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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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57話 魔法協会長

 ケンウッドに護衛契約終了や、その他の色々な成功を祝って打ち上げをしようと、彼の泊まる商人宿にある食堂での夕飯に招かれていた。


 通常よりもうまいものが出て、高めなのだそうだ。


 目と鼻の先、という場所に近づき、丁度冒険者組合の建物の前を通ったところだった。


 アリエスタ「ん? あれ? あの爺さん……あ! やべえ!! 俺やっぱ帰るわ!」

 ガストン&ビクター「へ?」



 ソニー「あ! 皆ー!」

 ベル「あーっソニーだー!」

 飛び上がって回転を入れながら彼女の方へ飛んでゆく。


 その“大通りの横道”をふと見たアリエスタが、突然逃げようとした。

 私も見ると、そこにいたソニーがこちらに気付いて手を振っているところだった。


 そして、彼女の隣にいる男が、魔術を放つところでもあった。


 敵意はないので静観? をする。

 何故なら横のソニーと同じ感じのローブ姿で、長い耳の、“エルフの男”だからだ。


 あと老人と言ったが、そんなには見えないぞ? ガストンの年上くらいじゃないか?


 ガストン「あれ? おい、アリエスタ」

 そのエルフから逃げようとでもしたのか、正門の方へと走って行くアリエスタ。


 走る彼の目の前に突然、水の壁が現れた。

 バチャアンッ!

「っぷ! ちくしょう!」


 街人「なんだ!?」


 ベル「あ、ソニー見て! アリが走ってって、なんかにぶつかったよ!」

 ソニー「あら? 先輩! え? か、“会長”? 何を――」


 お。

 水壁にぶつかり濡れた彼は、瞬く間にクチバシの長い白い鳥に変化して、水をまき散らして壁を突き抜ける。


 エルフの男 (悪手な、“魔水”に触れるとは)

 と、呟いたのが聞こえた。

 魔水?


 ベル「あーエルフだ! エルフのおっちゃんだよね? なんて言ったの?」

 ソニー「べ、ベルちゃん、ちょっと静かにしようね」


 水壁を突き破った鳥は飛び去ると思いきや、足が水壁から離れず、貼り付いている。


 それでも羽ばたき逃れようとしていると、水の壁の周囲が動き、覆うようにして鳥の行く手を囲んで閉じて、球体に変化した。

(こなくそ!)

 水の球の檻の中で鳥がしゃべった声がくぐもって聞こえた気がする。


 しばし羽ばたいて逃げられないと見るや、“緑のオーク”が瞬く間に変化して現れた。


 道行く人々たちも驚き、私たちと一緒にその様を見ていた。

 ビクター&ガストン&ソニー「「あああーー!!」」

 アリエスタの変化が全員にバレてしまったな。


 ああ、見たことがあるのか、ギャレスやゼラ達衛兵団と、野営地でだろうか?

 ソニーの上でベルがあ~あ、バレちゃったーと言っている。


 エルフの男「学ばんのぅ、儂が教えてきたことは徒労に終るのか……」

 翁のような口調だな。

 見た目と本来の年齢にズレがあるみたいだ。


 耳を澄まして聞いているのだが、小さく詠唱しているような気がする。

 だがそれはとても早く短い呪文だ。


 ベル「? なんかウソっぽいおっちゃんだね?」

 なにか言っているな彼女も。


 見ると、水球より大きく変化し突き破ろうとしたようだが、水はオーク形に広がったまま貼り付いて離れない。

 アリエスタが放つ水球と同様に、貼り付いているな。


 これを魔水と言うのだろうか。


 皆が見る中、水に包まれたオークが立ってもがくように暴れている。

 あれでは息ができないのでは。


 盗賊のアジトでも、アリエスタがオークの顔に貼り付けていたな。

 これだったのか。


 街人「オークだ! オークが出たぞ!」

 街の女性「きゃああ!」


 ガストン「違う! 魔術士の変身魔法だ! 魔物じゃないぞー!」


 今通りかかった人達がオークに驚いて騒ぐが、ガストンがうまく援護した。

 やるな。


 驚いた人々は少し落ち着いた。

 街民「あ! セレナール様だ!」「魔法協会の魔術士?」

「ばか、一番偉い、会長様だよっ」「ああ! あの、魔道師のっ」

「“水球”のセレナールだ……」「水爆弾だろ?」「ばかっ失礼だぞっ」

「なんだ、魔物じゃないのか?」「でも、衛兵を呼んだ方がいいんじゃないかしら?」

「素敵だわぁ~」

 ふむふむ。


 やはりあの男がエルフのセレナールか。

 人が集まって来たな。

 いいのだろうかこんなとこ(街中)で魔法を連発しても。


 なんとなく駄目な気がする。


 お。

 冒険者ギルドから騒ぎを聞きつけ出て来た連中は、持っていた酒を飲みながらもっとやれとまくし立てている。

 問題ないのか?


 ベル「わかった! 本物のおっちゃんが魔法使ってるんでしょ!」

 また何か気になることを言っているな、本物?


