46話 ギルマス
ビクター「ルーナさん、あのでっかい森蛙の解体なんですけど、肉や素材を全部買い取るのかどうかモードさんに聞かれました」
ザワッ。
ん? 今部屋中の雰囲気が一瞬止まったな。
竜眼を見た蜥蜴人のようだ。
ガストン「あぁ、急げって? モードさん。ルーナ、蛙の肉はオークには劣るが普通に上手いぞ。こりゃさっきも言ったか?」
ああ。
ベル「にくー!」
「素材は自分で装備を作ってもらう時に持ってりゃ融通がきくし安く作れて便利だし、水辺で戦うのに蛙の皮は良い装備になる」
あの皮、ぬめってて厄介だったが伸びて丈夫そうだったな。舌とか。
ドンッ!
警護に押さえつけられる冒険者「いででででえ! うぅ、おええっ」
ソニー「ひぇ~っ」
「が、どれも荷物になっからさっさと全部売っぱらって金に換えて、店で出来たもんを買うのもありだな……(“袋”がありゃ別だが)」
ふむ。最後何か呟いたな。
ベル「お肉ちょうだい! 外で焼いて食べるの!」
ビクター「……」
こっちを見てるな。ああ、答えるのか。
「それでいこう、量はガストン達に任せていいか、この袋に入るだけ入れてくれ、肉もだぞ」
私は気に入っている例の袋を鞄から取り出した。
「やふー!」
「はっはっはっ、あいよ」
ビクター「わかりました。ちょっと行ってきます」
彼は袋を持ってまた解体所に入って行った。
モードとは誰だろうな。
ベル「ねぇルーナ~お腹が減ったよぅ~」
む、わずかにベルのお腹が鳴るのが聞こえたぞ。
ギルマスが飯を食いながらで構わんなら話そう、奢るぞ。と言うや否や、ガストンが酒場のマスターに定食7人前と叫んだ。
ロムガル「グル、ワシはいらん、ヤギ乳をくれ……6人? あぁ、ケンウッドが来るのか。ベルも、一人前を? やるな……隻狼っ、酒は夜にしろ!」
ガストン「チッ」
「ガストンは隻狼と言うのか?」
「ああ、二つ名の事だな。勝手に付けられるんだよ、長いことやってると」
と、眼帯をして右目だけの彼は言った。
何か上がってた気分がどんどんと下がったな。
「……一杯だけなら別にいいだろ」
転がってる椅子を集め戻して席につき、運ばれた飲み物を飲んでようやく落ち着いていると、解体所からビクターがもう戻って来た。
後ろに誰かいるな。
しっぽが見えた。
小さい。背格好? はビクターの半分くらいか。
???「ギルマス、何を“油売って”るんですか? あ、マスター! 私も定食をくださいネ」
鼠の獣人の女だ。
杖と警棒、を腰に掛けている、魔術士か。反対には短剣だ。
動きやすそうな、盗賊やさっき倒したネイズに似た、ローグのような恰好だが、上着は法服のようだ。
目にガラス? の何かを付けている。
たまに街の人間で付けているのを見かけたものだな。
確か……眼鏡? だったか?
この女も多分、強いな。
ロムガル「グル、違うぞモード、さっきガストンと話してた連中だ、この娘が、例の戦士、ルーナだ」
獅子の彼は喋り方が途切れ途切れだ。そして声が低く太い。迫力がある。
彼女は高くて細い。聞こえ辛いが、来て喋ると周りは静まり返って大人しくなったな。
モード「ホントに竜みたいな眼をしてますネ、初めましてエルフ殿――もといルーナさん。私はモード。この組合の“実務”を取り仕切っているものです……二番目に偉い人ってことです。よろしくお願いしますネ」
じつむと言った際に周囲をぎろりと見回した。
モードは途中で首をかしげるエルフの娘の所作を見るや、ガストンから先程組合長室で経緯を聞いていた内容を思い出し、わかりやすく言い直した。
あと、レガリアやロムガルもそうだが、妙に亜人に良く見られている気がする。
周りで聞いていた冒険者達「二番目だぁ?」「嘘つけ、影の支配者だろがよ」
「おい、てめえの後ろにその部下の警備が立ってるぜ?」「やっべ」
素早く足を動かし私のもとに来て、握手をしようと手を出してきた。
足運びや身のこなしが盗賊以上に良いな。
背格好は猫娘より小さいが。
身だしなみもそうだが、毛並みがとてもきれいだな。
よくわからんができる大人の女の感じがする。
兄妹「る、ルーナさんっ偉い人ですから、なでたりしちゃだめですからねっ」
?
