9話 奇襲
街道端の地面が突如盛り上がり、蓋のようなその下に開いた隙間から何者かが攻撃してきた。
緊急事態? だからしょうがない。
起きてしまうかもしれないが、街道脇の柔らかそうな藪に、なるべく優しくニコを落とす。
穴だ。
それは両脇の二か所から出現し、中に何者かが潜んでいた。
右の穴に一、左に二。
右がまず最初に開き、中から弩を構えた何者かがこちらを襲撃してきた。
「待て! 攻撃するな!」
一応言ってみる。
だめだった。
奇声を発しながらそいつらは攻撃してきた。
遅れて左からも弩が二丁現れ、ボルトを飛ばしてきた。
その大きさ、臭いからして敵はゴブリンだな。
街道に出る前から匂っていたのはこいつらだったのか。
どこでもしているものだと勘違いしてしまった。
痛い、左肩にボルトが刺さっている。
殺す。
ビュウッ!
パシッ!
飛んで来たボルトを躱しながら、掴んだ。
そうやりながら、鎧に付けた短剣を抜く。
「っ」
しかし肩の痛みでなんと、取り落としてしまった。
ヒュンッ。
更に飛んで来たボルトも躱し、すぐさま掴んだボルトを右に投げ返す。
最初に撃ってきた方を。
次のボルトを装填、してくるとすれば、それは右の方だろう。
ドスッ。
投げたボルトは穴の奥で光る、黒い小さな目に吸い込まれていく。
「ギャボイデア!」
と悲鳴が聞こえた。
ガサッ。
「わあ! ななな――」
ニコが起きてしまったようだ。
(カチャカチチ……)
どうしてくれようか、左の穴でボルトを装填している気配がする。
私は足元の袋の上に斜めに置いていた剣鉈を掴み上げるや走り穴を周りこんだ。
中から槍でも突かれたら怖いしな。
ダンッ。
そして蓋になっている木の板を、思い切り踏みつけた。
(§〈「dΓs※〇t/Ξs!?)
中の二匹にぶつかったようで痛がる声がする。
ボルトの装填? をあきらめて、逆らうように蓋を押し上げ穴をもがき出ながら、飛び出てきた。
ヒュザンッ。
右手に構えた剣鉈を横に斬る。
ドッ、トンッ、コロコロコロ……。
そいつの首はポンと飛んで、道の反対側の穴に転がっていって落っこちた。
ドサリと倒れる首無しゴブリンの傍を、悲鳴を上げて穴からひぃひぃと這い出てきた最後の一匹。
が、弩を放り出し、街道を走って逃げていく。
カシャンッ、テテテッ……。
驚いた顔のニコがその向こうにいる。
「うわあああこっちくる!」
私は弩を拾い上げざっと見て調べ、装填がすんでいるのを確認し、逃げてゆくゴブリンの背に狙いを付けて、撃ってみた。
ピシュンッ!
「ヒィーヤワゲギャッ!」
ドサッ。
「よし」
「え? なんでみえんの?」
ズチュッ、左肩のボルトを引っこ抜いた。
痛い。
あまり食い込んでなかったが。
「大丈夫か?」
「びっくりした! ここかいどー? なんで?」
襲ってきたんだぞ。
あの穴に隠れてた。
土のついた木の板の蓋だ。
濡らして塗って、乾かしたのか。街道に似せている。
やるな。
待ち伏せ、というやつか。
ゴソ、カラン……キュポンッ。
ゴブリンの穴を調べると酒があったのでそれで傷を洗った。
傷を洗うのはとても大事だ。
これは絶対だ。
ニコも怪我がないか再度確認する。
他にも街道をゆく人を襲ったんだろうか、いくつか略奪品があったので全部回収する。
ある程度奇麗な布も奥にあったので、左肩にそれを巻いて縛った。
この傷も治りが早いのだろうか……。
ゴブリンの耳を切り取ってる際に、ニコがどうしてもとせがむので一発だけボルトを撃たせてあげた。
穴をふさいでいた木の板を樹に立てかけて。
「うわぁっ!」
ボルトが飛んでった反対側にニコは弩を落っことして転んだ。
弩が落ちるところは硬そうな道だったので、すぐさま掴んだ。
ニコが柔らかな草に尻から転がったのをただ眺めた。
ボルトは外れてった。
全てがずいぶんと遅い。
集中するとよく見える。
「キャッキャッ!」
撃てはしたが、ボルトは藪の奥に飛んでゆき回収できなくなり、残り八本。
弩は三丁手に入れた。
が一丁は壊れかけていたので森に放り投げておいた。
人間から略奪した品と思しき鞄二つ、銀貨五枚、銅貨十一枚。
本が二冊、雑多なものがいくつか。干し肉数切れ。酒一本。
小さな短剣二本。
投擲? 用に革鎧に装備しておく。
穴の中には不幸な旅人? の頭蓋骨等の他に、得体のしれないものがまだあったし、小鬼のごみか知らないが周囲にはまだなにかありそうだったのだが、道を急ぐことにした。
そして今回、敵が地中に潜んでいると、どうも気が付きにくいことが判明した。
森をうろついてるのとは違って。
当たり前かもしれないが。
いい勉強になった。
ゴブリンの生首を蹴り飛ばして遊ぶニコを見ると、子供の成長について考えさせられた。
そして私も靴を手に入れたいと思った。
読んでくださりありがとうございます。




