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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
二章 湖の街編
39/63

37話 衛兵

 ガストン「待て待てルーナ! 衛兵達も、お互い落ち着け! こいつら降参して両腕上げたんだろ!? だったら隠し持ってねぇか調べりゃいいだろうが! 普段の手順ならそうしてるはずだ! 違うか?」

 ガストンもテーブルを飛び越え、間に入ってくれた。


 言うこともなるほどもっともだ。

 私もそれが言いたかった。


 ソニー「ル、ルーナさんは私たちの仲間です! 敵なんかじゃありません!」


 ビクターはソニーを守りつつ、オークを警戒しているな。

 助かる。


 衛兵「ギャレス隊長、もっともです」「……自分もそう思います」

 追撃に参加しなかった衛兵が言う。


「ぬぅ~~貴様らぁ、儂に逆らいおってぇ~!」

 ギャレスとやらは目が充血していて顔が振動して口の上の、髭だ、長い髭が揺れているな。

 魔力もあるようだな。

 眼から何か魔法でも出そうだ。

 気を付けよう。


 オークたち「「?」」

「フゴ? ナンだ?」「知らナイ、トニカく、全部殺シて、食ウゾ」「オオ、ナガミミくっテ、俺ガ、デルンガなル」「いヤ、俺ダァ」

 あっちで私を殺して食えばデルンガになれるとか言ってる。

 意味はなんとなく分かるが分からん。


 ギャレス「フン! まぁいい! 衛兵ェ! 投降を拒否してるぞ! そこのオーク共を殺せ!」

 睨んできていたが、ずっと見つめ返してると、怖気づいたのか知らないが目を逸らした。

 矛先が奴らに向いたな。


「かかってコイ! くそニンゲン!!」

「やるカ! やるゾベロン!」


 うおおおお!

 ブヒヒイイイ!

 衛兵とオーク達が戦いだす。

 四対二だ。

 トカゲ二、獣人一、人族一だな。


 ちょっと向こうには行けないな。

 ビクターも参加する空間? がない。

 

 私もガストンと並んで見物する。

 背後の壁に貼りついている盗賊二人にギャレス達がまた手を出すかちょっとだけ心配だった。

 前にギャレスともう一人が動かずに居るので油断できない。


 ??「……ふわぁ~」

 ギャレスじゃない方、細身の欠伸をしてる女の衛兵が恐らく強者だ。

 あと、人族じゃない気がする。


 そのギャレスがクロスボウをよこせと部下に話しかけ受け取り、何故か私に照準を向けてきている。


 一瞬、照準先のオークを狙ってるのかと思ったが、感覚的に、私の後頭部に狙いが付けられている。

 よけたら頑張って戦ってる連中の水を差すし、衛兵に当たるかもしれないし、

どうしようか。


「ねぇ、おっちゃん! それじゃルーナに当たっちゃうよ!」

 唯一ギャレス達の方を見ていたベルが教えてくれた。

 

 一同「「……」」


 ギャレス「っ! お前らが邪魔なのだ! そこをどけえい! 狙いづらいわ! 儂の邪魔ばかりしよって、亜人の分際がぁ!」

 亜人?


「私を気にせず撃っても別に構わないぞ」

 ちゃんとよけるからな。


 ガストン「はぁ……よぅ、この隊長さん、いつもこんな感じなの? 大変だねぇお宅も」

 多分強い女衛兵「さぁ、別にあたしは臨時雇われだしぃ」

 二人が軽い感じで話しているな。


 ガストン、緊張してるのがバレるぞ。

 バレても別にどうということはないのだが。


 ギャレス「おい! 冒険者風情が我が“衛兵団”に無礼であるぞ!」

 ガストン「こりゃ、どうも失礼を、隊長殿」


 バゴンッ! バギャガラァァンッ

「ぐへぇっ」

 盾持ちの人族が大槌の一撃を防いだまま吹き飛び、テーブルに落っこち破壊して、更に床に落ちた。

 傍にいた兄妹が、介抱に向かう。

 ソニーが治療魔術を唱え始めた。


 一人飛ばされたが、まだ三人で頑張ってる。

 勢いで数の少なさをなんとかしていたものの、劣勢になりオーク達は傷だらけになっていた。

 だが、衛兵たちも全員息が上がっていて辛そうだ。

 ここ(アジト)に攻め入ってずっと戦っていたのだろうか?


