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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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58話 商人宿

 アリエスタは捕まった。


 師匠が襲い掛かって来て逃げたが、やっぱり抵抗すると決めて姿を現したんだが。


 セレナール「誰が耄碌爺じゃ、馬鹿者っ」

 彼が虫から変化し姿を現し、やってやんよと言った瞬間には、周囲にいくつもの水球が出現して、瞬く間に彼に向かってぶつかり弾けた。


 その最中彼も水球を飛ばしやり返したが、セレナールは躱しもしなかった。


 その後、震えてずぶ濡れで倒れる彼の上空に大水球が出現し、容赦なく叩きつけられた。

 ボチャアアンッ!

 アリエスタ「ぐぺぇっ!」

 彼のよりずいぶん大きく強力だった。

 彼のは中水球だったのかもしれない。

 しかも破裂したぞ。


 ビクター「うわぁ……」

 ソニー「先輩ーい!」

 

 ベル「あー、やっぱり“ウソのやつ”かー」

 うん?


 ううむ、あれが、水爆弾オヤジと言われていたワケか。

 球はアリエスタに落ちる寸前で爆散したな。


 だがあれは、かなり手加減した威力だと魔力の感じでもわかる。

 本気でやれば恐らく無事では済まないだろう。


 衝撃的な最後に唖然とする観衆の中で、喜んでいるのは酒を飲んで見ていた冒険者達だけだった。


 セレナール「姿を堂々と晒して敵と相対する魔術士などいるか、愚か者め。修行をやり直すぞ」

 ほう。


 !

 ならば、と思って彼を見ると、セレナールの姿が消えてなくなった。

 あれ? 足跡さえない。


 ビクター「あれ!?」

 ソニー「え? 会長!?」

 ガストン「あれ、消えたぜいきなり」


 そうか!

 アリエスタの水球が急に消えたのは、すり抜けていたのか。

 今まで見ていたセレナールは、幻だったんだな!?

 どうりで足音もしなかったわけだ。


 見事だ。

 

 ベル「あー! やっぱり!」

 彼女、さっきから幻と見破っているようなことを言っていた。

 すごいな。


 本物はどこにいるのだろう?


