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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
56/71

54話 依頼書7 リザルト

 ガサ、サク。

 どんどん暗くなっていく夕闇のアプルの林を急ぐ。


 ベル「ねぇねぇビクタあ、ちゃんと取ってある?」

 ビクター「うん、持ってるよ……」

 ガストン「なんだ、さっきスライムんとこでなんかやってたな?」

「え、ええ、スライムのブロックを小さく切っていくつか……」

 アリエスタ「はあ?」


「ふふ、どんな味かなー?」

 アリエスタ「お前それ、蜂とか盗賊とか、人間がたくさん溶けた液だぞ!?」

「えー? そんなの、みんなそうじゃん」

「急に深い話だな!?」

 ああ、肉の話だな。

 肉になる前にその生き物が食べていたものを気にしているのだろうな。


 冷気と共に闇に染まる木々の間の向こう、得体のしれないものがぼんやり浮かんでるな。

 王蜜蜂でも灯火でもない。

 そして地では、ひそひそと夜の生き物が走り始めていた。


 林を抜け、丘を降りて、街道に出て、裏門とやらを入る。

 木々を通る際気を付けたが、他にうろついてる蜂は居なかった。


 前を行く商人の馬車が急いでいたのは、どうやら門限があるそうだ。

 もう少し遅かったら閉められていたみたいだ。


 丁度、日が沈む頃合いだった。


 ベル「え? 間に合わなかったら入れてくんないの?」

 アリエスタ「なわけねぇだろっ、魔物が出るんだぞ! 頼めば開けてくれるわ」

 ガストン「有料だけどな」


 ビクター「ルーナさん、この街は緩いですが、都に行くと本当に締め出されるので忘れないで下さいね」

 なるほど、うん?


「外壁を登れば入れるだろう」

 アリエスタ「何言ってんのお前!? 捕まるよ!?」

 

 ベル「あたしは飛べるもん、ひゅーんって、アリもできるじゃん」

 アリエスタ「あ、ばか! シィッ!」

「え? あ! しぃっ!」

「……はぁ」

 

 ビクター「はは、えーと?」

 ガストン「まぁ、ほっといてやれよ、色々あんだろう」

 

 ふむ、どうやら変化のことはバレているかもだな。


 ガストン曰く、犯罪行為、というものがあって、街等では決まりを守らないと牢屋に入れられ罰として金を取られるそうだ。

 全部張り倒せばいいと思うのだが、ガストンに怒られそうだな。

 アリエスタが守ろうとするわけだ。


 街に入ってすぐの港は、人気ひとけがない。

 先程の活気とは違って片付けられている。

 あ、偉い連中が話してた傍の建物に、灯がまだあるな。


 他には向こう、囲むように伸びている岬の外壁上に篝火が、衛兵達がいる。

 守護隊、レガリアの部下なんだろうな。

 船の出入り口の格子門は水底から上にせり上がって閉じられていた。

 これで何もこの港には入って来れないわけか。


 今回は行きの時の道ではなくそのまま左に続く灯がたくさんあって、賑やかな道を通る。

 夕闇の街の通りはあちこちに灯がぽつぽつと焚かれ喧噪もそうだが騒がしくて、昼とはまた違う雰囲気だった。


 間隔を空けて木の柱が立っていて、てっぺんに鉄の籠が付いている。

 その中心にある瓶の中で蝋燭ろうそく? ではない明りが灯されていた。

 そこから脂の匂いがしているな。


 パサパサ。

 周りに蛾や羽虫が飛び交って歌うように踊り回っている。


 パタタ……チチチ……上空を飛びかう捕食者である、蝙蝠コウモリ達のことを知らずに。

 魔物じゃない小さいのだな。


 歩く先には、先端に灯の点いた妙な棒を持つ男がいて、その火を柱にやって灯を灯しているところだった。


 アリエスタ「なにを珍しそーに見てんだよ」

 ガストン「ああ、ありゃ油灯、オイルランプっつってな、魚の油だっけか、それでわりと長いこと明るいのさ、点けて周ってんのは点灯夫って職だな。衛兵団の職員みたいなもんだぜ」

