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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
57/74

55話 買取と宝

 パチパチ。

 ポロン~♪ ポロロン♪

 篝火照らす夜の組合ギルドで、吟遊詩人が音楽を奏で歌っている。


 初めての依頼を終えたが、まだ何かあるようだ。


 ラウナ「ええと、まず蜂ですが、巣を丸ごと一掃したということで、これは依頼書が貼り出していてあってですね、自動的に達成となりますね。おめでとうございます」

 ほう?


 ガストン「ああ、しょっちゅうこういうことはあるぜ? わざわざ依頼書剥がさなくてもいいことがあるんだよ。“蜂蜜ローヤルハニー”もそうだろラウナ?」


「はい、ガストンさんのおっしゃる通りですね。追加で蜂蜜だけの依頼も達成してます。

これは大きいですよ~貴族様御用達の依頼ですし、瓶の量が量ですからね。でも、中級者の依頼ですからね? これ」

 中級?

「それと兵隊蜂がたくさんと、護衛蜂も状態が良いですね。討伐依頼の報酬が恒常的にありますので、報酬が出ます。死骸は解体所に移しましたので、素材をどうするかは解体屋さんと話を詰めてください」

 ? よくわからんが蜂の死骸はちゃんと回収した。

 多少綺麗にして林から帰って来たな。


 ガストン「って感じでよ、基本的に人類に有害な連中は、討伐依頼が常に出てるんだ」

 ふむ。

 人類? に有害か。

 逆を言えば、私達は連中にとっては敵なのだろうな。


 ラウナ「女王がいないのが非常に惜しいですね~、例のスライムに落っこちて溶けちゃったんですっけ」

 ガストン「そうなんだよな、いい装備になったんだよ女王の甲殻が」

 なんでもこの皮鎧よりいいものが作れるそうだ。

 むぅ、力不足だったな。


 蜂の報酬をまずはお納めください、と言って受付カウンターに置かれた盆の上に、硬貨の入った小袋いくつも置かれた。


 アリエスタ「うっひょー金だ金だ!」

 ガストン「お前さん、本当に魔術士か?」

 皆で均等に分ける、アリエスタも手伝ってくれたからな。


 しかし“瓶”とは不思議なものだな? 蜂蜜はそれ用に空いた袋に入れただけだが。

 道中でにじみ出て少し垂れていたな。ちょっと痛んでるとこから漏れた。

 ベルが張り付いて舐めていて、なんだか虫みたいだったな。


 考えてみると、大瓶幾つ分、とか言っていたな。数とか本とか匹とか、数える時の言葉なのだろう。

 瓶はあそこにも置いてある、ベイリ村や、この街でよく見かけるスライムみたいな透けている入れ物だろうな。

 酒の入れ物も瓶も同じものだろうな、あれは色がついていて中が見え辛いが。


 ああ、蜂蜜を全て実際に瓶に入れてあった。

 こうして中の黄金色が見えていると奇麗なものだな。


 ベル「ねぇ、全部売っちゃうの? 少しとっとこーよ」

 ビクター「ゴクリ……僕も賛成です」

 ガストン「好きねぇ、勿論好きにして構わないぜ? 入れ物あるか?」


 ラウナ「勿論です。こちらに各種取り揃えておりますよ」

 蓋を占めた様々な大きさの瓶や、木のものもあるな。

 ああ、大きさで思い出した。

 アリエスタ「買うのかよ、んなもんサービスでくれよっ」

 ラウナ(チッ)

 さーびす?


 魔法薬の瓶だ。ケンウッドにもらった。

 存在自体を忘れていた。

 スライムの酸にやられた時、助けになったはずだ、忘れないようにしよう。

 アリエスタがすぐ治療してくれていらなかったが。


「それで構わない」

 相談して、ガストン以外が各自、購入して蜂蜜を入れ替えて手に入れた。

 彼はどうやら甘いものが苦手らしい。

 

 アリエスタ「勿体ない! 腹に入れたらなくなっちまうんだぞ!?」

 信じられないというような目で見てるな。

 ベル「そうだよ? おいしいよ?」


「違ああうっ、金にすればいいじゃねえかああ!」

「えー? 勿体ない!」

「価値観が違げえっ」


「スライムにかけたらおいしいかも知れないよ!」

 皆「「ん?」」

 ガストン「てゆうか取ってたスライムあれ、ホントに食う気なのか!?」


 ラウナ「あら? スライムは食用可能ですよ? 一手間かかりますけど、好きな人はいるにはいますね」

 ビクター「へぇ~、村じゃ食べなかったなぁ」

 ガストン「わざわざ食うもんじゃねえからなぁ、忘れちまってたよ、“俺らの村”近辺のは食えるようなのはいなかったからな」

 ふむ?

