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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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17話 お化け穴

 なにかおかしい。

 ゴブリンを斬り捨てながら暗闇の通路を行く。

 幸先よく、倒したゴブリンからなかなかの小剣を手に入れる。

 村の襲撃の品を回収してなかったな、まあ村人が居たし一緒に戦ったから。


 ブンッ、ヒュウンッ。

 これは狭い洞窟では扱いやすかった。

 通路は入り組んでおり、分かれ道に迷ったりしたが、臭いの元をたどってゆく。

 

 より狭い通路に出ると、反対側に立ちふさがる皮鎧のホブゴブリンがいた。

 槍を突き出し突進してくる。

 

 とっさに前に出て左の横穴に飛び込む。

 通り過ぎたのをすぐに追っかけて振り向く隙を与えず首を突いた。

 兜は付けていなかった。

 倒したやつの鎧は大きすぎる。

 槍だけもらって捨て置いた。


 先ほど逃げ込んだ穴から声がするので様子を見る。

 ゴブリンのメスと子供が数匹、隅に隠れるようにして丸まっている巣穴を見つけた。

「大人しくして人を襲わないなら見逃す」

「ゲギャゴチソウゴチソウ! バキャキャッ!」

 母子共々襲い掛かって来た。

 手前の子供を蹴っ飛ばす。


「来るな、斬るぞ」

 槍だがそれを向ける。

 子供に見向きもせず、メスと子供らは狂ったように襲ってくる。

 折れた何かの骨が武器だ。


「許せ」

 飛び掛かってきたが、届く前に連突きしてとどめを刺した。

 やがて動くものはいなくなった。


 メスの腹は大きかった。

 

 “人の頭蓋骨が壁一面に並ぶ”その巣穴を出る。


 散発的に襲ってくるのを斬りながら進む。

 槍は振り回せないから小剣で。

 ドガッ。

 槍でも殴る。刃がない側のほうが使い勝手がいい気がする。

 ここまで一本道と、さっきの狭い通路と、村で遭遇したホブよりも大きい二首。


 他にも入口があるんじゃないだろうか。


 通路が終わり、先の巣穴より広い空間に出た。

 魔狼の飼育場だろうか、二匹待ち構えていた。


 通路に戻って一匹ずつと思った矢先。

 背後からもゴブの気配が近づく。


 突然現れたように感じる……待ち伏せ、地下? 隠し通路?

 背後の通路の向こうから鎧ホブの姿が現れる。

 他にも、後ろに数匹いる。

 挟まれた。


 そいつに槍を投げてから、右の魔狼へと走る。


 奴は跳び上がり、短剣のようなするどい前足の爪を振って来る。

 勢いそのまま飛び掛かる下の隙間、地面スレスレを、飛び降りるかのような姿勢ですり抜ける。

 短剣を逆手に奴の腹に突き立てるようにしてだ。

 目論見通り、簡単に腹が裂け、臓腑をぼとぼとと落とし、倒れる。


 警戒して唸るもう一匹にすかさず短剣を投擲する。

 獣はサッと避け、すぐさま飛び掛かって来た。


 ゴブリンよりはるかに速い!

 膂力のなせる業だ。

 だがこちらは背に剣鉈がある。

 間合いに入った瞬間を狙い、奴の飛び掛かる勢いを利用し肩から二つに切り裂いた。

 ピシッ。

 剣鉈の限界がきていた。

 そろそろ折れるかもしれない。


 ブシャアアズシャアッ。


 背後から鎧ホブと群れが入ってくる。

「グババヒロイ!」

 喜んでるな。

 その大剣が振り回せるのが嬉しいのだろう。

 私も嬉しい。


 ブオンッ!

 剣鉈をすかさず投げる。

 かわす鎧ホブ。

 バキャアァァ……。

 後ろのゴブリンが胴体をかち割られながら通路の奥へ飛んでいった。

 他には小三中一匹。


 その隙に投げた短剣を拾って鎧からも抜いて、両手に牙のように構えた。

「その大剣もらうぞ」


 何かおかしいのは自分のこともそうだ。


 バシュッ! バシュッ! ヒュヒュンッ、ズバッ! ドオンッ!