 村では焚火か蝋燭ろうそくだったな。

 さすが街だ。


 他にも、篝火や、ぶら下げる形の灯がある。

 店の中には魔術の灯らしき光も見える。

 その中を私たちは、ベルのほのかな灯の後を行くように歩いた。


「おつかれー!」「カンパーイ!」「ギャハハハ!」

 ほお、食べ物屋が多いな。

 皆楽しく食べて、飲んでいる。

 ほとんどは港で見かけた蜥蜴とかげの漁師達だな。

 様々な魚料理を食っている。

 

 アリエスタ「おいルーナ、ベルがフラフラ匂いに釣られて飛んでっちまうぞ」

「そうだな」

「自由な教育方針だな! 迷子になっても知らねぇぞ! おいベルっ、こっち戻ってこい!」

「ねぇ、おいしそうだよ?」

「だから何?」

 彼は十分ベルを気にかけてくれているがな。

 

 彼女の羽音は離れてても聞き分けられる。

 それに、あの子を害そうとするものは叩き斬るまでだ。

 森の隠れ家から連れてきてしまったのはずっと気にかかっているんだが……。


 今晩はご馳走がたくさん食べられるだろう。


 アリエスタ「待て待てお前までどこ行くんだルーナ。ギルドに行って報告と買取りすんだよ。そっちは商人の高級宿くらいしかねえだろ」

 ああ、彼は行かないのか、連れて行くか。


 なんだかベイリ村からの仲間達同様に、居るのが当たり前みたいに慣れてしまっていた。

 変な感じだ。


「ウッヒョッヒョー!」「バーカ!」

 ガッシャーンッ!


 ~~炉の火が弾け~~蜥蜴は踊る~~♪


 ガストン「おっ、賑わってんな」

 ビクター「先輩、受付はこっちですっ、そっちは酒場ですったら」


 ~~水の衣は~~雫の太鼓を~~♪


 冒険者組合に入ると、酒場が昼より騒がしく賑わっていた。

 暖炉が燃えて部屋を明るく照らしている。


 ~~新芽が土からのぞき~~麦の穂垂れる~~♪


 壁に取り付けられた街灯と同様の灯が取り付けられており、それも組合ギルド内を照らしている。


 ~~風の便りに恋人の~~歌を届ける夕暮れに~~♪


 暖炉の傍で楽器を鳴らし、歌う者がいるな。妙に目立つ格好だ。

 色の濃い旅の装束に唾の大きな帽子、装飾も凝っていて派手だな。

 そして良い声をしている。


 冒険者達「おい“吟遊詩人”! 辛気臭ぇのはやめろっ」「そうだっ、明るい曲にしろや!」「うるせえお前らっ」「金払ったんだから続けろっ」「黙って聞け!」「んだこら!」

「あんだコラ!」


 吟遊詩人?

 金を払えば音楽を弾いてくれるのか?


 バリイインッ!

 やれやれ、また喧嘩を始めたな。


 ベル「~~♪」

 一緒に歌う彼女の羽が旋律、に合わせて震えている。

 幾つもの灯が羽の中で、七色に映って歌と共に揺らめいていた。


 シャラーン♪

 何の歌だろうか。


 ビクター「精霊の歌ですね」

 アリエスタ「季節の歌だろ?」

「あ、どっちも同じですよ確か」


 冒険者達の中には、昼に見なかった者達もいて、こちらに気が付いた者は驚いて見ている。


 左の受付はそろそろ終わりなのかもしれない。

 職員達は奥で談笑していて、書類を片付けている一人しかいない。


 ガストン「ふぅ~やっと戻れたぜ、おっすラウナ、悪ぃが依頼の処理を頼むわ……買取も」

 ラウナと呼ばれた職員「はいこんばんわ、お帰りなさいです、ガストンさん、ビクターさん、る、ルーナさん。こっちに置いちゃってくださいね」

 

