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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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28話 宴

 ニコ「とうちゃん!」


 私たちの帰還は驚きで迎えられた。

 たった一晩で、しかも全員が無事で帰ったことに。

 更には持ち帰った戦利品の山で驚愕される。

 本当に撃退したのだと。

 逃げ帰ったのでもなく、そして、もう滅ぼされる心配もないと。

 

 大歓声であった。

 そしてエルフの娘が小妖精を肩に乗せていることにも驚かれた。


 行商人の到着により、食糧問題も解決し、戦利品から大量の食糧や酒も手に入れ不安がなくなった村の喜びは、留まることがなかった。


 護衛達の帰還を待っていた行商人でカワウソのケンウッドは早速報酬や戦利品の買取の商談を村長と話し始めるが、村人たちの宴の連呼の声にかき消された。


 ベイリ村が今後毎年祝うことになる祝日が始まったのだ。

 村人たちと同じくらいベルが楽しんだのは間違いない。


 女たちは次々とご馳走を作り、酒樽はいくつも開けられた。


 広場のあちこちに焚火が作られ、村人たちが全て集まりとても賑やかになった。


 ベル「やー! あたしの! あっちいって!」

 途中で前歯のある生き物と食べ物を取り合っていた。

 マモだな。

 村人「またそのマモットか」

 ふむ?

 ミリア「ごめんねベルちゃん! こーら!」

「キイ!」

「しゃべらないのか?」

 ガストン「ブフウーッ!」

 マルコ「汚ったねえなこらあ!」


 ビクター「ルーナさん、それはペットなんです」

 ペット?

 ケンウッド「ルーナさん、その生き物はマモ、マーモットと言って、愛玩動物というもので、飼っているもので、獣人ではないのですよ」

 ベル「べーーっだ!」

 マモか。

 爪が意外と長いな、穴を掘る生き物かもしれない。

 それにしても、妙にふっくらしてるな。

 あと、裾を引っ張って来る。

 食べ物が欲しいみたいだ。

 少し上げよう。

 カリカリと両手で持ってひたすら遠くを眺めて齧ってるのが良い。


 その後の喧噪は、身体を拭いて、女たちに戦利品のドレスや宝飾品を着させられたルーナがお披露目された時、ぱったりとやんだという。

 ベルがご馳走を食べ巡る笑い声だけが聞こえていたという。


 残念なことに、動き辛いし食べ物が食べ辛いと嫌がり、食べカスで汚れるからやめてと止めても食べようとするルーナ。

 折れた女達が彼女をまた家に引っ張り着替えさせて返した為、美しいエルフの姫の姿はつかの間の幻となった。


 やがて酒飲みたちの酔いが回り、陽が落ちて行く。


 酔っ払った男達が投げナイフ大会を初め、ルーナが勝利した。

(思ったより結構深くめり込んだな? はて……)


 ソニーの水の魔術とベルの空中飛行が夜空の星の海の中で、幻想的に披露されたりした。


 村の長老がエルフの武士の伝説や竜の神話を語り、酔っ払い以外が神妙に聞く中、ベルが横やりを入れて怒られたりした。


 流石に楽しくなってきたルーナがマルコやガストンを指さし腕試しだ! と言って抜剣してきたので、討伐組が大慌てで羽交い絞めにし止め、さすがに村長がルーナを怒った。

 木の棒を投げて、これでやればええじゃろと、村長対ルーナの模擬試合が行われたりした。


 エルフの娘の名をいぶかしんだニコが、名付けの理由を父親から初めて聞かされ、涙する一幕もあった。


 ルーナ「ニコ、母親の名の一部をもらったが、許してくれるか?」

 ニコ「ぐすっ、うん……ルーナねえちゃん、むらをまもってくれて、ありがとう!」


 陽が昇るころ、酔いつぶれた村人達の中で(大方の者や女達は家に帰って寝た)驚いたことに、エルフの娘はどれだけ飲んでも酔うことがなかったそうだ。



 翌日、広場にて、討伐組や、村長やケンウッドや他の者達が一部頭痛に悩まれるも、朝飯を食べながら事のあらましを話し合った。


 ルーナが出て行ってからの、行商人の救助や村への到達、マルコ達も救援に向かったこと。

 お化け穴の地揺れや王との戦いをルーナからなんとか聞き出したり、その後の合流など。

 王を倒した後の数々の異変や激しい戦い等。

 黒衣の男や、変異をもたらしたと思われる肉の塊等。

 隠さず共有された。


 マルコ「……しかしよぉ、“魔人”がまた現れ始めたか、こりゃまた荒れるのかもな世の中が」

「魔人?」

 ガストン「魔物を率いてる種族さ、色々いるんだが、全部ひっくるめて魔族って呼んでるけどな。まぁ、向こうからしてみれば俺ら人族や亜人族含めた人間全部が敵なんだろうけどよ」

「ああ、相容れねえぜ、どんな悪党どもよりどす黒いってんで、まあお互い憎み合ってんのよ、つっても魔物と同じに向こうから殺しにかかってきやがるからな、どーしよーもねえぜ」

 あの黒衣の男はゴブリン程狂暴ではなかったがな。


 おかしなことが起きている。


 それはこの地域だけの話ではないだろう。


 というのが皆の共通だった。


 又、街にゴブリンの暴走への救援の知らせを出したことで組織されている討伐隊を急ぎ止めなければならない。


 早馬を出そうと決まり、酒が飲めず元気であった夜警長のグラハムが選ばれ早速出かけて行った。


 恐らく今後、組合や役場の者が訪ねてくるであろう。


 魔術士ソニーが書き写した魔方陣などの手掛かりや、積み切れず残してある戦利品や、調査を出すであろう派遣される冒険者達の案内等で、一度洞窟に戻るであろうと話した。


 行商人一行はその件も含めて、戦利品の分配や取引の話が終わり次第、早々に街に戻ることに決まる。


 ケンウッドは、野営の時にも話したが、ルーナの境遇を改めて聞かされた後、やはりあなたは街を訪れ、冒険者登録をしたほうが良いと話した。


 世界を見るべきだと。


 辺境の田舎の村に収まる人物ではないと。


 ベイリ村の大体の者達や、行商の一行は、このエルフの女戦士がこれから巻き起こすことになる出来事を、まるで予感しているようであった。


 ただ一人、ニコだけが、その話を寂しそうな顔で聞いていた。

読んでくださりありがとうございます。

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