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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
二章 湖の街編
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44話 冒険者組合

 その後、お茶などをお替りして落ち着いてから、レガリアは魔法協会のエルフの協会長とやらに紹介文を書いてくれた。


 アリエスタが居た組織だな?

 ツンツン。ん?

 ソニー「あたしもです」

 ああ! そういう感じだったか。

 みかけた魔術士も全部なんだな。


 レガリア「ルーナ様が行けばこれがなくとも、お会いシてくだサると思いまスが念の為」

 礼を言って受け取る。

 後で会いに行ってみよう。


 ベル「ケンヌッドだ!」

 丁度、事務所に訪れ帽子を取って入って来た彼の滑々の頭に乗った。

 ケンウッド「あはは、ケンウッドです」

 彼は差し入れという名の謎の樽を衛兵隊に渡していた。僅かに匂いがするな、酒か。


 レガリア「わざわざスまんなケンウッド殿。ありがたく飲まセてもらおう。調書は終わったところなので、もう退出シて構いまセん。ご協力ありがとうごザいまス、ルーナ様」


 ケンウッド「馬車駅を出たところで森蛙を運び入れるビクターさんと組合の人達とすれ違いましたよ。冒険者組合の解体所に無事搬入し終えたところでした」


 ガストン「ほんじゃあ行くわ。世話になったなレガリア。ゼラにも頼んだが、団長に言っといてくれよ? なんだかキナ臭いって」

 オークやスライムが増えたのと、魔人が出たことだな。

 やはりここらでもうろうろしてるんだろうか。

 レガリア「勿論だ。奴も共有シてるなら問題ない。お前も今スぐ“ロムガル殿”に報告スるのだゾ」

 ?

 流れからして、ギルマスの名だろうか。

「おうっ、よし! それじゃあさっそく組合に行こうぜ」


「世話になった」

 レガリア「いいえ、ありがたき幸セでごザいまス。今更でスが、スイレーンの街へようこソ、ルーナ様」

 ベル「じゃあねおっちゃん!」

 レガリア「おっちゃ……」


 事務所を出ると、やはり面白いものだ。街の出口から、向こうの通りまで、様々な店や建物が並び、その道を行き交う様々な人々が歩いている。


 馬とは違う動物を連れ歩いていたり、ケンウッドよりも小型の獣人が何人も列になって歩いていたり、向こうの商店では客と店主が喧嘩をしていて、衛兵がなだめている。

 あの衛兵は、守護隊だな。


 右の門入口は先ほどではないが、来る人、行く人でごった返していた。

 今も事務所から衛兵が出入りして忙しそうにしている。


 スイレーンの街は喧騒? で賑わっていた。

 ベル「すっごーいね! ルーナ!」

「すごいな」

 視線があちこちから集まる。

 やはりエルフ族は珍しいのか。


 む、仲間を見ると、私を待っていたみたいだ。

 ガストン「どうだ? 悪くねぇ街だろ? さ、こっちだぜ」

「ああ」


 通りを進むと右手に私たちの運んだ荷馬車があり、中は空になっていた。

 全部出したのか。


 近くの厩舎? の中、馬たちに混ざって、ブレゴがこちらに気づくことなく桶の中に首を突っ込んで、多分草を食べている。

 恐らく、この視界も他の皆には遠くて見えていないのだろう。


 そして、先ほどから唸るような音がずっとしているのは何なんだろうか。

 ブシュウーーッ!

 

 ベル「うきゃーー!」

 ソニー「きゃあっ」

 急にすぐ前で煙が大きな音を出しながら噴き出し、私たちを包みこんだ。

 馬車の並ぶ中の、ごつごつした異様な種類のやつから噴き出た。

 ガストン「なんだこりゃあ!?」


 腕を振り霧を払って見てみると、これは……からくり、というやつか?

 そしてリゾットの持つ新型クロスボウ、蒸気銃だったか、を思い出させた。

「蒸気、馬車?」

 

