51話 依頼書4 生き池
池みたいにでかいスライムを倒そうと言ったが。
結局、やることをやっちまおうとガストンが言うので一旦戻ることに。
崖穴を回り込んで林に戻り、依頼のアプルの回収をして、蜂も回収した。
彼らがとどめを刺してくれていた気絶した蜂もだ。
素材として売れるそうだ。
ガストン「弓は回収したのか?」
「あ」
ビクター「あ」
置きっぱなしだった。ありがとう。
樹の上にある巨大な巣の中の蜂蜜もよい値になると聞いて、ついてきたアリエスタが手伝えば取って来てやると、代わりに分け前をくれと言うので協力する。
蜂は全滅してるから中にもういない。“飛べる奴”は。
私が昇り、短剣で幹と枝にくっついてる巣に斬りこみを入れ、落ちてきたところを彼が出した大水球で受け止めた。
ガストン「ヒュッ」
バガアンッ!
がそれを大剣で両断し真っ二つにした。
ベル「わー! ハチミツだー!」
私のは砕けた。
ガストン「まぁアレを間近で喰らったらなぁ(やっぱ“魔法の”じゃないと分が悪いよな)」
というのを回り込む時に話した。
チラっと聞こえたが、魔法の武器だったら対抗できるんだろうか。
ベル「なんか居る! うにょうにょしてる! かわいいねえ」
アリエスタ「これがか!?」
ビクター「うわぁ……幼虫だ」
割れた中には手の平に収まるくらいの大きさのそれが蠢いていた。
苦手なのか?
どっちかって聞かれれば、かわいい、んだと思う。多分。
蜂の子「……」
ベル「あたしも食べるー!」
ビクター「あっ」
彼女は巣穴の一つに突っ込んだ。
スライムみたいに溺れるぞ。ベトベトしてるだろう。
アリエスタ「普通は引くと思うぞ、おっさんも俺も慣れてるから別にだけどね。ルーナはきゃあ! やだぁ! とか言わねぇな?」
「? うまそうだと思ったが」
「そうだろうと思ったぜ」
ベル「ぷはっ、ぺろぺろ……おいしいのー? この子」
「お前は食べたことあんじゃねーの?」「ハチがだめって言うんだもん」
「ああ、そりゃそうか」
彼女の住んでたとこにも大きいのか小さいのか知らんが蜂は居たと。
まあ近づけば守って襲ってくるだろうな。
ガストン「蜂の子っていや珍味で酒のいい肴だぜ? そのままは俺も嫌だけどな」
ベル「え? おさかなじゃないよ?」
アリエスタ「その“魚”じゃねぇから。酒の“あて”って意味!」
「あて? そだてないの?」
「こんな危ねえの育てるか! 大っきくなったらお礼に刺されるぞ?」
「ふーん、じゃあ全部食べよう!」
「たくましいなお前!」
ふむ、女王には悪いが、全部殺し、食べて糧にするしかないようだ。
放っておいたら育って街に刺しに来るか?
厳しい世界だ。
ガストン「アリエスタは飲める年なのか? ハーフリングはよくわからんな」
「別に飲めるっすよ? 大人だし」
蜂蜜の塊がある部分を幼虫も一緒にして、アリエスタが用意した袋に生きたまま入れた。
ポトッ。
蜂の子「……ッ」
あっ、一匹落ちて、丸くなって坂に転がって、藪の中に落ちていったぞ。
どうしようか。拾いに行こうと考えていたら、藪の奥の幼虫が消えたら辺から、何か生き物が離れ去る音を聞いた。
???「sfほssdfhdfh!!」「sdjdhdskwww」
隙間から一瞬、とても小さな裸足が見えた。
……誰も見てないな。
私も見なかったことにしておこう。
もし、またアプルの樹に蜂が湧いたら、優先? して依頼を受けようと思う。
ビクター「うわ、袋の中でうにょうにょ動いてる……先輩、なんで王蜜蜂がアプルの林に? もっと“奥地が生息地”では」
「“天敵”に追いやられたか、異変が起きてんのかもな。蛙もそうだったんだろ? まだはっきりしてねぇが」
アリエスタ「え? 何の話?」
巨大な森蛙の話をした。
「なんだよ! 飲み食いし逃ちまったじゃんか!」
ガストン「ははは、そこかよ」
ちゃんと異変の話だと説明するが、魔物の異変なんてしょっちゅうあるだろと返ってきた。
ふむ?