ロムガルの方が偉いのだよな?
「ルーナだ、こんにちはモード」
「あたしベルー! よろーモード!」
握手すると、ロムガルとは逆に手が小さいが、見た目以上に力強かった。
あとベルよりは大きい。
その腰の棒、敬語の男たちと同じだな。
「やっと一息付けますネ、はぁ、お腹がすきました。」
ガタ。
どっこいしょ。とロムガルの隣についた。
警備の男が後ろに控えて居て、彼女用の座席が高い椅子を用意して待って来ていたな。
ロムガルは彼女の座る際、椅子をいい感じな位置に動かしてあげていたぞ。
やるなこの二人は。
彼女の水も運ばれてきた。
小型の杯だ。
ベルよりでかいな。
ちなみにベルは我々と同じ大きさで運ばれてきたが、すでに空だ。
ロムガル「グルゥ、コホンッ、ガストン、ビクター、ソニー、依頼ご苦労、無事の帰還に、感謝を」
一同「感謝を」「乾杯」「水でかょ……」
ロムガル「エルフ殿――ルーナ、も好意で、彼らと共に居たようだが、組合員でないので、そちらは、ケンウッドとの、個人の契約になるな?」
よくわからんな。
ロムガルはガストンの方を向く、彼が頷く。
「ああ、そういう感じだよ(契約なんかしてねーけど)つってもどうせこれから冒険者登録するぜ」
「するぞ」
モード「あ、ちょっとすいませんネ、そのケンウッドさんはどちらに? (共に街に入ったのは聞いてるんですけどネ)」
ガストン「ああ、すぐ来ると思うんだが、蒸気馬車に夢中になっちまって、置いてきた」
「ああ、あのうるさくて臭うのですか。ちょっとそこのあなた、呼んできてください」
「なー水、水くれよ水! タダなんだろー? ってはええ!? う、うっす」
モードが組合の職員の、いや、普通に飲んでいるだけの冒険者に指示して呼びに行かせたな。
彼女の背後の“こわもて”が全員睨んでいるし。
モード「ゴニョ……腕よ……」
! 何か唱えた。
躊躇なく男が置いていった酒瓶を魔術でこちらに引き寄せ、背後の警備の男が油断なく卓に用意したガラスの杯に注いで、一杯ひっかけた。
何の魔術だ今のは、とても便利そうだ。
ガストンがうらやましそうに見ているな。酒瓶を。
ロムガル「グル、おいモード、これから、話し合いだぞ……」
「こんなの飲んだうちに入りませんネ」
ロムガルが一番偉いのではなかったか?