 暴れるオークが、浮いた。

 水が膨れ上がり、量が増えて、大水球が現れた。

 アリエスタと同じ魔術だ。

 同じように、オークがぐるぐると中で回り始める。


 あ、アリエスタに戻った。


 ソニー「か、会長! そろそろお許しを」

 セレナール「否、是非もない」

 ベル「これ見たことある! まねっこ?」

「ベ、ベルちゃんっ、会長が最初ですっ先輩が真似してたんですっ」


 よくわからないが、まだまだやる気みたいだな。

 アリエスタは結構この男を怒らせたみたいだな。

 だが楽しんでる様子も感じとれる。


 それにこの術はもう見たからこの先が気になる。


 しかしこのエルフ、とんでもない魔力だ。

 私の何倍もある。

 しかも流れがとても静かだ。


 魔力を見ると、アリエスタも抵抗するようだな。

 浮かぶ大きな水の球の中で回り流されているアリエスタが、魔術を放った。


 すると、大水球の流れがだんだんと緩やかになってきた。

 これは、エルフがやめてくれたわけではないな。

 同時に、辺りが急に冷えて来た。

 大水球から周りへ、冷気が広がってるんだ。


 そしてその瞬間、球がまたたく間に凍り付き霜に覆われた。


 セレナール「魔術書通りじゃな、凡庸ぼんようだの」

 驚きもしないな。

 ベル「アリがスライムみたいに凍っちゃった!」

 これは、中もそうなったのだろうか? 魔術を放ったアリエスタも自らも一緒に?


 そういぶかしんでいると、あ、変化をした。


 アリエスタの形をした穴が氷の球の中に現れた。

 その穴の中に、何かが飛んでいる?

 見え辛いが、小さい虫か?

 冒険者「おい、消えちまったぜ!」「もう終わりかぁ?」


 シュピキッ。

 彼はその姿で魔術を放った。


 刃だ。

 蜂のと同じ、風の刃を放って氷を割っている。

 刃は蜂が放ったものより強力だ。


 氷を貫通して、真下の土に三角に跡が付いた。

 ゴトンッ。

 三角の細長い氷が地面に落ちる。


 三発放たれて三角の穴を開け、虫が飛び出した。


 セレナール「ふむ、理屈は通る。外で学んだ技かの」

 ベル「蜂のやつだ! すごーいアリ!」

 ふむ?


 アリエスタは蜂の魔法を見て覚えたということだろうか。


 そして彼の魔力、刃の連発で多く減ったように見えた。


 そういえば蜂は時間を置いて放っていたな……セレナールと一瞬、目が合った。

 私がわかったことを、向こうもわかったような表情だった。


 ベル「あれー? テントウムシ飛んでなかった?」

 灯がそこら中にあるが、闇夜の中に小さな虫はあっという間に見えなくなった。

 ソニー「に、逃げちゃいました!? また!?」


 だが、私は感知してどこにいるかわかっている。



 セレナールは大通りに入り近づいてきて、私の正面に立った。


 ガストン「ルーナ失礼な真似はするなよ」

 ビクター「ゴク……」


 む、剣を携えているな。

 剣が羽織ったローブの間から見えている。


 長身で自信のある出で立ちで、緑の目は鋭く、白っぽい金の長髪に木の装身具を身に付けている。


 老人の喋り方だったがよく見るとそうでもない。

 中高年? の男のエルフ族だ。

 杖は持っていないのか、指輪だけだ。

 黒衣の男のように魔道具なのだろうか。


 強大な魔力なのだが、“不思議と静か”で、変化を感じさせない。ほぼ全く。


 そして、“足音を全くさせていない”。


 モード以上の強力な魔術士だ。

 あ、魔道師か?

 誰かがそう呼んでいたな。


 私を見てるのか見てないのかわからない視線で、ずっと黙ってこちらを向いて突っ立っている。


 何か、妙だな。


 ソニー「皆さん、お昼ぶりですーっ」

 彼女も後をついてきて、ビクターの後ろに小走りに合流した。


 ベルはテントウムシを探し回っている。


 街人「エルフ様」「セレナール様だぞ」 商人「あの方が?」

「ああ、魔法協会の会長さんだよ」 冒険者達「おおいアリアスタの奴逃げやがったぞ」「師匠が怖えってよぉ!」


 通りの人々が彼の登場に気付き名を呼ぶ。


 “私の背にとまった虫”が手足をギュッとしたのを感じた。


 セレナール「アリエスタよ、岐路きろに立ったのぅ。その娘の後ろに隠れやり過ごすか、魔術士として相対するか、選ぶがよい」


 おお、彼が後ろにいるのをわかっているように、私に向かって話しかけているな。


 あぁ、さっきから飛び回って、今は後ろのギルドの屋根にとまっているあの“青い鳥”で見てわかったのかもしれない。


 もし魔力を、アリエスタを見たりできるとしても、私と、私の魔力の影になっているはずだからな。

 必ずそうだとはわからないが。


 では?

 あの使い魔とやらの鳥の目を自分でも見れるのか、鳥が教えているのかはわからないが、そういうことなのだろう。

 虫は、気のせいかもしれないが、震えているように感じた。


 ふむ。


(アリアスタ手伝うぞ? 魔力ならたっぷりあるからな)

 独り言みたいにそっと喋る。



 ニュニュニュッ――スタッ。

 すると、虫が飛び立ち、私の前にアリエスタが現れた。


「俺はアリエスタだっての! あんな耄碌じじい、俺一人でやってやんよ!」


 読んでくださりありがとうございます。

 老エルフ? が登場しました。


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