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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
二章 湖の街編
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59話 炎

 酒瓶を壁に投げつけた奴がいる。


 ここの酒はどれも上手いのに、持ったないことをする。

 空にしてから好きに投げればよい。


 壁がびっしょりと濡れて一帯に酒の匂いが広がった。


 ダロムが素早く立ち上がり、ケンウッドの傍に近づきメイスの柄に手をかけたな。

 よい動きだ。


 ???「こんなクソマズイ酒が飲めるか! 一番高いのって言ったよな俺は? こんな泥水しか置いてねぇのか?」


 ???「ハッ、しょうがあるまい、不潔な泥溜まりに住んでる民族にはこの程度が限界なのだろう」


 酒の味がわからん奴がいるようだ。

 ……あれは組合の冒険者たちと違って、気持ちよくない飲み方だな。


 あ、飲んでいないのか。

 不潔な泥溜まりに住んでる民族とは、どういう意味だろう。


 ガストンも組合とは違い、赤ら顔でにやけていたのが、厳しくなり注視した。

 ここでは平常の事ではないようだな。


 他の者達も驚いて見ている。


 彼らの言葉に不快な顔や、怖れを浮かべてもいるのがわかる。

 特に二人に何か言う者はいない、黙ってる。


 冒険者のような荒くれ者はいないからだろうか。


 従業員「お、お客様、こちらは王都でも有名な銘柄で、一流の酒にございます」

 獣人の従業員も困っているな。

 なんだかかわいそうだ。


 二人の色白の男、無意味に怒っているツンツンした赤髪の若い男は小剣を差している。

 もう一人はガストンと同じくらいの年で紺の髪を後ろにやって固めていて、先端が真っ赤な石の、短かめの小杖を腰に刺しているから、魔術士だろうか。

 なんだかぶん殴りたくなってくるようなニヤニヤしている顔だ。

 ああ、ギャレスだ。あいつを思い出させる顔だな。


 あの二人はどっちもよい服を来ている。

 この街では見かけない色合いや素材な気がする服装だ。


 やはり、外から来た者達だろうか。


 外套を着ていてあまりよく見えないが、若い男だけ奇妙な、真っ赤な鎧を着ているな。

 なんでここで装着を許されているのかは謎だ。


 しかし白い肌だ。

 人族にも種類があるのだな、と私はぼんやりと見ていた。


 若い男が剣を抜くまでは。


 ジャキンッ。

 若い男「帝国に楯突く旧王諸国産のだろが! チッ、薄汚ねぇ獣野郎が、燃え尽きやがれっ!」

 カアァァ……奴の抜いた小剣が突然、高熱を発し輝き辺りを照らす。

 何?


 魔術士か?

 彼を斬ろうと言うのか、武器も持たないものを。

 

 ガストン、ビクターもが立ち上がったが、卓が邪魔だな。


 幸運にも、私と奴らの直線上には何も遮るものが何もなかった。


 考えるより長剣を抜くよりも早く、視界は振り下ろされるそこへ動く。


 ガキイィィィィィンッ!


 若い男「なっ! なんだ!? てめぇ!」


 危なかった。

 従業員の前で炎が燃え盛る”長剣”を、私はすんでで抜き放った長剣で受け止めた。

 目の前の炎がものすごく熱い。


 そしてもの凄い力だ。ホブゴブリン以上だな。


 カキキィッ!

 カチャッ、直ぐに両手で持って受ける。

 背後の従業員は驚いて尻もちをつき倒れたようだ。


 ボボオオッ。

 輝く小剣から炎が湧き上がるように出現し続け、天井まで焦がすかのように燃え盛り高熱を放っている。

 私はそれを、実際に刃のある小剣部分を彼らの間に突撃して、ギリギリのところで剣で受け止めたのだ。


 こいつは詠唱もなく、突然火魔術を小剣から出した。杖もなしにだ。

 剣自体が魔道具なのかもしれないが。

 燃え尽きやがれと叫んだ意味も分かったな。


 受け止めた際、背後の魔術士がとっさに小杖を構えたが、驚きの方が勝ってるようで硬直している。


「てめ、てめぇっ!? エルフ、なのか!? いきなり何邪魔してんだてめえ! 亜人デミヒューマンの味方すんのか!」

 デミ……?


 炎剣を押し付けてくるが、抵抗する。


 やはり力が強い者は、一部の魔物や私やベル以外にもいるんだな。


「この人はいきなり殺されるようなことはしていない。剣と魔法をしまえ」


 そ、そうだ!

 と客の誰かが弱気ながらも言った。


 身なりの良い人族「ああ、あの亜人の娘、不敬にも帝国の騎士様に逆らいおったぞ!」

 男と共にいた女「きゃあ! 大変! 野蛮な冒険者が暴れてるわ! お気をつけて! 帝国の殿方」

 なに?


 ガストン「ちっ、こんな時に(大剣は預かり場かよ)」

「ど、どうしようお兄ちゃん!」


「ルーナさんっ”魔法剣”に気を付けて!」

 ふむ?


 あ、魔術士が気を持ち直して、詠唱を始めた。

 むう、二人同時に戦うか。


 若い男がまた怒りだした

「人!? それは人じゃねえ! 獣なんだよ、亜人デミヒューマン女がぁ!」

 なんだと。


 さっきから男の鎧から妙な音がしている。

 燃え盛る炎で聞こえづらかったが、鎧の妙な音と男の力が同時に増した。

 キュィィィィィィ。


 ガギギギ!

「っ!」

 なんて力だ!


 バキャアッ!