不思議な二人組だな。
モード「さてさてまずは、小鬼の暴走を人為的に引き起こした魔族の“魔道師”と思われる、黒衣の男、これは要注意人物として、組合からも報告を団長様に上げておきましょうネ」
魔道師? 魔術士じゃなくてか。
「ゼラ副長“様”とレガリア守護隊長さんにも報告してくれたのは助かりますネ」
む、副長の方が様呼びだ。
あぁ、貴族とやらだったか。
ガストン「ゴブ穴(お化け穴)の調査も頼むぜ、まだ残ってる戦利品もあるし、(冒険者に)依頼を出してくれ」
ガタ。
彼はふてくされ? てるのか知らないが、空いた椅子に足をのせて肘をついた手に顔を乗せて言った。
モード「そうですネ、出しておきましょう」
ギャハハハッ。
どうも冒険者達の素行? が悪いのを、特に何も言ったりはしないみたいだ。
ロムガル「グル、他には、盗賊とオークだな、“リゾットの指名手配額”は、上げておこう」
なに、あいつそうなのか、その意味(指名手配)は分かるぞ。
モード「それと、大森蛙の件は情報ありがとうございます。救助――人助けも大変素晴らしいです。“猫屋”は私もよく行きますからネ」
猫屋は、猫娘の家の店の名前だな。
ベル「ねーご飯まだー?」
ロムガル「……モード、繁殖地の調査は」
モード「ええ、もちろんですとも、優先で依頼を出しましょうネ」
蛙がおかしくなった件だな。変なスライムが取りついて変になった。
そして、黒衣の男の手掛かり、転移魔法陣と思われるソニーの写しを彼女に見せた。
モード「あらまぁ、“魚拓”ならぬ、陣拓ですネ……この術の写しに関しては、私も転移魔術のものだと思いますが、残念ながら私では正体がわかりかねます、ソニーさんに賛成ですネ」
ぎょたくとやらがよくわからんが、壁に色々飾ってる中に“よく出来てる魚の絵”は見た。
今言われてわかったが、多分見て移したか、もしくはインクを塗りたくって押し付けたのかもしれない。
ソニー「はい、(魔法)協会に見せに行こうと思います」
モード「さて、ルーナさんは冒険者組合に興味がおあり――入りますか? ガストンさんも入れと言っていますネ」
ガストン「んえ? いや――お、おう、入れ入れ! 面倒は見るぜ!」
「ああ、よろしく頼む」
ロムガル「グル! それは良い選択だ、歓迎するぞ、ルーナ」
彼は改めて杯を私にかかげたので、同じようにした。
ソニー「わ~」
ビクター「お」
小さく拍手をしてくれた。真似して兄も。
ベル「え? なに?」
ケンウッドやゼラからも商人とか衛兵に誘われたが、冒険者になるぞひとまず。
すると、私とモードの間から警護、じゃないな、職員? が待機していた。
彼女がなにか持ってきたものを卓に置く。
モード「私が“刻み”ましょう、ええと、名はルーナ、種族は……ハーフエルフ、ですかネ? これは認識票といって、冒険者組合の一員になった証みたいなものです。皆さんとおそろいですネ」
ガストン「そうだな、こいつは半々だぜ(もぅ半分は得体が知れんがな)」
ビクター(やっぱりそうなんだ……)
なにか、針が先端に付いた筆を持つモードが視線を促すと、ガストンが紐を通して首にかけてあったものを襟元から引き出して見せていた。
あわてて兄妹も見せて来た。
見ると文字で彼らの名前や種族が刻んである、小さな金属の板だ。
モードの前には、無地のものが置いてあった。
端に紐を通す為か穴が開いている。
「そうだ」
すると、モードは針でガリガリと板にそれを刻む。
私の名の文字だな。
ベル「あたしはべつにいーや」
ガストン「嬢ちゃんには聞いてねえぞ?」
モード「そうですかベルさん。いつでも歓迎しますネ」
「はーい!」
お互い笑い合う二人、ベルはモードの刻むのをすぐ傍に降り立って眺めてそう言う。
これがあれば爆発して死んでも誰かわかるんですよ。
と言いながら、はいどうぞ、と認識票を手渡しされた。
ガストン「よっしゃ、これでルーナも冒険者だな」
ビクター「よろしくお願いします! ルーナさん」
ソニー「やったっ、これで一緒ですね」
「ありがとう、よろしく頼む」
手に取って見ていると、ベルが噛じりついた。
カチッ。
「かたい!」
一同「「!?」」
食べ物じゃないぞこれは。
ベルから取り戻し、紐でも通そうかと考えていると、ビクターが余っていた紐をくれたのでもらって、首にかけた。
詳しい説明はガストンがきっと話してくれるはず、だそうだ。
ガストン「あいよ、ちゃんと話しときますよ」
酒場のマスター? という髭の男の背後、台所、いや、厨房、からいい匂いが漂って来ているな。
そうしてるとケンウッドが組合に訪れた。
あれ? 俺の酒がねぇ。
と背後で聞こえる。
ケンウッド「いやはや、皆様、お待たせして申し訳ありません、組合長様、モード“女史”も、お久しぶりでございます……あの、表で倒れている彼らは一体?」
