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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
二章 湖の街編
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38話 アジト

 夜の野営を襲った盗賊との戦いは、洞窟の隠れ家の壊滅にまで及んだ。


 乱入した衛兵団の隊長は、投降した者達さえ処刑し、ルーナと揉めた。


 ガストンに怒られた。

 偵察しに行って盗賊団のアジトを壊滅させる奴がいるかと。

 (情報を)待ってる俺達ゃどうすりゃいいんだと。

 それに、やるなら混ぜろと。


 お前はいつもおいしいとこを独り占めするだの、本当はわざとやってるんじゃないかと疑われた。

 違うぞ。


 マルコに言いつけて呼んでくるぞと。

 やめろっ。

 ニコにどんな顔すればいい。


 それと衛兵のことも言われた。

 揉めたことか?

 ガストン「違う、あいつらを“半端に殺す気”だったことにだよ」


 完全に私がどうするかを当てられた。

 やるな、よくわかったなガストン。

「褒めてねぇぞ」


 衛兵団すなわち、街で一番偉い、街長にして団長である者を頭としている組織で、街と周辺の安全を守る使命がある。


 あとその街長とやらは、かなり強いので怒らせるなと。

 ほう。


 ガストン「チッ(ったく、笑うんじゃねえよそこで)」


 ビクター「ちなみに、幾つかの中隊があって、それぞれ隊長が指揮しているんですよ」

 ああ、あの髭の隊長は、その一人なのか。


 もちろん髭、ギャレスはおかしいし、後々探り入れるとガストンは言った。


 そして私はその衛兵団に立てついたわけだ。

 立てつくのも、気に食わないとぶっ殺すのも自由だが、それがバレてはならない。


 そう言ったとき、ビクターの彼を見る目が半分になった。


 ソニー「ええ? そんな乱暴な……」

 む?

 ガストンはおかしなことを言ったか?


 ケンウッドは留守番してここに居ないが、行商の皆と一緒でやるのもマズイ。

 抵抗しない衛兵は逃がすつもりだったこともマズイ。


 彼と留守番してる衛兵達もいるし、それはどうするんだと。


 その先に待つ未来は、俺達全員捕縛され牢屋入り、下手したら縛り首だと。

 ううむ。


 ベル「うき~っ、長いからわかりやすく言って!」


 ガストン「……一人で戦う、だめ! 衛兵、逆らう、だめ! バレずに、逆らう、許す! オーケイ?」

「オーケイ!」


 兄妹「えぇ……」

 おーけい?


「すまない」

 少しわからないところがあったが、謝る。


 負ければ死に、勝てば生きる。

 それだけではないのだな。


 どうやら私は記憶を失う前から、“戦い狂いなところ”があるようだ。


 ……罠にはまり、親玉を逃がしてしまったことを言うのは、もう少し後にしよう。


 急に姿を消したあの少年のことも。

 無事に逃げられただろうか?

 アリ、エスタ? だったか。


「いや、俺もガラにもなく生意気言いすぎた。すまねぇ。……さっ、戻って晩飯にしようぜ!」

 ベル「しょうがないなあガストンは! 許す!」


 ガストン「……なんか今日はどっと疲れたな」



 その後、ギャレス隊長は衛兵団の権利とかなんとか言って、アジトの壊滅で得た品物は全て団が管理し、記帳後、盗品の場合は持ち主に返却する。


 残ったものは協力者に一部報酬として支払われるということであった。


 私たちは何も手に入れずに戻る。


 ベル「え? 下の全部も? ルーナが倒したんだよ? ずるいっ」

 ビクター「うん」

 ガストン「ああ、そうだな」


 先行したルーナが単独で仕留めた敵の権利はさすがにこちらにあるとガストンは言い張るが、衛兵団がアジト自体を占拠したことで、全てが衛兵の所有となった。


 だからやらんと。


 理不尽だと言うガストン。


 しかしルーナの別にいらない、の一言で終わった。

「……(デルンカの曲剣も中々だったが)」


 彼女の視線は髭《ギャレス隊長》の“腰の業物”にあった。


 要するに分け前が欲しいなら後で街の衛兵団事務所に取りに来い、というお達しがなされた。

 ガストン「ホントだなっ、取りに来るからな! あんたも! あんたも聞いたな! 絶対だぞ!」


 ビクターが後々聞き、ガストンが答えたことによると、ギャレスの口約束の場合があるので、衛兵達全員に念を押したのだと言う。


「(戦利品に頓着しない)ルーナのやり方に別に文句はねぇよ。だがよ、おめぇはいいかもしれんがな、命張って勝ち取ってんだからよ、俺ら冒険者ってのは」

 む、確かに。


「今日ので傷んだ武装の補修代金や刃の研ぎ代に消耗品の補填費用は、勝手に沸いてこないんだぜ?」

 補修? とぎ……?