 残されたアリエスタの周りの水が、混ざった砂や土を落としながら動きだし、そのまま彼を持ち上げるようにして、水球の檻を形作った。

 しかも魔力の流れが今度ははっきりわかる。


 その先、答えは、向こうに見える宿から出て来て私達を見ていたケンウッドの隣にあった。


 さっき見たのと全く同じの強大な魔力と気配が彼の隣にいればわかる。


「……」

 これは。


 今度こそ本物だな。


 平坦で静かなのは“幻”だったからなのか。


 強大な魔力のうねりがわかる。

 全然“老人でも中年なんかでもない”ぞ、輝くように力を放っている。


 魔道具も幾つも持っているな。

 剣も、指輪もだ。

 あちこちに隠されている。


 これは絶対にかなわないな。


 自分の額に触れると、うっすら汗をかいていた。

 ふむ。


 近づきたくないな。


 幻なんかとは比べものにならない強者だ。

 黒衣の男とぜひ戦ってみてほしい。


 何故、ケンウッドと一緒にいるのだろうか。


 ベル「わ~すごいねえ」

 彼女はなんというか、キラキラして見ている。

 飛び寄って行きたそうだが、何故か私の髪握って浮かんだままだ。

 アリエスタへの仕打ちを見たからだろうか。


 セレナール「……それではケンウッド殿、明日にでもよろしく頼む。邪魔をした」

 な。


 彼と何か話をして、そのエルフは私達の方をチラと見て、うなづくかつかないか、曖昧な挨拶めいた動きをしながら背を向けて、そのまま歩み去っていってしまった……。


「……」


 チャポン……追いかけるように動き出した浮かぶ水球檻内で気絶しているアリエスタを従えて。

 兄妹「「あっ」」「先輩っ」

 ガストン「まじかよ」


 青い鳥がまだ私たちを見ているのはなんでだろうな。


 アリエスタは明日の依頼にちゃんと来るだろうか。

 なんだか駄目になりそうな気がする。


 あのエルフは修行をやり直すとか言っていた。

 冒険者ギルドの“影の組長”モードが確か、修行から抜け出して依頼を受けている、と言っていたな。


 しかし、同じエルフの私に、目もくれず、話しかけもしてこなかった。

 同族なんて別に珍しくないのかもしれない……。


 私はちょっと、嬉しかったのだけどな。


 ベル「だいじょぶー?」

「ああ」

 びっくりし過ぎた。


 ガストン「お、おーい……またなーアリエスタ」

 ビクター「お疲れさまでしたー!」

 ソニー「え? え? 一体、何が何やら」

 ベル「ばいばーいアリ! あーケンウッドだ! ごっはん、ごっはんー♪」


 ケンウッドがこっちに来た。

 後ろに蜥蜴人の男もいるな、知り合いだろうか。


「皆さんお昼ぶりですね、いやー凄かったですね! 協会長の魔法は」

「ケンウッド」


 ガストン「やあケンウッドさんにダロムも。俺ぁ久しぶりに本物の水爆弾が拝めたぜ、あいつホントに弟子だったんだなあ」

 ビクター「こんばんわケンウッドさん、ダロムさん」


 この蜥蜴人の男、ケンウッドに隠れて見えていなかったが、片腕だ。


 私と目が合うと驚いて尾がぴんと立てている。


 ガストンのように中年ぽくて、古傷がいくつかあって、右腕が、肩だけを残して、その先にあるはずの腕がない。

 魔物に襲われた傷だろうか。

 ベル「だれー?」


 ケンウッド「ルーナさんにベルさん、こちらはダロムと言って、(私の)荷馬車の御者や補佐をやってくれている者です。先日ベイリ村に行く際、小鬼ゴブリンに襲われ怪我をしてしまい、休養中だったのです。

 ああ、聞いたなそういえば。彼だったのか。


 ダロム「どうゾお見知りおきを、エルフ様、ソシて“若”を救って頂き、誠に感謝シておりまス」

 お辞儀された。わか?


「こんちには、私はルーナだ『ガストン「ルーナ、夜はこんばんわ、な」』……む、こんばんわ」

 そうだったな。

「ハ、よい晩でごザいまスな、ルーナ様」


「ルーナでいいぞ」

「畏まりまシた、ルーナ殿」


 ううむ、様はなんとか取れたんだがな。

 

 ベル「よろぺっこ!」

 こらベル、急に飛び出すと、ホラ、ダロムが驚いてるぞ。

「よ、よろシくでス」


「ダロム、腕は大丈夫なのか」

「? ああ、いえ、これは昔に失ったもので、今や痛みもシまセぬ。無論、小鬼の怪我は治療魔術を支払ってかけて頂き、無事でごザいまス」


 ああ、昔のなのか、小鬼にやられたのだと勘違いした。

 弱そうに見えないから不思議だったのだ。


 ガストン「ルーナ、ダロムはケンウッドさんにいきなり群がって来た小鬼から守って負傷しながらも全部叩きのめして、最後にゃホブゴブリンの頭を“メイス”で叩き潰したらしいぜ」

