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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
19/64

19話 対峙

 王は派手な鉄兜を被り、魔狼の髑髏どくろ骨で飾られた毛皮の腰巻に、同様の籠手を身に着けていた。

 その両腕の甲からはやつの牙や爪が飛び出している。

 装飾、首飾りもそれだ。

 得物は鉄製の巨大な槍斧を両手に構えるが、片手でも振り回せるだろう。


 ゆっくり回り込むように足を移動させる。

 背後の部屋と逃げ込んでった呪術士らが目障りなので視界に入るよう壁を背にしたかった。


「ゴオオアアアアアアアア!」

 だが目論見通りにはいかないようだ、咆哮を上げ突っ込んできた。


 ズンズンズウウウンッ!

 やはり横から振りかぶる。片手だ。下から上に斜めの機動。

 遠のくように横に飛んだ。

 王は止まらずに突っ込み反対の、籠手の爪で引き裂くように腕を振りかぶって迫って来た。

 背後に壁が迫る。

 斜め上に飛びよける。

 巨躯の王の顔がよく見える高さに。


 !

 ズガアアアアアアアン!

 槍斧を突っ込んで来た。先端は棘だ!

 ブシュッ。

 爆発したような瓦礫がももを引き裂いた。

 背後の壁を思い切り蹴って宙を横切るように飛ぶ。

 王を飛び越え、背後に着地する。

「っ」


 ガラッ、壇の崖縁に降りたせいか、片足の後ろが崩れた。


 ガラガラアアンッ。

 振り向いた王は体勢を崩したのを見逃さず、槍斧を速度重視で振り下ろす。

 いかんっ!


 大剣下に皮の籠手を添え、斜めに流すように構え踏ん張った。

 ズガァンッ!


 く、握る場所を替えていた。最初の振りから、突きの時は中間、今は長く降る為端をだ。


 崩れる崖と共に中央埋立地に落下する。

 しかし、崩れ落ちる岩を蹴り、崖を駆け上りきり飛んだ。

 王「!」

 見下ろしたと思ったら私が上に跳んだのに少し驚いている。


 その勢いに大剣を乗せ、下から斬り上げ、崖上に戻った。

 奴の胴体、縦に走った切れ目から、緑の血しぶきが弾けた。


「今のはちょっと痛かったぞ」

 驚きの表情を作る王。


 そしてお互いにやりと笑った。


 土砂がパラパラと崩れ落ちる音が広間に響きこだましている。

 ミシッグググッ。

 王が両腕で渾身の力を籠め横なぎに槍斧を振るおうと身構える。

 しかし、意表をつき、鉄兜の角をこちらに向け突撃して来た。

 右に飛んだ。

 死んだ鎧兵らの盾を意識して。


 転び落ち振り返ると、王は続けて槍斧を下からすくい上げ斬る。

 キイィィンっ!

 いなし、弾いた。

 横目に見える盾が近い、いや!

 

 違和感に踏みとどまる。

 今の膂力の感覚から察知し警戒する。

 王は振りかぶった後、くるりと槍斧を折り返して斬りこんできた。

 ブオウン!

 連撃だっ!!

 ガギイイイイイインッ。

 大剣で受け、いなす。



 驚愕顔の王。

 驚いたか。私はこれでも力持ちなんだ。

 ガキイィィンッ! ギャリイィィンッ!

 ビキッ。

 王のすさまじい連撃が続く。

 地面がひび割れていく。

 奴の腕、筋肉はぱんぱんに膨れ上がっている。


 重厚な金属音のかちあう衝撃音が、洞窟内に響き渡たって反響しあっていた。


 長いような、短いような間。

 

 左背後の謎の部屋で気配が。


 入口でも何者かの声が。

 

 武闘のフィナーレの幕が下りたのか、突如、王が力を抜く。

 持ち手が変化し、片手を逆手にした。

 

 突きだっ!

 連続の!

 槍斧の先端から、太く鋭いトゲが高速で穴を穿とうと連続で繰り出される。

 弾くもすぐに引っ込み繰り出される。

 ビュビュビュウオオッ。

 横に付いた斧が厄介だった。

 ビシュッ!

「っ」

 上腕に斧の刃が切り刻まれる感触がした。

 それは不思議と熱かった。


「シネエ!!」


 突きの速度が上がる! 受けても避けてもいられないと直感し、大剣を落とした。


 大きく突き出された槍の斧刃を首をひねり躱す。

 髪が中空に切れ舞う。

 ――「ふっ」

 ガッ。

 蹴りぶつように床を踏ん張り、柄を両手で掴む。


「~~~~っ」

 そら!

