閑話3 玉座の独白
エルフの娘はふと夢想した。
洞窟の宝の話がもし本当のだったら、皇帝はその連中の内の誰だったのだろうかと。
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世界のどこかの大広間の最奥の中心で、己の在り方を、唯一許されている側近に向けてか、自問してか、話す者がいた。
殺し合いで皆死んだ。
己は治療士の腹の中にいた。
分け与えようとした荷物持ちは旦那であった。
殺し合いに傷ついた治療士は腹だけを治し子を産んで力尽き、旦那を守った怪我で死んだ。
以来、無から全てを築いて成った己は、全てを無視し奪う強者となった。
父は正しくあろうとする弱者だった、だから死んだ。
母は慈愛に優しく、自らを犠牲者に選んだ、だから死んだ。
皆を幾度も危機から救った強者も欲を出して殺し合いの中で数に負けた。
強者を偽る弱者に過ぎなかった、だから死んだ。
欲しがるだけの獣もいらぬ、母を食らった獣人、だから亜人共は皆殺しだ。
依頼を与えた組合も、自分で出来ない役立たずだ、だから組合は駆逐する。
己の愛しき両親以外、誰もが奪おうと殺し合った、自分こそが得ようと。
望むと、望まずとも、奪い奪われ死ぬ、弱者ゆえに。
正しさ、優しさ、全てがまやかし。
ならばこそ。
強者こそが勝ち得る。
強者たる“己の国”こそが多く勝ち得る。
従う弱者には少しを与えよう。
己の両親のあり様そのものの“故国”のように。
共に歩む強者こそが育み、得られる。
武器や道具を作るドワーフは作るがよい。
金と物を運ぶ商人も運ぶがよい。
だが、従え。
いずれは遥かな森に潜む“エルフ王朝”の武士共も食らって見せよう。
強者だけが全ての法で、己らこそが、世界の主だ。
それだけのみが宝を得る。
唯一無二のものでなくてはならない。
許されない。
しかし、まだまだたくさんの宝を内包する洞窟には、圧倒的な支配者がいる。
己らが住まう大地すら、それに合わせて国が形作られ、禁じられ、避けて、残りで奪い合い生きている。
火吹き蜥蜴共が。
竜共が。
己はいずれ、そいつも食らって天下と成す。
その“炎と血”を己のものとする。
強者たるゆえに。
側に立つ、炎と血の紋章描かれた深紅の鎧騎士が呟く。
二番じゃだめなんですか?
読んでくださりありがとうございます。
彼らが登場するのはだいぶ後になるでしょう。




