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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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25話 戦利品

 戦いを終え、ゴブリンの暴走を止めた私たちは、けがの治療をまずした。

 槍斧をくらった際に盾が砕け、破片が腹に刺さっていたのには驚いた。


 ソニーの治療魔術を初めてしてもらった。傷周辺柔らかく光ってじんわりと暖かくなり、傷口がみるみる治ってゆくのがこそばゆかった。

 そして痛みが引いていくのが気持ちよかった。

 またやってもらいたい。


 怪我したものの中で一番深い傷から数えていくつかだけを彼女の魔術で癒し、後は布などで止血して我慢する。


 元々疲れていた彼女はさらに疲れて息が荒くなっていた。

 今日はもう魔力がないので何も使えないそうだ。


 状況を整理しようとガストンが述べる。

「まずゴブリンの暴走は防いだ。いいよな? で問題はあの黒頭巾野郎だ」

 マルコ「あぁ、確か戻って来るみてえに言ってやがったよな?」

 ビクター「ええ!?」

 全て終わったと呆けていた兄が警戒して飛び上がった。


 そうだった。

 気が付いたら現れ、すごい魔法を撃ってくる強敵だ。


 村の若者「あ、おいらあいつが言った変なこと大体覚えてるっす! ”後で素材を回収する”とか……ルーナさんを見るなり”直接見てみれば、中々の魔力じゃないか”、とか! あとおいら達のことを、えーっと、吾輩? は”貴様ら人間共のような下等種族の”とかなんとか!」

 

 ガストン「おまえ覚えいいな!」

 バンバンと背中を叩く。

 ああ。

「痛ぇっす!」


 マルコ「へん! まるで自分が上等な種族だって感じじゃねえか……直接見てみればってえはあれか? なぁ魔法使いの嬢ちゃん、“遠見の魔術”じゃねえのか?」


 ソニー「へ? あ! そ、そうですね、魔道具かもですが、遠見術だと思います! よくご存じですね」

 マルコ「あぁ、俺ぁ元冒険者だったんだ」


 ビクター「み、皆さん、奴がまた現れるんですか? に、逃げませんか?」


 ガストン「そうだな坊主、そういう危機感は大事だな、じゃあ取るもん取ってさっさとトンズラすっか親父。死骸は全部燃やしちまうか? その素材ってのをなくしちまえばいいんだろ?」

 ビクター「え」


 マルコ「グフフ、ぶち切れて復讐しに来そうだけどな、そうするか」


「じゃあ油を――」

「あぁ、獣脂が――」

「あ、おいら持って来きました、松明も――」

 段取りをしている。

 まかせよう。


 興味深いことがたくさん聞けた。

 ありがたい。


 私は気になっていた、崖の段々を降りて大岩に足を向ける。


 ザ、ガラッ。

 一人より多くのことができる。

 これはゴブリンの暴走、軍団、に似ている。

 集団、群れ、村の強さか。


 女王ゴブリンの肉玉もそうだった。


 ザリ。

 玉、そう、塊だ。

 黒衣の男の取り出した肉の塊、今回の元凶だ。

 奴は最後に”また”くれてやる、と言って投げていた。


 ゴブリンの暴走の原因、変異していた女王。

 肉の塊は元々一つあったんだと思う。


 ジャリ。

 段々を降りて、土砂の方へ行く。

 上の尖った大岩を回り込み、女王の下半身が落ちたと思われる場所に進む。


 最後に大剣で刺し貫いた魔力の集まり、肉の塊は二つ目の物だ。

 では一つ目はどこだろう?