「……」

 全く苦戦せず、立ち回って、次々とゴブリンを切りつけ、大剣やボルトや小剣の反撃を躱せる。


 横や背後からの攻撃も見ても見なくても簡単に躱せる。

 敵の動作が遅すぎる。

 集中すればするほど遅くなる。

 奴らの垂らす汗や涎もよく見えた。

 血しぶきも。


 瞬く間に周りのゴブリンを片付け、鎧ホブの大振りを躱しその腕を折り、大剣を奪い、くるりと回り込み脇下、鎧の隙間から突き刺した大剣が首に飛び出し貫いた。


 ガルルル……。

 まだ生きてる腹の零れた魔狼にとどめをさす。


 誰も動かなくなった。


「よい戦いだった」


 大剣を振り血のりを飛ばし獲物を調べる。

 剣鉈と違って叩き割るには薄く、しかし長さはある。

 投げまわすのはしばらく休業かもしれない。

 そして槍だ、鎧ゴブに折られていた。

 狭いからいいか。


 シャキン。

 鞘も死骸から剥ぎ取ったものの中に大剣の鞘も見つけて背に固定する。

 これができるのはいい、両手が空いた。

 シュル、カチャカチャ……ホブが身に着けていた皮の装具を利用して小剣も、腰の後ろに固定できるようにした。

 足の合いそうな靴もあったが、あまりの異臭に鼻が痛くなったので投げ捨てた。

 最後に革帯を左腕に籠手のように巻き締める。

「うむ」


 少し考え、戻って隠し通路があるか探ってみた。

 剣鉈は半ばの刃が割れ、背の厚い箇所がグニャリと歪み垂れたまま、ゴブリンに突き刺さっていた。

「よい鉈だった」


 とても細い通路を出た場所を見回すと、簡単に見つかった。

 出口を開けたままだった。

 入ってみると下に向かって坂になっている。そして作りだ。

 先ほどまでいた自然な洞窟じゃなくて、掘り進めたものだった。

 行こう。


 曲がって湾曲した通路を行くにつれ聞こえていた音が大きくなる。

 


 そこには、広大な広場と雄たけびを上げ騒ぐゴブリンの軍団が蠢いていた。


 その空間は暗闇ではなく、天井に亀裂が入り日の光が差し込んでいた。

 木の根がたくさん突き出している。


 ギャッギャッ、パチパチ……。


 中央広場に大きなかがり火が焚いてあり、何かの肉を焼いている。

 踊るように騒ぐゴブリンの集団が集中している。

 大体が小さく三十匹ぐらいはいる。


 抜け出た隠し通路は壁をめぐって崖のような高所だ。

 崖自体は段になって広場に降りれられる。


 壁をたどって向こうの崖下に本来の狭い入口があった。

 恐らくそっちを行くとさっきの魔狼ワーグの部屋なのだろう。


「……」

 その入り口に向かってにゴブリン達が何十匹も待ち構えていた。

 入口両側が高い崖になり、そこに不意打ちをかけやすいように弓やボルトを構えたのがこちらに五、反対側に六と潜んでいるのが丸見えだった。

「ギャウアー」「ヒマギャブ」「マグギャ?」「ックシ! ギャムグー」「シャーッ、シズガグッ」

 なんとなくぼそぼそ言ってることが分かって来た気がする。

 絶対に私を待ち伏せしてる。


 攻めているのはバレているのか。

 火のとことの連中は気にしてないぞ?


 奴ら、入口から奥に行くほど装備が強固になっている。

 どう見ても略奪したものだ。

 向こうに転がってるぶかぶかの兜なんて放り捨てられている。


 そしてあそこだ。

 反対側の崖の壁をつたって最も高い部分、広場からも行ける段々の先の王座のような台地に、強そうな重武装のホブゴブリンの群れがいる。

 金属の反射に包まれている。

 鉄の鎧と兜だ。


 それらを取り巻くようにして、巨大なゴブリンが鎮座していた。

 あれが王か。

 変異した二つ首の二倍はある巨体、他のゴブリンより青色よりの皮膚、鍛えられた体躯、鉄兜のいで立ちで、鉄製の槍、斧? が合体した武器を壁に立てかけている。


 その下には大量の武器防具、布や木箱やキラキラした箱や像や壺、金銀銅貨? が山のように積まれていた。


 そしてその反対側の壁、この空間の最奥はくりぬかれ、奥まった部屋になっている。

 ここからはよく見えないがその中に巨大な青黒い生き物がいる。


 呪術士が四匹ほどチョロチョロしている。

 一匹がヌルヌルした、おかしな、生まれたての胎児のようなものを運んでいるが、大きさが通常の大人のゴブリンの大きさだ。


 状況や感じるところだと、多分、女王のようなものが大人のゴブリンをどんどん産み出している?

 暴走とはそういうものなのだろうか?


 キャンキャン!

 入れ替わりに部下たちが、縄で縛った魔狼を引き入れている。


 そして魔狼の悲鳴が奥から聞こえた。


「ゴバハガモットタベギャガ」

 王は取り巻きに何かしゃべりながら、焼けた猪のような肉を受け取り齧っている。


 入口付近で殺気立って待ち構えている連中とは雰囲気が違う。

 我関せずといった余裕を感じさせる。


 ふむ。

 体がぶるぶると震える。

 心臓の鼓動も早い。

 私は怖がっているのだろうか?


 だが感覚がとても冴えわたっている気がする。


 焚火の火の粉が舞い上がり、何かが躍っているようだ。

 飛び騒ぐ小鬼の影が大きくなったり小さくなったり、薄くなったり濃くなったりとあやふやに岩壁に投影されている。

 囁き声が聞こえてくる。


 ふと上を仰ぐと、天井の裂け目、巨大な岩が飛び出している。

 木の根が張り巡らされている。

 よく見ると、とても危うい状態だとわかる。

 あそこの根をどければ、落ちるんじゃないだろうか?

 真下の広場の集団に。


 矢がたくさんいるかもしれない。

 私は入口上に潜む射手達を見た。


 あそこにたくさんあるな。




読んでくださりありがとうございます。

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