 ギャレス「気が利くな小娘、その年で治療魔術を納めておるとは、やるではないか、ほら、早く治して隊員を復帰させるのだっ」

 ソニー「は、はい……」

 ビクター「……」

 兄の方は髭を一瞬睨んだが、オークの戦いの方に気が行っており、見逃がさまいとすぐに視線を戻した。

 さりげなく、倒れた衛兵が重たそうな鎧と体勢で負担にならないよう、楽なように壁にもたれさせ、支えてやっている。


「ガストン、どうやって彼らと会い、アジトに来たんだ?」

 彼だけに聞こえるよう、近づいて静かに問いかける。

「え? ああ、街の方から街道をよ、オークが来なかったかっ、とか言って、俺らが野営してる場所に馬ごと大勢で乗りこんできたのさ」

 ふむ?


「だから街道でオークを見かけて、ずっと追っかけて来たんだと。オークならお前さんが仕留めた奴があったから、そこで死んでるぜって教えてやったら、違げえって、緑色の奴だってさ」

 ?

 オークは青いぞ。小鬼ゴブリンじゃなくてか?


 ギャレス「もっときびきび動かんかぁ! 何をやっておるグズめがっ」

 女衛兵「ふわぁ~~っ」

 欠伸しているな。

 まるであの程度の戦いには興味がないとでも言うような態度だ。


「青色のしか知らんが、緑のもいるのか」

「いや、少なくとも俺の知る限りじゃあ、ここら辺では聞いたことねぇな。ほんでそしたらよ、俺達が話してるとこに森の中からそいつが現れてさ! お互いびっくりして逃げるわ追うわで、アジトの入口を見つけたってわけよ」

 なんだその変な緑オークは。


「川沿いにでっかい入口があったからよ、おかしいとは思ったけど気ぃ付けても罠もねぇし、普通にそこから入って来たぜ?」

 なに?

 そんなのがあったのか。


「私は獣道を逸れた藪の中に隠れていた穴から入った。その先の落とし穴に落ちたぞ」

「へぇ? お前がか? 厳しいな、こっちは何もなかったが、変だよな、無防備で」

 罠がなかっただと?


 戦っている衛兵「ギャ、ギャレス隊長っ、“リコア殿”っじょ助力をっ! グアッ!」

 ガラアァァンッ。

 鉄棍棒が彼の利き腕を打ち、剣を落とされた。

 腕を抑え後退するトカゲ。


 二体二になってきたか。

 やはりオークの分厚い肌と肉に苦戦してるな。

 ギャレスの剣を貸したりはしないのだろうか、かなりの業物だと見えるが。

 魔力の何かを感じる。


 オーク二体をここまで弱らせた衛兵達に、途中から入って手を出すのはギャレスが怒るような気がする。

 だが……。


 ギャレス「軟弱者めがぁ~、四人でかかって行って助力だと!? 恥さらしめが!」

 リコアと呼ばれた女衛兵「……」


 ……動かないな。部下の要請? を無視している。

 というかこの女、ずっと私を、見ていないが、見ているな?


 こっちもそうだが。


 おかげで見物しなければならない状態だ。

 髭も弩を撃とうとして来たし。


「ブガガアア!」

 バギンッ! バギィッ! バキャッ!

 鉄棍棒の連撃が鉄の盾をひしゃげさせる。

「……自分もう無理ですっ!」

 右手の兵自身と盾がもう持ちそうにないな。


 仕方がない。


 頭上に座るベルを包み、横のガストンの頭上に乗せる。

「ふぁっ? ……くんくん、臭い!」

 ガストン「なっ!? 放っとけっ」


「おいオーク」

「!」

 私は弓を背後から出し、矢をつがえるや、撃った。

 バシュンッ。


 ズンッ!

 右側のオークの潰れていない残りの片目に矢が刺さる。

 衛兵「! はぁっ!」

 のけぞるオークの隙を盾持ち衛兵が首に向けて突きを穿つ。

 両目の潰れたオーク「ゴプッ……」


 バシュンッ……ズドッ!

