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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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36話 援軍

 部屋がそれ程広くないから一気に襲い掛かってはこなかった。


 オーク二体、斧と棍棒持ちと、曲剣持ち。


 盗賊が三人。短剣、細い棍棒、細い小剣。


 もう一人いるが、左手が痛くてそれどころではないようだ。


 この間合いでは短剣は投げられそうにないな。

 隙があれば別だが。


 私は小剣と、もう片方は逆手に短剣を抜き構えた。


 ガシャ、ズシ。

 斧と棍棒オークが左から、右から細小剣が来る。

 へっへっへっ……。

 右の盗賊の背後にいる短剣持ちが、影で動きを見せている。


 来る。


 オークが振りかぶる斧を右手の小剣で弾き、短剣で斧を持つ腕を斬った。

 右から盗賊が繰り出す細小剣の刺突を胴を捻り躱しながら、反撃カウンターで小剣を突き返し、男の首に刃をめりこませた。


 斧を持つ手を垂れさがらせたオークが、反対に持つ鉄棍棒を叩きつけてくる。

 ほぼ同時に、右で倒れようとする男の背後から短剣持ちが飛び出して来た。

 ほう。


 オークの棍棒に飛び込み腕に短剣をえぐりこませるようにして防ぎつつ、顔面に膝蹴りをめり込ませた。

「!」

 そうだ、私の力が見た目より強いのを見誤ってたな。


 驚く彼らの隙をつき、オークを踏み台にし右に飛んで、向かいの短剣男を小剣で斬りすてた。

 すぐさま右の壁を蹴り飛び、左へ。

 顔面を抑え棍棒を取り落としたオークの首を、小剣短剣を交差するように切り裂いた。

 ドサッ! ドオン! ドサッ!


 ベル「それ! いけ! あ! もう倒しちゃった! すごーい! よし行けールーナ!」

 彼女は鳥籠をとっくに壊し浮かび見ている。


「ひぃいい!」

 三人やられるや否や、片手の盗賊が階段へ逃げる。

 逃げる準備をしてたのか、変わり身が早い。


 チャキ。

 視界に映る彼の手前で、倒れたオークから回り込みながら曲剣を構える最後のオーク。

 寝てた奴だな。

 そして多分強い。


「やるナ、オデは“ブロンコス”のブカの、デルンカだ」

「ブロンコスとは誰だ? ボス様の名か?」


 スチャ、シャキイィン!

 ほぼ無意識に、デルンカの構えに対応する形で、小剣と短剣をしまい、長剣を抜いた。


 キイィン……。

 戦いでは初めて使うな。


「ブふ? チガう、ブロンコスはおデらイヂゾクの“戦将チーフ”、ダ」

 なるほど。

 よくわからん。


「私はルーナだ。逃げなくていいのかデルンカ」


「ブオオオオオ!! オークはニゲナイ! 俺達ハ、ボスサマの為ニたたかウ! ……死ネ! ルウナ!」


「はああああ!」


 上段に構え力を込めた。

 デルンカとやらが曲剣を背後に構え突進してきた。

 刃が見えない。

 やはり腕の立つ奴だったか。


 オークの巨体にしては滑らかに下から斬りこんで来た。


 構えからして左から来ると思っていたが、“右手を逆手に”していた。


 その逆手に持つ曲剣の柄を、腹に当てて来た。

 両手に持つ左手を離し、刃近くを持つ右手で素早くだ。


 その柄は短剣程度の長さを持ち、柄頭は尖っていた。

 これは刺さるぞ――。


 もし迫る曲剣に合わせ長剣を振り下ろそうとしていたら、隙を突かれていただろう。

 そしてそのまま斬られていたかもしれない。


 ――だが、すぐさま反応し、左ひじを降ろし、奴の逆手にひじを打ち当てた。


 ズザァッ。

 驚くデルンカの表情を置き去りにして、そのまま降ろした腕から左に長剣を振り抜き、右にすれ違い去る。


 始めて使用したが、悪くない切れ味だ。

 さすが業物か。


 オークの太い首も断ち切った。

 だがまだ練習が必要だ。


 デルンカの首半分、切れ残っていた。


 ブシュウウウウ!

 デルンカ「ゴポッ……み……ミゴトだ」


 ビシャビシャ――ドオオオオンッ!


 青い血を吹き出し壁を染めながら、デルンカはそう言った。


 ガラアンッ!

 曲剣が落ちる。

 柄、“鍔本”に青い宝玉が輝いていた。


 ベル「死んじゃったデルンカ」


「あぁ、強き者だったな」

 シャアンッ。

 チャキ。

 私は長剣を振り血を落として、眼前に掲げた。


 左肘が少し痛いな。

 ちょっと力の加減を間違えたか。


 奴を打った場所はへこんでいる。


 ボス様に従う戦将ブロンコスとやらとオーク達。

 人間もリゾット盗賊団だったか? 盗賊達がいるみたいだ。


 ……黒衣の男がボス様だろうか?


