6話 人の子
手に持つ木の棒、いや多分、杖、で袋をそっと突いてみる。
袋はびくっと動いた。
すると、袋が鳴き始めた。
「もう大丈夫だ」
と話しかけてみた。
「……だれ!? グスッ、ここからだしてよ! だすけで!」
多分人の子供、少年だろうか。
小さいし声が幼い。一番小さい小鬼より。
袋の出口の結び目を解きながら話しかける。
「小鬼……達は全部殺した。もう大丈夫だ。私は小鬼ではない」
解いた袋から小さな手が出てきたかと思うと、赤子のような
小さい男の人の子が半分出てきた。
服を着てる。
「こんにちは」
「……ぐすっ、おねえちゃん? だれ?」
少年の目がまん丸に開かれ自分、私と私の胸を見つめていた。
目や鼻や口から汁がたくさん流れている。
あと、少し匂う。
耳が丸く、肌は緑ではない。
人、だ。
多分。
「私は……自分が誰なのかわからな――『うわっワアアアアアンッ!』――い」
そう答える間に周りを見た子供が大声で泣き出した。
小鬼の死体を見たからだろうか? 崖が怖いのだろうか? 私も崖は怖い。
「大声を出すな。別の小鬼が寄ってくる。崖には落とさないから安心しろ」
ちょっと嫌だったが口を手で塞いだ。
「ンムウううう!!」
しかし、こちらを更に目を大きくし怯えるように、くぐもった状態でより大きめに叫び泣き始めた。
小鬼よりあきらかに目が大きい。
私もこんな感じなんだろうか。
鼻から垂れた汁、鼻水が手の甲に流れている。
どうしよう。
「子供、おまえは誰だ。どこから来た? そこに帰してあげるから静かにするんだ。あとこの汁を止めろ」
もしかしたら私の何かがわかるかもしれない。
段々大人しくなった、いや、苦しそうだったから手を離した。
「ぶはあっ、はあっ、ほ、ほんと? グズズゥッ、ぼくニコ! ベイリむらのこ! あのゴブリンたち、おねえちゃんがたおしたの?」
ニコ。
ベイリ村。
ゴブ、小鬼のことか? ……思い出した気がする。
でかい鉄兜は、ホブ、ゴブリン? だった気がする。
ニコとやらの鼻が詰まっているな。
ゴブリンの腰巻で鼻の汁を拭こうとしたら――「いや!」と本気で嫌がられた。
「そうだ」
ひどい目にあったけどな。
と内心思いながら二の腕の擦り傷を見るが、驚いた。
ほぼ治りかけていた。
多分これは普通じゃない、はずだ。
何故だ? あそこの湧き水で洗ったからか?
「ほんとにほんとにたおしたの? よわそうだよ? ねぇ、おねえちゃんなんではだかなの? おっぱいでてるよ? めも“ねこ”みたいだね? なんで? みみもなんでながいの? あと、かみのけがなんでそんないろなの? あと、すっごくおねえちゃんきれいだよ!」
すごくしゃべるな。
ビチャッ。
飛んだ汁が小鬼の血に垂れてった。
なんだか元気が出てきている。
勝手に帰れるんじゃないだろうか。
「私は服を探している。そして私は小鬼……ゴブリンより強い」
拾った短剣を放り投げて掴んで見せた。
「わあ! ほんとにそうなの? すごい! じゃあママのふくあげる! おれいにあげる! たすけてくれたから! しんせつにしてもらったらおれいをしろってとうちゃんがいうから! でもママのふくはとくべつだよ? いっしょにかえろう!」
子供が私の手を握ってきた。
小さい手だ。
「よし」
あと静かにしろ、さっきも言ったぞ。
”帰る”……生物の“蛙”、家に帰る、故郷に帰る、だったか。
どこか全く覚えてないが。
読んでくださりありがとうございます。