 すぐさま放たれた二射目が、大槌を振り上げたオークの腕に食い込む。

「ングッ!」

 振り上げた大槌がぐらつく。

 が、まだだ。

 隙をついて衛兵が――動かずに、そのまま屈みこんでしまった。


 限界だったのか。

 彼に振り下ろされる大槌。

 

 私は柄を握り足に力を込めた。


 ギャレス「! ……あっ! おっ、おいっ、小娘貴様ぁ勝手に手を貸す――ヒュウズザっ!――な!」


 ゴトンっ!

「ブベェッ」

 オークの持つ大槌の柄は木製だった。

 太く筋肉を固くしていた両腕でも、間の狙いづらい頭でも、屈んだ衛兵の影になった胴体でもない。


 つむじ風のように飛ぶエルフの娘の長剣の斬撃がプツリと大槌の柄を断ち切り、槌頭が真下の、持ち主のオークの頭に落ちた。

 その様を、壁に着地しながら、銀髪をなびかせ猫の如き眼で振り向きエルフは見ていた。

 オークが倒れると同時に、重力によってエルフもその背後で着地する。


 大槌の頭が落ちて気絶するとは思ってなかった。

 そのまま反転し首の後ろを斬ろうと思っていたのだ。

 

 頭を強く打って更に倒れたオークは苦悶の顔で気絶している。


「ハァ、ハぁ、た、助かり、ゼェ、ました。エルフ様」

 死体の向こう側で屈んでいる衛兵が、驚きこちらを見ていた。

「じ、自分も隙を作ってくださり、感謝です。エルフ様」

 左手の衛兵も言う。


「うむ。皆よく戦った」


 ガストン「がっはっはっはっ!」

 ギャレス「おおい! それは儂の台詞だこの小娘ぇ!!」

 女衛兵「~♪」

 あれは口笛、とやらか。私に向けたのか?


 戦いが終わった後、盗賊を調べ、オークも捕縛しようかという時だ。

「おつかれさまー! けがしてない?」

 衛兵はしてるぞ。

 ソニー「ルーナさん心配してないけど心配しましたぁ~」

 ビクター「ソニー、落ち着いて」

 双子はまた額を合わせるように、無事を喜んでいる。


 ベル、兄妹、ガストンと集まり話し始めた瞬間。


「ぎゃあ!」

「なっぐえ!」

 突然、女衛兵が盗賊を殺した。

 振り向いた時には遅かった。

 ズシュッ!

 気絶しているオークの頭を剣でとどめを刺すギャレス。


「おい!」

 しまった。


 確か、リコアだったか、盗賊を瞬く間に切り殺した。

 他の衛兵よりも短めの、黒い刃の小剣を二本携えている。

 やはり強い。


 兄妹「……!」

 ガストン「おいっどうした!?」

 ベル「捕まえるんじゃないのー?」


 私が離れたのが原因かわからないが、突然急に動いたように感じた。

 ギャレスが何か言ったのだろうか?