 そんなものがあったとしても、もう女王の肉体を変異させて消えたのかもしれない。


 だがもし、女王の体内にまだあったとすれば……。


 マルコも気が付いたようだ。

 慌ててこちらに合流してきた。

「ルーナっ、そもそものゴブリン共の暴走の原因のよ、あの肉の塊ってやつなんだけどよ、最っ初のやつがもしかして……のわあ!?」

 ああ。


 女王の下半身の残骸を見つけた。


 ちぎれて岩の後ろの方に落ちていた。


 変異のようなことは起きず死んでいるが、股の間から何かがはい出て行ったような、血の形跡がある。

 マルコ「げえっんだこりゃあ……」



 その後、痕跡を辿って探し回った末、結局新たに生まれたっぽい“何か”は見つからなかった。

 たくさんできた、崩れた洞窟の小さな亀裂等に潜り込んだのかもしれない。

 何しろそれは子供の大きさとしか思えないほど小さな後だったからだ。


 途中で血の跡は土砂で落ちて残ってなかった。

 だが、匂いは辿れるから、やっぱり亀裂の中だと思う。


 女王の残骸をみんなで調べたが、魔力の集まっている感じもない、ただの死骸だった。


 ガストン「またなんか生まれやがったのか? 小せぇな、普通の子供か? 大人じゃなく?」

 ああ、食った魔狼は大きく変異して産まれたが、今回はちょっとおかしい。


 マルコ「う~ん、わからねぇ、すげえ小せぇ変異した奴かもしれねぇ、どちらにせよもう見つからんだろうな。おぃ、こいつも燃やしちまうぞ、下がれルーナ」


「私も手伝おう」


「いい、いいって、おめぇは一番働いたんだから休んでろって! あぁったく、しょうがねぇな、皆で手分けするぞ」

 皆で散らばって、小鬼の死骸を脂を使い燃やす。


 耳も切り取ってからだ。

 そして、他にも取り出していた。

 体の中に肉塊みたいに、石が入ってるのがいる。

「魔石?」

 ガストン「ああ、そうだぞ?」

 マルコ「だからルーナは知らねえんだって」

 よくわからんが、弱い奴にはなくて、強い奴にはある、そして売れるそうだ。


 ソニー「絶対にあるわけじゃないんですよ? 魔石は魔道具とか、魔法薬の材料とか、色々使い道があって……」

 ビクター「ソニー、一気に言ってもわからないよ」

 ああ、わからん。


 処理の際、女王の部屋の方へ行った際、黒衣の男が現れた箇所に、奇妙なものがあった。

 

 ベイリ村の若者「グラハム隊長! あの黒い男が出てきたとこに、なんか妙なもんがあるべ! 何だべか?」


 そこには妹のソニー曰く、“魔方陣”という代物の跡が出来ていた。

 ただの落書きじゃない。


 マルコ「こいつで転移してきたってことか?」

 ソニー「た、多分そうかと。すすいません、専門じゃなくて、一応、書き写しておきますね、羊皮紙ってあったりしませんか? あっ、ありがとうございます、お兄ちゃんっ踏んじゃだめよっ」

「あ、う、うん」


 ガストン「これ潰せばもう来ねぇかな?」

 マルコ「わからん……ただ消える時は使ってなかったぜい」


 戦利品の山を見ていた連中が持ってきた紙を受け取っていた。

 ふむ、羊皮紙か……私はなぜ紙といったのだろうか?


 もっと薄くて、白い……植物で作成したもの……私は紙を知っている気がするが、あれは動物の皮に見える。


 あと、ソニーの写しが凄い。早いし正確だ。

 シュッ、カリカリ……。

 多分魔法を使っている。

 あの取り出した筆の仕業だろうか?


 ソニー「それじゃあ町に帰った際に、”協会”の人に見てもらいます」

 ガストン「移したな? じゃあ潰すぜ」

 そういって彼は足で跡をかき消す。


 マルコ「まだ安心できたわけじゃねぇが……ぱっと見、ここは女王の部屋か? こいつは祭壇か?」

 夜警長グラハム「だんなあ、さっさと引き上げましょうや、もうすぐ夕暮れですぜ。男衆引っ連れてまた来て調べましょうや」

 マルコ「おぅ、悪ぃ、そうだな」

 男達は部屋を出て天井を見上げる。

 少し日が陰って来ていた。


 女王の巨体なき跡、がらんとした空間の全容が見えた。

 陰になっていた箇所、壁際に様々な調度品、家具、祭壇と呼んでいたそれもある。


 魔術師の小鬼の身体の模様に似たものが刻まれた土の台座が置いてある。

 木を組み合わせた人形のようなものや、土、粘土かな。

 それで造った像のようなものだ。

 女王に似ている気がする。太い女の像。


 神というやつか。

 なぜか見覚えがある。

 私の失われた記憶のどこかにきっとあるのだろう。


「……」

 倒れてるのを元に戻しておく。


 戦利品に集まる男たちの元に向かう。

 マルコ「おいおい、すげえ量だな。おっ! こりゃあ酒か!? うっひょー! 上等もんじゃねぇか!」

 キュポンッ!

