちがう、逃げろ! 違う! 違う!!! にげ・・!! 弓を!!!
私の思考は混乱をきたし…。
ガタガタと震え出す自分すら、確認できず…。
それでも、手が動いた、腕が動いた、私の思考は混乱のまま、それでも、その矢先を獣に向ける体勢を取った。
矢を放て! 矢を放て! 早く放て!!
びゅっ
しかし、早気で放った矢は、的を外し、むなしく落ちた。
獣の血に飢えたような凶暴な、四つの赤い目が私を定めた。
「……!!」
私の心臓がもうもたない、ぎゅっと氷の手で握りつぶされたように、縮む…。
恐怖と混乱、目の前には、四つの目を持つ、獣。
喰らいつこうと、私に向かう、その速さ。なんという速さ!
「ひっ…!!」
嘘、嘘だ、私は死にたくない!
状況がわからない、意味がわからない!!
こんなところで、こんな風に死ぬなんて、うそだ!
「う…!!」
瞬時、地をはうような、獣の断末魔が深い森に響いた。
「…何…?」
敵が消えた、いや、地に倒れていた。
そして、目の前に黒い人影、私は、この人物が敵を倒したのだと、理解した。
(ああよかった…。私、助かった…?)
そして男は、いまだ、困惑する私に、かしずいた。
肩まで無造作に伸ばされた、髪が確認できた。私と同じ黒髪…。
『女神よ。さて、僕に何を望む? 世界の契約の名を示すがいい』
と、そう男の声が脳裏に響いた気がした…。