 あぁ、研ぎかな?


 ビクター「さすがルーナさん、そこからか……」

 まだ何も言ってないぞビクター。


 その戦利品の話だが、アジト内を見て回り一通り落ち着いた後、アジトの品物が全て物色された痕跡があり、金目のものがほとんど失われていた。

「こんなバカなことがあるかぁ! 鼠がくわえて盗んでったとでもい言うのかあぁ!?」

 ギャレスは切れた。


 ネズミならさっき見たな。



 戦利品なんて回収しないからさっさと出る。


 ガストン「……なぁルーナよ、もしよ、あのリコアって獣人女とギャレスの二人とガチでやりあったとしたら、勝ててたか?」

 やはり獣人だったのか。


「ふむ……ソニーの治療術は、斬れ飛んだ腕をくっつけることはできるのだろうか……」

「マジかよ」


 それぐらいの犠牲、は出るだろう。

 もちろん、勝つ前提、でだ。

 負ければ死ぬだけだ。


 だが、そう言うガストンも先ほど少し見かけた感じでは、良い動きをしていたと思うがな。


 その後、ケンウッドの元に残っていた五、六名の“騎馬”と合流。

 彼らの中にも蜥蜴人がいた。

 そして私と目が合う者は必ず驚いていた。


 それを目撃した他の者達が、不思議がっている。

 私もだが。


 半数をアジトに残し、衛兵団は一度街へ戻ると言い出ていった。


 一人逃げた頭目の情報はちゃんと話しておいた。

 リゾット盗賊団のリゾットの名は誰も知らなかった。


 留守番組はうんざりした顔でアジトを片付け始める。

 後で聞いたが死体を集め、入口脇で燃やす作業らしい。


 私達もアジトを出ることにした。


 落とし穴のあったあそこ、あの落ちなかった場合に通れた筈のあの扉へ。


 だが、ガストン達は別の出口へと向かう。

 「ん? 穴じゃないのか」

 ガストン「ああ、話したろ、こっちが多分正面(入口)だと思うんだがな」

 落とし穴の方は突入時に確認済みだそうだ。


 ソニー「あ、あのガストンさん、本来はここは元々、隠されていたのではないでしょうか」

 ガストン「あ! ああそういうことか!」


 調べると、アジト側、洞窟内の入り口脇にわかりやすくレバーの仕掛けがある。

 カコン。

 ズズズズ……試しに動かすと、岩の扉が横から動いてきて入口を塞いだ。

 ガストン「おお」

 ビクター「あっ」

 外側にいたガストンとビクターだけが締め出された。


 ベル「アハハハ!」


 ソニー「お、お兄ちゃん! ガストンさん!」

 彼女は眉を八の字にして私を見た。

 兄と少しでも離れるのは嫌なようだ。


 しばらく待っても開けてこない。

「ん? 外からは開けられないのか」


 レバーを動かして入口を開けて聞いてみると、ただの岩の壁になって仕掛けも見当たらなかったそうだ。

 ベル「隠れ家だー」


 ガストン「いや? 最初っから開いてたぜ?」

 うん?


 そこで、誰が解放したかという話になる。


 結果的に衛兵とガストン達は安全に侵入できた。


 頭目のリゾットが逃げた時にそのまま?

 いや、奴が逃げたのはガストン達が侵入した後だったな……。


 緑のオークが気になるな。


 洞窟を出て、川沿いの獣道を、だいぶ遅くなった夜の森を皆で歩く。


 ガストン「そういやルーナ、改めて聞くけどよ。ここらで緑のオークって見なかったか? 普通のオークより小さかったはずだ。レア種だな、ありゃ」


「レア種、……いや、見てない。小人なら見た」


 ビクター「希少種ってとも言いますよね、え?」

 ガストン「小人? ハーフリングのことか? なんだそりゃ」


「ハーフリング……檻の中で寝ていた小人族の魔法使いで、よくしゃべる。ベルが助け出したら、いつの間にか消えた」


「情報多いな。小人族の別の言い方をハーフリングって言うんだ。消えたって、もう逃げたってことか? ふぅん……なんて名のやつだ?」

 ベル「はいっ、はい! アリアッタってゆうの!」

「アリアスタだ」

 ガストン「どっちだよ?」


 ソニー「え、あ、あの、“アリエスタ”先輩じゃないですか!? 行方不明の?」


 一同「「へ?」」


「魔術士で、よくしゃべって、お金にがめつい小人族なら、私と同じ魔法協会の先輩のことだと思います。」

 ベル「きっとアリだよーそれ!」

「ア、アリ……」


 蟻みたいだな。

 お金にがめついのは知らないな。

 だからアジトに忍び込んで捕まったりしたのだろうか?