 アリエスタ「いや、そりゃそうだよ? だって味しねえもん」

 味がしない?

 

 冒険者「いやいや坊主、トキシックは舌が痺れるのがたまんねぇって話だぜ」

 アリエスタ「なんだいきなり」

 他の冒険者「何言ってんだばか、毒だよそれ。エルフの姉ちゃん、俺の地元じゃグリーンはよう、草餅っつって甘草と混ぜてだんごに丸めて、菓子にして食ってたぜ」

 女の冒険者「ルーナだっけ? フェアリーの子も、やめときなよ、あたしゃヤダよ人間が溶けて混ざった体液なんて、そんなもん食いもんじゃないよ」

 ほうほう。


 アリエスタ「ほらぁ! なぁ?」


 離れたとこで見物していた冒険者達が話に入って来た。

 ふむ、食えるのだな。

 戻ればかなりたくさん捕れるが……。


 冒険者「そりゃ一部のスライムだろが!食われたマヌケな奴がいたらってことだろ? 地元にいるグリーンは小せぇし苔しか食ってねえから上手ぇんだぞ! 懐かしいなぁ……」


 ドプ……ジュルル……追加で買った空き瓶にベルがビクターに言って、せっせと袋から巨大スライムのすでに溶けきった体液を、移し流し込んでいた。

 それを故郷を懐かしむように眺める草餅の男。


 アリエスタ「いやいや、おっさん。そのスライムは悪党《盗賊》が溶けたやつだから」


 冒険者「なんだなんだ、スライムの話か? オイラが前に拠点にしてた街の海沿いにブルーソーダってのがいてよ、そこの皆食ってたぜ? なんかシュワシュワしてんだよ、青く透き通っててよ、冷やしてよ、ちょっと甘いし、ありゃ美味かったな」

 ほう。


 ビクター「へー」

 ガストン「なんか始まったなおぃ」


 ベル「それ食べたーい!」

 アリエスタ「それも毒だろぜってー! いや、上手そうだけどさ!」


 冒険者「おいおいスライム食べるって、何言ってんだおまえら!」

「気持ち悪いなあ」「こっちゃ夕メシ食ってんだぞぼけ」「変態かよ!」


「うお、エルフの女がいるぜ、なんだあいつら」「お前昼いなかったろ」

「おかしいんじゃねぇのあいつら」「食べれるっつってんだろこら!」

「手前ぇこっちこい!」「オラの故郷をバカにすんのか!」「騒ぐな騒ぐな!」

「スライムごときでガタガタうるせぇんだよザコ共が」「あぁ? 手前ぇぶっ殺すぞ!」

「かかって来いよスライム野郎」「コラァッ、俺を一緒にすんじゃねぇよ!」

「おいルーナはスライム食べるらしいぞ!」「変態だよ変態!」


「ガタガタうるせぇなぁ大人しく酒が飲めねぇのかよ」「また喧嘩かよ~、家に帰れ家に!」

「おい俺の眼がおかしいのか? フェアリーが飛んでるんだが」

「うるせぇ! 俺ぁ迷宮で迷った時、スライムで食い繋いだんだぞ! スライム馬鹿にすんなよ!」「そうだー! スライムは池を奇麗にしてんだぞ!」

「汚してるの間違いだろぉ」

 迷宮?


「お前ら又なんか討伐してきたのかよ」「すげえなぁ」「今日来たばっかだろ?」

「全然新人じゃねぇだろ」「おーいビクター、ソニーちゃんは一緒じゃねぇのかかー?」

「ルーナぁ! こっち来て混ざれよ! んでまた奢ってくれ!」

「なあガストン! 早く情報屋んとこに顔出さねえと家から追い出されんぜ!」

「おい! アリエスタ! 貸した金返しやがれ!」


「来いやオラぁ! その口にスライムつっこんでやんよ!」「ざけんな変態野郎がぁ!」「痛って! よそでやれ手前えら!」

「まぁた始まったよ馬鹿共が、ようあっちに移動しようぜ」

 ガチャンッ! バガッ! ドカアンッ!


