↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
135/156

第135話 使わないまま帰る鉄

満タン便が最初に水車町へ来た時。

荷台には、現地修理用の平鋼が二本積まれていました。

一本目は。

第一配送者時代に起きた運転席固定部の異常を直すため。

現在の水車町でガランが加工し。

始発線を通して過去へ送り。

M001-RF0になりました。

そして。

もう一本。

初回積載補修材・第二材


こちらは初回納車以来、満タン便の荷台床下に封印されたまま。

用途指定はありません。

書かれているのは、一文だけ。

「帰り道で必要になるまで使わないこと」


満タン便は今。

初めて、本当の最終返却準備に入っています。

だから封印は開けられる。

けれど。

開けられることと。

使わなければならないことは、同じではありません。

「今日は、使うために開けません」

朝。

水車町車両返却所。

満タン便。

荷台。

空に近い。

通常配送品。

降ろし済み。

共有工具。

整理済み。

返却準備。

三十三パーセント。

床下。

普段。

荷物を積んでいるだけでは。

触れない区画。

細長い蓋。

表示。

初回積載補修材・第二材

開封条件――車歴B・最終返却準備


現在。

条件成立


ガランが。

工具箱を持っている。

「じゃあ、何のために開ける」

「中身確認です」

「鉄一本だろ」

「記録では」

誠司が答えた。

記録。

鉄一本。

実物。

本当に。

一本あるか。

腐食。

ないか。

封印。

破損。

ないか。

最終返却時。

工場へ。

何を渡すのか。

そこは。

確認する。

「使うかどうかは」

ロウグが言う。

「確認したあと」

「必要があれば」

誠司が訂正した。

必要が。

なければ。

使わない。

*

開封。

一人では。

しない。

ガラン。

車両管理。

サーラ。

運行安全受付。

二人。

封印番号。

読み上げ。

K2D-RS-2


外装。

破れ。

なし。

水濡れ。

なし。

床下。

錆。

軽微。

蓋。

開ける。

油布。

長い。

包み。

一本。

その上。

札。

古い。

K2D-RS

現地補修用一般平鋼

初回積載――二本中二本目


ここまでは。

一一本目と。

同じ。

その下。

小さい文字。

用途指定――なし


そして。

例の一文。

帰り道で必要になるまで使わないこと。


さらに。

今まで表示されていなかった。

続き。

必要にならなければ、使わないこと。


ガランが。

眉を上げる。

「……そこまで書くか」

「書かないと」

サーラが言う。

「帰り道に入ったから使おう、ってなりますから」

まさに。

今。

そうなるところだった。

*

油布。

開く。

鉄。

一本。

長さ。

一一本目と。

ほぼ同じ。

表面。

油。

薄い錆。

端。

欠け。

なし。

曲がり。

目視。

なし。

刻印。

K2D-RS 2/2


重量。

記録値。

照合。

一致。

「使える」

ガランが言う。

「補修材としては」

「はい」

「何か作る?」

「まだ作りません」

「返却準備だぞ」

「だからです」

誠司が。

札を裏返す。

帰路予備材


正式分類。

出る。

通常補修材ではない。

最終帰還区間において、

現地代替不能な安全補修が発生した場合に使用可。


「代替不能」

ロウグが読む。

「水車町に鉄があるなら?」

「まずそっち」

「工房で作れるなら?」

「そっち」

「途中で壊れたら?」

「そこで初めて候補」

つまり。

帰るから。

使う。

ではない。

帰る途中で。

他に。

安全な方法がなくなった時。

使う。

*

「最終帰還区間って」

雪板が尋ねた。

今日は。

返却準備確認。

本人希望で。

立ち会っている。

「どこからどこまで?」

表示。

水車町車両返却所・出発確認後

↓

日本側特装工場・搬入受領前


「私が運ぶ間」