 足元の木床が割れた。


 ボボボオオオオオオッ!

 皆「「わあああ!」」

 奴の小剣から出る炎も勢いを増して天井まで燃え盛り、本当に焦がした。


 ガギギキイッ。

 長剣で受ける腕も押し負け下がる。

「ぐっ」


 受け流して斬りこむか? だが、背後の従業員が巻き添えで焦げそうだ。


 ダダダダッ。

 ビクター「ルーナさん! こっちへ!」

 従業員「あ、あっ、はひっ」

 良いタイミングでビクターが従業員を助け起こしに走り寄り、他の従業員も手伝って背後からどいてくれた。


 いや、熱いのと危険なのとで、皆も周囲から離れていく。


 それじゃあやってみるか。

「フゥッ」

 息を吐き、脱力して剛腕の炎剣を受け流し、奴を斬ろうと首を狙う。


 さらばだ。


「させるかクソがぁ!」

 だが、奴は反応した。


 ガキイインッ!

「!?」

 すぐさま剣を戻して、長剣を受けた。


 押す力の入れ方から考えるに、信じられん反応だ。

 床に刃をめり込ませるのと思っていた。

 

 ガキキキキガキィッキィインッ! ガキイイィィッ!


 瞬く間に連撃が繰り広げられ、木片は飛び、炎と刃が暴れ狂った。


 もはや誰も近づくことは許されない剣撃の嵐が食堂の一間に巻き起こる。


 受ける、引く、また別角度から斬る、受けられる、受け流しその隙を斬る、戻して受け止める。


 連撃がことごとく炎剣で受け止められ、また奴の炎剣も私は受けて、流して、躱した。

 私が繰り出す連撃に奴はついて来ていた。


 妙な剛腕以前に、並の剣士の腕ではない。


 見事だ。

 蜂など細切れになるだろう。


 ドガッバキャッ、ズバアンッ! ボボオウッ! バラバラバラアッ。

 床や傍の卓に我々の刃と衝撃が触れるや、すぐにバラバラに切り裂かれた。


 皆「「うわあああ」」「きゃあああ!」


 金属の打ち合う音、炎の燃え盛る音の向こうで、皆が驚き逃げたり離れたり叫ぶ音が遠くに聞こえた。


 剣線の向こうに、奴の唸る鎧からわずかに見える管が、奴の腕、籠手、腿、足に伸び繋がっている。


 これは、黒い材質は、あぁ、蒸気の機械か。

 剛力の元はそれか?


 うるさい奇妙な音はより高くなっていくな。


 それよりも、こいつ自身の剣の腕がすさまじい。

 隙がないし、色々試しても対応して来る。


 しゃがみこんで足を狙うも、最小限で飛び躱し、その隙を狙い

頭を両断しようと炎剣を繰り出す、傾けて避け、頬を炎が舐める。


 柄で腕を押し、脇を切り裂くも、奴は咄嗟に離した片腕の拳で私の脇を殴ろうとするが、脇への一撃を中断してよけた。


 その繰り返しだ。


 今まで一番の剣士だ。

 油断すれば首や手が飛ぶだろう。

 

 なんと楽しいのだ。


 しかし炎が熱い。

 頬や腕が炎で焼けて来ているのだが。

 それにいつまで続けるんだ。

 そろそろ疲れて来たぞ。


 中年「ええいヴァイン! 邪魔だ! どけい!」

 ヴァイン?「~~~っうるせえ! どいつもこいつも邪魔すんなあ!! “ウィップ”!」

 

 む!

 なんと言った?


 ――その瞬間、炎剣の炎がまるで生きているかのように蠢いて変化した。


 奴の炎剣を受けようとしたのだが、叫ぶと同時に中断し、何かしてきたのだ。

 止まった横なぎの構えの炎剣から、炎が細く伸びて、高熱で光る線のように変化してしなり、背後に回り込む。


 ビュルウウンッ!

 飛んだ。

 しかし、片足が捕まった。

 恐るべき速さで。


 “鞭”だ。


 炎の鞭が両足に回り込んだんだ。

 目に見える横から迫る鞭の初速から察知してすぐさま飛んだが、片足が捕まり止められてしまった。

 回り込む瞬間、その加速が最早目に見えない恐るべき速度を超えたものになって。


 ジュウウッ、あっという間に鞭にからめとられてしまったブーツ越しに鋭い、つねるような、叩きつける痛みがしたと思うと、内側が焼けるように熱を帯び、靴が焼け焦げる臭いが漂う。


 そしてすぐさまヴァインが炎剣を引き、浮いた私を地へ引きずり落そうとする。


 体制を崩される前に、私はとっさに鞭を斬る。


 だが、その隙を、鞭となった剣を引いたままで奴が上段に構え、私を斬った。

 

 ギリギリで受ける!

 鞭は最小の力で振ったから、長剣で受けるのはかろうじて間に合うはずだ!

 無理やり渾身の力で受け止めた。


 バギイィィィィィィィィンッ!!


「!」

 が、無理に受けた代償か、長剣が奴の剛腕の炎剣の一撃に耐え切れず、折れてしまった。


 ガランッ、ゴトンッ、カラアァァンッ、バラバラアァッ。


 防いだがしかし、受けた腕と胴体を、奴が振りぬいた鞭上の炎部分が襲い掛かって来る。

 ジュボアッ!

「ぐぅっ」


 直撃し弾き飛ばし、背を壁に激突させた。


 ドバキャアアアアアッ!


 ビクター達「「ルーナさん!!」」


 読んでくださりありがとうございます。

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