26話 霧の森
洞窟を出て、坂になった森を降りる。
獣、いやゴブリン道が出来ているのを見つけ進む。
途中で急になっているとこで皆で滑り落ちるところだったがなんとか止まってゆっくり進む。
崖に到着すると、すっかり暗くなっていた。
助走を付ければ行ける!
とマルコがかたくなに行くので私も賛成したところ、全力でそれ以外に反対されたので迂回する。
ベイリ村の男たちは迂回路を知っているようでそちらに向かう。
しかしゴブリンが全然いないな。
あれで全部だったのか?
違うと思うが……。
しばらく行くと、崖が消えた。
どうやら谷下に流れる川が消えたようだ。
見てみると、地面の中に吸い込まれて行っていた。
洞窟のようなものの中へと。
しばらくいけば出ていく穴がありそこからまた川が始まっているのだそうだ。
そうやって進んでいくと、“霧の森”と呼ばれる場所に入った。
その名の通り、霧でずいぶん見通しの悪い森だった。
ズガッ、プギィイーーッ!
突然、霧の壁を突き破るように猪が突っ込んできたが、同時に額へと投げた短剣が刺さり死に、私たちの目の前を滑るように横切った。
多分だが、今までのところ、地域? より低い場所な気がする。
やはりそうで、この先村への方向へと昇りになっているそうだ。
この低地の森を更に南に進むと、沼が多く、湿地になっているそうだ。
メラメラ。
松明を灯してそう話しながら警戒して進むと、泉が沸いてある水場に付いた。
ポトトト……。
ここで今日は一夜過ごすことになった。
マルコ「このまま無理して進んでも着く頃には早朝だからな。早くそいつを焼いて食おうぜ! 前祝だ! 飲もう!」
夜警長、グラハム「血抜きすっからまだだべ、ルーナさん、おねげえしやす」
「ああ、引っ張ればいいんだな?」
木の枝をくぐらせて縄で縛った猪を吊り下げる。
ガストン「おい親父! 見張りは交代でするんだからな!」
マルコは彼の父じゃないが、ずっとそう呼んでるな。
皆、特に若者達は周囲を不安げな眼で見ている。
ベイリ村の時とは違う、ここが外だからか。
この男達だけが慣れっこのようだ。
多分、ちょっとおかしいのかもしれない。
そう考えるエルフの娘自身が全く平気であったことは、まるで気が付いていなかった。
パチパチ……。
薪を組んで火をたいて皆輪になる。
血抜きした猪を豪快にさばいて焚火の上に枝で焼き台をくみ上げ、若者にマルコは焼かせる。
その間も色々と指示を出していた。
ジュウウ~~。
マルコ「もう少しゆっくり、違う違う腹の部分で少し止めるんだ。そうだ。じっくり中まで火を通すんだぞ、おいミハイル、塩をふりかけろ、染み込んでうまくなるからな」
ちなみに塩は戦利品の中にあった。
若者達や、兄妹達は疲れたようで、布を敷いて横になっていた。
ガストンや夜警達は鍋に水を入れ来て、荷車を物色し何か作ろうとしていた。
休んでいろと言われたが問題なかったので周囲を見に行った。
「……」
霧の森は先ほどまでいた村の周囲の森や、崖の向こうのとはまた違っていた。
なんというか、魔力が多いように感じる。
そして反対にゴブリンの臭いがしない。
痕跡もだ。
洞窟から出てやっとわかったのだがゴブリン臭いというものが理解できた。
ずっと洞窟内では鼻がむずむずしていたのだ。
出た途端にすっきりしたものだ。
この森以外では大体していた。
木の葉も種類が違う。
踏んだ感じや形も少し違う。
土は湿っていて、柔らかい。
耳の近くに小さな虫の羽音が聞こえる。
指を近づけると、離れていった。
……指の怪我がもう塞がって消えかかっている。
カササッ。
またか。
これは? よし。
“走って逃げる”やつじゃない、生えている茸を拾って、大丈夫なやつか嗅いで確かめてから集めつつ、ぐるりと見て回った。
入れる袋は荷の中にあった。
生地がなかなか良いもので、ひもが取り付けてあり閉められて、底が皮で補強されているのもよい、魔方陣みたいな刺繍がうっすらと縫われているのも気に入った。
報酬はこれがいいな。
槍斧はいらない。
お化け穴を出るときは邪魔で大変だった。
意地で捨てずに運んできてしまったが。
不思議な森だな。
木の上にいるなめくじとリスのあいの子みたいなつぶらな瞳の生き物や、藪の中に光る小さないくつもの目や、うっすら光りながら飛ぶ球のようなものが二、三個漂って、木の向こうに消えてゆく。
それぞれが時おり、なにやらひそひそしゃべっていたが小さくて聞き取れない。
あっちの小さめの樹なんて、動き出して向こうへ隠れていった。
木みたいな生き物だった。裸の女の姿をしていた。
こちらを振り向いて笑っていたぞ。
藪の中からひそひそ声がする。
声か、色々だが、最初に目覚めた時よりわかるようになってきた気がする。
ゴブリンもそうだったような。
そういうものなのだろうか?