 ガストン「! ああそうだ、蒸気だよな、じゃあ蒸気馬車ってことか。前に見かけたガラクタよりも、すげえ進歩してるな……」

 ケンウッド「ガストンさんも初めて見た型ですか? 新型馬車でしょうかね」

 彼らにとっても珍しいもののようだな。


 ベル「ん~うるさいし臭い! きらい!」

 確かに、ずっと唸っててうるさいかもな。

 ガストン「お前さん、王都に来たら目ん玉飛び出るぜ」

 蒸気を吹き出してからは、ずっと静かになったが。

 臭いは恐らく唸っている音の元である、手前に付いているからくり部分から臭っているようだ。


 この箱の中に入るのだろうか。

 いや、これは荷馬車ではなく、人が乗るためだけの用途な気がする。

 窓らしきものがあるが、中は布で塞がれていて見えない。

 重量もありそうだし、馬が大変そうだな。

 む、下から人が出て来た。


 煤、で顔が少し汚れた色白の中年の男「おやおや、これはこれは、何かあっしに御用でやんすか?」

 ケンウッド「いえいえ、失礼、ずいぶん見事な蒸気馬車だと、驚いて足が止まってしまいました。最新型でしょうか、ひょっとして、所有者様でざいますか?」


「え!? いやいやいやあっしはただの御者兼エンジニアでございやすよ旦那様方」

 男は私達を見回した後、再び私とベルを二度、三度見して目を丸くした。


 ひょっとして帝国製の……ほう、馬がいらない、自力で走ると……水と、石炭で?いやはや……。

 なんだかケンウッドが興味津々になっているな。

 彼は駅馬車とやらに居て、蒸気馬車の存在は知っていたのではなかったかのか。


 話す機会を今作れたということだろうか。


 “帝国”とはなんだろう。


 ガストン「あ、だめだこりゃ、長くなるな。先に行っちまおうぜ」

 ソニー「え? でも」

「大丈夫だって、行先わかってるし先にルーナに説明すっからよ」



 ケンウッドを置いて、冒険者組合、別名、冒険者ギルドに着いた。

 道の向かいの少し先にあった。


 あぁ、看板に“絵”が描いてあるな。

 盾と剣だ。

 その下に、文字というやつだな。

 多分、冒険者組合と書いてあるし、読めるな。


 文字が読める。

 ちょっとほっとしたぞ。


 そう気づいてから、通りの店の看板に目をやると、うむ、読めるな。


 入口は中央部分だけドアが存在し、両開きになっていて中が見える。

 日差しが強く、影になって戸口の向こう側がよく見えないが、ずいぶんガヤガヤしていて活気があるな。


 その戸口にいったん足をかけ、止まったガストンが振り向く。

「言っても無駄かもしれねぇが、ルーナ、なるべく暴れんなよ」


「それは向こう次第だ」

 あと、そこをどいた方がいいぞ。


「やれやれ――うおっ!?」


 バアアン!