 何をするかわからん奴だな。

 私は先ほどから長剣を鞘に納めていない。


 納める気が起きない程、何か落ち着かないものがあるからだ。

 恐らく人族ではない物腰の、強い衛兵の女から目が離せない。


 リコア「こいつら、いきなりナイフ出してきたからぁ」

 悪びれもせず、肩をすくめる。

 私の眼を見ながら、女はギャレスに向けてそう言った。


 ガストン「はぁ? オークはまだしも……、ものは言いようだよなぁ? 強そうな姉さん」

 彼も怪しさに気づいているな。


 ベル「なんかいいわけっぽいね?」


 しかしオークの扱いはそういう感じなのか。


 ギャレス「そう言うことだ。おい冒険者共、いい加減、衛兵の仕事に口を出すな、目障りだ! 儂は栄えある“スイレーン衛兵団”の隊長であるぞ」

 刃の青い血をそのオークの皮鎧で拭き取り、ガストンに向けてチラつかせる。


 ガストンは両手を上げ、へいへいと軽口を言い降参の恰好をする。


 ベル「さっきからあのおじさん感じ悪くない? ガストン、パンチ!」

「まぁあんなもんだろ、いちいち気にしてちゃ疲れちまうぜ」

 ソニー「べ、ベルちゃん! お願いだからちょっと静かにしてて!」

「むうううっ」


 ビクター「……」

 彼も私と同じ気持ちっぽい。


 ああ、気に食わない。


 スイレーン……確か、向かってる街の名前だったか。

 なんだか、盗賊やオーク達よりやっかいだな、衛兵というものは。

 なんで連中はここにいるのだろう。


 あぁ、緑のオークを追って来たんだ。

 そいつはどこにいるのだろう?


 ギャレスはそのよさそうな刃を私にも向けて言う。


「おまえもだエルフ、何を睨んでいる。気に食わん、亜人の放浪者風情めが……面は良いが、おかしな眼をしてるな貴様? 獣人かそこらの獣との混じりものか? うぅ、汚らわしい」


 ペッ。


 ギャレスは嫌そうな顔をし、二人の間の地面に唾を吐いた。



 ほう。



 皆「「!?」」

 その時、空気が凍り付くように静かになった。

 剣呑な空気を誰もが感じたのだ。


 バキッ。

 割れたテーブルの木材が割れる音だけが辺りに響いた。


 ベル「何言ってんの! ルーナはきれいでしょ! 何をするだんむぎゅむ――」

 ――兄妹らが協力して抑えられまいと逃げるベルを掴み口を塞ぐ。


「……」

 よくわからんが、戦いたいようだ。

 魔力のある、その不思議な剣に興味がある。


 柄を握る力を込める。


 部屋の一同が息をのむ中で、女の声が響く。

「はぁ~面倒くさいなぁ、ねぇかっわいいエルフのお嬢ちゃん? 要するにあたしとヤリたいんでしょ? かかって来なよ、その奇麗なお顔、切り刻んであげるわ。このゴミクズみたいにさぁ」

 グシャッ。

 そう言って、殺した盗賊の頭を踏みつけた。


 これは、挑発というやつか。

 リコアもか。


 厳しそうだな。


 どんな種族であろうが、敵対してくる奴に容赦するつもりはないが……。


 ガストン「おい! 待て! ルーナ落ち着け! おめぇはクールな奴のはずだろ?

ハハ、なぁ隊長さんよ、ちょっと言い過ぎだぜ? 一緒に戦った仲だろう?」

 クール?

 間に入られてしまった。


「衛兵さん達もなぁ、連中倒してアジトぶっ潰して大勝利なんだぜ! さっさと戦利品頂いて帰ろうぜ?」

 ビクターも頷いている。

 ソニーは怖がって固まってしまっている。

 蜥蜴の衛兵もだな。


 ……わかった。

 帰ろう。


 ギャレス「……フン! そういうことにしておいてやろうか。リコアっ、剣を納めろ」

「貴様ら! ぼやぼやせずにアジトを調べろ! 宝を探して回収してこい! 貴様は“待機組”を連れて来い! 馬もだぞ!」

 衛兵「は?」

「さっさとしろグズめ! オークの攻撃如きでたるんどるぞ!」

 良く戦った蜥蜴達の尻を蹴っ飛ばし、唾も飛ばしながら怒鳴っている。


 ふぅー、力を緩める。


 このリコアという女、衛兵というよりは、さっきガストンが言っていた、ローグのような感じだな。

 いや、シーフか。


 途端に、リコアの殺気が消えた。

 さっきとは違い、私達のことなど見えてもいないかの様に、衛兵達の中に埋没した。


 そう、殺気だ。

 理解した。

 この部屋に入ってからずっと感じていたんだ。


 一部、戦っていた衛兵達が礼をして作業に戻っていく。


 ガストンの言葉で収まった。

 なんと見事な腕だ。


 衛兵団。

 こういう連中もいるんだな。

 街へ向かうのがまた楽しみになって来た。


 戦いが終った。

 ヒュンッ、長剣を振り血を落とし、鞘に納める。

 チン。


 ガストン「ルーナ、ちょっとこっち来い。説教だ」


「む?」

 読んでくださりありがとうございます。

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