「はい」

「使う判断は?」

そこ。

重要。

車両帰還担当

緊急補修使用判断――可


ただし。

条件。

一、車両安全維持に必要

二、既存設備・携行工具・通常予備品で代替不能

三、安全位置へ停止済み

四、可能な限り受入側または水車町へ照会

五、使用量・加工内容を記録


雪板が。

最後まで読む。

「照会できない時は」

「安全優先で判断していいです」

「全部使っても?」

「必要なら」

「残さなくていい?」

「残すことより、人と車の安全が優先です」

未来で。

何に使う予定。

だから。

残せ。

ではない。

今。

帰るために。

本当に必要なら。

使う。

逆に。

必要ないのに。

未来記録へ。

合わせるため。

切らない。

*

鉄。

現在状態。

確認。

終わる。

ガランが。

尋ねる。

「床下へ戻す?」

誠司は。

少し考える。

「戻します」

「せっかく開けたのに」

「車載予備材なので」

最終返却時。

すぐ出せる。

場所。

分かる。

でも。

運転席。

荷台。

邪魔にならない。

元位置。

一番いい。

ただし。

封印。

更新。

古い封印。

切った。

だから。

新しい。

水車町側封印。

必要。

旧封印――開封記録済み

内容確認――完了

使用――なし


再封印――実施


新番号。

水車町帰路予備材封印・01


ガラン。

固定。

サーラ。

確認。

雪板。

場所。

確認。

「本番で必要になったら」

誠司が言う。

「あなたが開封できます」

「一人で?」

「緊急時なら」

平時。

二者確認。

緊急。

安全停止後。

本人。

開封。

使用。

あとで。

報告。

「分かりました」

*

それで。

終わる。

はずだった。

しかし。

第一最終帰還便。

出発経路確認。

残っている。

車両返却所。

零番。

横。

返却専用進入路。

満タン便。

今。

動かさない。

代わり。

大きい。

西方共同荷車。

砂袋。

載せる。

満タン便の。

前軸。

後軸。

完全再現。

ではない。

でも。

路面。

確認できる。

「返却所から」

ガランが。

指差す。

「ここを出て」

始発線車両通行位置まで。

短い。

ただ。

一箇所。

排水溝。

横切る。

上。

木と鉄の。

覆い。

共同荷車。

進む。

ごと。

一度。

小さく沈む。

「止めろ」

ガラン。

しゃがむ。

排水覆い。

右端。

少し。

浮く。

木。

裏。

腐食。

大きな破損。

ではない。

普通の荷車。

問題。

なし。

だが。

満タン便。

重量。

違う。

「これ」

若い車両当番が言う。

「例の鉄、ちょうど使えません?」

全員。

床下を見る。

K2D-RS。

長さ。

合う。

厚さ。

十分。

排水覆いの。

補強材にすれば。

使える。

「使いません」

誠司が言った。

即答。

ガランが。

今度は。

何も言わない。

むしろ。

頷く。

「これは車両返却所の故障だ」

「はい」

車両側の。

緊急予備材。

施設側の。

前から直せる不具合。

そこへ。

使わない。

「でも」

若い当番。

「同じ鉄を工房から持ってくるなら」

「同じでも」

誠司が答える。

「役目が違います」

車に。

積んでいる予備。

帰路。

途中。

使える場所が。

他にないとき。

残す。

今。

工房。

ある。

時間。

ある。

人。

いる。

だから。

施設側で。

直す。

*

新しい。

黄色票。

水車町車両返却所

最終返却進入路・排水覆い

荷重時沈下――確認

通常荷車――運用可

M-001最終返却――補修後通行


「普通便は止める?」

「必要なし」

でも。

重車両。

禁止札。

重車両――補修完了まで迂回


満タン便。

出発。

まだ。

先。

急がない。

ガラン。

工房。

通常資材。

確認。

同程度。

平鋼。

一本。

ある。

長さ。

少し短い。

二本。

継ぐ?

