5話 戦い
石棺で目覚めた時のように何も見えなくなる。
少しの明かりもないとそうなるのだろうか。
いやそんなはずはない、さっき確かめたぞ。
焦り混乱しつつも、掴まれてない右足で魔法使いの顔面を蹴っとばした。
途端、視界がはっきりする。
黒い煙が風でかき消えたように視界から吹き飛んでいく。
眼にヒリついた痛みが走る。
それと同時だった。
「ウゴオオアアアアア!!」
咆哮と共に両腕で思い切り振りかぶる鉄兜の剣が降ってくる。
ギリギリで転がりよけた。
集中すればそれほど早くはなかった。
掴んでた服の奴の力も弱かったし離せた。
「うわっ」
だがしかし、崖の方しか逃げ場がなかった。
ガラァッ。
半身が崖壁からはみ出て落ちそうになる。
「グカチギャワルゴッ」
ボグバシャッ!
勢いそのまま、振り下ろされた剣はすぐ傍にあった魔法使いの頭をたたき割った。
鉄兜はそんなことは気にもせず、私を蹴り落とそうとしてくる。
足をよけたせいで体がズリ落ち始めた。
「ギャガガガ」
笑う鉄兜。
バザアアッ。
「!」
足で砂をかけてくる。
零れ落ちていく小石が谷に音を響かせた。
岩壁から飛び出ていたヨレヨレの木の根を掴み、かろうじてぶら下がる。
足を岩壁のわずかな足場をなんとか踏むも、容赦なくとどめかのように、
鉄兜の攻撃が手へと叩き込まれる。
「っ」
バゴッ!
土砂が弾け顔に当たる。
とっさに根を手放してかわした。
身体が落ちる前に素早く反対の手で崖縁を掴み
すぐさま引っ込めたその手を、崖縁にめり込んだその刃にむけて、掴んだ。
その剣は片刃で、鉈のような作りだったから。
「グゥオオオオオ!!」
鉄兜が両手で剣を持ち上げる。
と同時に、その力を利用し崖を蹴り、昇り飛び上がる!
ガンッ!
(ボグッ)
そのまま鉄兜の隙間めがけて飛び膝蹴りを当てる。
顔面の骨がめり込む感触を直に感じた。
「グガイアアア!!」
ブオオオウンッ! ドスッドタタッ。
狼狽しつつも鉄兜の張り手が勢いよく横切り、避けるも、鼻にかすめた
そして魔法使いの死骸に足を取られ倒れる。
ズルッ、ズザアアアッドスドドスッ。
顔面がつぶれ、視界を失いつつも剣をブンブンと振り回し暴れまわる鉄兜。
「イイアガアアアアウガアッ! ブウップハァッ!」
流れる血を手の甲で拭う、赤かった。
起き上がる。
さすがに息が上がる。
心臓の鼓動が激しい。
心を落ち着けて、間合いを図り離れ、辺りを見回す。
む。
弓だ。
拾い上げ、状態を確認する。
おのずとやり方は知っていた。
ろくに扱われていなかったゆるんでいる弦を、暴れる鉄兜を視界に入れたまま、素早く締め直す。
そして死骸の背にくくりつけられていた矢筒から、一本だけ抜き、
矢をつがえ狙う。
ギリギリギリ。
巨体の鉄兜の動きが止まった瞬間、やつの兜の隙間の、へこんだ顔面の内部の、中枢を意識しそこめがけて一撃を放った。
ピヒュンッ!
ズドゴウゥン!
「ウググゥッ!!」
入った。
恐らく向こう側まで達し頭蓋を突き破り飛び出、鉄兜の内壁にヒビを作った。
ドオオオオン!
ゆっくりと倒れた巨体は地を揺らした。
崖のふちギリギリに倒れ突き出た首が崖に折れるようにしなだれ、穴から流れ出る緑血が、激流ながれる谷に滴るのであった。
「ふぅーっ」
終わった。
周囲を見回し……ひとまず、崖の反対の、土壁から湧き出ていた、湧き水のような流れで、体を洗った。
太ももやあちこちが砂利と血でグズグズになっていたのだ。
服が欲しい、戦いづらい……。
魔法使いの衣服、だろうか。
見てみると、だめだこれは。
汚れがひどく、傷が悪化しそうだと思った。
他の奴らはひどい臭いのする腰巻のみだった。
今の今まで辺りにずっと臭っていたのだが、近付く程強く臭う。
だが、鉄兜の皮の鎧は洗えば使えそうだな。
持っていた獲物の剣、鉈? ……剣鉈もよいものだ。
一番重く、大きい。
ヒュオウンッ。
私は鉄兜のように振り回すが、なんだか奴より上手く使えている。
意外と軽かったようだ?
戦利品を漁り、最後に魔法使いの使用していた木の棒を調べていると、
うめき声が聞こえた。
「あ」
忘れていたしゃべる袋の方に行ってみる。