 その向こうから人が飛び出してきた。

 大柄の禿げた男だ。

 ガストンが避けたので私も、皆も避けた。

 ソニー「きゃあ!?」

 ベル「え?」

 彼女は食べ物屋らしき露店? からの匂いの方を向いていた。


「あいでぇ!」

 器用に酒瓶をこぼさないように尻から落ちたな。

 身のこなしがしっかりしている。

「でぇ~~なぁにしやがんでぃ、グビ」

 男は起き上がって一杯飲みんでから、組合へ戻って行った。

 皆「「……」」


 なにやら中で騒ぎが起きているようだな。


 ギキイィ。

 組合に入ると、一斉にこちらを見たな。


 ほう、強そうなのがゴロゴロいる。


 ざっと見ると、左のカウンターの向こうが組合の職員? 達だな。

 目の前奥の、壁にある板に羊皮紙がたくさん貼られている。

 右は酒場か、飯も出すようだな。


 カウンター近くの通路の奥、組合の裏は、広場の様だ。

 丁度、扉を開けて入って来た、砂埃のついた汗だくの冒険者がいる。

 多分体を動かせるんだろう。


 奥の壁の暖炉の上に魔物の巨大な頭蓋骨が飾られている。

 牙が小剣並の鋭い牙が並び、長剣のような大きな牙が二本、下に向かって生えている。魔狼っぽいがずっと大きいし強そうだ。

 冒険者達の騒めきに混じって、骨の大顎の奥から低い吠え声が響いて来る。

 猫族っぽいな。誰も気にしてないから聞こえてないんだろう。


 上への階段が角にある。

 見上げると酒場の天井が高くなっており、上の階が一部見えている。

 宿かなにかだろうか。

 そのそれぞれに冒険者がいる気配を感じる。


 こっちを振り向いた者達が驚いてるが、騒ぎの方に戻った。

 転がり出てきた男もその中に混ざっていった。


 騒ぎは奥の紙が貼られているところで起きていた。

 人が多く集まっていてよくわからない。


「こんにちわ」

 ベル「こんにちわー!」

 彼女の大声がフロア中にひびいて、完全に全員がやっていた動きを止めて、こちらを見た。


「はいこんにちわあ!」「何がこんちはだばーか」「ガキの来るとこじゃねえぞ」

「あ、さっき騒いでたエルフじゃねえか」「ああ! 蛙の!」「蛙ぅ?」

「化け蛙が出たんだよ門の近くでよ」

「何ぃ? ふぁ~あ、俺ぁ今起きたとこだぜ」「もう昼だぞボケ」

「化けもん蛙に食われて、中から腹破って出てきてよお、いや~すごかったぜ!」

「うっひょーなんだあの女、滅茶苦茶いい女じゃねえか!」

「おぉ~い奇麗なエルフの姉ちゃん! こっちきて酒呑もうよぉ~ヒック」


「なんだあれ?」「小妖精か?」「何で街中を飛んでやがるんだ」


「おいガストン! 女連れかよ! 情報屋に言いつけちゃうぞこの野郎」

「あれー、“隻狼”の野郎、女連れじゃねぇか、てめえソロじゃなかったのかよ」

「ガストン? あぁ、汚ねぇおっさんが混じってらぁ」「女だけ置いてとっと消えろや臭ぇんだよおっさん」「死ねこの眼帯野郎! だせえ眼帯しやがってよー」


「ソニーちゃんこんちはー」「兄貴なら解体所にいるぜー」


「あの女、いっちょ前に大剣なんて背負ってやがるぜ」

「弓に長剣に、どんだけ装備してんだ?」「馬鹿なんじゃねえの?あれじゃ動けねぇだろ」

「おいゲス共っ口を慎め! エルフ様に失礼だろう!」

「うるっせぇんだよトカゲ野郎」「黙って魚でも食ってろ」「もうやだ、マスター、お勘定ー」


「エルフの姉さんよぉ、野次ってるバカ共は全員ぶっ殺しちまって構わないぜえ、ここも過ごしやすくならぁ」「あんだとこの野郎」

「ん?ルーナか? ベルもいるじゃねえか! おーい! あ痛てぇ! この野郎!」

「あんだコラぁ!」「やんのかコラァ!」


 パリィン! ガチャアン! ドカアァン!


 ベル「元気いっぱいだねー」

 ずいぶん活きがいいな。

 これが冒険者か。

 何人かぶっ飛ばしたい奴がいたな。

 隻狼、情報屋、それと、知っている声が聞こえた気がする。

 奥の方で名を呼ばれたっぽいが、聞き間違いか?


 お互い喧嘩は始まらなかった。

 ガストンが睨んでるのと、ソニーが私の服を掴んで引っ張ってるからだ。


「はぁ、昼間っからひっかけやがってよぉ、ギルマス呼んでくるわ」

 ガストンはカウンターの奥側の初老の男に話しかけると、男はカウンターの一部を動かし、中に通し入れた。そうやって組合の者達の職場? の奥に消えていった。

 

 この騒ぎの中、受付をする組合の者達は全く動じていない。

 これが日常なのだろうか。

 いや、まだ若い女や男は、少し怯えてる感じがする。


 よく見れば受付側、階段、酒場の方に、屈強な体格と衛兵並の武装をした男達が立っている。

 なんだか怒っているからそろそろ静止が入るのかもしれないな。

 そもそも、喧嘩を始めたのは一部のみで、大部分の冒険者達は楽し気に眺めているし、飲み食いもして、あの喧騒の中で構わず寝ている者もいるな、ふふ。


 ソニー「る、ルーナさんがこの場に普通に慣れて、笑ってる!?」

 彼女は目を剥いて私を驚いて見上げた。

 ベル「ねぇルナソニィーっあたしお腹すいたー」

「ルナソニー!?」

 彼女は飯を食う連中の手元を指をくわえて眺めている。


 むっ。

 なんだ、魔力を感じる。

「うわっマジかこいつ! 魔法使いやがった!」

 騒ぎの奥の冒険者達の集団がさっと躱した場所から、こちらに飛んで来た。

 三つだ。

 初弾を躱し、二、三個目は正体がわかったので拳ではたき落とした。

 ソニー「きゃあ!?」

 カァンッ! パキィンッカラァン!

 それは氷の礫だった。

 床に落ちて割れた。

 躱した最初のは見ると壁に音を立てて砕け落ちていた。

「え、氷弾?」


 冒険者達「「ひそひそ……」」「氷魔法だって?」「ほら、あのよ……」「珍しいなおい」

 ?


 魔術なのか? あまり硬くはなかったな。

 魔物には通じないぞ。

 手を抜いたのか、“時間不足”か。


 躱した連中がどいたので奥が見えた。


 連中が囲んだ中に、数人倒れて数人が睨みつける、背の低い小人族の少年がいる。

 喧嘩のアザの跡があるな。

 “今回は”杖を持っている。

「一歩でも近づいてみろぉ、吹っ飛ばすぞこらぁ!」


 ベル「ああ! アリアッチャだ!」

 ソニー「あーーっ先輩!」


 それはアリエスタだった。

 読んでくださりありがとうございます。

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