「ほう」

 ビクター「ええ!?」 ソニー「わーっ」

 ベル「ぽっこーん?」


 ケンウッド「そうなんですよ! いやぁ流石、元“竜兵団”員です、命拾いしました」

 ダロム「いえっ若、この老体等、情けなくただ無我夢中だったに過ぎまセぬ、休養など頂き、面目ない」

 ビクター「ダロムさん凄いです! 立派です!」


 メイスとは、その腰の得物のことか。


 蛙の時の棘突き鉄球モーニングスターと同様の武器だろうか、鉄球ではなく、何か野菜のような形状で、肉厚の小さな刃状の鉄板がひだのようにいくつも出ている。


 そしてケンウッドを若と呼んでるな。

 若者だからだろうか。


 あと、竜兵団というのも気になるな。


 左手を出してきたので、握手だと思い、右手を出し、手を逆さにして握った。

 ガストン「左手出しゃいいのに」

 あ、そうか。


 ベル「ねえねえ早くご飯にしよーよ」

 ケンウッド「はいはい、ではこちらにどうぞ皆さん、私もお腹ペコペコです」

「ぺっこぺっこ、ぺこっぺこっ」


 皆で商人宿とやらに向かう途中、兄妹が話している。

「どうだった? 魔法陣は」

「それがね、転移陣なのは間違いないって、でもセレナール様も専門家じゃないから、知ってる人に相談するって言ってたよ」

「ふーん」


 商人宿についた。

 隣には馬車が並ぶ駅があるな、蒸気馬車が見当たらないが、奥にあるか、黒いから見えなかったのかもしれない。

 荷馬車のブレゴは元気だろうか、駅奥の厩舎で寝ているかもしれないな。


 宿と繋がっていて、奥には馬車の荷物を出し入れする多分、倉庫の入口が見える。


 冒険者組合より大きく、街に来た時も通ったが、荒っぽい冒険者には合わない、気品、みたいなものがあるように思える。

 セレナールのような感じだろうか。


 商人達が出入りしているし、窓からも見えるな。

 職員も皆揃いの、奇麗で整った服装だった。


 組合のそれとは意匠? が違っていて、こちらの方が高そうだな。

 漂う食べ物や、酒の匂いも上品? な感じがする。

 ベル「おいしそうな匂いがする!」


 ああそうか、ここは商人にとっての冒険者組合のような場所なのかもしれないな。

 ここなら、喧嘩ばかりで騒々しくない落ち着いた食事ができるのだろうな。



 入口の男に歓迎され商人宿に入る。

「シャアッ、ざっけんなホンマぶち殺すでこのアホ狸がぁ!」

「ガアッ、なんやコラボケっ、イタチ野郎!」

 バキィッ、ドカアッ!


 目の前には殴り合いの喧嘩をする妙なしゃべり方の獣人達がいた。

 商人の恰好だな。

 ベル「ケンカしてるー」


 ケンウッド「さ、どうぞどうぞ、こちらになります」

 彼は喧嘩する二人を無視して右にある食堂らしき部屋に促す。

 あれ? 彼らが見えてないのだろうか。

 

 ガストン「お、おい、いいのか?」

「いいんですいいんです、放っときゃいいんです」

 とケンウッドは二人を無視した。


 従業員? 達は慌てて止めているが。

 

 入口を通ると、組合に似た広めの部屋で、真っすぐの壁際に受付。

 横に階段、右は食堂か、左は奥への通路がある、倉庫だろうか、脇に荷物がいくつも置いてあるな。


 受付上に巨大スライムのようなとても大きい海? の絵が飾られている。

 荒れ狂う波の中に今にも沈みそうな小舟がポツンと浮かんでいて、厳しい風雨の中で立ち向かう、旅人らしき者の強い眼が曇り空の向こうの切れ間にわずかに射す光を見ていた。

 丘から湖を見たのと逆だ。荒波の向こうに小さな陸、島? がある。


 弾ける波と潮の気配を感じるが、皆は平然としている。


 ベル「あれが海? シュワシュワなの?」

「ああ」

 さっきの冒険者の話か?


 広間にはテーブルや椅子が並び、植物の鉢植えや仕切りで奥が見辛いが、奥の暖炉に照らされて何人もの影や気配と話声がする。


 茶色い猫獣人の従業員「いらっしゃいにゃ、くつろいでいくにゃ」

 ほとんど獣人だろうか、様々な匂いや独特の声が幾つも聞こえてきていた。

 商人達が金の話をしているのが聞こえているから、そういう話をする場なのだろう。


 狐と狸の獣人の商人が、広間の中央で喧嘩をしているが、皆無視してるな。

 日常的? なんだろうか。


 ベル「キツネとー、なんの人かな?」

 ケンウッド「あれはタヌキという、確か東方に生息する生き物の獣人の方ですね」

 彼は“東方”の時に一瞬私を見たな。

「タヌキかー、ぽんぽこだねー」

 あのお腹のことか?



 話を聞くに、元の生き物、獣人と同じような動物がいることがだろうか?