「溶接すれば」

「荷重点の真下へ継ぎ目が来る」

よくない。

別。

太い。

角材。

ある。

木。

硬い。

排水覆い。

構造。

鉄である必要。

ない。

「こっちの方が早いな」

ガラン。

硬木。

選ぶ。

下。

支持。

増やす。

さらに。

横鉄。

既存。

締め直す。

一時間半。

完了。

共同荷車。

再試験。

沈み。

なし。

砂袋。

増量。

段階。

異常。

なし。

排水覆い補修――完了


使用材料。

水車町通常修理材


K2D-RS。

使用なし


*

誠司は。

この一件を。

標準へ。

入れる。

車載帰路予備材・使用原則


一。

出発前に確認できる施設不良は、施設側資材で補修する。


二。

車載予備材を、通常整備不足の穴埋めに使用しない。


三。

「帰路用だから帰路準備に使う」と判断しない。


四。

実際の帰還運行中に代替不能な安全補修が必要となった場合のみ使用する。


五。

未使用のまま帰着しても、余剰・失敗とは扱わない。


雪板が。

五を読む。

「使わなくていい」

「はい」

「積んだまま帰る」

「はい」

「その方がいい場合もある」

「かなりあります」

救急箱。

全部。

使い切って帰る。

必要。

ない。

予備水。

全部。

飲む。

必要。

ない。

燃料。

空にして。

帰る。

違う。

余っている。

ことが。

安全。

だった証拠になることもある。

*

「満タンですね」

澪の声。

いつの間にか。

返却所入口。

今日は。

散歩。

途中。

役目。

なし。

誠司が。

振り返る。

「何がですか」

「それ」

澪が。

床下。

見る。

「使わなかった鉄」

「満タン?」

「帰る途中で何かあっても直せる分を、最後まで残せたんでしょう」

一度。

視線。

赤い車へ。

「使わなかったなら」

小さく。

笑う。

「足りていたんですよ」

誠司は。

少しだけ。

考える。

満タン。

荷台いっぱい。

ではない。

帰れるだけ。

備わっている。

使わずに。

帰れる予備。

それも。

満タン。

だった。

*

日本側特装工場へ。

照会。

K2D-RS 2/2

最終帰還区間で未使用の場合、車両搭載のまま搬入してよいか。


返答。

可。


続く。

未使用を理由とする廃棄・加工・用途作成は不要。


「用途作成」

ガランが。

笑う。

「向こうも同じこと言ってるな」

さらに。

搬入時確認項目

存在

封印状態

腐食状態

使用有無


使用。

なし。

なら。

未使用帰着


正式な。

結果。

使用しなかった理由――「必要なし」で可。


ロウグが。

そこへ。

丸を付ける。

理由を。

作らない。

「使う場面がなかった」

それで。

十分。

*

さらに。

工場側。

注意。

K2D-RS 2/2は、車両付属補修材として扱う。

車歴C搬入受領時に車両と同時受領。


つまり。

雪板は。

車。

鍵。

運行記録。

そして。

床下の。

予備材。

それも。

引き渡す。

ただし。

一本の荷物として。

手で。

持っていく必要はない。

車載。

のまま。

受領票。

車載帰路予備材――一


*

雪板。

引渡し練習。

追加。

「床下予備材」

「一」

「封印」

「水車町帰路予備材封印・01」

「使用」

「現時点なし」

「帰還区間で使用した場合」

「使用量と加工内容を申告」

「全部使った場合」

「現物なし。使用記録で引渡」

「使わなかった場合」

「車載のまま工場へ」

「工場受領後」

「私の役目ではありません」

誠司が。

頷く。

そこ。

大事。

工場が。

その鉄を。

何にするか。

雪板が。

待って。

確認する必要。

ない。

引渡した。

そこまで。

*

第一最終帰還便。

準備。

三十七パーセント


ガラン。

見る。

言わない。

誠司。

見ない。

ロウグだけ。

少し。

笑っている。

*

午後。

別の改善。

固定人員受入口。

高瀬の鞄が。

滑った場所。

低い。

手荷物止め。

設置。

角。

丸める。

高さ。

低い。

足。

引っ掛けない。

試験。

鞄。

置く。

傾斜。

止まる。

実旅客第一号改善――完了


普通の。

仕事。

満タン便。

返す準備をしていても。

今の水車町を。

止めない。

*

夕方。

配送帳面。

K2D-RS 2/2。

履歴。

開く。

初回積載――確認


第一配送者運行期――未使用


水車町運行期――未使用


第一最終帰還便準備――開封確認済み


現在使用量――零


「ずっと」

サーラが言う。

「使ってない」

「はい」

一一本目。

RF0。

使った。

二本目。

残った。

記録。

さらに。

第一最終帰還便

予定状態――未使用帰着


未来記録。

だが。

今の雪板を。

拘束しない。

緊急。

必要なら。

使っていい。

だから。

横。

注意。

未来予定状態を、運行中の使用禁止根拠にしない。


「いいですね」

雪板が。

言う。

「これなら使えます」

使わない予定の物を。

必要なら。

使える。

矛盾。