 また始まったか。

 元気な連中だな。


 ガストンはまったく相手にせず買取を進めている。

 情報屋の話が気になるな。


 巨大スライムが溶け残した諸々の買取額も出たようだ。

 

 ラウナ「量が多くて大変。えと、まず衛兵団の遺品と思わしき品は確認が取れましたので買い取ってですね、こちらで返却いたします。後日衛兵団から聞き取りや、お礼があるかもしれませんのでご留意ください」


 鉱物は全て売りはらった。

 武器はなんとか使えるナイフ数本だけ引き取り、後はガストン達の得物以下の品の為、全て換金に回した。


 特に得るものはなく、大剣を失い空いた背中をガストンが見る。

「盗賊が捨ててたもんばかりだし、まぁそう簡単にお宝なんて手に入らんよな。腰の小剣も欠けが多いしよ、そろそろルーナも俺らも武器屋に用があるな」

 ほう。


 ラウナ「あ、それと、例の物《機械》は預からせてもらいますね」

 見当たらなかったが、見えないところに持って行ったようだな。


 どうも“帝国製”という言葉を聞いた際の皆が見せた反応が気がかりだ。


 敵に対するそれだったな。


「買取は以上になります、今後ともよろしくお願しますね。ありがとうございました。解体所の死骸は忘れないでください」

 お辞儀された。

 ふむ、彼女達に利するものはあったのだろうか。

「ああ、ありがとう」

 これからも頼む。


 ガストン「一応説明するけどよ、買い取った品を、ケンウッドさん達みてえな商人と取引してまた買取りしたり、交換したり、衛兵隊ともそうだ。そうやって行き渡って皆が潤っていくもんなのさ」


 アリエスタ「そうだぜ、汚ぇんだよ、より高く売ってどいつもこいつも儲けてやがるんだぜ! 王都で売ってる蜂蜜使った高級菓子の値段なんて、聞いたらおまえ目ん玉飛び出るぞ!」

 ベル「えー、じゃあいらないっ」

「は? いや例えだよっ例え! 飛び出ないって! それっくらい驚きのうまさなの!」

「ひゃー!」

 ビクター「え、い、幾らなんですかアリアスタさん」

「アリエスタだっつうの! 聞いて驚けよ! 金貨2枚だぞ! 確か?」

 ふむ?


 ビクター「えええ? 大体村の、一年分の費用じゃないですか……」

 ガストン「はは、ただ甘いってだけで腹も膨れねえのにな。ルーナ、金貨2枚なら多分おまえの長剣よりいいもんが手に入るぜ」


 ばかな。


 ビクター「おお、ルーナさんもさすがに驚いてる」

 ベル「ハチミツ使った、こうきゅーかし……ゴクリ」


 組合長室横の奥から警備の男と職員が出て来る。

 そこから報酬の硬貨を運び出しているのか。

 仕切りで奥のことはわからないが。

 何か重たい扉を開け閉めしているのは聞こえたな。


 盆に用意された報酬の硬貨を受け取る。

 蜂の報酬よりもさすがに多いな。


 ええと、王都とやらでは蜂蜜が高くなり、こちらでは金属や鉱石が高くなる、ということだろうか。


 ガストン「金属は引く手あまただからな、そりゃ蜂蜜よりは高いよ。お前さんだって重武装のホブ(ゴブリン)共には手を焼いたろ?」

 そうだな、鉄の鎧は女王蜂より硬い。


 鉄にも色々あるが、と彼は呟いたが。


 この報酬はアリエスタも含め皆で分けた。

「うっひょー! 金だ金だ! ちゃんと分けろよ? 均等だぁ? 俺が一番活躍したんだぜ?」

 硬貨の山に飛びつくアリエスタ。

 小人族には受付カウンターは高くてやりづらそうだ。


 ガストン「はぁ、最初に決めただろ? おまえさんだぞ均等分けっつったの」

 アリエスタ「ええ? そうだっけ? 俺あんなに貢献したのに」

 ビクター「僕も聞きました」


 ベル「あーもめてる! アリは文句ばっかり!」

「あり? ぐぬぬ、そ、そう言った気がする」

 引き下がったか。


 納得はしてないようだが。

 私の分をやろうか。

 あれは見事な魔術だったしな。

 だが、放り出すのは良くないとガストンは言っていたな。


 ラウナ「そうですね。お金に意地汚いのって最低ですよね」

 アリエスタ「なんで俺を見て言うわけ?」


「もしかして、最初に決めた取り分を変えるのはよくないことのか」


 ガストン「そうだ。よくわかったなルーナ。考えても見ろ、そうだな~……ただの荷物持ちとして参加して、大勢の冒険者と依頼で入った洞窟ん中で、一生暮らせるほどのお宝一杯の宝箱を、たまたまそいつが一人の時に見つけたら、お前ら、仲間に知らせるか?」

 うん?