 そう考えると、魔狼等の獣人もいるのだろうか。

 ガストン「獣人族ってのは、遥か昔に獣の神様が動物に与えた恩寵で獣人になったって話らしいぜ」


 ソニー「あたしその話大好きなんです」

 ほう。

 ビクター「あ、でも、蜥蜴人とか、魔物由来じゃなかったですっけ?」

 ほう?

「ああ、昔はまだはっきりしてなかったからな、獣人も亜人も一括りに魔物扱いしてたのさ。ひでえ話だよ」


 ベル「わーおいしそう! 早くっ早くっ」

 ダロム「どうゾ皆サま」

 彼は私達を先に入れてくれた。


 広間から空いた扉の部屋に入ると、横長の食堂が広がっていた。


 外から見えた灯はこの部屋の窓だ。

 組合の酒場同様、丸い卓だが清潔な布で覆われていて、食器は木製ではなく、金属だ。

 絵、や布のかけられた壁も柱も床も、傷だらけではなく、わりと奇麗だ。

 商人達、組合の職員もいるな。

 やはりほとんどが様々な獣人族だ。


 他には高そうな服を着た髭の人族連中もいた。


 大騒ぎして酒瓶と投げているものはいない。

 談笑しながら優雅? に飲み食いしている。


 周囲には警備の屈強な男達ではなく、そろいの仕立ての良い制服だ。

 それに身を包んだ整った感じの男女が立っていたり、給仕をしたり、奥の組合扉のような向こうが見える形の戸口の奥から料理を運んで来ていた。


 中央壁際には音楽を奏で歌う者一団がいる。


 ~~黄金の野に~~梯子がかかり~~回廊に羽が舞い~~♪


 物語を歌っているようだな。

 興味深い。

 色んな楽器を使ってるのもいい。


 客は皆、酒場でがなって歌っていた冒険者たちと違って静かに聞いている。


 少しワクワクしながら入ると、重武装の一部の男達は遠慮しろと言われた。

 私とガストン、ビクターは武装を外せと言われ、預かり所に放り込まれた。

 帯剣のみだと。


 ?


 ガストン「要するに毒の塗ったナイフを隠されるのは困るし、魔物の血まみれの鎧も脱げだとよ」

 ナイフは短剣だな。

 どうも皆二つの言葉をよく使ってるみたいだ。


 弓矢を置き、腰小剣、ナイフ、短剣を数本、改良皮軽装鎧も外す、籠手も。鞄もか?

 長剣だけをベルトに差して食堂入りを許された。

 だが、すっきりしたな。

 今なら女王蜂も魔法を打たれる前に両断できそうだ。


 ガストンは大剣さえ許されずナイフのみで、ビクターは長剣、ダロムはメイスのみで先に行っている。


 皆が普通の衣服の身になるのは珍しいと思った。

 出会ってからは野営の時もそう具を着けたままだったからな。


 あ、ベイリ村で宴会をした際は脱いで落ち着いていた気がする。

 大勢で本当に楽しく騒いでいたので忘れていたな。


 なんか面倒くさい服も着させられたのを思い出したぞ。


 食堂の小さな受付から先導していた従業員が、空いている卓に案内し座った。


 予約席、と書いてある札が置いてある卓だ。


 先に着いているケンウッド、ソニー、ベルが楽しく話していた。

 ベルが声を抑えているから、もう低くしろと言われたのかもしれない。


 魔術士はローブだし、杖は見過ごされているようなので、ここでは魔術戦が有利かもしれない。

 ソニー「ふふ、会長と先生が、私や他の生徒の子達を何度か連れて来てくれたことがあるんですっ、(アリエスタ)先輩は罰を受けてて外出禁止でしたけど……」


 ケンウッドが従業員と色々話してるな。

 食事を持ってきてくれるのか。

 選ばなくていいみたいだ。


 ベルがずっとご機嫌だな。


 飲み物は既にきており、ガストンが私たちに酒瓶を杯についでくれた。

「お疲れさん」

「ああ、ありがとう」

 ビクター「ありがとうございます先輩」

 ふむ、私も彼らを先輩と呼ぶべきかもしれないな。


 ケンウッド「こほん、ではでは、皆さん、護衛任務ご苦労様でした。その後の驚くべき戦いももちろんですが。本日はお集まりいただきありがとうございます」

 あれ? ケンウッドは今立ってるのか? 座ってるのかどっちかちょっとわからない。


「私めがささやかですが心ばかりの食事を用意させていただきました。今日は心行くまで飲んで食べて、明日への糧としてください、では”汝の道を照らすように”」

 ?