しない。

*

その夜。

第一配送記録。

開く。

第一配送記録・予備材第一便

運転席を直したあと。

平鋼が一本残った。


三浦直人。

古い記録。

私は。

荷台の棚を作ろうと思った。


ガランが。

翌朝見る用の帳面を。

手にしたまま。

苦笑する。

水樽が動いていた。

木だけでは。

少し頼りなかった。


鉄があれば。

ちゃんとした棚が作れる。


直人。

床下。

二本目。

取り出そうとする。

封印。

札。

帰り道で必要になるまで使わないこと。


私は思った。

棚も必要だ。


一行。

空く。

でも。

「必要」と。

「あったら便利」は。

同じではなかった。


直人。

木で。

棚。

直す。

縄。

追加。

鉄。

使わない。

その後。

橋の金具。

水場の枠。

荷台の補強。

何度も。

あの鉄を使いたいと思った。


そのたび。

別の材料で直せるなら。

そちらを使った。


最後。

私は。

予備品というものを。

「いつか使う物」だと思っていた。


違った。


「使わずに帰れるなら、それでいい物」もあった。


第一配送記録。

終了。

*

その下。

現在の。

K2D-RS 2/2。

履歴が。

もう少し。

開いた。

第一最終帰還便

使用量――零


日本側特装工場

搬入受領――完了予定


ここまでは。

照会と。

同じ。

次。

完成検査時

取り外し――なし


「残す?」

ロウグが。

読む。

車両付属品として継続


さらに。

再出発工程

初回納車便――積載継続


部屋が。

静かになる。

ガランが。

最初に。

意味を理解した。

「また」

「はい」

誠司が答える。

今。

満タン便に。

載っている。

二本目。

使われない。

日本側工場へ。

帰る。

工場。

降ろさない。

そのまま。

満タン便に。

残す。

そして。

完成した満タン便が。

初回納車便として。

昔の水車町へ。

送り出される時も。

そのまま。

床下に。

積まれている。

だから。

初回納車時。

平鋼。

二本。

あった。

一一本目。

やがて。

RF0になる。

二本目。

ずっと。

床下。

残る。

そして。

現在。

また。

工場へ。

帰る。

一周。

K2D-RS 2/2

使用回数――零


車両離脱回数――零


最終帰還回数――一


初回納車積載回数――一


雪板が。

静かに言う。

「この鉄」

「はい」

「ずっと、使われない?」

現在表示。

予定使用――なし


ただし。

緊急使用――常時可


使われない予定。

でも。

使える。

ずっと。

余白として。

車にいる。

誠司は。

記録の。

一番下を見る。

そこだけ。

妙だった。

K2D-RS 2/2

製造元――未登録


一一本目。

同じK2D-RS。

日本側。

初回積載補修材。

製造記録。

あった。

二本目。

同じ寸法。

同じ材質。

同じ刻印。

なのに。

製造日――該当記録なし


工場入庫――該当記録なし


初回確認――満タン便・車両M-001積載状態


ロウグが。

ゆっくり言った。

「工場に入ってきた記録がない」

ガランが。

床下を見る。

この鉄は。

満タン便と一緒に。

水車町へ来た。

使われず。

満タン便と一緒に。

工場へ帰る。

そして。

工場から。

満タン便と一緒に。

また。

昔の水車町へ来る。

誰も。

新しく作らない。

誰も。

車から降ろさない。

最初から。

車に積まれていた。

記録だけが。

輪になっている。

最後。

K2D-RS 2/2

初回積載者――未登録


その一本には。

「誰が作ったか」だけでなく。

誰が最初に積んだのかという記録さえ、存在していませんでした。

満タン便の荷台床下に封印されていた二本目の平鋼は、正常な「帰路予備材」であることが確認されました。

重要なのは、

帰り道に入ったから使う物ではない

ということです。

出発前に見つかった施設不良は施設側資材で修理。

通常整備の不足を、車載緊急予備品で補うこともしません。

実際、最終返却経路の排水覆いに補修が必要だと判明しましたが、K2D-RSは使わず、水車町側の通常修理材で補修されています。

これを受け、水車町では、

予備品は、使わなかったことを失敗としない。


という運用原則が追加されました。

二本目の平鋼は、最終帰還区間で本当に代替不能な安全補修が必要になった場合には雪板の判断で使用できます。

しかし必要がなければ。

そのまま日本側工場へ返却されます。

そして新たに判明したのは――

この平鋼は、工場へ戻ったあとも車から降ろされず。

満タン便が初回納車便として昔の水車町へ送り出される際にも、そのまま積載されるということでした。

つまり。

この一本は、

水車町 → 日本側工場 → 昔の水車町 → 現在の水車町

を、使われないまま満タン便と一緒に循環します。

そして現在の記録には。

その鉄を製造した者も。

工場へ入庫させた者も。

最初に満タン便へ積んだ者も――

存在していません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。