 ラウナという娘は人族で、赤茶色の髪を後ろでまとめていた。

 ソニーより大人らしく、そして書類を動かす手がきびきびとしている。

 動きやすそうだな、私も髪をまとめたい、が紐がないな。

 彼女は戦えそうな感じではないが。


 受付カウンターの奥、解体所への通路の間に、“買取所”らしき場所がある。

 見るに、重さをはかる仕掛け、器具からくり? や、車輪のついた箱が置かれている。


 アリエスタ「俺は無視かよ!」

「あたしはベルだよ!」

「あら、ベルちゃんて言うの? フェアリーだよね、かわいいねぇ! スイレーンにようこそ!」

「おいっ俺俺っ」

「あ、こんばんわーすアリエッタさん」

「扱いの差! あと俺はアリエスタだ!」


「こんばんわ。よろしく頼む」

 我々は持ち寄った袋や、買い取り荷物を促された場所に置く。

 ドカッ。ギシィッ。

 ビクター「おお、そういえばすごく重かったんですよね……」

 彼は改めて平然と持ち運んでいたルーナを驚いて見るのだった。

 ああ、からくりはちょっと重かったな。


 例の変わった魔石を取り出した時、ガストンに止められた。


 ラウナ「うわっ! これ全部ですか!? 皆っ、それにガレムさーん、買い取りお願いします」

 他の職員達も来て見てくれた。

 依頼のアプルの実をたくさん。

 少しは残して、他を全部。


 他には現物買取で王蜜蜂ローヤルビー数十匹、護衛蟻四、蜂蜜ローヤルハニーが大瓶で何本分も。蜂の子もたくさん。

 職員が言う“ろーやるなんとか”というのは道中で聞き、瓶は彼らが持ち出してきた。


 そしてスライムの“糞”の金属類がはかり? という道具で重さを見て、仕組みの“特大の重り”が数個分乗せて釣り合わせていた。

 重さで価値が変わる決まりなんだな。


 内、冒険者認識票が数点。

 内、武具が数点。

 内、衛兵団の支給品数点。

 内、鉱物、原石、希少金属が数十点。

 内、“ドワーフ”製からくり中サイズ。


 やるな、見てすぐにこれが何なのかわかったのか。

 片方だけの、しかも重ねて束ねた特殊なメガネでからくりを調べた老人が

こちらを見た。

 ドワーフというのは、土の中に住むとかいう種族だったか?


 ガレムと呼ばれた小人族らしき職員「“雷公”様!? ではない? ……フン、“ただのエルフ”か……こういった“機械”っちゅーもんはワシらドワーフの一族にしか造れん。複雑な機構を製造する工房を、誰も作ることができんからな」


 いきなり驚かれたが、勘違いされたのか。私を別に珍しがらない奴がまたいた。

 そしてドワーフ族だったのか、この男。


 アリエスタの種族ハーフリングや獣人商人みたいに小さいが、筋肉、肉付きがいいな、力がありそうだ。指も太い。

 あと髭とか毛があちこち濃くてボーボーだ。


 機械とは、からくりのことだな。

 ちょっと難しくて後はわからん。


 カチャカチャ。

 ガレムが機械の汚れを拭きとり、仕組みを知っているのか、あちこち動かして外側を外したりしている。

 ビクター「わぁ……」

 興味があるようでくいついて見ている。


 ガストン「要するにこいつを作れる場所自体を作れなきゃ出来上がらないってわけだ。ガレム爺さん、こいつ記憶喪失なんだよ。これからも色々教えてくれな」


「フン、苗木の植え方なんぞわしゃ知らん」

 ああエルフの色々じゃなくて、一般常識って意味だよ、とガストンが言っている。

 いっぱんじょーしき……。


 ラウナ「ガレムさん何なんですかこれ? 一体何しに行ったらこんなのを拾ってくることになるんですか?」

「アプルを採りに行ったんだ」

「はい?」


 アリエスタ「それでこんな事になるかぁ!」

「ちょっとそれ、私の台詞ですっ!」

 “せりふ”ってよく言ってるがなんの意味だろうか。


 ガストン「いや、悪い悪い。これもそうなんけどよ、他にもちょっと見てもらいたいもんがあってさ……ギルマスかモードさん、まだいる?」


 モード「これ、“帝国”の手が入ってますネ」

 ふむ?