 一同「「”汝の道を照らすように”」」


 杯に飲み物が満たされ、乾杯した。


 む、上手いなこの酒は。

 ベルは野営地で酒を酸っぱいと言って嫌ったので、山羊乳に果汁を入れた物だ。


 しかし、最後のは何だったのだろう、前も言われたな。馬車で彼らを助けた時だ。


 ガストン「ああ、ここら辺の挨拶みたいなもんだな。“旧王諸国”に限るが。ああわかってる、旧王諸国ってのはな? 今俺らがいるこの“レグトス国”っていうでかい王国と、近所の国々をひっくるめったあだ名みたいなもんだな」


 レグトス王国……。

 ガストン「やっぱ(マルコの)親父の野郎、そこらへんも教えてなかったか……ったく」


 すると、帝国とやらでは言わないのだろうか。


 “あそこの連中”だけ一瞬こちらを睨んだようが。


 人族達だが、ここら辺の人族と雰囲気も“武装”も違うし、肌の色も白い。

 ガストンに近い年のローブの男と、外套に身を包んだビクターより上くらいの少年だ。

 少年のら辺から、かすかに“蒸気馬車のような匂い”が漂っている。

 好きで近くで見ていたのだろうか?


 料理が運ばれ、そんなことは記憶の彼方に消えさった。

 どれもうまい。うますぎる。

 この宿に泊まりたい。


 このかかっている粉が上手いのだろうか?

 あとこの緑の辛い調味料? もいいな。

 焼いた肉や煮た肉に辛い粉がかけられていて塩味と合わさって美味い。


 魚の方が主のようで、恐らく油で揚げたやつや、焼き魚や生のを食べやすく切ったものもある。刺身? だったか。

 見栄えもきれいでいい。


 野菜も噛み応えを考えて選ばれていて、新鮮で、汁が上手い。

 魚を揚げた小さい奴も入っているな。


 黄色い溶けて伸びるやつも上手いぞ。

 ガストン「それは山羊の乳を加工した、チーズってやつだよ」

 ベル「あたしこのチーズって、大好き!」

 ビクター「僕も好きです」


 ソニー「あたしはお肉です!」

 ケンウッド「ブレませんねソニーさんは」


 ベル「ごちそうだねールーナ!」

 そうだな。


 ケンウッド「よかったです、皆さんには是非ともスイレーン名物の甲羅蟹こうらガニを食べてもらいたかったですが、今は売り切れで、とても残念です」

 ダロム「……」

 甲羅こうらガニ? 硬いのだろうか。

 ガストン「ああ、でっかい蟹の魔物ですげえ美味えんだが獲るのが難しいのさ。最近は滅多に出回らないですね」

 ケンウッド「そうなんですよ~」


 ビクター「まだ食べたことないなぁ」

 ソニー「甲羅や素材はたくさんあるんですけどね」



 その後。


 魔法協会とやらに行っていたソニーから魔法陣の話をしたが、さっき少し聞いたのとほぼ同じだった。

 ケンウッド「おお、セレナール様でも正体がつかめないと」


 ソニー「ええと、会長は以前も見かけたことがおありで転移陣に間違いないと判断されました。ですが、私達も詳しくなくて詳細な解読ができなかったのですが、専門家が読めば、どこから転移したのかがわかるかもしれないそうです」