 ガストン「おい! 飲むんじゃねぇ今! こら! 俺にもよこせ! ……プハァッ! しかしよぉ、めぼしいもんだけ運ぶしかねぇぞこの量は」


 ビクター「あ、あの皆さん、荷車があそこに」

 最初からこちらを見ていた、剣だけ集めて木箱に並べて立てかけて眺めていたビクターが、奥の壺の影になっている荷車を見つけた。

 

 妹の方はキラキラした首飾りを酔っ払ったような顔で見とれている。

 

 隣の男達は一部、すでに顔が本当にそうなってきている。

 ガストン「おい親父! もうやめとけ! 酒弱くなったんじゃねぇの?」


 騒がしくしながら皆で貴重なものや食料等を優先して、木箱に入れ替え詰め込み、それを荷車に積みこんだ。


 マルコと私で持ち上げ、受け取りをほとんどやって乗せた。

「やっぱルーナは力がすげえなぁ」

 若者「馬がないとひけないんじゃあ」

 と、若者が壁際の骨の塊を見る。

 馬の骨だ。

 ガストン「親父と二人で一緒に車引っ張ってってもらおうぜ」

 マルコ「ふざけんな、全員でだよ!」

 ガストン「馬鹿野郎、護衛もいるだろ」


「どれ」

 ルーナが荷車を引っ張ってみると、見事に動いた。

「「おおおっ」」

 村人「ああっ、まだ固定してねぇだよ!」


 勿論、忘れずに近衛のホブゴブリンの装備や鉄槍と、王の槍斧も回収する。

 ドサガチャガランッ。

 ソニー「ほ、ほんとに運べます? ミシッていっえますけど、ミシって」


 だめになった鉄槍や盾も回収するのはなぜかマルコに聞くと、溶かして再利用できるし売ることもできるそうだ。

 しまった。

 森でけっこう捨てしまったぞ。


 そしてその際、これらの“出所”が気になると言っていた。

 このあたりの者から奪ったものではないそうだ。


 ガストンとマルコが目配せしていた。

 とある革鎧の、“模様”を見て。


 目ぼしいものは集め、死骸も燃やした。


 マルコ「よーしそいじゃあ引き上げようぜ! 凱旋だぁ!」

 一同「「おー!」」

 がいせん?



 外に出るまでちょっと大変だった。


「押せって!」「押してるだろっ」「押すなあ! 零れる零れるっあ痛えっ」「ルーナタンマ! 車輪が取れそうだ!」

「たんま?」「タンマだよ!」

 隠し通路まで起伏が激しかったが空洞を横切りって通路に入って、なんとか通り抜けて、洞窟を抜けて、入口に出ると、夕方になっていた。

 一行「「はあ~~」」「やっと外かよ」「空気がうめえーっ」「臭かったからな……」


 トトッ。

 忘れず樹の上の“うろ”に隠していた荷物を回収する。

 何かが入り込んで嗅ぎまわっていた気配があるが、リス? とかだろう。

 ガストン「おー、すげえな」

 マルコ「猿みてえだな」


 若者「こうすか?」

 夜警長の男「ああ、きつくな、これでも少し持つべ」

 車の、縄を締め直している。


 荷物は引っ張るのはそれだけで楽だったが、抑えて支えるのが大変だった。

 荷車自体がボロだったのもある。


 兄妹とガストンが前後を護衛、夜警と若者たちが支えで、背後で押して手伝ってくれるマルコの編成だ。


 まだ気は抜けないのだろうが、村の者達はにこにこと謎の歌、のようなものを皆で唱えている。

 行商組もなんとなく知っているのか合わせていた。

 皆楽しそうだ。


 うむ、無事でよかったな。

 この速度だと途中で野宿だろうな。


 あと崖はどうするのだろうか?

読んでくださりありがとうございます。

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