42話 守護隊
化け蛙退治について話をする為、猫と犬娘達と共に衛兵団守護隊の事務所に入った。
ガストンとソニーも。
ビクターは蛙のとこで死骸を見ててくれ、ケンウッドは馬車を置きに別れた。
皆、入ってすぐの部屋の一つに案内された。
バシャアアアッ!
ピチャピチャ、ポタポタ……。
私だけ、奥の中庭にある井戸に案内され洗われた。
武器も装具や鎧も全部外して。
別の戸口、台所から出て来た女の蜥蜴人と、付いてきてくれたソニーが手伝ってくれた。
また驚かれたな。
私の眼と、そして汁塗れなことに。。
ビチャビチャ……長くて邪魔な髪を丸めて握って絞る。
男たちのように短く斬るか。だが濡らすとまとまるし、攻撃に使えそうだな?
蛙の体液を洗い流したが、武装は乾いた布等で拭くのがよいかもしれんな。
ガストン達に聞いておかなければ。
さすがにすっきりして気持ちが良い。
「ありがとう」
体を拭く布も貸してもらったから返す。
蜥蜴人「いえ、エルフ様」
またか。丁寧にお辞儀された。妙に敬われている。
ソニー「キレイですねぇ~。それに、不思議な形のアザ」
背中の痣か、ベイリ村の女達も言っていたな。
見えなくて全くわからん。
鞄の中は無事だったな、替えの服に着替え、装備も着け戻そうとした。
ソニー「あぁあだめです、装備は私が預かりますっ、奇麗にしておきますから!」
「? わかった」
濡れてるからか。
「あぅう、お、重いぃ!?」
「む、武器は持とう」
皆の部屋に戻る。
長剣のみ腰の革帯に掛け、残りは戸口の台に置かせてもらった。
「洗ってきた。水をありがとう」
見えなかったベルはこっちで娘たちと一緒だった。
ガストン「おっ、また雰囲気が変わったな」
陽が射さないからか、部屋は少し涼しいな。
レガリア「いえいえ、おいっ椅子が足りないゾ、サっサと持ってこい、お前、ぼーっとシてないでお茶をお出シシろっ」
部下「隊長、あの、数はいくつで……」
「シュー、バカ者っ全員だ。急げよ」
「はっ!」
全員座れなかったのでレガリアが部下に何か言っている。
喋り方が独特だな、蜥蜴人は。
入口から向かいの部屋を見ると、たくさんの武器や装具が飾られており、入って置き戻している兵が何人かいる。
さっきあれだけ騒いで集まって来てたものな。
ガストン「ルーナ、大丈夫だから座れって。誰も襲って来やしないよ、蛙は街壁そばにたまたま来たけどよ」
ソニー「あれ? お兄ちゃん?」
ここで、振り向いて彼が居ないことに気が付いた。兄より友達や集まった街人? が気になっていたからな。
「ああ、兄貴は蛙のとこで死骸の段どりをやってもらってるよ。嬢ちゃんたちも座れ座れ、ほらっ」
ガストンは面倒見? がよいな。
外した武装の話になり、早く点検するべきだとガストンがいい、許可をもらい机に置いて手入れをする。
レガリアは黙って見ているが、ちょっと不思議そうだな。
兄貴にも伝えておくようにとソニーに言いながら、ガストンが厳しく私たちに手入れの仕方を教えてくれた。
隊長が部下にもよく見て勉強しておけと指示した。
革帯の隙間とかに粘液がまだ入り込んでたから取ったりする。
武器は濡らしたままは厳禁? だと強く拭く。
錆るらしい。
ガストン「油買わねえとな」
彼は持ってるのし使っていたのは見たから、自分用のを買えということだろう。
モーニングスターを拭いた時は、猫と犬娘が持ち主を知っていたので返却した。
彼女らを助けた、あの鎧の冒険者のモノで間違いなかった。
「ふぎゃ!? 重いにゃ!」
ゴドンッ!