 彼女は天井の見事なたくさんの吊り蝋燭を見ながら思い出すように言った。


 ほう。

 来たなら、行くこともできるということか。


 ガストン「へぇ、おもしろそうじゃねえか、なぁルーナ」

 お互い考えることは同じか、ガストンがこちらを見てニヤつく。

 ビクター「えええ……もう二度と出くわしたくないんですけど」


 小鬼の洞窟の話をするが、ダロムはケンウッドから聞いていたようで、うんうん頷頷いていた。


 彼が昔いたという“竜兵団”とやらの話を聞いたが、昔にあった戦いでここらの戦士達が集まった時の軍の名だった。

 蜥蜴人が多いからだな。


 ただ、その戦いの話はあまりしたくないようだった。


 ベルの腹がとても膨らんでいる。


 しかし、食べた量と大きさが合っていない。

 魔法で消化、をしているのだろうか。

 沢山食べるから力が強いのかもしれないな。


 夕飯が片付き始めガストンが煙草を吸い始めたころ、食後の甘味が来た。

 デザート、とソニーが喜んで言っている。

 ベル「スライム? きれい!」

 

 ソニー「違うよベルちゃん、これはゼリーと言って、甘くておいしいよ?」


 色んな色をしていて、スライムに似て半透明でプルプル揺れている。

 食べると硬くて柔らかで、冷たく、果汁を固めたものだとわかった。


 魔法だな恐らく。

 と思ってたんだが、ケンウッドが湖の水草を煮るとこのように固まる材料ができると教えてくれた。


 その後、そのセレナールとアリエスタの話になった。

 ガストン「すげえよなぁ、この街最強の水使い、魔道師だぜ、しかも剣術も相当できるらしいぞ、見たことねぇけど」

 何。


 そして、彼の変化の術はやはりバレてしまったようだ。

 ガストン「あいつがギルドで借りを返したってのはそういうことだったんだよ」

 ビクター「えーと、オークに変化して、わざと衛兵団に追わせて連れて来た、と言うことでしょうか」

 なるほど。


 ケンウッド「盗賊拠点の入口も彼でしょうか? 普段なら軍が通りかかっても見つからないでしょう」

 ガストン「ルーナの後ろで突然消えたっていうから、鼠か? それに化けてまんまと入口を開けっぱにして出て行ったんだなきっと。借りを返すといや、スライムからおまえを助け出した鷲もそうだよな」


 ソニー「逃げたんじゃなかったんですね、なんだぁ、てっきり」


 盗賊で思い出したとケンウッドが野営を襲ってきた盗賊の戦利品を今売却中だと教えてくれた。 値が付いたら金を払ってくれると。


 それよりも鷲だ。

「組合の喧嘩の貸しか」

 ビクター「ああ! やっぱり、鷲もアリエスタさんだったんだ」

 ガストン「多分、蜂とやり合ってる時、どっかかから変化して隠れ見てたんじゃねえかな~、なんとなくだけどな」

「ルーナさんの叫び声がすっごく大きかったから、聞きつけたんでしょうか」


 ダロム「スライムでスか?」

 ケンウッド「蜂?」

 ソニー「鷲? 喧嘩? 私がいない間、何があったんですか?」


「ああ、冒険者になってアプルの採取依頼を受けて出かけて、蜂とスライムと戦った」


 ガストン「そうだよ聞いて驚けよ、王蜜蜂の巣を全滅させて、近場の崖下にいた巨大な沼見てぇなスライムを倒したんだよ。さすがにルーナがちょっと死にかけたけどな。まぁおかげで大儲けだぜ!」


「アリエスタが全部凍らせて良い仕事をしたな、ビクターもよく戦ったぞ」


 ケンウッド「へ!? またですか!?」

 ダロム「なんと!」

 ソニー「アプルを取りに行っただけで? い、今ルーナさんが死にかけたって言いました!?」

 ビクター「あはは、やった」



 その後も色々話をした。


「けぷ、むにゃ……まちょっと、食べりゅ……」

 ベルは限界なのか、ゼリーを頬張りながら中に掘り進んでいたと思うと、寝てしまった。

 そろそろお開きだろうか。


 楽しいものだな。


 今日は死にかけて少し力不足を感じていたが、より修練に励むとしよう、目標は、魔術を身に付けてみたいな。

 魔力の流れを何度か見れているので、杖でもあれば出せそうな気がしないでもないな。


 マルコも言っていたし、戦いの穢れを酒で流し落とそう。

 

 ところで今晩は宿をどうするのだろうか?


 ガシャーン!


 酒瓶が割れる音がしたな、あれは投げた感じだ。


 やはり、ここでも始まったか?


 読んでくださりありがとうございます。

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