 ガストン達が飛び上がった。


 アリエスタ「おわ! モードだ! そっちからかよ!」

 酒場に居たんだぞ。なぜそろそろと近づいたのかはわからんが。

 ベル「あ! モードだー!」


「今日は飲み放題みたいなものですからネ、あ、団長はお昼の件で衛兵団本部に出掛けてますネ」

 ああ、そういえば奢ったんだったな。


 足音でわかったが、やるなモード。

 音が小さいし、気配が察知し辛かった。

 酒の匂いでかろうじてわかったが。


 やはりこいつ、ただの魔術士じゃないな。


 そして、機械を見ている表情が硬くなっている。

 帝国とやらと関連しているのだろうか。


 最初にそれを聞いたのは、蒸気馬車だったか。


「フン、そうじゃな“室長”、このここの、魔改造した出力だけ意識し増設した醜い魔道回路を見ろ? わかるじゃろ? 儂らは好かんっ」

 アリエスタ「いやわかんねえから」

 ガストン「ごちゃごちゃしてさっぱりだな、それはそうとモードさん……」


 彼がそっとあらましを話している。

 ――ハチの巣、盗賊、ゴミ捨て場、巨大なスライム――。


 ベルがガレムと喋っている。

「じいちゃんどわーふ? 初めて!」

「じいちゃんではないぞ声のどでかいフェアリー族よ、ガレムじゃい」

「あたしはベルだよ!」

「フン、元気があって良い子じゃな、モード」


「ねぇホントに、かわいいですネぇ」

 ほう、ベルもそれ程珍しくないようだな、年齢ゆえの経験だろうか。じいちゃんではないと言ったが、そう見える。


 ラウナ「ガレムさんもう結構ですよ、ありがとうございます、退勤しないんです?」

「うん? まあいいから……」

 彼は機械をもっと調べたそうに彼女と機械をうろうろ見ている。


 ビクター「こうなってるんですね、この小っちゃいのって、魔石なんです?」

「おう、ちっとここを持っててくれい」


「はぁ、次から次へと、“湖の次は森”ですか。コホンッ、皆さん、今回のこの買取品については人に話さないようにお願いしますネ」

 アリエスタ「はん?」


「報酬には色を付けましょう……あら、言い直しますネ、買取品の話は内緒で、その代りに多めに出しますからネ」

 ああ、わかった。


 ベル「なんかよくわかんないけどやったね!」

 アリエスタが無言で両腕に力を込めて下を向いた。喜びの拳なんだろう。

 ビクターは驚いている。

 ガストンも眉を少し上げたが、納得した顔だ。

 私はどちらでもかまわないぞ。


 湖?


 モード「ええ、ルーナさん、モッカ湖でも妙なことが起きていますネ。まとにかく、初依頼の達成及び思わぬ大成功、誠におめでとうございますネ。とりあえず詳細が聞きたいので組長室にいらしてください」

 ビクター「え?」


「ええ全員です。アリエス君もですよ! 査定する作業もありますしネ」

「俺もう改名しよっかな」


 ベル「お腹すいたー」


 ラウナ「ほらガレムさん、奥に持っていきますよっ」

「フン? もう少しでこの部品が外れるんじゃ……えぇい、わかったわかったわい」

 ガストン「おいビクター、行くぞ」

 ビクター「え? あ、はいっ」

 ガレムやビクターは機械が好きなようだな、ずっと見ていた。


 受付カウンターの一部を開放して通り、中の職員達の仕事場に入る。

 む、こちらを見ている者の中に、小人ハーフリング族が居た。

 ……アリエスタより背が高いな。


 ベル「なんかドキドキする!」

 ああ、普段入らないところだからだろうか?

 インクと紙の匂いだらけだしな。

 職員達の視線を受けながら、組長室とやらに案内され入った。


 ガチャ。

「どうぞ入ってくださいネ」


 わかっていたがロムガルとか誰も居なかった。

 割と広いはずだが、羊皮紙だらけで狭くなっている。

 部屋の壁の一部が窓のようになっていて、ガラスがはめ込まれていて、外の職員達が見えるな。池スライムくらいの透明さではっきりとは見通せないが。


 モード「武具は振り返って入り口横のその台に、お茶を出しますネ、さっさと済ませましょうか、皆さんこのあと夕飯に呼ばれてるのでしたネ? はぁ、よいしょっと」


 部屋の奥にはとても大きな机があり、そこも紙が詰まれている。

 組合長ギルマスの机だろうか?