 落とし穴に落ちて捕まったということは、あの隠れた裏口? から入り込んだと言うことだ。

 ソニー「あ、あの、見たって、どういう? ――」


 ビクター「あ、着きましたよ皆さん」


 そうこうしてるうちに、野営地に到着した。

 なんだか良い匂いが漂って来ていたな。


 ベル「ごはんだー!」

 ???「うおっなんだ!? フェアリー?」

 彼女が真っ先に飛んでいった。


 焚火の周りに二人いるうちの一人が驚いている。

 知らない男だ。


 暖められた鍋から白い湯気が空に昇っている。

「みなさーんおかえりなさーい」

 倒れた丸太に腰掛けていたケンウッドが、私たちに気が付き立ち上がり手を振る。

 尻尾も。


 もう一人は、衛兵だな。

 奥の荷馬車の方で、馬のブレゴの傍に、衛兵の馬もいる。


 ガストン「おいおい誰かと思えばゼラじゃねえか、助かったぜ。連中合流するや否や、さっさと帰りやがってよぉ、こっちの守りが気になってたんだ」

 知り合いだろうか、ガストンと、焚火に手を当てていた衛兵の男が腕を交差した。


 ゼラと呼ばれた男「よぅガストン、こっちは平和なもんだよ。飯、頂いたからね? 向こうはどうだった?」

 男は私を見て少し驚き、何度もチラチラと私を見ながら、ガストンに問うような眼をする。


 目が合って気づいたが、男の眼は蜥蜴の瞳のようだ。

 目元も鱗のような皮膚だ。

 うっすらとだが。


 何者だろう。

 蜥蜴人の衛兵達と何か関係があるのだろうか。

 尻に尾は生えてない。


 向こうも同じ気持ちであろうか、私の眼に驚いているように見える。

 だが蜥蜴人達のようにビクッとはしなかった。


 ガストン「おう、それがよぉ聞いてくれよ! あ、こいつはルーナと、そこのちっこいのはベルだな。詳しいことは俺も知らん」

 ゼラ「は? 雑炊をむさぼり食うフェアリーは僕も始めて見たし、知らないな」


 ケンウッド「皆さん、こちらにおわす御方は――」

 妙に彼が仰々しい? な。

 まるで村長に対するような感じだ。

 ゼラ「ケンウッドさんっ! しっ!」

 

 そう言って男はこちらに来て、しゃがんで、私の手を取る。

 ソニー「わっ」

 サッ。

 私は取られないようにかわした。


 ゼラ「……初めまして、美しいお嬢さん。私はゼラ・ノーデント。スイレーン衛兵団第三中隊副長を務めさせてもらっている男です。以後、お見知りおきを」

 ガストン「やかましい」

 第三中隊?


「いずれは隊長になる男ですよ僕はっ」

 もう片方の手を素早く取ろうとするのもよけた。

 何かをあきらめ、手を不自然な形にしたまま、ゼラは挨拶、をした。


「こんばんわ。私はルーナだ」

 ゼラ「……」

 彼はその先を待つようにしている。

「?」


 ソニー(かっこいい人だなぁ……)

 ベル「むぅ~むぉいひぃ~~っ」


「ケンウッド、夕飯を食べていいか?」

 それより腹が減った。

 ゼラ「……あれ?」


「はいはい、できてますよ、いや~無事でよかった。皆さんもほら、冷めないうちにどうぞ」


 ガストン「がっはっはっは! おもしれぇだろこいつ? あぁ皆休め休め、座って温まれよ、ってかゼラ! おまえもう副長に上がったのか? 流石お貴族様だな!」

「しっ! ばかっうるせえ! それを言うんじゃない! 実力だ実力!」


 ビクター「きき、貴族様!?」

 ソニー「お兄ちゃんあたし初めて見たよ!」

 ベル「?」


 ゼラ「ホラァ~」

 ガストン「だってお前、“家名”まで名乗っちまったらどのみちバレるだろ」

「あ! いっけね」

 ケンウッド「アハハ……」


 家名……貴族……。

 なんだろう、何か頭のどこかで引っかかるな。


 わかるのは、ゼラは恐らく独断でケンウッドを守ってくれていたようだ。

 ガストンとも旧知? のようだな。


 謎の儀式を突然してきた変な奴だが、マルコのように良い男の様だ。

 それに、恐らく強い。


 彼が座っている丸太のに立てかけられた槍が、焚火の反射で光った。


 読んでくださりありがとうございます。

 マルコ、ニルーナ(故)、ガストン、ゼラ、旧知組ですね。

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