片手に持ったそれをレンが両手で受け取った瞬間、重さに耐えきれず棘鉄球がすごい勢いで床に落ちる。
「にゃぁあごめんなさいにゃ、ごめんなさいにゃあ」
床に棘鉄球の落下後のへこみができた。
私も謝る。
レガリア「いやいやお気になサらズ、シょセん衛兵の詰め所でスから」
ソニーが土の魔術で、へこみを平らに治してくれた。
「このくらいの大きさなら、土魔術も使えます」
見事だ。
土魔法もあったんだな。
手入れしている武具や装具の話になり、ゴブリンの暴走時、奴らが身に付けていたものの一部が衛兵のそれと似ていることを話すと、やはり、衛兵団の一部隊に行方不明が出ていると聞いた。
奴らはそこから装備を手に入れていたんだ。
ギャレスとはまた別に遊撃隊というのがあって、彼らのものの可能性があるらしい。
そこの副隊長が行方知れずという話だったな。
戦利品についてケンウッドと話した方がよいかもしれない。
向かい側に座った隊長が、机に置いてある棒を持って黒い汁瓶の蓋を開け、中につけてから、羊皮紙に棒を近づけて、こちらを向いた。
レガリア「ソれで、お嬢ちゃん達は何の用で森の中に?」
ガストン「なあ、いいか?」
「シュッだめに決まってるだろう、貴様は大人シくシてろ」
煙草を点けようとしたが、断られた。
やはり知り合いみたいだ。
目くばせや雰囲気で分かっていたが。
「にゃ~、それが……」
レンとマギーは、甘水草を採取しに森に入ったそうだ。
強い魔物もいない基本的に安全な森だが、冒険者組合に行き、ちゃんと護衛を頼んだ。
新人だったが問題はなかった。
その新人さえもう立ち寄る用がなくなった森だからだ。
全員が油断せずしっかり準備して入った。
いつも通りの外出だった。
はずだった。
カリカリと音がする。
レンとマギー達が事の経緯を話して、隊長がそれを紙に筆で書き記している。
「きゃははは、つかまったー」
ベルが娘達を気に入りちょっかいを出すので両手で包む。
レガリア「ふむ、ソれで化け森蛙の大型種が出たのがわからんな。繁殖場はかなり離れた場所だシ」
カリカリ……。
「ソもソも、ソこに蛙達の好きな甘水草の群生地があるのにな」
すると、やはり草目当てで襲われたのだろうか。
「その繁殖場でなんかあったんじゃねぇか?」
レガリア「あのなぁガストン、私はもう隊長なんだゾ。部下も聞いてるんだから敬語を使え敬語を」
「勘弁してくれよ、そんなうまく切り替えらんねぇよ、大目に見てくれや、エルフ様の仲間なんだからよぉ?」
「おまっ! シュウウウッ……はぁ。おいっ地図を持ってきてくれ。ソれで、お嬢ちゃん達、遭遇シた場所と、経緯を詳シく」
二人はやっぱり知り合いだった。
同じ町に住んでいるからだろうか。
あ、旋風の仲間、メンバー? かもしれないな?
まだ続きそうだな。
ここでもまた何かが起きているのかもしれない。
スライムが表面にくっついていたのと、カエルの色が変わったことはこれから話すのだろうか。
お、スライムの話が出てきたな。
酸が普通のスライムより強いという報告も得ている。
火魔法を放った魔術士が来ていた。
衛兵なんだろうか。
魔術士らしきローブ姿の者もここには出入りしている。
スライムには“亜種”がたくさんいるらしく、そういう種類だったんじゃないかということになった。
それよりも話題に上がったのは蛙の体色だ。
赤いのは狂暴化状態というものだったらしい。
それを示すのが、赤班というもので、赤く変化して強くなるそうだ。
例の変異じゃないんだな?
ベル「緑色に戻んのあたしも見たよー」
私が腹の中にいる間に元の体色に戻ったということか。
その原因が、スライムが取り付いたことのようだ。
ガストン「酸に耐性があるからな、ここら辺の生きもんは。何でかわかるかルーナ」
急に私に振り向く。
私にもわかるように話してくれていたのか。
ちゃんと聞いていてよかった。
これは、教えてくれてるのか。
「今までの話からみてみると、酸を出すスライムがたくさんいるのだろう、……それらを魔物が食って暮らしてるなら、酸に強くなければだめだろうな」
ガストン「ああ、えらいぞ、その通りだ」
ソニー達「「おおー」」
「ご明察でス。エルフ様」
「レガリア隊長、私はルーナだ」
「畏まりまシた。ルーナ様」
ベル「様だってー」
ガストン「くくく」
むう。
ガストン「一番の倒し方はもうわかってるな?」
ああ、火だな。
「剣も効き辛ぇし、いつものこった」
剣があまり効かないだと、強い奴が出てきたまずいんじゃないか。
ベル「スライムっておいしいのなかなぁ」
「……酸があるって俺言ったよな?」
「ふむ。わかった。助かる」
あと、蛙はうまいらしい。
今回の騒動。
そのスライムが、どうも増えてるんじゃないかということだ。
片耳の猫族の衛兵「お茶ですにゃ、お疲れ様ですにゃあ」
レガリア「どうゾ、召シ上がってくだサい」
お茶というやつは良いな。
何故か真っ先に私に出されたが。
ズズ。
心がより鎮まる。酒もいいが。
ガストン「待遇いいなおい、あちち」
野営のもうまいが、これもうまいな。
多分種類が違う。
猫娘が苦手そうに息を吹きかけている。
ソニーもだった。
それぞれ飲み方が違うんだな。
ベルが椅子も茶もなくて“スネた”が、私の方に座らせてなでてやって、私のを飲ませてやると、にこにこになって、全部一息に飲まれた。
一息ついて窓の外を見てみると、そばの樹木の枝に青い鳥がいた。
やはりじっとこちらを見ているな。
外から街の喧騒が聞こえる。
街という所は賑やかなのだな。
カリカリ……調書を取る音が続く。
黒い汁瓶はインク瓶だ。
前に洞窟でソニーがやっていたやり方とは違うな。
彼女は魔術、魔法の筆で書き写していた。
違いが判らない。
あっちの方が便利そうだったが。
ソニー「ルーナさん、もしかして洞窟の時の、あたしが魔法陣を写した時と違うな~とか思っています? あれは魔術でやったんですよ。普通はインク瓶とペンですよ」
ガストン「何を驚いてんだよ。そういう顔してたぞお前。顔に出てるんだよ考えてることが」
レン「あたいらみたいに、耳がピクピク動いてるにゃ」
マギー「かわいいね、レンちゃん」
「顔……そういえば私は自分の顔を知らんな」
一同「ええ?」
レガリア「ええと、どういうことでシょうか、ルーナ様、の事情をソろソろお聞きシまシょうか」
猫娘達の聴取は終わったようだ。
森蛙と戦った経緯を話した後、今までの経緯、ゼラに話した感じの大体のことをまた話した。
ゴブリンの暴走、盗賊のアジト等色々。
ガストンが。
レガリア「シュー、なんということか。サスが、ルーナ様。このレガリア、御見ソれ致シまシた! シかシ、“魔人”が再びこの国に現れたとは……」
ふむ、再び?