 なぜ今そう思ったのか、直感、と言うやつだろうか。

 変異した奴が出てきたら間違いないのだが。


 どちらにせよ、また何かが“ここら”でも起きているのかもしれない。


「デルンカも食べるの? スンスン……ルーナ! こっちのおじさんの鞄からおいしそうな匂いがするよ?」


「そうか? 一度、上を見てくる」


 ――オオオッ――カンッ、キィンッ――。


 ひとまず死骸や落ちている武器は置いておいて、階段を上がり“戦い”の様子を見る。


「……」

 さっきの小部屋と比べて、大ぐらいの広めの部屋で、なんだか見たことのある武装の男達が、盗賊達と戦っていた。


 片手の盗賊や、他にも何人か盗賊が倒れている中で。


 衛兵と言う連中だろうか。

 それらしき戦士達は六人だ。

 

 人族と……獣人と、“蜥蜴とかげ”だ。

 

 蜥蜴人? らしき兵が二人、一緒にいる。


 兜の隙間や、見える部分は鱗の肌だ。

 それぞれ微妙に色に違いがある。

 が、基本的に灰色だ。

 長い尻尾もゆらゆらしている。


 皆、鉄の鎧と兜に長剣だ。


 あの瞳、私とそっくりだ。

 水面越しに見た私の瞳と……。

 

 オークが二、盗賊が四人いる。

 今三人になった。

 中央に長いテーブルがあり分かれて戦っている。


「あ、ソニーだ! あとおっちゃんたちも! おーい!」

 付いてきたベルが頭の上で叫んだ為、戦いが一瞬止まり視線が集中した。


 ああ、長テーブルの奥側にガストン、ビクター、背後にソニーもいた。


 ビクター「え? あ! いた! やっぱりいた!」

 ガストン「あん? なんで奥から……おいこら! 説明してもらうぞルーナ!」

 ソニー「ベルちゃん!? ルーナさぁん!」


 ???「隊長、あっちに妙な女が!」

 ???「耳が長い? ……え、エルフ族?」

 ???「チッ、増援か!?」

 あそこに固まってるのは偉い奴らか。


「「!?」」

 蜥蜴の衛兵達が私と目が合うや、一緒になってブルリとしている。


 盗賊「うわ! さっきのエルフがなんで上がって来てやがるんだ!?」

「どういうこった? どっから沸いてきやがった!? 下にいたお頭は!?」

「あぁもうどうなってやがんだ畜生! 逃げときゃよかったぁ」


 オーク達「おイ、あの剣、オデ達の血、つイてル」

「ボスも、デルンカもヤラレタ? つよイ?」


 ガストン「ようルーナ! また勝ち抜けしやがって、もう下は片付けたんかよ!」

 

 これはもう“詰み”だな。

「盗賊とオーク共! 頭目は逃げた! 下の連中もデルンカも皆倒したぞ! 命惜しくば、降伏しろ!」


 衛兵たち「「な!?」」


「ひええ! こっ降伏する! 降参、降参だ!」

 ガラァンッ、ガチャアン、ゴロン。


 盗賊達は武器を投げ捨てた。


 蜥蜴の衛兵達も何故か捨てかけたが思いとどまった。

 彼らは私を見るや、ビクリと驚いていたな。


 オーク達がまだ捨ててないな。

 それぞれ大槌と鉄棍棒だ。

 

 その時だった。


 ズドッ!

「ぐぶぅ!?」

 両手を上げた盗賊の胴体から剣が飛び出た。


 なんと、兜に羽の付いた衛兵の一人が後ろから刺した。

 ???「……」


 盗賊「ひぃ! ななんで!」

 ガストン「おい! あんた何してんだ! 降参したろ!」


 ???「……知らなぁ~い」


 隊長らしき衛兵「まだ武器を隠し持っている! 油断するな! 殺せ!」

 

 盗賊「たったっ助けてえ!」

 ザシュシュッ!

 逃げようと走り出す盗賊二人に背後から斬りかかる衛兵。


 私は短剣を抜きながら走り、逆に持ち替えてから衛兵の兜に投げた。

 ガコン!

 隊長らしき衛兵「ぐお痛っつ!?」


 ジャキ!

 他の衛兵も追従し盗賊に追いすがるところを間に入り、長剣を真横にして通せんぼした。


 衛兵「なっ!」「早い!」

「ふぁっ、ルーナ消えた!?」


 盗賊「ひええっ」

 バタバタ。

 難を逃れた二人は壁際に逃れ怯える。


 死んでゆく盗賊達「「……」」

 ???「……えぇ? なによこれ?」

 奴は一人を踏みつけてる。


 すでに首を切り裂いて止めを刺していた。早い。


 隊長らしき衛兵「うぉ~~痛いっ! な、な、なんだ小娘! 儂の邪魔をする気か!」

「そうだ。私は戦う気がない奴を殺すのは好かん」


「そうよそうよ! ふんだ!」

 ベルがこっちに飛んできて頭の上に乗る。


 ブルルルゥッ!

「ニンゲン、ずるイ! 降参、ムダ!!」

「やるカ? ベロン? ころスか!?」


 いかん、オーク達がキレそうだ。


 衛兵「隊長、人族じゃないですよこの女」「本当にこっち側か!?」

「隊長になんか投げたの、見たぞ!」


 一触即発? の気配になる。


 ガストン「なっ」

 兄妹「「!?」」


 なんとなくだが羽根つきの長らしき髭男は“悪意が強く”、なんだか気に食わない。


 だがこのまま斬ったらガストンに怒られるだろうか。


 読んでくださりありがとうございます。

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