 上に木の駒? がたくさん並べられた白黒の板が置いてあった。

 駒は一部が馬や、鳥、鎧の形になっていた。多分、村《ベイリ村》でやった板遊びの別のやつかも。


 その真上の壁にある大きな絵には、森が描かれている。

 木々の葉のざわめきと、森の匂いが漂ってくる。


 そして手前、壁際にある小型の机に置いてある紙束を手に取り、手前に用意された、ふかふかそうな低めの長椅子の組の奥側に座って、私達には手前側に座らせる。


 ガストン「ああ、モードさん。すまねえそれでな……」

 全ては彼が説明する。

 やはり特殊な魔石も取り出して見せた。これの話だな。

 見事だガストン。

 ガストン(ルーナ、その内お前もやるようになるんだからな?)

 隙を見てこっそりガストンに言われてしまった。

 むう。


 アリエスタも別の視点から証言? をする。

 やはり彼は向かい側の崖の森の方にいたんだな。


 コンコン。カチャカチャ……扉を叩いてラウナが茶をたくさん盆に乗せて入って来た。

「どうぞルーナさん」

「ありがとう」

 奥まで渡しにくいから手伝う。

 ガストン「……ほんで、あ、悪い」

 ビクター「い、頂きます」

 ベル「わーお茶? ラウナだっけ! あんがと!」

「わぁ覚えてくれたの? 嬉しい! はいどーぞ。熱いからふーふーして飲んでね? ホラ、茶っすよアリエスタさん」

 ガチャンッ。

「チッ、あんがとよ!」

 アリエスタにだけ乱暴に置いてまた出ていった。


 ガストン「……お前らなんかあったのか?」


 ズズ、む、この茶もうまいな。

 ベイリ村の広場と、野営でケンウッドが出してくれたのと、守護隊事務所で出してくれたのより更に上手いぞ。

 やるな、冒険者組合ギルド

 アリエスタ「あれ? なぁ、茶が全然甘くねぇんだけど」


 モード「う~ん……すごいですネこれは、始めて見ました。魔術でもなく透けていますねネ。看破できなければ討伐難度が跳ね上がると……」

 彼女は例の魔石越しに壁の灯を見ている。


 アリエスタ「おーいって、チッ、行きやがった、なぁ、砂糖の壺置いてねぇ?」

 “甘い砂”だな? 村でも見たぞ。あれはいいものだ。“この茶にも入っている”。

 ビクター「え? い、いや、わかんないですけど……」

 ガストン「ちょっといいから大人しくしてろアリエスタ」


 モード「更には、盗賊の痕跡、古いですが我々の認識票に、衛兵の装備が体内に……これは魔石も含めて大変な発見かもしれませんネ。盗賊を優先して捕え、締め上げなければなりません。よくぞ発見しましたネ、お手柄です」


 ガストン「ルーナが死にかけたがな」


 モード「はぁ、何でそんなに色んな目に出くわすんですかネ。もしかして“呪われてる”んじゃないですかルーナさん。一度、水教会さんに“解呪”に伺った方がよろしいですネ」

 呪い? かいじゅう?

 ガストン「解呪かいじゅな、治療魔法みたいなもんだ」


 ビクター「あはは、まさか……え? ホントですか?」

 ガストン「まぁ、薄々はな。いや! 念の為だぜ?」

 アリエスタ「俺はそんなの信じないね! あるとしても大体が曰く付きの品物ブツを持ってるとか、お偉い貴族様とかだろ? 呪い食らうのって」

 モード「それも真実ですけどネ」

 

 ベル「ルーナは色々持ってるよーへんなの あたしのも預かってもらってんの!」

 急に鞄に入りゴソゴソし出すベル。

 アリエスタ「なんだ“藪から棒”にいきなりお前、うん?」


 出てくる出てくる、空の弁当箱、魔法薬、謎の小さいメダル、液体の詰まった袋、幾つもの品札、妙な本、ガラクタ、ゴミ、臭い汚い布、折れた矢、黒いトゲ、割れたガラス状の謎の黒い破片、使用済みらしきワンド、小鬼王の籠手についていた牙、蜂の羽、足、女王蜂の顎、魔石、割れた魔石、折れた剣の刃、死んで干からびた蟹、しおれた茸、毒茸、木のお守り、二つの文字が刻まれた、“小さな木の斧”。