 そして奴の戻そうとする力を思い切り手伝って押してやる。


 王「グウアアウッ!?」

 奴は驚き口を大きく開け、つんのめって片足立ちになり後ろにのけぞるっ!

 ドタドスンッ! ズザアッ。


 今だ!

「ガアアアア!!」

 腹に力を入れ、弾ける光矢を意識した。


 バキャッ――ビュオッ――床が弾け、日の差し込むそれに反射し銀に煌めく光弾が飛ぶ。


 王の首元に腰から逆手に早抜かれた小剣がそのまま斬りこまれ、踊るように回転し着地する美しきエルフ。

 ブシュウーーーーッ、ドオオオオオオオオオオオオオン!

 その緑の猫ごとき瞳は、血しぶきをまき散らし倒れる巨体を映していた。



 ――マルコの視点――


 地揺れが起きた後、急いで俺らが“化けもん穴”へ辿り着いて入ってみようとすっと、ゴブリン共が溢れ出てくるところだった。

 慌てふためいて怯えて逃げ散ってった。


 たまたま俺達のとこに逃げ込んで来た奴なんて、そこをどけとばかりにがむしゃらに滅っ茶苦茶に棍棒を振り回すだけなんで、簡単にやっちまえた。

 自分から斧に突っ込んできたようなもんだぜ。


 ガストンの野郎、洞窟が落盤するっつってびびって入りやがらねえ。

 他の幾人かも不安になり始めやがった。

 絶ってぇー行くっつって言い張る夜警の連中だけ引っ張っても仕方ねぇから、他は落ち着いたら必ず来やがれと言って入る。


 松明頼りだが潜ることにした。

 畜生、かみさんが生きてりゃ魔法で照らせて両手がばっちり使えたんだがな。

 モタモタしてたら日が暮れちまうっての。

 待ってろやルーナ。

 少しは残しとけよ獲物を。


 あいつがいるってだけで、枯れちまったなんだ、闘争心? がこんなに沸いてくるなんてな、大した野郎だぜあいつあ。


 先ほどの地響きによる影響か、大小の土砂が散乱し、あちこち崩れ散らかる洞窟内を、ずんずんと進むマルコ一行。

 しかし、魔狼の巣穴らしき死骸のある部屋の先が、土砂で埋まっていた為、彼らは道を引き返せざるをえなくなった。


 だが、元冒険者の錆びついた勘でも、道中の狭すぎる道を見て、さすがに別の侵入ロがあることに気が付いていた。

 小鬼は穴を掘る習性があると聞く。


 そう考えていると、やっと意を決し攻め入って来た元同僚のガストンと一行に鉢合わせる。


 灯を増やして手分けし、なんとか崩れかけの隠し通路を発見し進む。

 発見者は新人兄妹の魔術士の娘っ子だ。隣に住むミリアと同い年くらいか。

 魔術士として良い勘を持っている。

 その年で大した兄妹だと感心する。


 巨体を何とか納め降りてしばらくすると、戦闘の音がした。


 警戒を新たにし、進んだ先の大広間の奥で、ゴブリンの王と美しきエルフの戦士が一騎打ちをしていたのだった。


 一行は出口を塞ぐ図体のでかいマルコを押しのけ魅入った。


 数年に一度あるかないかの泥臭いゴブリン暴走の討伐。

 犠牲者も出る、領主仕事のため敵のかき集めたお宝はお上がそのほとんどを回収し、絞り出た報酬は命がけにしては旨くない。

 しかし組合ギルドの者はほぼ強制という(その場に居たらば)、何重苦の汚れ仕事でしかなかった。


 ゴブリンの軍団を単独で壊滅させる等、それはなにかお伽話の一つのようだった。

 少なくとも平凡な冒険者には。


 しかも、そのゴブリンキングの強さはおかしかった。

 それにキングはあんなに巨体じゃない。

 あれじゃオーガ種だ。

 そもそも今回の暴走の速度がどうもおかしい。


 そんでもって嬢ちゃんのイカレた強さもおかしい。


 この広い空間もなんなんだ。

 天井が崩れたのはわかる。

 偶然じゃないんだろうな? どうやって?

 多分軍団がいたんだろう。

 この土の下に。

 おかしいことだらけだ。

 マルコはその後更なる異常事態に遭遇する。




読んでくださりありがとうございます。

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