ガストン「あーったく、おまえもか! ゼラといい、人が変わったみたいになったな!?」
「シューッあの女たらシの偽貴族と一緒にシてもらっては困る! 我ら蜥蜴族は全士族共々はるか昔から、常シえなる女王陛下に忠誠を誓っておるのを知っておろう! 女王陛下に栄光あれ!」
蜥蜴人の衛兵達「女王陛下に栄光あれ!」
娘たち「「わ!?」」
ベル「えいこうあれー!」
士族、女王陛下?
娘たち「「ええ、えいこう、あれ~?」」
何だそれは、何かの決まりなのか?
当たり前のように蜥蜴人、蜥蜴族だけが突然直立して胸に手をやり、一緒に同じ言葉をしゃべり、茶のあるものだけ持っていた茶椀をかかげて一口飲み、皆姿勢を崩す。
ガストンと他の衛兵達は全く驚いていないが、他の子たちは驚いてるな。
やるなガストンと人族の衛兵達。
ベル「えいこうあれー!」
ソニー「もういいからね、ベルちゃん、うぅ、ルーナさんもちゃんと言ってくださいよぉ~」
ベルがまだ言うので、一瞬、部屋に立っている衛兵達がまた言いそうになって、やめた。
ふむ。
「一体今のは何だ」
一同「「ええ?」」
ガストン「蜥蜴族ってのはエルフに助けられた歴史もあって、以来忠誠を誓ってるんだよ。大昔の話だけどな。“士族”ってのは住んでる場所がそれぞれ違うからだな、わかりやすく言うとベイリ村族みたいなもんだ」
ほう。
「んでたまにエルフの話題になるとこんな感じに盛り上がるのよ。女王陛下ってのは、エルフ族の一番偉い奴のことだな」
私に女王が居るのか。
ガタッ!
レガリア「シューッ、ソんな簡単な説明があるか!」
ベル「そうだそうだー」
怒ったのか、立ち上がってガストンに大声を出すレガリア。
しっぽの揺れ方でどういう気分なのかがわかるな。
ガストン「うるせぇなぁ、怒鳴るなよ。そうしないと嬢ちゃんにはわかんないんだよ。あえてわかりやすく話すの、けっこう大変なんだぞ? ほら日が暮れっから座れって、続けるからな」
ベルは真似するのが気に入ったみたいだな。
ガストン「後は……なぁレガリア、ルーナはある程度の“常識”は、体や頭のどっかで思い出したりしすることがあるが、詳しいことはさっぱりと忘れちまってるみたいなんだよ。生まれも名前もわからないからよ、ベイリ村のマルコが名付けたのがルーナってのよ」
ベル「ひげもじゃだ!」
レガリア「シュア! な、なんとお労シや。何かお力になれればよいのでスが」
ガストン「(じゃあ煙草吸わせろや)なら聞きたいんだがよ、ルーナの“眼”に何かあんのか? おまえら蜥蜴人の反応がいちいち引っかかるしよ、この街の水爆弾のじじ――“会長”とも毛色が違うだろ?」
あぁ、魔法協会とやらの会長がエルフらしいな。
誰だったか、盗賊親分のリゾットか、ソニーか、街の人の囁きだったか。
その水爆弾オヤジというのが気になるな。
私の眼がどうしたろいうのだろう。
レガリア「うむ……」
隊長は口ごもり、猫娘を見つめた。
レン「にゃあっ!? にゃ、にゃんですか?」
両手で椀を挟みチロチロとお茶を飲んでいたレンがビクリとする。
瞳の中の、黒目がギュッとしまり細い縦になったな。
おもしろい。
「誰か、私の部屋にある鏡を持ってきてくれ」
読んでくださりありがとうございます。
守護隊はお巡りさんみたいです。