 匂いがまとめて一緒くたになって漂う、ちょっとあれこれ集めすぎたかもしれない。


 アリエスタ「きゃあ! 汚い! 俺の鞄より汚い! 最低!」


 ベル「えへへ、いいでしょー!」

 モード「ベルさん! めっ! 全部出しちゃだめですネ!」


 ビクター「……ソニーの鞄に似てるかな?」


 ガストン「こりゃちょっとひどいなルーナ、なんだこれ? あ! 女王の顎じゃねえか!? これだけもぎ取ったのか? 素材に使えるぞ!」


「一つ一つに物語があってだな」

 ベル「うんうん」

 ゴブリンの腰布の一部はちょっといけなかったかもしれない。臭いが他の物に移ってしまうな。

 何でこれを入れたのかはあまり覚えていない。


 アリエスタ「お前、馬鹿だろ!」


 ガストン「やめろよっ! わかる、わかるぜルーナ」

 ビクター「先輩……」


 モード「プクク、すいません。コホン……実際に呪われてそうなものがチラホラありそうですが、全部しまうか売るか、捨ててくださいネ……さて、蜂の巣が街寄りに移動してきたのは蛙の件に似ていますね、これは調査依頼を出しましょう」


 どっかにやれみたいに手を振り振りされた。

 仕舞えということだな。


「盗賊のゴミ捨て場になっていたとおぼしき巨大なスライムもそうですね。

連中の足取りをローグ職辺りに依頼を出して……(あの)機械は職員に詳しい者がおりますので、しばらく預からせてもらってもかまわないですかネ?」


 ベル「ガレムだ!」

 ガストン「ああ、それで頼みますよ」

 アリエスタ「金になっかな!?」


 モード「あれぐらいの品ですと恐らく持ち主がいますし、“製造番号”から辿れますので、恐らく拾った方のものにはならないでしょう。落し物の返却ということにになりますネ。ですが運が良ければ謝礼がもらえるんじゃないでしょうかネ?」


 そいつが生きてればな。


 ベル「だってー!」

 アリエスタ「なんだよ! 黙ってりゃよかったぜ」

 ガストン「嫌だよあんな重いもん荷物にすんの、そんで、湖のことは聞いてもいいんですか?」


 モード「ええ、湖に関してですが、どうも獲れた魚に次々と異変が急増していますネ。漁場の調査を大至急指示したとこです、“水質の悪化”も気になりますしネ」

 水質の悪化。

 異変。

「ああ、内側から焦げるように黒ずんでいたとか話してたやつか。出るときに港で見かけた」

 アリエスタ「なんのこっちゃ」


 ビクター「ええ? ……お昼に通りがかっただけですよ!?」

 ガストン「ああ、網元たちがなんかやってたの、見えてたのか」


 モード「あら、大変よい観察眼ですネ。ルーナさん、組合の職員になりませんか?

おいしいものがたくさん食べれて、お給料も出ますよ」

 なに?

 ベル「入るー!」

 アリエスタ「いや入るか! こいつは俺らと大金を稼ぐ予定なんだよ!」

 ああ、熊の依頼だな。

 糞をたくさん採るのか?

 ガストン「おいおい、ここでも勧誘されちまったぞ」


「すまないが、しばらくはガストン達に学ぼうと思っている」

 組合では戦わないだろうしな。


 モード「そうですか、残念ですネ。いつでも待ってますよ。外回りの仕事だってありますからネ……ところでガストンさんはそろそろ引退しないのですか? 職員募集中ですがネ」

 ほう?

