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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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27話 茸

〇〇が△△になった!

「おお~」

 ぽつぽつと生える赤い茸を辿って、藪の洞窟を屈んでゆくと、開けた場所に出た。

 髪が引っかかってちょっと抜け辛かった。


 もう屈まなくてよくなったが、背を伸ばすと頭がすれすれだ。

 藪穴の天井にぶつかりそうだ。

 ビチャ。

 地面は更に湿っていて、小さな川がいくつも流れている。

 水の中にも草が生えているのが見えた。

 

 そしてこの穴倉の空間には点滅する光がたくさん漂っていた。

 虫だ。

 尻の光る小さな虫が、たくさん飛びまわっている。

 星空のようだ。

 虫の尻の、光り方に法則? があるな。

 お互い呼応するように灯っては消えている。

 トプププ……。

 小川の水の小さな流れる音も耳に心地よい気がする。


 だが、ずっと聞こえていたこの音が、なんだかあまり合ってない気がした。

「……ぐぅ~~……すぴぃ~~……」

 これは、イビキというやつだろうか。


「はぐ、もむもむ」

 私は骨付き肉を齧りながら、中央にある花の蕾を見る。


 藪でできた空間の中央に、先ほどの赤茸の終着点のように、ぐるりと茸の円が出来ていた。

 その茸の円の真ん中は小さな、水たまりのような池になっていて、その中央に花の蕾が浮かんでいた。


 確か、水場に咲く種類のやつ、な気がする。


 変なのは、そのつ蕾が“尻光虫”のように光っていることだ。

 中が、それとは違うがゆっくりと、光が強く、弱く、繰り返すように光り続けていて、そしてイビキが聞こえている。


 魔力もわずかに感じる。


 何かがいる。


 「こんばんは」


 いびきが一瞬止まった。

「……スピィ~~」

 と思ったらまた元通りになった。

 私は二、三歩進んでしゃがみ、肉をつかんだままの人差し指だけ伸ばして、ほんの少し蕾をつついてみた。


 すると、蕾が反応したのか、花開いた。

 フワァ。

「んお」

 空間が淡い光に照らされた。


 花が咲いたその中央には、小さな光る少女が丸くなって寝ていた。


「グゥ~~……ズスゥ~~……」

 蝶のような半透明の羽が時折ぴくぴくと動いている。

 ゆったりとした服、裸足で、耳は長く、髪は波打っている。

 そして手の平に乗りそうに小さい。


 しかしその大きなイビキは、まるでホブゴブリンのようだ。

 持って帰ってマルコに見せたらどんな顔をするだろうか、などと考えながら寝ているのを眺めていると、小さな小さな鼻をひくひくと動かしぱちっと目を開いて、こちらを見つめてきた。

 小さい女の子「……」

「……」


 私を、いや、肉を見ている。骨付き肉を動かすと頭がそちらに動く。

 お腹を小さくキュルルと鳴かせながら、羽を小刻みに動かし、尻光虫のようにゆっくりと浮かび上がってこちらに近づいてきた。


「……食べるか?」

 小さな口から涎が出ているのを見て、聞いてみると、頭を前後に振る。

 肉を前に持ってきてやると、飛び掛かるように肉に食いついた。

 はぐっはぐっはぐっ。

 すごい勢いで頬張っている。

 顔中、手も、油まみれになりながら。

「うまいか」

「うん! んいひぃ!」

 けっこう声が大きいな。

 そして光が強くなった。

 力も強くないか?

 

 口の中を一杯にしながら私の周りや穴倉の中をびゅんびゅんと飛び回る。

 その際、光の帯がきらきらと軌跡を描いていた。

 羽からかわからないが粉のようなものがこぼれている。

 それが光っているのだろうか?

 

「ヒソヒソ……ヒソヒソ……」

 見ると、藪の影に隠れるように歩く茸がこちらを覗きこんで、何かぼそぼそとしゃべっている。

 蔓草や枝が垂れ下がる紫の陰の奥から、“葉っぱまみれの女”の様なものが、幹に隠れるのも見えた。

 なんとも、不思議な場所だ。


「むぐんぐ……あんたエルフ? 変なエルフ! なんてゆーの?」

「名前か? ルーナだ」

「わぁ、お月さまと同じ名前だ! あたしはね! ベルってゆーんだよ」

 そうなのか?