ああ、見たのか。
ビクターと私「「じょし?」」
ガストンが説明してくれると思ったが、肩を竦めただけだった。
モード「? ああ、さっき騒いでた連中でしょうネ」
彼女が背後の警護に目をやると、男が口を開いた。
「ハッ。“暗夜”六名がアリアスタと依頼書をめぐり魔術の行使と、抜剣で戦闘に。魔術士が勝利し外へ飛ばしました。その後、リーダーが背後から暗殺を試みました。警護は鎮圧に動きましたが間に合わず……」
ベル「アリアッタだよ!」
「アルアスタだ」
モード「皆間違ってます。アリエスタさんですネ、それで?」
ガストン「くくく」
「ハッ。ルーナ殿がリーダーを昏倒させました。その後捕縛して牢に入れました」
「よろしい。表の連中は起こして掃除と片づけをさせ、牢に放り込んどきなさい。ご苦労様ですネ」
「はっ」
モードがロムガルを見上げる。
「よろしいでしょうか組合長」
「グル、うむ」
ロムガルは紙をチラリと見ただけだったな。
ベル「あれぇ? ねぇーギルマスってどっちがどっちだったっけ?」
ソニー「わぁ! ベルちゃんっ、シィッ!」
私が手に持つ認識票に彼が気づいた。
ケンウッド「おや、ルーナさんもこれで冒険者ですか、おめでとうございます。今後ともよろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
ケンウッドは、お祝いをしなければいけませんねと小さく言っていた。
ガストン「こほんっ、そう言やさっきのアリエスタって奴を盗賊のアジトで助けたのは言ってなかったな、ここの冒険者だったんだな」
ロムガル「グル、小僧は、うちの組の者だ」
モード「しかもアリエスタさんは、魔法協会長でエルフ族であるセレナール様のお弟子さんですネ。修行中の身のはずですが、よく抜け出して来てここで依頼を受けていましたネ」
モードが最後に私を見て説明してくれた。
多分私がわかるようにだな。
そう言うことだったのか。外に居たのも、喧嘩してたのも。
ソニー「うわぁ」
ビクター「そ、“外”まで?」
ガストン「え? 水ばくだ――協会長の弟子? まじかよ」
ソニー「はい、先輩は天才なんです、セレナール様は口には出しませんが。お金にうるさくなければ尊敬できる人なんですが……」
彼女の話す声が、最後は小さくなった。
アリエスタの師匠なのか。
水爆弾オヤジと言われているのがだんだんわかってきたぞ。
きっと爆発する大水球の魔法等をぶつけてくるのだろう。
ワンドの火球も何とかできそうだな。
魔法か。
ロムガル「行方不明だったが、さっき急に現れて、元気に喧嘩を始めていた。助けて出してくれていたのだな、よくやった」
モード「ありがとうございますネ、魔法協会長様には報告はしておきますが、もう“気付いて”おられるでしょう」
ふむ?
「助けたのはベルだ。檻を破壊した。ベルはたまに怪力を出す」
モード「あら、この子が? ……“恩寵”持ちですかネ」
? おんちょう?
ベル「えへへへ、おんちょー?」
ガストン「へぇ! 見かけによらねぇんだなチビっ子、このテーブル、持ち上げられっか?」
「わかんない。でもいっぱい使うと一日じゅう疲れるもん、や! お腹減った!」
「はは、なんだよそりゃ」
モード「ねぇ、お腹ペコペコですネ。それにしても、アリエスタさんが“ただの檻”に捕えられていたのですか? 三日も行方不明だったのですがネ……」
兄妹「「三日!」」
おんちょーとやらを聞きそびれたが、あ! そうだ。
「あれは魔法封じとやらで、魔力を使えなくする変な檻だった、ベルはそれの出す音を嫌がって捻じ曲げたぞ」
そしたら壊れたので出られた。私も音は嫌だったな。
床にも魔法陣の罠で同じようなのがあったな。
ロムガル「なに? グル……」
モード「まぁ……それは……“協会から盗まれたリスト”にあった品ですネ。衛兵団からも情報が上がって来るでしょうが……我々からもセレナール様に伝えておきましょうネ」
「グルゥ、うむ」
ソニー「お願いします」
ガストン「俺達にはあんま関係ねえな?」
ビクター「え? そうなんですか?」
私は動けなくなったんだがな。
パタパタ。
ベル「ねーおんちょー、おんちょーなーにー」
彼女が“あおむけに”寝転んでずっとぶつぶつ言い続けている。
天井の吊り篝火に張ってる蜘蛛の巣の蜘蛛を見ながら。
モード「ルーナさんは恩寵というものは初耳、初めて耳にしましたかネ?」
「ああ」
彼女がガストンを見た。
私もつられて見た。
ガストン「あ、ああ。ごほん、世の中には妙な力を持ってる奴が居てよ、ニルーナもそうだったな。神様が弱い人間の俺達にくれたとか言われてて、だから恩寵って呼ぶのさ。力が強いだけじゃないぜ? 早く動けたりとか、色々あるぞ」
ほう!