「勘弁してくれよモードさん、俺ぁ自由気ままが好きなんだ」


 アリエスタ「そうそう、誰も俺達を縛るもんはねぇんだよ」


 モード「あら? アリエスタさんは、もう我々が貸し付けた“借金”の返済を済ませましたですかネ?」

「ぐぬぬ」


 ガストン「あん? なんだおまえさん、借金持ちか?」

 ビクター「た、大変そうですね、どうりで」

 ベル「なにー? なんか借りてんのーアリー?」

 アリエスタ「なぁ茶ももうねぇしよ、査定まだか査定! 早く換金してくれよ!」

 パンパン。ももを叩いて急かし始めたな。誤魔化し? とやらをしてるのか。


 だがちょうど別の職員が呼びに来た、終わったそうだ。

 しかし、部屋に入るときは扉を叩くんだな。

 ノック? だったか。

 モード「はいはい? そうですか、ご苦労様です。さて皆さん、終わったようですのでカウンターに戻りましょうか。はぁ、もうこんな時間ですネ」


 見れば組合長室にはマルコの家で見たような、からくり時計があるな。

 まだ鳩が出てくるところを見れていないが、部屋を出る。


 ビクター「先輩、夕飯の時間って何時でしたっけ?」

 ガストン「ん? ああ、まだ十分間に合うぞ」


 ベル「ねえねえ、先に行っとけばもっとたくさん食べれるかもしれないよ?」

 ガストン「いや、料理すらまだ出てもねぇから、落ち着け」

 アリエスタ「よくわかんねぇけど、先に食ったら普通にだめじゃねぇ?」

 

 受付カウンターに戻り、依頼書の完了処理をしてもらった。

 依頼書を渡して、完了ハンコを押してもらう。

 最良、と文字で書いてある。

 これ以上はない最高の証だそうだ。

 報酬が支払われる。

 ラウナ「ご利用ありがとうござました。又の受付をお待ちしています」

「世話になった」

 ベル「はーい!」


 私は初めて受けた報酬を、協力してくれた二人で分けた。


 ガストン「ああ、もらうぜ」

 ビクター「アプル拾いのやつですね」

 アリエスタ「他にも色々拾ったけどな」

 前にも言われたし、初めての対価、だからな。

 全部放り出さずにちゃんと分けるのだ。


 チンッ。

 ガストン「ご苦労さん。これでお前もいっぱしの冒険者だな」

 おお、指で弾き上げて、また掴んだ。なんかいいなそれ。


 ビクター「おめでとうございます。ルーナさん。すごかったです」

 ありがとう。

「はぁ、ホントなら蜂を何匹か片付けて、アプルをもぎ取って帰って来る簡単な仕事だったんだけどな」

 疲れたみたいだ。


 恐らく、ベイリ村からのそれが溜まってんだと思う。

 街に着いたときはやっと休めると言っていたし。

 疲労とやらは危険だと、うろ覚えだが知っている。


 ベル「じゃあごはんに行こー!」

 アリエスタ「待て待て待てぃ! 何でだよ! まだ全然終わってねぇから!」

 

 ラウナ「すいません、いきなり近くで大声を出さないでもらえますか? 怖いんですけど」

「ああ?」

 ガストン「まぁまぁ落ち着けよアリエスタ」

「落ち着いとるわぁ!」


 ベル「キャハハハ」

 ラウナがアリエスタに冷たいのは借金が原因なんだろうか。


 初の依頼書は大事に仕舞っておこうと思ったのだが、彼女に依頼書を持ってかれてしまったな。


 チラと見ると、私の名が書かれた羊皮紙を挟む為に使うのか、中のない本のようなものに、依頼書を納めて棚にしまった。


 他の同じ挟み本には、ガストンや他の冒険者達の名が書いてあるものがたくさんあるな。

 冒険者達それぞれにあるのか。

 ガストンの挟み本には、依頼書がたくさん挟まれていた。

 さすがだ。


 ラウナ「で、この書類はよし、それでですね、蜂やスライムやもろもろが……」

 アリエスタ「なぁさっさとしてくれよ、全部で幾らになった?」

「……チッ」

「あ! おまっ! 今っ! 舌打ち!」


 ビクター「ま、まぁまぁアリエスタさん」

 ベル「も~アリはさっきからご飯の邪魔しないでよ」

「はぁ? ご飯?」


 ご飯だぞ。来るか?


 読んでくださりありがとうございます。

 初めての依頼を終えました。波乱万丈でしたね。

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