盗賊の死体は調べた後、スライムのいる崖に戻って落とした。
ガストン「穴掘って埋めるより早い」
アリエスタ「ゴミは捨てんだよ」
ビクター「うわ~」
容赦のないことだ。まぁ死んでるしな。
それに、一緒に手伝って引きずって来た時からこうするのはわかっていた。
連れ帰ってどうするかというのもある。
普通は墓を掘って埋めてやるんだろうが……いずれ土に還る、この方が早いといえばかなり早い。
放っておこうと思っていた私もおかしいんだろう。
ちなみにベルは巣のハチミツを舐めるのに夢中でついてきてない。
※この時、ルーナはまだ“起き上がり”の危険性を学んでいなかった為、ガストンの行動が正しい処置だったと後に知ることになる。
他の盗賊、最後に生き残ってた奴だが、酒を被って隠れていたのは、酒の強い匂いを嫌がって近づいて来ない為らしい。
ガストンは試したくもないし酒が勿体ないと言う。
ゴポフッ。
アリエスタ「おー溶けてる溶けてる」
取り込んだばかりの死体を溶かしているのか、崖下で蠢く巨大スライムを皆で眺める。
昼時を過ぎ、そろそろ夕方だろうか。
ガストン「……盗賊共がここで何してたかが気になんだよな」
それは私も気になっていた。
ビクター「え? ハチの巣を取ろうとしてたんじゃ? アプルですか?」
アリエスタ「あいつら馬鹿のくせに“焚火”はよく考えたよな」
「結局 (煙から)漏れた蜂に殺られちまったけど。違げぇんだ、蜂はついでなんだよな、なんとなくだが。ほら、そこと、ここ見ろよルーナ」
彼が顎と足で指し示す地面には、盗賊達の足跡の痕跡がある。
崖にいたのか、スライムを見つけて、今の私たちみたいに眺めてたのだろうか。
これはあの時ベルを掴んで崖縁に逃げてきていた太っちょのものじゃない。
ああそうだ。
「スライムの中に“金属”がたくさん浮いてたな。剣とか盾とか」
アリエスタ「何! 金目のもんか!?」
かねめ……金物? ならそうだが。
ガストン「それだ! 死体を捨ててたのかあいつら……こいつはゴミ捨て場ってわけか?」
アリエスタ「なんかやだな! 俺の言ったのと同じかよっ」
ビクター「ええ? だ、誰を?」
ベル「ぽーいっ」
木の枝を放り込んだ。
お。
下で木の枝を捕まえたぞ。
触手を伸ばしてきているな。
こちらまでは全然届いていないが。
あいつ、私たちに“気が付いてる”のだろうか。
他にも石を投げたりしてちょっかいを出している。
ビクターは大きなものを投げ落とした。
――ズムッ。
めり込んで包まれていって、中でシュワシュワしながら沈んで見えなくなった。
尖った丸太でも落とすかな。
アリエスタ「何を遊んでんだ俺たちゃよ」
ガストン「中が気になるな。あと“糞”も。おいアリエスタ、まだ魔力あんなら手伝えよ」
糞?
ベル「スライムのうんち?」
アリエスタ「やっぱやんのかよ! 報酬ちゃんと山分けすんならいいけどさぁ、ほんじゃ後でこっちの依頼も手伝ってくれよ、ならいいぜ」
ガストン「ええ? ……依頼書見してみろよ」
「ほい、丁度剣持ちが欲しかったんだよね」
ピラ。
「大顎熊だぁ!? 奥地の魔物でも、強力な奴の“一角”じゃねえかよ、おまえ一人でか? しかも巣ごもりで狂暴な時期に!? そりゃあ揉めるはずだぜ」
何っ。
「そんなもん誰が討伐するか! よく見ろっての!」
「あれ? 糞の入手だけか? ……あぁ、錬金素材か」
また糞?
ベル「熊のうんち? みんなうんちが欲しいの? キャハハハ変なのー!」
アリエスタ「いやそうだけどちょっと違ぇよ! 誰がうんこ好きだ! 好きなのは依頼主だから! 貴重な薬になるんだぞ、熊糞の中に混じってる素材は! あとおっさん、スライムの糞って、言い方ぁ!」
ベル「ふーん」
「おいい!」
ビクター「クスッ、ルーナさん、大顎熊は別名バイトベアって言って、すごく大きくて強い、奥地でも最強の部類の魔物なんですよ」
ほう。
「最強か」
奥地とやらは危険地帯なようだな。蜂もそこからなんだな?
ガストン「おいアリエスタ、おれはまだ若い! おっさんじゃねえ!」
「いやおっさんだね! 諦めろよもういい年だろ」
「ぐぬぬ」
ベル「うんこすきー、すんこすきー」
アリエスタ「うるせい!」
ビクター「る、ルーナさん、ベルちゃん。スライムの糞って言うのはですね、体内で溶けなかった金属とかをまとめて、ペッと体外に出すことを言うんですよ。大体お宝だらけのことがあります。金貨とか」
ガストン「そうそう(あれ、ルーナに他になに教えてなかったっけか?)」
ほう。
金のうんこか。
アリエスタ「おいルーナ、今金のうんことか考えてただろ」
「よくわかったな」
「おまえ顔に出やすいんだよ、ま、確かに黄金のクソだな、冒険者って奴らは下品極まりねえなほんと」
ベル「アリもじゃん」
「ぐぬ、俺ぁ魔法協会だから半分なの!」
ガストンとビクター ((滅茶苦茶言ってるな))
ガストン「いや、待て待て、盗賊が捨ててたってことはだな? 硬貨の類は抜き取ってるはずだ。偶然冒険者が何人もここに落っこちたってなら別だけどな」
アリエスタ「そう! 俺もそう思ってたし! でもよ……“コイン”は取られてっだろうけど、あいつらって馬鹿だからさぁ、わかんないで魔法の品とか、捨てちまってるかもよ?」
ほうほう。
ビクター「あ、じゃあ、正にお宝があるかも? ですか?」
もしくは何もない、鉄材だけだな。
鞄に入れておいた女王の顎、かなり良い素材だ、もしかしたらそれも溶け残ってるかもしれない。
ガストン「やるか!」
アリエスタ「やろうぜ!」
「ああ」
ビクター「はい!」
ベル「うんこ探し―?」
そうだ。
読んでくださりありがとうございます。