そう彼が説明してくれた。
「ふむ。ありがとうガストン」
モード「そういえば彼女、ルーナさんと似てる名前ですよネ」
ガストン「あぁ、言ってなかったな、マルコの親父が……」
ロムガル「グル……奴は、息災か? 怪我の具合は……」
何か話し込んでるな。
しかし、ニコの母親も恩寵持ちだったのか。
会ってみたかったな。
確か魔術士だったとか。
ビクター「すごいなぁ、ベルは。都ではギフトって呼ぶみたいですよ」
ところで、彼は解体所から私の袋を持ったままだな。
ビクター「あ、ルーナさん、これ、蛙の素材と肉が入ってるんですが……あの、この袋、入るだけ入れろって言ってましたけど、すごいたくさん入っちゃって、全然重くもかさばりもしないんですけど……」
ガストン「はあ? なんだそれ、って……あ」
モード「ちょっとその見せてもらっても構いませんかネ? あらまぁ、これはどこで?」
ビクター「え? ええと、ルーナさんので、確か小鬼の洞窟の、戦利品にあった袋だったかな? あっで、です!」
「ちょっと見ててくださいネ、いきますよ?」
袋をのぞき込んでいた彼女は驚いていた。
そして、私たちに中から大きな蛙の肉塊を取り出して見せた。
ああ、取り出した肉が袋より大きいな、袋には何の変化もない。
眼がおかしくなったみたいだ。
皆「「!」」
ガストン「おぉすげえ! それ、まだ入ってるんだろ?」
ビクター「は、はい、まだいくつも塊と、皮も入ってます」
ベル「あれー? 変なのー!」
ソニー「“魔法袋”だ……これ程のものは私始めて見ました」
魔法袋? 彼女は存在自体を知っているようだな。
ザワッ。
周りが反応したぞ。
ケンウッド「あああ、そ、それは! 商人の夢の品! ちゃんと調べていればよかったぁ……」
どうしたケンウッド。
死にそうになって卓につんのめった。
ああ、戦利品をもらう時に、長剣のついでに袋をくれと言ったら、見もせずにくれたんだっけな。
「魔法の道具ですネ。袋に入る量を増やす“空間魔法”がかけられているのです。ルーナさん、組合に買い取らせてもらえるなら、どうでしょう? その長剣よりも良い武器を用意できます」
なに!
ケンウッド「まっ待った! 私が買い取ります! ルーナさんの言い値で結構です!」
ふむ、しかしそれほど高価な品なのか。
たくさん入るだけだぞ?
ガストン「なんかピンと来てねぇみたいだな」
ケンウッド「ルーナさんっ、例えばですけど、ベイリ村からここまで重い荷馬車を運んで来ましたね? あれが全部この袋一つですんじゃいます」
「ちょっと言い過ぎじゃねえか? まぁ“例え”なんだろうけどよ」
便利だなそれは。
ベル「食べ物たくさん入れようよ!」
ガストン「なんでだよ」
ケンウッド「? それが通常の使用法ですよガストンさん」
モード「うふふ、職業別で用途に違いがありますよネ」
私は小鬼の報酬の長剣を見た。
これよりも貴重なものを私は気付かず受け取ってしまったのか。
だが、これは十分よい剣だ。
「報酬の剣はもらった。袋は拾い物だから、戦利品の中に戻してくれ」
皆「「えっ」」
ロムガル「ほぅ」
しかし空間魔法か。
そういうのもあるのだな。
読んでくださりありがとうございます。




