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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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18話 王

 こちら側の矢ゴブ五匹を瞬く間に切り裂き、最後の一匹の悲鳴が出るか出ないかぎりぎりで始末し、反対側の異変に気が付いた矢ゴブ六匹の潜む岸へ跳び上がりながら、両手の短剣を投げつけ屠る。

 膝から一匹の首の骨に着地し、左足の指に挟んだ短剣を傍の一匹に突き刺す。

 靴は脱いだ。


 残り二匹の首根っこに飛び掛かり両腕でへし折った。

 身を潜め辺りを警戒する。


 上手くいった、気づかれていない。

 連中の夜目は自分と違って“それ程”なのかもしれない。

 薄々は感じていた。

 矢を回収しまた飛び移り、靴と矢を回収する。

 矢が二十本くらいになった。

 ニヤ。


 少し戻り、待ち伏せ集団の視線から離れた所の崖から、天井の大岩を支えている根を狙う。

 普段の力以上を込めて、弦が切れない限界まで引き絞って、放った。


 洞窟内に轟音が響き渡ったのはそのすぐ後だ。



 ――少し前――


 ガストン「だから無理だってーの、あっちから周ろうぜだんな」

 マルコ「やかましい! さっさと飛べ! ホラ! 飛べ!」

「チッ」


 ベイリ村ゴブリン討伐隊は激流の川が流れる谷底の崖に到着していた。

 構成は夜警をしていた男達三人となんとか戦える男達三人。

 元冒険者マルコ、冒険者ガストン、同じく兄妹、ビクターとソニーの十名だ。


 マルコ以外は対岸にまだ飛べずにいた。

 ガストン「なんだって一番幅の広いここを飛べっつーんだよ、引退してもうろくしたんじゃねぇの?」

「なんだとてめぇ! 洞窟からここがいっちゃん近道なんだよ! ルーナの跳んだ足跡があるんじゃねえか! 行くんだよ!」


「よぅ、あっちの方が飛びやすそうだな、行こうぜ皆」

「「うす」」「はい」「えっ」


「無視すんなてめええ!」


 ズズゥゥウウウン!


 バササッ。

 鳥が驚いて羽ばたく。

「「!?」」

 辺りに地鳴りが走り、木々がざわついた。


「なんだ!? ……洞窟の方からか!?」

「おいおい派手にやってるじゃねぇか! 先に行くぞ俺ぁあああ!」



 ――スガガガララアアアンンゴオオオオオオンッッッ――


 思った以上の結果になった。


 そもそも最初の一発で大岩は落ちた。


 根というより、岩に当たったのだがその衝撃で十分で、外れて落っこちてきた。

 周辺の天井や土砂も一緒に巻き込んで一気に。


 大事になってしまった。

 大成功、か。


 危うくこちらも巻き込まれかけたので隠し通路に引っ込んだが。


 その一瞬の間、目撃できたのは、大岩が焚火と周囲のゴブリン達を一瞬のうちにその重量ですり潰し、そのすぐ後に大小の岩や土砂が広範囲に落ちてきたのを最後に避難した。


 辺りは土煙が吹き荒れ、さすがに夜目でも何も見えない。

 土埃で眼を開けてられない。


 音もうるさい。



 ……しばらくして戻ると、大きく天井に穴が開き、日が差し込み明るくなっていた。


 中央の広場は大量の土砂で埋まっていた。


 三十匹ほど居たはずのゴブリン達は全てこの下にいるのだろう。

 入口で待ち構えていた数十匹のいた場所には岩がいくつか落ち、何匹か押しつぶされた死骸が見えるが、数匹だけだ。

 恐らく入り口に逃げ込んだのだろう。


 全滅させることはできなかったか……。


 ひとまず残ったのは、崖上の王と近衛達だろうか。


 さすがに向こうもこちらに気が付いている。

 こちらを睨むように見ているな。

 王だけが。


 ギリリリ、バヒュン!

 体勢を立て直されないうちに、すぐに弓をありったけ斉射した。

 バヒュバヒュバヒュ!

 走りながら回り込むように連続で撃った。


 初撃の何本かの内一本が鉄鎧の隙間に食い込んだものの、直ぐに対応し大型の盾で固まり始めたからだ。

 動きの鈍っていた、隙間に食い込んでいた一匹の顔面に撃ちこめて、一匹倒せた。


 上手くいかないので足元を狙う。

 ももから下は生身だ。

 そうしてるうちに奥から駆け寄って来た呪術士が呪術、黒魔術? を唱えだす。

 目くらましかと思ったが、違った。

「!」

 発光する矢が飛んで来た。

 ビュビューーーーだが、遅い。

 当たらない。


 しかし、避けたはずの光る矢が曲がりくねって飛び込んでくる!

 ドバアンッ!