茸が集まった。
結構な量なのに最初と重さが変わらないな?
そろそろ戻ろう。
夜警の男、確かサム「うわっ! びっくりしたぁ~」
「すまない。茸を手に入れたぞ」
鍋に茸を入れてもらう。
ソニー「あ、も、もらいます。る、ルーナさん」
妹が顔を赤くして受け取り、泉に洗いに行った。もう一杯やってるのか?
ビクター「貸してソニー、切るよ」
脇に行って兄が平たい岩に茸を置き、ナイフで切って手伝う。
マルコ「おう、ごくろうさん! ほれっ」
酒瓶を投げられた。
ポチャ。
キュポン。
受け取って一口飲む。
うまい。
「こいつも食ってみろ。一番いいところだ。飛ぶぞ」
「? ありがとう」
最初に焼けあがったらしい、猪肉をもらった。
骨付きで食べやすい。
はぐ、ブチュブチッ。
「んん」
うまい。
食いちぎると弾力があって噛み応えがある。
塩と肉の味が合わさっていて、肉汁が溢れて熱かった。
また一杯酒を飲み流し込む。
「ん~む。うまい!」
一同「「おお~!」」
マルコ「へへへ、そうだろうそうだろう」
ガストン「マルコのおやじは街で酒場でも開きゃあいいんじゃねぇの? (というかルーナの食い方が、大丈夫なのかあれ)」
マルコ「全部飲み干しちまうよ。よぉ~し、おいおめえら、焼けたぞー」
一同「「うひょ~いただきます!」」
ビクター「えーと、グラハムさん? これお願いします」
キノコが鍋に入った。
その後はあとは荷にあったパンなども配り、横になってそのまま眠り出してしまった者も起こして夕飯となった。
数人見張りを立てつつも多少賑やかに火を囲む。
ガストンはなにやら枯れた草を燻して煙を、吸って吐いていた。
村でも誰かがやってるのを見たことがあるな。
中々強く煙が匂うが、魔物は寄ってこないだろうか?
そして、なんだかうまそうだな。
「……」
何だろう。
暫く楽しく過ごした後、霧の向こうが妙に気になったので、散歩して来ると見張りの村人に言い野営から離れた。
感覚としては何も怪しいものはなかったが、妙に気になる。
何かの音が遠くからしているのだ。
野営地から少し離れていくと、妙な茸を見つけた。
さっきは見かけなかった赤い茸が、間隔は開いているものの、妙に連なるように続いていた。
それらを辿ると、突然、見失った。
カサ……しゃがんで深く探すと、隠れるように薮下に続いていた。
屈むと見えるそこは獣道になっていたのだ。
振り返る焚火の灯が小さく見える。
泉のせいかわからないが、霧はそれほど深くない。
謎の茸の足跡を辿ってみた。
読んでくださりありがとうございます。
ルーナは種族特有の感覚なのか、視えないものが“よりよく”視えているようです。