「初めまして、ベル」

「わぁ! はじめまして! るーな! ウフフッ、ねぇ肉もっとちょーだい!」



 ――中年冒険者ガストン――


 夕飯が各自終わり、煙草を一服やりながらマルコの親父と見張りの相談をしていたら、どっかほっつき歩いてたエルフの嬢ちゃんがふらっと帰って来た。


 もちろん俺らは誰も心配してない。

 明日の朝飯が手に入るかもな~なんて話してた。


 ん? なんか肩に光るもんが乗ってるな……。

 ……生きてるな。

 なに拾って来やがった。

 何だあれ?

 

 小妖精フェアリーだった。


 たまに森で見かける得体の知れねぇやつなんだ……けど、人に慣れてるのは初めて見たな。

 いや、エルフ慣れか?


 うん、嬢ちゃんが手にする骨付き肉をむさぼるように食ってる。

 そうだろうそうだろう。親父マルコのやつの焼いた肉はうめぇだろう。


 戦うより料理の方が昔から上手いんだよなあいつ。

 かみさんもそれでゲットしたようなもんだ。

 わかってるじゃねぇかこの小妖精……ん?


 こいつらって確か、木の実とか花の蜜とかを食う……って聞いてたんだけどな。

 あと“人の生気”とか?


 食い意地が張ってて元気で、ナリは小せぇが、街の娘っ子と似たようなもんだな。

 その後、鍋に残ったスープに突っ込んでごくごく飲んだ後、食い過ぎで寝込んじまった。

 終始声がでかくてうるせえとマルコのやつが怒鳴ってたな。

 わけがわからん。


 まぁ流石、嬢ちゃんが餌付けした小妖精だ。


 あれ。

 もしかして、付いて来ちまうんじゃねぇだろうな?


 やっかいな魔法でイタズラされるって、嫌う連中もいるんだけどな。



 ――――


 サワサワ……チチチ。


 陽が昇り、朝が来た。

 眠そうに起きる一行。


 見張りを終え泉で顔を洗う者。


 朝飯の用意をする者。


 私は最初に見張りをした後、ずっと寝ていた。

 一番働いたものを最初に見張りにたてて、後は朝まで休ませるのが大体の決まりらしい。

 すぐに目を覚ましたんだがな。

 三人目くらいの者からずっと話したりしていた。

 ガストンは平気なら変わってくれと言って寝た。

 その後はマルコと色々話してたら朝になった。


 私はいつの間にか冒険者という者になっていたようだ。

 主に行商の護衛達に話を聞いてみると、街も組合のことも知らないことに驚かれた。


 記憶が全くなく、この辺りの石が乱立する丘にある石の棺の中で目が覚めたばかりだと言うと、笑われた。


 一応、街に訪れた際には組合に行って登録をすると色々と便利だとお勧めされた。


 ベル「はい! あたしもるーなに付いてって冒険者になる!」

 マルコ「がははは! そりゃいいや! ほんじゃあ俺もまたなるとするかぁ!」

 ガストン「うるえーな朝っぱらから、ばっか親父、ニコはどうすんだよ」

「ねぇお腹すいた! ごはんまだ?」

 ビクター「せ、先輩、この子なんか普通に、僕らに馴染んでませんか!?」

 ソニー「かわいいね! お兄ちゃん!」


 荷馬車の食べ物を適当に食べ、早々に出発した。

 ガラガラ。


「ベル、一緒に来るのか?」


「うん! 一緒に行く!」


「……わかった。ついておいで」


 兄妹「「ええ!?」」


「やた! ほんでどこ行くのー?」


 マルコ「ガーハッハッハッ」


 ベルは私の肩や頭に乗ったり、珍しそうに飛び回り辺りを見て回ったり、他の連中に話しかけて忙しくしている。

 一番大きいマルコの頭の上やソニーを質問攻めにするのが特に気に入ったようだ。

 多分だが、ベルも魔力を感知しているところがあるように見える。


 離れたところでゴブリンの気配が少ししたが、すぐに逃げるように離れていった。

 やはり残っていたか。

 だが、いつもとは違う匂いがした。


 ということは逆に、暴走じゃないさっきの感じが通常の行動ということなのだろうか?

 他の者にゴブリンのことを知らせると、そういうことらしい。


 ただ、こちらが単独か少人数で向こうが多い場合は、確実に襲って来るのだそうだ。

 増えると危険になるんだな。


 そして、もうすぐ村の周辺となり、滅多に近づかなくなるそうだ。


 森から抜け、街道に出た。

 村人たち「「わあっ」」「帰ってこれたーっ」

 マルコ「おう、まだ油断すんなよ」

 ガストン「ルーナ頼んだぜ、待ち伏せはこりごりだっての」

「ああ」

 ビクター「もうないとは思うんですけどね」


 村へ戻る。


 そうして、我々は暴走ゴブリンの討伐から帰還したのであった。

読んでくださりありがとうございます。

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