 足元をえぐった。

 ギリギリで躱し足を避けたものの、弾けた土砂礫が目に入り体制を崩した。


 続けて光矢が二本発射された。


 さっきは避けたら大きく曲がって来たな。

 ならば。


 突進する。

 光矢を屈んでよける。

 右目は何とか見える。

 バアアンッ!

 少し後方で矢が二つ弾けた音がした。

 よし。


 眼前には壁のように鉄鎧が六匹並んでいる。

 三匹は膝に矢を食らい自重で屈んでおり、その中でも一匹は傷が深いのか、更に盾に寄りかかっている。

 奴らの獲物は全て錆びのない鉄槍だ。


 あの近くにいたら呪術士は光矢を撃ってくるだろうか?

 試してみよう。


 一番屈んでいる奴に短剣を投げる。

 身構えた所に短剣はカンッと跳ね返る。

 示し合わせて跳び上がって、そいつを足場にして蹴り上がり、背後に転がり下りて、すぐに向き直る。

 倒した鉄鎧の落とした鉄槍を掴みながら。


 やはりそれほど素早くはないようだな。

 振り返る前に、浮足立ってる連中に渾身の力で横なぎに槍をぶち当ててみた。

 ブオウン――バギャリガアアアアイイイインン!!

 受けた盾がぐにゃりと歪み、鉄鎧ごと肉をへこませ、あばら骨を砕く奇妙な感触を鉄槍に響かせ、槍は衝撃の箇所からひん曲がった。


 並んでいた鉄鎧達が重なり合って倒れる。

 手前の鉄鎧は泡を吹いていた。


 ――その刹那――背後の王が構えを取っている気配!


「っ」

 咄嗟に倒れこんだ鉄鎧達の影に飛び込んだ。

 ドゴオオオオンッ!!

「ピギィイイ!」

 振り返ると王が振り下ろした“巨大な槍斧”が地面をへこませていた。

 オオオオオン……。


 巻き込まれた鉄鎧の足がちぎれ飛んでいた。

 泡吹きが上に倒れこんで動けなくなっていた奴だ。

 腹で真っ二つになって死んでいる、鉄鎧、残五。


 ボトッ。

 飛んだ足が落ちる。


 王「グガラサッサトウチコロゼボガァ!!」


 呪術士らに命令したのか、私達ごと光矢を放とうとする。

 ガラァッ――咄嗟に鉄鎧が落とした盾を拾い上げる。

 思ったより重くない。


 ガシャンッ、ドンドンドンッ!

 王が槍斧を横に構えて突進し近寄ってきている。


 横なぎに吹き飛ばすつもりだ。

 バビュウーーーッ。

 光矢が三本、あえて高く放たれた。

 山のような軌道? を描き、鉄鎧達を越えて迫って来た!


 ズシャッ。

 鉄鎧の死骸を踏み台にし、光矢に向かって飛ぶ。


 一本と激突する。

 二本とすれ違い後方へ、鉄鎧に炸裂する。

 ドバドゴドバアアアンッ!


 ブオオオオオガラガラガシャガラアアアアンッ!

 そこに巨大斧槍を横から薙ぎ払い、鉄鎧達はグシャグシャになって段から転げ落ちていった。


 盾を斜めに構え光矢の衝撃を逃がすように当たりに行ったのが良かったのか、盾がひしゃげて持ち手からはじけ飛ぶだけで済んだ。


 だが光矢がもう一本、遅れて放たれ迫りくる。

 ブウンッ。

 咄嗟にもう片方の手に持っていた鉄盾を、回し投げる。


 バアアアアアアアンッ!

 目の前でぶつかり炸裂した衝撃や振り投げた反動により跳躍力を失い落下する。

 ガアンッ! ガランガラァンッ。


 ドサッ。

「はぁっ」

 着地したここは、鉄鎧に突っ込んでいった王と、奥にいる呪術士たちの中間あたりだった。


「スゥーーッ」

 スラアッ――ジャキッ。

 驚く連中の隙を見逃さず、背の大剣に手をかけ呪術士に突撃する。

「「ギャムギャムdfj;tha;sf……!?」」


「ギャアアアッ」「ヒギャァオタズゲャッ!」

 呪術士達は光の矢を放とうと唱えだすがそれは二匹だけで、他の二匹は奥の部屋に逃げ出していく。


 その先に何か気味の悪い大きな肉の塊がちらと見えた。

 どうやら魔法はたくさん撃つことができないようだった。


 呪文等を唱える時間は作らせない。

 ズパアンッ!

 大剣の横なぎで二体の胴を同時に二つ走り斬る。

 ドチャッ、ゴロンッ。


 逃げた二匹を追撃しようとする、が足を止めた。


 背後から迫る王の気配を感じた。

「む」


 ズウウウン!

 怒りに筋骨隆々とした体躯が震えている。

 王「フーーッ」

 ズウン!


「スゥー……ハァー」


 まだ余力はある、一体一だ。




読んでくださりありがとうございます。

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