 ビクター「わー」

 アリエスタ「おお? 何々?」


「依頼は何だ?」

「へへ、冒険者らしいこと言ってくれるじゃねぇか、そうだな……洞窟の魔物の調査にでもしとくか、調査ってのは斥候とか、まいいや、とにかくどんぐらい危ねえのかちょっと見に行くことだな」

 あ、それをせずに突っ込んだな前に。


 ビクター「知らせますけど、その後揉めるのかな……」

 ガストン「うん」

 アリエスタ「そんなもん黙ってて、後で回収するに決まってんじゃんかい!」

「お、いやーそれはまずいな。なんとか隠し持って国を変えりゃわからんかもだが、換金時に伝わって、やがてバレる。最悪、殺されるぞ」

「げっ」

「それで、知らせた場合だが……仲良く“山分けしてさよなら”できるかね?」

 ビクター「ひええ」

 アリエスタはできると疑わない顔をしているが、多分お前の話をしてると思うのだが。


 ラウナ「ハイ! 発見者として多めにもらうよう交渉します!」

 受付も参加してきた。

 交渉?


 ガストン「交渉ね、更に新しい決まりを作るわけだ。“最初のは”守らないのか?」

 ラウナ「え? あ」

 ビクター「あっま、守ります。均等分けです」


 アリエスタ「俺の時と似てるね!? 交渉するぜ!」

 ラウナの嫌そうな顔。

 意見が同じになったからだろうか。


「まるで、“宝が敵”みたいだな」

 ガストン「ルーナはいいとこを突いたな。もう少し掘り下げて見るか、洞窟に出る際、強敵と出くわして危機になった、けど、一番強え奴が一人で倒しちまった。すると、そいつも取り分を多くしろって言ってきたぞ? どうする? (酒飲みてえが今は我慢だ)」


 アリエスタ「そりゃそいつにも多めに渡すだろ。おかげで生きて出られたんだからよ」

 ビクター「なんだか、そんな状況になったら、僕は活躍してないからって、取り分が少なくされそうです」

「なんでだよ! 最初の約束と違うじゃん!」


 ガストン「そう、どんどん決まりが出てくるんだよ、罠を解除した奴も声を上げるし、そもそもこの依頼書を手に入れて持ってきた奴も一番多く寄こせって言うかもな? そうなってきたら雰囲気も最悪だ」

 皆もう嬉しそうな顔じゃないな。

「気に食わないよな。昔からの仲間か寄合い所帯かは知らんが、“最初からそう思ってた奴”もいるかもしれないな?」

 ラウナ「うっわ~」


「殺し合って、宝だけが残るのか」


 アリエスタ「すいませんでした! 欲が出ました!」

 ビクター「おお!?」

 アリエスタがガストンにしゃがんでお辞儀をした。

 ああ、均等分けで納得したのか。


 ガストン「ハハ、まあ、参考程度だぜ? 最初の決まりを守っときゃ何の問題もないし、面倒臭えから簡単でいいんだよ。その後魔物に食われてあっさり死ぬ奴もいるしな」

 ラウナ「ふあ~勉強になります」

 ビクター「はい」

 

 ふむ。

 

 私達はそうならないと思うし、アリエスタに多く、私の分さえも渡しても良いとは思う、ベルは均等分けに入ってすらいないしな。

 だが、私たちは冒険者で、依頼や報酬の取り決めをしてから始めたという最初があるな。

 ガストン「ビクターは一人前の考え方だな、偉いぞ。ルーナは規格外だからなぁ、何か聞きたいのか?」


 うん?

 話が変わるが。

「もしあらゆる決まりを無視し勝ち残って奪うやり方をしていくと、どうなるんだろうな」


 アリエスタ「なんだその山賊みたいな馬鹿野郎は、そんなの指名手配されて捕まって、死刑になるに決まってんだろ」


 ガストン「ん? ……それをやった奴は徒党を組んで、大国に成長してよ、皇帝と呼ばれて今、世界中を脅かしてるところだな」


 ああ。


 帝国とやらの話だったのか。


 ベルの方は話なんて聞かず、蜂蜜瓶に上半身を突っ込んで舐めていた。


 読んでくださりありがとうございます。


 池スライム、トキシック、グリーン、ブルーソーダ、迷宮スライム。

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