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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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2話 月夜

 改めて石棺を除くと、その存在は身一つだけであった。


 服も、埋葬品? とかも何もない。

 空っぽであった。

 一糸まとわぬ姿の、全裸であった。

「……」


 そもそも自分は死んでいないし生きている。

 よな? 左胸に手をやると心臓の鼓動が響いていた。

 心臓、臓器、わかる。

 胸、乳房がある。女。自分は女。

 この世には男と女がいる。

 この胸はやわらかいな。

 大きさにもいろいろあるのがなんとなく頭の記憶の中に浮かぶ。

 だけど、私の胸がどうなのかはわからない。

 そういった、こういうことがこの先もあるのだろうか。

 この世には男と女がいる。

 

 視界を遮るものは髪の毛。

 色、銀色、の髪。

 長い髪。

 尻のとこまである。

 尻がチクチクする。

 両手、両足。握ったり開いたりしてみる。

 

 そして立ち上がってみる。

 すぐそばに吹き飛んだ石の蓋が落ちている。

 落下時の衝撃で草がめくれて土が見えていた。


 丘は一面、草が生えて広がっていた。

これはそう、誰かがいたとかの、形跡、というやつだ。

 形跡がない。

 そういう人の気配、といったものが全くなかった。


 そしてどこかで納得している自分がいた。

 この丘には何か、力、が働いている。

 確信? 感覚? とにかく感じるし、わかった。

 それが何故かはわからなかった。

 自分が石棺で眠っていて、目覚めたわけもわからなかった。

 だが丘の力が関係しているんじゃないかと、何故か納得していた。


 そしてもう一つわかる。

 何かがこっちの方に近づいてきていた。

 何故なのかわからないが、その方向を見ると、よりはっきりしてきたのが

わかった。

 臭い? 森の気配? よくわからない感覚? 説明できないが様々なものから接近してくるものの気配を感じ取れる。

 見ている方角から。

 

 そのずっと、森の向こうの空との間には真っ黒な影が横切っていた。

 起伏がある。

 山、山脈だ。

 目で追うと森の向こうは山脈の黒に覆われていた。

 それはぐるりとなって、丁度背後で途切れていた。

 あっちに進むんで抜けると、何があるのだろう。

 

 そんなことをぼんやり考えつつも、視点を接近してくる何かの気配に戻すと、やはり感じる。

 何匹かこちらに意識的に近づいてくる。

 多分三、それには敵意みたいなものがあり、何故か無性にこいつらに腹の立つ感情が沸き上がってくる。

 嫌いだ。

 何故かそう感じた。

 

 戸惑いつつも、身体は自然と石柱の背後に身を潜ませ、気配を消す自分がいた。

 接近者はもう森から出て丘をのぞける位置だとわかっていた。

 森の中をガサガサいう音がずっとしていたのだ。

 それが、止まった。

 

 こちらをうかがっている気配がする。

 何か声がする。

 獣に似た声で、原始的な言語じゃないかと推察できた。

 そっとのぞいてすぐひっこめた。

 見えたのは子供のような背格好の生き物だった。

 反射して光る眼が四、六つ。

 三匹いたな。

 武器のようなものも持っていた。

 草の間から鈍く光って見えた。

 感覚や見えた印象だけだが確信した。

 

 人ではない。

 それらはグハラギャヘッタゲゴ、とか何か言い合いながら森から出てきて、丘を三匹一緒に登ってきた。

 

 自分はそれを感じつつ静かに音をたてないように、それらの背後に回り込むように、石柱の影を移動していた。

 我ながらよく動く体と感だと驚いていた。

 

 自分はそれらを殺すつもりだった。

 感覚としてはそうだ。

 だけど心というのだろうか、そういう感情みたいなものは、確かめてみたかった。

 

 だからあえて音を立ててそれらの前に現れてみた。

 現れてしまった。

「ゲナンギャア!?」

 驚いて尻もちをつく一匹、取り落とした錆びた短剣、後づさる二匹。

 それらは髪に毛が生えてない代わりに、角が生えていた。

 自分の頭の同じ場所を触ってみると髪の毛しかなかった。

 耳は自分と同じで尖っていた。

 歯がギザギザでなんだか汚い。

 自分のは舌で比べてみると尖ってるのは数本だけだった。

 眼は全て黒で小さい。

 手足も、ついでに背もだ。

 緑色の肌でぼろな腰巻だけだった。

 ずっと漂って来ている不快な臭いの原因だろうか。

 

 自分の身体はまっ白いだけで何も着てない。

 素っ裸ってやつか。

 臭くはない、はずだ。

 よく見て自分と比べてみたかったわけじゃないが、向こうも同じように違いというものを見ていたように見えた。

 加えて驚かしたのもあってかなり驚いていた。

「こんばんわ」

 私はそうしゃべった。

 挨拶、夜にする挨拶。

 間違ってはいないと思うが言葉を交わしてみた。

 答えはこうだった。


「ウギャッパマソヤ!」

 それらはやけに下卑た笑い声でニヤつきながら、武器を振りかぶり襲い掛かって来た。

 後ろの二匹は先のより長めの短剣と穴空きの痛んだ木の盾?

 もう片方は棍棒と、背に穂先のない錆びた棒、槍をぼろ縄で巻きつけ引きずっている。


 そして手前に尻もちをついている一匹に足を取られ、両方ともすっ転んだ。


 私はそれをただ眺めていた。

 小さいし、動きがいちいち大げさというか……おもしろい生き物なのかもしれない。

 恐らく悪態のようなものを叫んで、短剣持ちがそれを投げつてきた。

 

 ぶんぶんを音を立てて回転してせまる、それを私は掴んだ。

 臭いなこれ。

読んでくださりありがとうございます。

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